アンデッドを!
またもてきとーなサブタイだなぁ
那月は多少驚きはしても、以前俺と弟の模擬戦を観ているので混乱はしていない様に見える。
問題は他の者達だった。
店の外の死獣達は、店内とは別に映し出されたモニターを見て俺を讃えるような声をあげている。
まぁ、これもいいことにしよう。
耳障りには違いないが。
特に問題なのはホールの中にいる那月以外のレイスを含む人間達だ。
唖然とするパオラ、それに今の魔法はこのような進化を遂げたのか空恐ろしげに尋ねるジェラルド。
その他は怒声を上げながら議論をしている。
興奮しながらも魔法についてしっかりと既存のモノとの差異を議論している組がある。
後でそいつにはこの世界の魔法について一緒に掘り下げてみたい。
パオラから聞き出せたのは、なんというか基礎レベル以下の代物だったからなぁ。
俺はたった今手に入れたDPを使いダンジョン機能の幾つかを入手してみる。
試運転にたった今手に入れた一つ、「通達」を使いにホールにいる者に指示を出す。
一階に来るようにと。
そして残ったDPの大半を使い砂浜の領域を少し広げ、洞窟状の一階層の下に今までで一番広い地下階層を作るよう設定した。
元々構想は練ってあったので手早くいこうか。
しかしこれで残りDPは700ちょい。
また三桁になってしまった。
今オーガーが一体でおよそ450も手に入れたのにだ。
ゴブリンだって個体差はあるが形のある死体一つで30は必ず手に入るというのに。
しかも砂浜にいるゴブリンはミンチになったものは安かったが、そのほぼ全ての死体は食わせたのにだ。
ちなみに洞窟内の死体とオーガーの死体は、ダンジョンの機能「回収」で「倉庫」に収納してある。
理由はこれから使うからだ。
ところで「回収」や「倉庫」も有料オプションなんですよこれ。
ダンジョンの初期機能じゃないんです。
酷くないですかねぇ?
利便性の割に激安だったからいいけどさぁ。
皆が一階に来る頃には地下階層が出来上がって、下へと続く簡素な階段も一階層に現れた。
そしたらメイビスにダンジョン外に出て警戒と周囲の状況の確認を頼み、俺は皆を連れて下の階へ向かう。
地下階層は高さ6、横は70、奥行が160。
上とは全くの別物だ。
そしてジェラルドからこの国の葬儀、埋葬法、そしてその装飾を聞き出し、ダンジョンマスターの力でフロア全体の床をそれっぽく隆起させる。
アレンジも効かせてあるので、この国の人々からは様々な様式の墓らしきモノが数百も地面から生えているように見える。
大きな武器を突き刺したようなものや組み上げたものが全体の三割近くあり、少しばかり戦場テイストにしてあるのが特徴だろうか。
ここに先程収納したゴブリン、ダイアウルフ、オーガーの死体を並べるように「倉庫」から取り出し配置する。
氷で貫かれたりしたものや、死体同士で潰れたものもあるが殆どは大きな傷は無い。
しかしゴブリンは泥まみれだったり、衛生的とはとても言い難い襤褸をまとっている。
いや、もしかしたら泥浴びで豚のように寄生虫を落として……まぁどうでもいいか。
ダイアウルフは普通に獣臭いし、毛皮が海辺の砂まみれな物が多い。
オーガーは木の皮、獣皮、骨で手作り感満載の露出の多い軽鎧を身に着けていて、まだましな格好ではあるが二体は俺が頭部を破壊したのでこれもダメだ。
全体的みるとグロは少ないがあまり綺麗とは言い難い状態だな。
「さてさてさーて、これから目の前にいるこの死体の山にいわゆる死霊魔法をかけます」
皆の方に振り返って声の調子をあげて宣言する。
本当は魔術と魔法の複合だけれども、この世界の奴等にわかりやすく魔法と言いました。
ちなみにこの国で死霊魔法は外法扱いされているが、他国では普通に活用されている所もあるという。
なんともグレーな扱いらしい。
「君達は俺の権能により冥府から引っ張り上げましたが、これからやることは違います。
死体を修繕して、先程刈り取った魂を入れ直します。
その際ちょっとばかり精神にダメージを受けます。
よって頭がイカれたり、性格が変貌したりしますが、俺の腕前ならそこまで問題はなく生前の記憶と知能を与えられるでしょう。
さて、ここまではおーけー?」
ここで先程白熱した魔法議論をしていた内の一人が手を挙げて質問してきた。
「死体の修繕とは具体的にどうするのでしょうか。
回復魔法は生者にしか作用しないはずですが」
いくつか方法があるが変に凝った事をする必要はないだろう。
「そうだね、魔力量に自信があれば自分が好きなように具現化して肉付けしてあげればいい。
そうじゃないなら死体に魔力を込めた上で時間を遡らせるのが一番効率がいいんじゃないかな?」
そう告げると今度は皆驚愕の表情を浮かべた。
なんとなくのレベルが分かるってものだ。
「魔力の具象化、それも生命体、少なくともその体組織の構築が、そして時間遡上が貴方様には可能なのですか?」
「時間遡上はあんまり大きなことはできないけどね。
あと魔力だけで新しく生命体、一個体丸々全てを作るなら時間もそれなりに必要になる。
まあこれからはダンジョンの力が使えるからもっと早く生成できるようになるかな?
他にはなにかある?」
他にも細々とした質疑応答を終えて、いよいよリビングデッドを作る。
そうこれから作るのはリビングデッド。
名前から誤解を受けるが、死ぬことの出来ない不死者では無い。
また後ろのレイス達とも別物だ。
あくまでこれから作るのは動く死体、生ける屍だ
何言ってんだお前、そんな声が聞こえそうだから少しだけ説明しようか。
あくまでも地球の朝霧の杜での定義であって、この世界じゃ若干違うようだが。
一度死んだにも関わらず、動く死者達。
及びそれに類似する、再生力のある生き物。
生物を構成する三大要素、肉体、精神、霊魂のいづれかが欠けたのに動くモノ。
これらは総称して(広義の)アンデッドと呼ばれる。
しかしこの中でも、大きく分けて分類できる
あぁ種族とは別物なので、そこは注意して欲しい。
一つ目。
一度死んで他者の術、または儀式により動き出したモノ。
通称、リビングデッド。
ただし戦闘力や知性とは関係ないので注意しよう。
二つ目。
一度死んで他者の術、または儀式により生前のままに蘇り、尚且つ高い再生力等により擬似的な不死性を宿すモノ。
なんか死んで勝手に生き返させられたたら人間辞めてました、みたいなのがこれだね。
その時きちんと肉体が生きていることが重要。
三つ目。
普通の生命体だったモノが、由来の自他を問わず、何らかの手段により、肉体的な死亡を超越して不死性を宿すモノ、または高い再生力等により擬似的な不死性を宿すモノ。
死んでからどうこうされたのではなく生前から仕掛けがあるタイプ。
生まれ普通だったゲームの勇者が、死んでも王様の御前や教会で生き返ったらこれだね。
ただし激強聖職者が魔王の城に忍び込んで、死体を回収して蘇生術をかけていたとしたら、それは話が別だよ。
あくまで勇者の特性や体質的な話が重要なんだ。
四つ目。
普通の生命体だったモノが、死を経験したか否かに関わらず、存在自体を改変して、不死性を手にしたモノ。
基本、肉体は死んでるか異形化してる。
多分これが話を複雑化させる一番面倒臭い分類。
生きたまま骨人間にさせられちゃったけどなんか便利だなこの体、と思ったらこのタイプ。
一度死んだ(生前の)記憶があるけどなんか死体のはずなのに動いてる、しかもなにか怪しい儀式を受けた訳でもないのに、それもこのタイプ。
神獣を殺してその血肉を喰らい、超絶再生力と不老不死の力をゲット。
しかし基本は生きた人の体ですよね?
それならこのタイプではありません、三つ目のでやつですね。
常時異形化してケモ耳美少女(ケモ度50%以上)になって出直して来るがいい。
五つ目。
生まれながらにして、最低限の不死性として、肉体的な死亡を超越したモノ、または肉体に依存しないモノ。
不死者、真なるアンデッド、イモータルと呼ばれることも。
因みに四つ目はこのタイプの不完全版だったり素養を持っていることが多い。
杜の関係者は五つ目の彼等を指してアンデッドと呼ぶ時があり、広義のアンデッドとは異なるので間違えないようにしよう。
アンデッドとは死を否定する、または否定しようとするモノ、死から遠ざかったモノである。
しかし大部分は死に損ないであり、本当のアンデッドじゃねぇ。
そんな考えがあり、狭義のアンデッドとしてこの不死者を置いているという話だ。
勿論大まかな分類であって微妙にどれにも当て嵌らないこともある。
まあこれ始末の仕方と、戦闘時の相手の特性を元に分類したのが始まりらしいからね。
しょうがないね。
ちなみに今いるレイスや死獣達は四つ目のやつだね。
ただしライラだけは五に分類していいとおもう。
生まれながらのアストラルな子だしね。
不死者としては最低ランクもいいとこだろうけど。
そしてこれから作るのは一つ目の分類のリビングデッド。
あくまで死体に魂を入れて動き出したモノ。
まぁきっちり生前の魂を保有し、多少の記憶も持っている。
リビングデッドにしては高性能な方に仕上げるつもりだが、再生力は特に強くはない。
それじゃあ肉体の修繕も終わったし、実際にやってみようか。
「風に吹かれよ 黒の柳は水面に映る 波打つ水鏡 禊を終えた魂よ 静謐な影を骸に見い出せ」
影を媒介に魂を定着させる。
俺がこの方法を使えば精神の損傷は少なからず低減させることが可能だ。
ちなみに今回は俺が霊魂を回収してたからこんなに楽だが、冥府から引き上げる場合、この数ならば、今の三倍以上の呪文を唱え、数時間に及ぶ下準備が必要だった。
浮遊霊っぽくなってれば、時間はあまりかからないが結果にかなりばらつきが出ただろう。
術が発動し、あまり明るくないフロアにも関わらず、死体の影が大きくなり揺らめく。
そしてついに影は地面を離れ、自らを生み出す死体を覆い尽くす。
十数秒後、黒い体は本来の体色を取り戻し、影もまた地面にて静かに揺らいでいる。
そして何事もないかのように立ち上がり、整列を始める魔物たち。
さぁ後ろの奴らが驚いている内に能力を見てみようか。
名前
年齢 0
種族 ゴブリンフレッシュマン
魔力E 闘気F 霊力D
筋力 E
耐久 D
敏捷 E
精神 E
器用 F
幸運 F
特殊 E
スキル
闇属性 夜目 自己再生
名前
年齢 0
種族 ダイアウルフフレッシュビースト
魔力E 闘気D 霊力D
筋力 C
耐久 D
敏捷 C
精神 E
器用 F
幸運 F
特殊 D
スキル
闇属性 夜目 腐毒爪牙 自己再生
名前グワロ (他はグンダとグメル)
年齢 0
種族 オーガーレブナント
魔力D 闘気D 霊力C
筋力 B
耐久 C
敏捷 D
精神 D
器用 E
幸運 F
特殊 D
スキル
闇属性 棒 徒手格闘 剛力 夜目 自己再生
ふむふむ。
種族毎に一番能力値が高い奴を見てみたけど、死ぬ前より少しだけ能力値は上がってるねぇ。
特に霊力、筋力、耐久はどの種族も必ず上がっている。
幸運は下がっている場合もあるが。
ちなみに年齢については再カウントである模様。
まぁ種族欄も変わってしまったので仕方ない。
先程のアンデッドの分類のことを考えれば、続けてのカウントでもいいと思うけど、あれはあくまで地球での話。
やっぱりこの世界のルールとは乖離していることがこれだけでも察せられる。
そもこの情報ソースが肉体ベース、存在ベース、又は魂ベースなのかで話も変わるから絶対におかしい訳でもないが。
屍肉ゴブリンで一番強いのが100DPで召喚したリザードマンとほぼ互角の能力値だからなぁ。
まぁ体格差やスキルの相性的にリザードマンが勝つだろうが、屍肉狼相手では勝ちきれないだろう。
500DPで召喚したレイスのライラは相性の問題でオーガーにも負けはしないし、時間をかければ複数のオーガーも魔法で倒せるだろう。
普通はその前に逃げられるだろうが。
うん?
今確認したけどそのライラ、能力上がってない?
名前ライラ
年齢 0
種族 ファントムアサシン
魔力C 闘気F 霊力C
筋力 E
耐久 D
敏捷 D
精神 B
器用 C
幸運 C
特殊 B
スキル
闇属性 光属性 水属性 鎌 夜目 霧化 潜伏 生者感知 生気吸収 死霊生成 物理無効
あれ〜?
オーガーぐらい楽に処せるでしょこの子。
どうしてこんな成長して……あ、はい。
私が名前つけたからですか。
自分の中のダンジョン知識が教えてくれた。
ネームドモンスターはダンジョンの管理上でも重要だそうだ。
後で本読んでしっかり確認しておこう。
まぁ納得できる話ではある。
先程生物の三大要素として肉体、精神、霊魂をあげたが、これに続く重要な要素が名前である。
まぁ、基本的に人においての話だが。
一部の呪術ではこれを非常に重要視しており、本名を隠すことは界隈では当たり前のことでもある。
真名の考え方とかもあるし何となくだとしてもみんな想像できるだろうけど。
しかしそれでもコロコロしてる可愛いペットに名付けしたら、なんか凶悪になってたらビビるだろう?
もっと名付けを真剣で儀式めいて行ったならまだしもさぁ。
なんだかんだ言っても、俺がモンスター事情に詳しくないってだけだが。
いろいろ勉強しなきゃいけないなぁ。
しかしちょうどいいだろう。
このフロアの管理者としてライラを置こうか。
不死者としてはまだまだ程度が限りなく低いライラだが、死を集めたり、霊魂を拡張させたらどこまでやれるのか。
正直結構興味がある。
そのために是非とも前線に立って敵を殺し尽くして欲しい。
ちなみに地球にいる最高峰の不死者には俺は手も足も出ないし、他の杜の面子も同じだろう。
ACNの幹部以上の人達ならいい勝負だろうし、所属している高位戦闘員なら勝てなくても最低限の勝負として成り立つぐらいはできるのだろうが。
まだまだ中位に分類される俺程度では無謀というものだ。
杜の下の子達にも不死者は数名いるが色々強力な特性があり、正直完勝できない場合があるぐらいだしね。
ライラがそのレベルの不死者になってくれたらとても助かる。
あまり詳しくはないがきっちり育成しなければな。
その名のとおり、暗き夜を体現する不死者になることを願う。
オーガー三兄弟も名前持っているのに、なぜこうもパッとしないのかは実に不思議である。
しかし戦力に乏しい今はガンガン働いてもらうけどね。




