彼らの永遠
〈 彼らの永遠 〉
ーーーじゃぎんと耳元で刃と刃が擦れ合う音がした。
「ーーーやめ、ろッ!」
跳ね上がるように飛び起きいつの間にかテーブルに突っ伏していた身体を弾けさせた。がたん! とかけていた椅子が倒れる音と自分の近くにいる人間とーーーざけん、な。
突っ伏していたテーブルには何もない。武器になるものはない。眼を開いた瞬間それを理解し、その人間に対して身体を捻って振り返りながら固めた拳をこめかみにーーー
「ッ!」
半弧を描くように回した拳をその『人間』に叩き付ける寸前、それが『誰』であるかを理解して自分にぎょっとしながらも腕の勢いを殺した。無理やり殺したせいで身体の芯がぶれ、脚がよろりと泳ぎ身体ごとバランスを崩す。横転するのを覚悟したが、眼の前にいる今殴り付けようとしたひとがあわてた様子で抱き留めてくれた。
「み、みーさん? どうしたの? 大丈夫?」
「っ、は……」
ぎゅう、と抱きしめられるように支えられて。じわじわと伝わるあたたかさの中呆然としーーーろくに力の入らない脚を胸中で詰り、そうとは見えないように無理やり力を込めた。自分の脚で立つ。一瞬微かに震えてしまったのは、恐らく気付かれなかった。
落ち着け。落ち着け。ーーー状況を予測。理解。組み立てる。嘘を。
「……ごめん、寝惚けてた……」
はは、と小さく笑いそっと胸を手で押し身を離した。心配そうに自分を見るそのひとーーー殴り付けようとしたそのひと、ともりを見上げ、謝る。
「ごめんなさい。起こそうとしてくれたんだよね?」
「うん。寝るならちゃんと、ベッドで寝た方がいいかなって……」
「うん、その通り。……いつ寝ちゃったのかな」
「そんなに経ってないよ。十分くらい」
なるほど。疲労感にどっぷり浸かりながらあいつのことを考えていたからーーー幻聴が、聞こえたのだろう。
「ごめんね、起こしてくれたのに殴ろうとして」
倒した椅子を直そうと屈みかけたが、それより早くともりが直してくれた。
「ありがとう……」
「気にしないで。……本当大丈夫? さっき、やめろって言ってたよ」
「やめろ?」
やめろ。ーーーああ、叫んだ。ぞっとするような寒気を持って。
首筋に手をやり、それが不自然に見えるだろうとすぐに思ってかりかりと痒くもないそこを掻いて誤魔化し、ふは、と力なく笑う。
「夢、見てた」
「どんな?」
「編集最中のMacの電源切られるの」
「……それは……」
それは確かにやめろだね、と、ともりは気の毒そうに言った。




