君の嘘と嘘と嘘と嘘と 2
「あのねみーさん。みーさんを抱きしめていたい俺の気持ちはいついかなる時も全く変わらないから。素面だろうが酔っ払っていようが同じです」
「……そ、そうですか……」
「あー、甘えたいなあ。みーさんに甘えたいなあ」
「……」
それなら、まあ……。……こういうのって子供時代の反動が来ているのだと思うし。と思うとやめなさいと突き放せない。恥ずかしいしいろいろ問題がある気がするけれど、でもそれはミユキ側の問題なのでミユキさえどうにかすれば大丈夫……なの、だろうか?
「ん……」
首筋にあった頭部がするっと降りて胸元で止まった。ぎゅう、とそのまま抱きしめられ顔を埋められる。……母性を求めているのだろうがこれはちょっと流石に恥ずかしいしいろいろこれはちょっとそのあれではないだろうか。セーフ? セーフかな? ぎりぎりアウトかな?
「と……とも、り。あのね、」
「……やわらか。ふわふわしてる」
「……!」
感想を言われても! かあっと一気に顔が熱くなるのがわかった。
「と、ともり! あ、あのね、流石にね、あのね、」
「んー?」
「は……はずかしい、から。……ほら、いろいろとばれちゃう気が、する」
「いろいろって?」
「さ……サイズ、とか」
「サイズはなんとなく知ってる。九割の確信を持って知ってる」
「そうなのっ?」
触ったことあったっけありましたね! ありましたねあの時! 服の……し、下着の上からだったけど確かに触った! うわあ触っただけでわかるの? わかっちゃうの? どうしようばれた知られてた。
「ふ、うぅ……」
「……気にすることないのに。十分じゃん。アンダーが六十五で、」
「わーっ! わーっ!」
言わなくていい言わなくていい! というかどうしてミユキがこんな目に遭っているんだろう!
「やだ、やだやだ言わないで! お願い!」
「わかったけど……本当、気にすることないサイズだよ? そもそも六十五でも少し余裕あるくらいでしょ」
「なんでそこまで知ってるのっ?」
「だってこんなに細いし……」
こんなに、と両手で胸の下を一周するように大きな手のひらが覆う。すっぽりと包まれまるでサイズを計られているようでいやいやと身を捩った。
「やだやだやだやだやだあ! な、なんでそんな意地悪言うの!」
「意地悪……なの? これ」
「む、胸の話をするのは意地悪だ!」
「……それはそうかも。ごめんね」
「い、言わないでね? 誰にも言わないでね?」
「言わないよ、もちろん」
「ぜ、絶対だよ? 林場くんとか須藤くんとか真野さんきゅうっ!」
「ーーーだから真野の話はしないでって言ったでしょ」
低くなった声。ぎゅう、と抱きしめられ胸元に顔を埋められ、何がなんだかわからなくなってひたすらこくこくと何度もうなずく。
「わかっ……た、わかった、わかった……も、もう言わない」
「ん。でも約束破ったからお仕置きね」
「ふ? ーーーはうっ」
シャツの胸元を少し下げ、現れたところにかぷりと噛み付かれた。ほんの僅か、肌が盛り上がりはじめる部分。やだななんでかな胸ばっかだ。
「ご、ごめんなさ、ごめんなさい、もう言いませんっ……」
「……」
「と、ともり、もう言わないから口離して?」
「……」
「と……とも、り、はず、恥ずかしい、はずかしいの……」
「……」
「あ、あのね? ともりにとっては取るに足らないくだらない肉かもしれないけど私にとってはその恥ずかしい部位だからあのねそのねあんっ、だめ、ともりぐにってしないでぐにって歯がまた食い込んでるの、」
「……」
「ふ、ふあぁ……とも、ともり……」
「……」
……なんで胸元噛まれたまま静止されなきゃならないのだろう。まさか食べようと思っているわけでもないと思うので痛くはないが、これ確実に歯型が付いているだろう。
「……ん、まあ、いいかな」
漸くともりが顔を上げてくれたのでくたくたと脱力した。シャツの隙間から覗く部分、綺麗な並びの歯型。なんでこうなった。なんで同居人の歯並びのよさをこんな形で再確認しなきゃいけなくなった……。
とりあえず今のともりには真野の名前はタブーらしい。何故か。本当は仲良いのに素直じゃないよなあと思いながら、もうそろそろいいだろうかと身体を離そうと、した。……離れない。離してもらえない。




