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幕間:過去からの魔手

 怪盗Fは四世紀前から記録が残っている伝説的な盗賊のことだ。一部では義賊とも呼ばれているが、世界各国の警察が血眼になって探していたという過去もある。

 というのも、彼が狙ったのは重要な国家機密や国宝級の代物、大富豪の財産といったものだったからだ。警察は少なからず権力者の味方である。なので、権力者に公然と反旗を翻して盗みを働いていた怪盗Fは当然のごとく全世界の警察を敵に回した。

 しかし、そんな危機的な状況さえも彼は楽しんでいた。

 彼にとってトリックを生み出すことは息をすることと同じくらいにたやすい。彼は無尽蔵の奇策を駆使し、警察を翻弄し、欺き、そして逃げおおせた。

 記録によれば、彼は十七世紀の人間だというのだから、もう四百年程度生き続けている計算になる。

 次長からもらったレポートの一部を読む限り、これが大まかな怪盗Fのデータだ。

 これを捕まえろというのは空気を刑務所に叩き込めといっているようなものである。変幻自在の盗賊は何の準備もなしに捕らえられるほど甘くはないだろう。

「小雪さん、これどう思います?」

 オフィスにあるソファに座ってコーヒーを飲みながら、隣にいる小雪さんに意見を求めた。

「んー、次長のことだから、何かしらの勝算があるんじゃないかとは思うわ」

 小雪さんはホットココアをこくこくと美味しそうに飲みながら答える。こうしていれば可愛いのに、どうして酒乱の気があるのだろうか。神様は残酷である。

「まあそうだとは思いますけど」

 養父、十六夜煌は天才だ。いや、天才という言葉ですら彼には生ぬるい。人智を超えた存在とでも言おうか、千里先を見通すほどの洞察力を持っているのだ。だから、彼が事件を把握した時にはもうすでに解決策は彼の中にある。彼が事件に携わった時点で、その犯人は既にチェックメイトなのだ。敵に回せばこれほど恐ろしい人間はいない。

「それにさ、多分まだ引きずってるんだと思う」

「え?」

「ああ、ごめんごめん。余計なこと言ったね、忘れて忘れて」

 小雪さんは飲み終わったココアの缶を投げた。それは見事に吸い込まれるようにゴミ箱に入った。

「引きずってるって、『世界人口調節協会』のことですか?」

「……うん。私がまだ警察に入る前のことなんだけどね、次長は言ってたの。『私はかの組織を潰す。そのためだけにここにいる』ってね」

 落ちたトーン。昔の傷を掘り起こす彼女の顔は少しだけ翳っていた。

「あの時の次長は本当に怖かった。まるで悪魔みたいに、この世のすべてを殺しつくすってくらいの怒気を発していた。その後でね、警察に来いって誘われたの。紫電さんもね」

「すみません、何か嫌なこと聞いてしまって」

「いいのよ。いずれは凛ちゃんも絡むかもしれないからね。いずれは……」

 小雪さんは掌を返すように、明るい調子になって

「さって! じゃあ、捜査しよっか!」

 と切り出す。

 この朗らかさが彼女の一番の強さではないかと思う。どんな時でも気持ちで負けない強さ。この強さに触れて僕は時たま思う。僕ももっと強くならないと。

 いつか、誰かを守るときが来た時のために。

こんばんは、星見です。

中国からの有害微粒子がとうとう首都圏にもやってきました。私の周りでマスクが多いのはそのせいか。


というわけで

次回またお会いできることを祈りつつ……

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