第4話 ホンネ
『刀根将』
中学時代唯一の友人だ。
定期テストの順位はいつも1番。
僕と共に高島高校を受験したが、彼だけ受かったことで卒業以来全く交流のなかった友人。
過去唯一自分の思いを打ち明けられた彼の声に、実家に帰った時のような、ぼんやりとした安心感に包まれた。
「おぉ!久しぶり!!卒業以来じゃん!」
初めて見る十和の笑顔に少し驚いた顔をする凛。
しかし十和の眼中には、過去の旧友の姿のみ映っていたため、それには気づくことがなかった。
お互い少し会話をしたあたりで将が凛達に気付く。
「あ、どうも。刀根将です。」
「鈴木凛です。はじめまして。十和くんとは学校の友達です。」
そう言ってニコッとお辞儀をする。
…なんかすごい清楚感出してきたな。もしかして、友達と他人で態度変えるタイプか…?
「いやぁでも少し安心したよ。十和にしっかりした友達ができて。」
そういいながら僕の肩に腕を乗せる将。
中学の時は誰も友達いたかったような物言い(完全に事実)を友達の前で言われたことに少しモヤッとしたため、さすがに(完璧に事実だとしても)少しの否定もといツッコミくらいは入れようと口を開こうとした、まさにその時だった。
「えっ?2人って付き合ってるんじゃないん?」
空気が固まった。時が止まったと言ったほうが良いのか。
とにかく全員の表情が固まった。
ゆっくりとその場にいた全員が振り向いて声の主を見る。
そこには口をポカ〜ンと開けて、明らか事の重大さを理解していなさそうな美心さんがつっ立っていた。
すぐさま隣にいた橘さんが美心さんの頭をわしっと掴み、
「おい?ちょっとこっち来い」
と言い美心さんを引きずってどこかへいった。
運ばれている間も、美心さんは口をポカ〜ンと開けて表情一つ変えずに固まっていた。
残された3人の間にものすごく気まずい空気が溢れる。
これはどうすればいいんだ?とりあえず友達だってことだけ伝えて誤解を解かなければ…。
「そっ…そんな…」
「いや、'まだ'友達…です。」
顔をめちゃくちゃ赤らめた凛が、少し顔を後ろに向けながら言った。
まだ…?まだ!?
まだってことは今後そうなる可能性もありうるってこと?
なんだこのラブコメ全開な展開!?
これってもしかしなくても、凛って僕の事…
その瞬間、ある2つの記憶がよみがえった。
『いいか。恋愛なんてもん学生のうちからするもんじゃない。学生は勉強をすることが仕事なんだ。学校は勉強しに行く所で、異性と戯れている場所じゃない。そんなものに気を取られて成績が落ちようもんなら、分かってるな?』
父が以前僕に言った言葉。
『お前、◯◯の事好きなのかよ!おい皆!十和って…』
『…もう話しかけないでよ。気持ち悪い。』
小学生の頃、いじめっ子に好きだった子を無理やり言わされ晒された記憶。
複雑な気持ちだ。今まで恋心というものがいいものになった記憶が一つもない。
素直に喜んでいいのかもわからない。
でも、凛の方から好意を向けているのなら…。
…。そんな決まったことじゃない。焦って気が動転していっただけかもしれない。
…だから恋愛沙汰は苦手なんだ…。
「和…。十和!」
はっと気がつく。
将が俺を呼びかけていた。
「今日のところは解散しないか?また今度詳しく聞かせてくれ。」
過去の経験を思い出して、将の前でこうなってしまう経験は何回かあった。
今回もそれを察したのだろう。
「そ…そうだね。」
凛もわずかに顔を赤らめて言った。
「……。なんかごめん。」
こうしてその日は解散となった。
あぁああどうしよう!
まだ付き合ってないなんて、私十和大好きって告白したのと一緒じゃん!!
あばばばば。
明日どう顔合わせれば…。
バス停にて、先ほどの出来事に身を捩らせる凛。
このまま付き合うってことにしてもいいのかな?いいのかな!?
「あの、ちょっといいですか。」
その声は頭の中のドキドキをかき消した。
この声、さっき聞いた。
恥ずかしさでずっとうつむいていた顔を上げる。
そこには、十和の大親友『刀根将』が立っていた。
「十和について少し話しておきたいと思いまして。」
バスの後部座席に座った私達。
「十和からは過去の話とかって聞きました?」
「いや、昔いじめられていたとか親が厳しいとか、ところどころは聞いていたのですが。」
「…。少し話題変えていいですか。2人って出会ったきっかけみたいなのは…?いや、冷やかしとかではなく、ただあの十和が自ら友達を受け入れるとはどうしても思えなかったので少し気になりまして…。」
結構踏み込んでくるなこの人…。とは思ったけど、多分十和のことを本当に思っているのだろう。
となると、余計出会ったきっかけを言うことはできない。十和の自殺を止めたなんて言ったらどうなるか。
「最初は私の方からの一目惚れで、そこから私が成績上位だったのもあって、勉強を教え合う仲になったんです。」
「…。鈴木さん。何か隠していませんか?」
!?
いや、そんなはずはない。本心を隠したりその場を誤魔化すのは、これまでの経験上得意な方だとは思っている。なのにどうして…?
「自分事になるのですが、将来は弁護士になりたくて、高島に行ったのも京大行って資格取るためなんです。」
十和から頭がいいとは聞いてたけど…。
「それで昔から周りの人が何かごまかしたりする時を見つけるのが得意なんです。今回の鈴木さんも、質問から回答までの思考時間とか目の動き、まばたきなどがわずかに怪しかったので、一応聞いてみました。」
すごい。これが本当の天才か。としか言いようがない。
「ですが、鈴木さんのは本当に一瞬でした。自分でもしっかり見ていても確信が持てなかった。よく周りの人から言われません?嘘が上手って。」
「完敗です。本当にすごいですね。」
「まぁ…。ただこの特技のせいで、自分も損をしたことがたくさんあるので、一概に良いとは言えないのですが…。」
さて。と姿勢を改めもう一度私に問いかける。
「2人が出会ったきっかけというのは。」
「本当に良いんですか…?もしかして刀根さんにとっても少しショックな話になるかもしれないのですが。」
「大丈夫です。話してください。」
こうして十和の自殺未遂について全て話した。
一通り話を聞き終わったあと、刀根さんは少しゆがんだ笑顔で一言。
「この度は、十和を助けてくださりありがとうございました。」
そう言って頭を下げた。
「いやいや、そんな私がしたことなんてただのストーカーですよ。」
「いや、それでも…」
「十和を助けられて本当によかった。それは私も同じ気持ちです。」
そう言って私は微笑む。
「まだ彼とはあって一ヶ月ほどしか経ってないのに…すいません。」
「十和の事を思ってくれる人ができた。それだけでも自分は嬉しいんです。」
そして、刀根さんは昔の十和の事を語った。
「彼、小学生の時にいじめを受けてたらしくて、それで友達を作るのが怖くなってるんです。
聞いた話だと、田んぼに突き落とされて自転車を盗まれたり、日頃から嫌がらせを受けていたり、しかも先生がいじめを把握できていなくて、暴力を受けて反撃したら先生を呼ばれて、なぜか十和が喧嘩をふっかけたことにされて叱られる。
それで学校では問題児扱いされていたらしいんです。
あと、父親がかなり厳しいみたいで、暇があったら勉強みたいな感じ。周りほぼ全員がスマホ持ってるのに彼だけ買ってもらえなかったりして。」
「あれ?十和スマホ持ってましたよ?」
「てことは、高校になって買ってもらった?いや、『スマホなんて生涯いらない』とか言われたらしいし、もしかして母親かもしれません。」
「母親?」
「十和のお母さんです。毒親な父親に比べて「勉強は自分で計画を立ててやれ」。みたいな感じで主体性を重視してる方らしくて、かなり優しいそうです。ただ、その分父親とはよく言い合いになっていることが多いらしく、家族仲はあんまり良くないそうです。
中学の時は自分が話し相手になっていたので少しはストレスのはけ口になってたのかもしれませんが、高校に入って誰も話せる人がいなくて抱え込んで、それで自殺しようとしたんだと自分は思います。」
改めて姿勢を正して私の目を見る。
「十和としても、鈴木さん達のような方々は彼が生きていく支えになっていくと思います。これからも十和のことをよろしくお願いします。」
そう言って彼は頭を下げた。
バスの乗り換えのために福井駅にて下車する。
「あ、最後に1つだけ。
先ほどの図書館での事覚えてます?」
「十和が何か考え込んでいたことですか?」
「そうです。そういう時は大体昔のトラウマとかがフラッシュバックしているときです。」
「完全に付き合ってると勘違いされて照れていたのかと…。」
「さっきの場合はそれもあったかもしれません。ただ、以前『いじめっ子に好きだった子を無理やりさらされてその子含めクラスの皆からバカにされた。』みたいなことを言ってたので、一応そういう時は呼びかけてこっちに連れ戻してください。」
「分かりました。」
今回話して、思った以上に十和が色々抱えてることがわかった。
私達がいることで少しでも彼に楽になってほしい。
そう思うしかなかった。
刀根さんとは十和のLINEを教え、一応私ともLINEを交換してから別れた。
翌日十和と会ったものの、何もなかったかのように日常が流れていった。
タイトル原曲「ホンネ / RYKEY」
皆さんこんにちは。nemi a.k.a タピオカです。
今回は親友将登場回です。
この回についてもいくつか話したい裏話があるので、ぜひ読んでいただけると幸いです。
まず、刀根将という名前についてですが、以前「桐谷もどき」という人となまかつという話を書いていたんですが、その人の名字が刀根です。
弁護士の件なども彼がモデルとなっています。
昔毎日のように二人で下校してたのを思い出します。
あと、将が話していた十和のいじめについては、完全に自分の実体験です。
これについては、いじめ調査に書いたら先生が本人にそのことを伝えてボコられたなどなど色々逸話があるので、またどこかでストーリーとして消化していきまいです。
父親については、モデルは私の父親なのですが、少しオーバーに表現しています。
スマホは反対派で、勉強の話しかしないのは本当ですが、母とはそこまで仲悪くないですし、あの人のおかげでここまで学力があると少し感謝もしているので、そこだけはフィクションとしてお楽しみください。
あと、いじめの件とは別件になるのですが、自分一度首吊ってトビかけてるんですよ。その話もどこかでストーリーにしていきたいな。なんてのも考えています。
そんな訳でそろそろ締めましょう。
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次回作の更新までお待ちください。




