表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/34

第24話 過ちの代償

 粉々になった硝子がショーケースの中を埋め尽くす。

大小様々な破片に反射する照明の光。

さながらカメラのフラッシュのようにマネキンを彩っている。


 時折崩れては心地の良い音を生み出した。

不規則に奏でられる音色は彩花の耳に届き、幻想的な想像を掻き立てる。

だが、次第に弱まる音量に比例して周囲のざわめきが大きくなってくる。


 一斉に集まる鋭い視線。

突き刺さるような注目を全身に感じる。

ふと、シャツの下で一筋の汗が背中をくすぐった。


 次第に集まる喧騒の中に目を凝らす。

京子がこの中にいないか、左右前後に身体を動かし探す。


 お願い!もう一度私の前に現れてよ!


 だが、彼女らしき人物が見つかることはなかった。

気分がどんどん底まで沈み込んでいく。

彩花のたった一つの頼みの綱が潰えてしまった。


 不意に肩を叩かれた。

優しい力の小さな手。

京子さん!?一途の希望を胸に振り返ると中年の女性警備員が立っていた。


「あなた、一体何をしたか分かっているの!?」


 怯えたように彩花の顔を見上げている。

その顔には友好的な感情は感じられない。

得体の知れないものを見ているといった表情を隠すことなく浮かべていた。


 彩花は自分のやった惨状を見やる。

店の前には多くの野次馬が集まっていた。

彼らの手にはスマホが握られている。


「はい、やりました。――もういいですか?」


 自分の行いなど眼中にないように彩花は歩き始める。

目の前に立っていた警備員は突然迫ってきた彼女に思わず道を開けてしまう。


「……だ、ダメに決まってるでしょ!?」


 避けるために後退りしながらも声を上げる。

喉の奥からなんとか絞りだしたような怒号が虚しく響く。


 うるさいなぁ。

邪魔に思いながら彩花は警備員に目もくれず通り過ぎた。

後ろから聞こえる喚き声を右から左へと聞き流すことにした。


 ◇


『速報!〇〇○でアパレルショップのガラスを割る女現る!!』


 SNSを眺めているとそんな見出しの投稿が流れてきた。

画像には警備員に咎められている女性と完全に破壊された店が収められている。

顔はモザイクで隠されているが、輪郭と雰囲気からかなり若そうなことが伝わった。


 これってここからすぐじゃん……。

京子は画面から目を離して歩道の先を見やった。

例の店はまっすぐ行ったところにあったはずだ。


 見通した限りではそんなことがあったなど想像ができない。

騒ぎはもう収束したのだろうか。

彼女の耳には、クリスマスをイメージした陽気なBGMと街中を歩くカップルの喧騒しか入ってこない。


 気分晴らしに行きたい飲食店があったのだが断念することにした。

このまま進めば騒動に巻き込まれてしまうかもしれない。


 京子は隣の駅周辺で店を探すことにした。

近くで休んでいても何もないとは限らない。

彼女は振り返り、来た道を戻って行った。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ