親からの贈り物
『キュウキュウ』
『キュウ、キュルルル』
小さなフタバサウルスは湖の辺りに集まる人間達と幼いマイアサウラに興味津々であり、共に鳴き声を交わしたり舐め合ったりしていた。
「「「可愛い〜♡」」」
「可愛いけど何なのこれ?こいつらのような首長ドラゴンにしては脚がヒレみたいになってるけど」
多くの女子達がフタバサウルスとマイアサウラの子供のやり取りを交互に見ながら愛でる中で、エリーシャはその間に水を飲むディプロドクスの子供達と見た目が似ているようで似てないことに首を傾げていた。
「海には脚がヒレ状になった亀がいるのですが…それにしては甲羅がありませんわね」
令嬢としてのプライドが勝っているのかロイルは愛でるのに混じらずチラチラと二頭の愛らしい姿を見ながらそんな説明をした。
「良かった…無事に産まれたんだね」
「あの…マーセルさん、このモンスターは一体?」
マーセルはフタバサウルスの誕生を喜んでいるおり、キオナは何か知っていそうだと問いかける。
「この子は私の生まれ故郷の海で共に暮らしているモンスターで『パルカ』と呼んでいるのよ」
話によるとマーセルの故郷にはフタバサウルスがいて、性格はイルカのように人懐っこくて彼女とその仲間達とは海で魚を獲ったり共に泳いだりする程に仲が良いのだと言う。
「海で共に…?マーセルさん、私の父は海での貿易や商いをしている貴族なのですがそのようなモンスターは初めて見ました」
海に領地を置いた貴族の娘であるロイルでもフタバサウルスは見たことなかったが、それとは別に気になることがあったのだ。
「それなのにあなたはまるで前々からそのパルカと言うモンスターと海で共に暮らしているかのような言い方をしているので、どうも気になるのですが」
その令嬢であるからこそ海のモンスターのことについてはある程度知っていたつもりだったが、見たことないフタバサウルスに名称を付けるほどに親しくなっているマーセルの一族が何者か気になって仕方なかった。
「ああ、それはですね」
「あれ、マーセルお姉ちゃんの耳ってお魚さんみたいな耳なんだね」
マーセルが髪をかき分けると耳にあたる場所から金魚の尾ヒレのような物が覗いていた。
「まあ、マーセルさんは人魚族だったのですね。なら私以上に海のモンスターと詳しく親しい訳ですね」
今度はロイルが事情を話す番だった。人魚族は海を中心に生活をする種族で彼女や彼女の家族、海を領地にする他の貴族の間でもよく知る異種族だった。幾ら海の貴族で色々周知していても、海の中で生活している人魚族なら彼女以上に色々知っててもおかしくはないだろう。
「しかしそれなら人魚族であるあなたが何故ここに?人魚族は淡水にも適応出来ますが、基本的には海で暮らしているはずでは?」
「あの流れ星が落ちてきたことで海が荒れて、その時は気が付かなかったけど海を逆上って川沿いの集落の人達に助けられたの。でも結局はこのパルカの子と一緒に他の皆と離れ離れになっちゃったの」
流れ星とはグランドレイク王国でも見た、この異世界へ来る原因となったであろうあの隕石のことだ。かなり遠くの場所へと落ちたように見えたが、それでも意識を手放すほどの衝撃波だったため海にいたマーセルとフタバサウルスの赤ちゃんも川まで押し流されてしまったと言うのだ。
「あ〜…う〜…」
「あれ、どうしたの?」
ふとハーピーの子がベビーフタバサウルスとベビーマイアサウラをジッと見ていたことにエインは首を傾げる。するとハーピーの子は二頭を見ながら腕の翼を広げて姿勢を低くし…
「あう!」
『キュウ!?』
「ちょっと!?何してるの!?」
なんとハーピーの子はベビーフタバサウルスに猛禽類のような逞しい脚で掴みかかるように飛び付いたのだ。しかもよく見ると生まれたばかりのプニプニした可愛い外見と異なり鋭い歯が並んだ口を開けて噛み付こうとしていた。
「待って待って!ダメだよ!」
「うっ…ううっ?」
慌ててエインが止めに入るとハーピーの子は驚き、何が悪いのかと言わんばかりに首を傾げながらその場を離れる。
「ダメだよ、友達を食べようとしたら」
「ううっ〜?」
膝を付いて面と向かって話すエインだが、それに対してハーピーの子は何のことだか分からないと今度は反対方向に首を傾げた。
「まだ生まれたばかりだから何が悪いとか良いとか分からないのよ」
「そうだよねぇ、ネイルも卵から生まれた時も危なっかしいところがあったもんねぇ」
『クルル…』
ハーピーのことに詳しいアレッサがエインにそうアドバイスをし、それを傍らで聞いていたメロルもネイルが孵化した時を思い出しながらネイルに話しかける。
「あなたが親になったから良し悪しを教えないといけないのよ。どれを食べて良いとか悪いとかね」
「親…ですか」
刷り込みでハーピーの子の親になったエインにアレッサは更に付け加えてアドバイスをするも、エインが実の両親で覚えていることと言えば魔法やスキルの才能がなく捨てられ、それならまだしも汚い物でも扱うかのように虐待されたり最悪捨て犬や捨て猫のように殺処分されそうになったぐらいだ。
両親からロクな扱いを受けなかった記憶しかないからこそ、今自分が親になったとしてもどうしたら良いか検討も付かないし複雑な気分になってしまう。
「大丈夫ですよ、私達も一緒にいてあげますから」
「そうだよ。それにマルスさん達も色々と教えてくれるだろうからね」
「…ありがとう、キオナ。ルシアンさんも」
親と言うのがどんなのかはエインには分からないが、少なくとも前と違って支えてくれる仲間がいることに何処となく胸の内が熱くなるエインだった。
「ところでその子は名前とかあるの?ないと不便じゃない?」
思えば誕生して間もなく、名前なども命名していなかったことをトランから指摘されて全員が、あっ…と言う顔になる。
「エイン、あなたが親ですので名前を付けてあげてください」
「それも親の役目なの?」
実感が沸かないだろうが、名付け親と言う単語があるようにも自身の名前とは親から最初に貰う贈り物の一つであるため、キオナはハーピーの子の命名をエインに一任するのだった。
「えっと…君は…」
「あう?」
思えば命名するのは初めてであるためどうしようかとハーピーの子と面と向かうエイン。
「名付ける時は相手の特徴や見た目から連想すれば良いですよ」
ロボやフォークの名前もキオナが命名しており、そんな彼女からアドバイスを受けたエインは更にジッとハーピーの子を見つめる。特徴として生まれたばかりの無邪気なプニプニした顔つき、それ以外だと癖のある真っ赤な髪と羽根だった。
「くぁ〜…」
何をしているのか分からないと言ったとぼけた顔をしていたハーピーの子は大きくあくびをするのだが、その際に先程見せた無邪気な顔に似合わない鋭い歯が口の中で覗かせる。
「何だかトウガランを間違って食べた時の僕みたい」
「トウガラン…香辛料にも使われるあの『炎の悪魔』のことですか」
トウガランとはトウガラシのような実のことで、とても辛い食材として知られており食べると人によってはあまりの辛さに表情が悪魔のようになり、体内の魔力と結び付いて本人の意思とは関係なく口から火魔法が出てしまうため『炎の悪魔』と異名が付けられているのだ。
幼少期に捨てられたエインはオノーダと共に過ごしていたある日、間違ってトウガランを食べてしまい火魔法は出なかったものの表情は見たことないほどの形相になっていたと言う。
「この子の髪と羽根はトウガランとよく似た色をしてる。それにフタバサウルスに飛び掛かった時の顔は間違って食べた時の僕の顔みたい」
確かにトウガラシのように見ているだけで激しい辛さが伝わってくるような真っ赤な髪と羽根をしているし、襲おうとした時の表情は何処となく悪魔のようにも見えただろう。
「じゃあ君はトウガランだから……トウガは?」
「良いんじゃないでしょうか」
こうしてハーピーの子にはエインが名付け親として『トウガ』と命名されるのだった。
「今日から君はトウガだよ!」
「う〜…う〜!」
最初はよく分からないいと言った様子のトウガだが微笑みかけてくるエインを見て吊られるようにニヘと笑みを零した。
「じゃあ、この子達はなんて名前にする?」
名付けるのを見ていたリリーはベビーマイアサウラやベビーフタバサウルス、更にはロボの側にいるベビードリプトサウルスやディプロドクスの子供達の名前はどうするのかと訊ねる。
「フタバサウルスの方は名前は僕が付けても良いんですか?」
フタバサウルスだけはマーセルと共に過ごしていたため、自身が命名しても良いのかと訊ねるエイン。
「そうね…『パルカ』は私達人魚族が命名した種族名だし、その子はまだ生まれたばかりで名前がないから…何かの縁だし、あなたに付けて貰おうかしら」
マーセルは少し考えた後にそのままエインに一任することにした。
「フタバサウルスだから…『タバサ』なんてどう?」
「タバサ…可愛い名前を付けて貰ったねタバサ」
『キュウ!』
『タバサ』と命名されたことを自分のことのように喜ばしく思いながらマーセルはタバサの頭を撫でる。
「じゃあじゃあ!この子は?」
「えっと…マイアサウラだから…」
今度はリリーが無邪気に話しかけてきたので、エインは種類としての名前の『マイアサウラ』を口にしながら考え込む。
「じゃあ、マイちゃんだ!」
『キュウ!キュウ!』
エインが名前を思い付く前にリリーが『マイちゃん』と命名し、彼女はマイと共にその場で跳ねたり走ったりして喜び合っていた。
「ドリプトサウルスの方は…大きな爪を持ってる子達はハサミみたいな感じだから『カット』と『シザー』にしよう。脚の速い方は『ファースト』で一番小さな子は『リトル』にしよう」
ベビードリプトサウルスの中で特に前脚が発達した二頭はハサミを彷彿させたために『カット』と『シザー』と命名され、四頭の中で素早いのは『ファースト』で最後に小柄な個体は『リトル』と名付けられた。
「ディプロドクスの方はちょうど身体の大きさが背の順だから…『エル』、『エム』、『エス』…えっと、一番大きいのは『ルル』!」
「服のサイズじゃん」
「『ルル』だけ多分イニシャルから取ってるよね」
ディプロドクスの子供達は身体の大きさがサイズ区分になっているためそれに見合った命名をされた。その中でも身体が一番大きい体格をしたディプロドクスは頭文字から『ルル』と名付けられた。
『『ケケケ…』』
「う〜…」
「トウガ、どうしたの?」
命名が一段落するとトウガは空を飛び交うズンガリプテルス達を見上げながら自身の腕の翼をジッと見つめていた。
「うっ!う〜…う〜…!?」
「何してるの?」
ジャンプしたかと思えば腕の翼を一生懸命動かしていた。
「う〜…うっ…!?」
しかし腕を動かすのに疲れてしまい、やがてトウガは地面に尻餅をついてしまった。
「空を飛ぼうとしているのよ。空を飛ぶモンスターを見てハーピーの本能を刺激したのね」
「もう飛ぼうとしているのか。さすがはハーピーだ」
腕に翼を持つだけあってズンガリプテルスを見て空を飛ぼうとするなんて既に本能が備わっているようだ。
「これからあなたはそのハーピー…トウガの親になったの。これからはあなたが彼女をお世話することになるのよ」
「お世話…」
「良し悪しを教えたり、食べ物をあげたり、自分で自分のことが出来るようになるまで守る必要があるのよ」
やはりエインには実感が沸かなかったがアレッサが具体的にどうすれば良いかアドバイスをした。
「まあ、既に狩猟本能が目覚めているから最悪自分で獲ってきそうだけどな」
「でもさっきタバサちゃんを食べようとしたのよ。それに良し悪しが分からないってことは逆に捕食者に挑んで返り討ちに遭うんじゃ」
最初はタバサを襲おうとしていたため既に自分で獲物を捕ろうとする感覚はあるのではとドランは提言するも、完全に向こう見ずなため最悪仲間を襲う危険性や逆に捕食される危険性があるため無差別に襲わせるのはやはり良くないとモルマが指摘した。
「だからエインが色々教える必要があるんだ。どれを食べて良いとか悪いとかな」
「じゃあ、樹の実とかを与えれば良いんじゃ…」
相手を襲わないようにするなら樹の実だけ与えれば何も問題ないのではと考えるもマルスは「それなら良いんだがな」と言う顔をしていた。
「俺もお袋から野菜も食べろとか言われてたが、獣人族も人間族も雑食だから栄養をバランスよく摂らないとダメなんだ」
「栄養?」
「あらゆる人間を始め生き物が生きるのに必要な源であり、その肉体を構成・構築する源でもあるのです。自ら生成することは出来ないので主に食事をすることで得られます。確かにティアや侍女達にも好き嫌いなく、栄養バランスをキチンと摂らないと素晴らしいレディーになれないと言っていましたが…」
「そうさ、ハーピーもまた俺達と同じ雑食であるため樹の実だけと言うのはダメなんだ。せめて少しでも肉類を食わないとダメなんだ」
肉食性の生物種はその名の通り肉だけ食べているかと思われがちだが、獲物となる草食生物の胃袋内にある植物なども共に食べているため一応は栄養のバランスは摂れている。
逆に草食性の生物種は長い腸や複数ある胃袋を駆使して食べた食物を長い時間かけて消化と発酵をし、そこから必要な栄養素を作り出すのだ。
そして雑食性の生物種、これは人間も含まれるのだが肉も植物も食べるためどちらか偏った食べ方…いわゆる偏食は身体に良くないとされるため望ましくない。
「僕は別に肉は食べないけど…ひゃっ!メロルさん…な…何を…くすぐった…!?」
「へぇ〜、だから君はこんなにホッソリしてるんだねぇ」
メロルにいきなり身体を弄られ、くすぐったさに身悶えるエイン。
「確かに野菜は身体に良いけど、少しは肉類も食べないと身体が成長しないわよ。特にハーピーは狩猟本能が強くて、肉食寄りの雑食だからね」
「けど、肉を食べさせると言ってもここのモンスターの肉を与えるの?」
取り敢えずトウガを育てるのなら肉を食べさせる必要があるのは分かったものの、エインは楽園のモンスターの肉を与えて良いのか迷っていた。
その内容はここはマイアサウラや他のモンスターが子育て真っ最中の営巣地だ。下手に肉の味を覚えれば、空腹になった瞬間に気まぐれに襲いでもしたら大変なため、肉を食べさせるにしても何を与えれば良いのかアレッサ達はふと考え込む。
「だったら魚はどう?あれも一応は肉だし、栄養素も同じタンパク質だからね」
ここで声を挙げたのがサンボだった。のんびりとした食いしん坊な雰囲気に違わず、食に関する知識を活用して代案を出してきた。
「そうね。魚ならハーピーも食べるし、有りじゃないかしら」
「じゃあ、魚釣りでもやるの?」
肉の代わりに魚を与えることとなり、獲るには以前海に向かう途中で行った魚釣りをするのかとエインはアレッサに訊ねる。
「じゃあ、あたしの友達に手伝って貰おうかな。おーい!」
それには及ばないとナクアは大声で湖にいる何かを呼び寄せる。するとパシャッと水面で水が跳ねる音がして何かと思い全員が目を凝らした。
『『『キュー、キュー』』』
「あれは…イタチでしょうか」
水面から顔を覗かせたのは見た感じはイタチに似た生き物だった。それも一匹ではなく、十匹近くいてこれまた可愛らしい鳴き声を発していた。
「いいえ、恐らくあれはカワウソかと」
「うん、あれはカワウソだよ。『ニホンカワウソ』って名前だよ」
その正体はロイルの言う通りただのイタチではなく、同じイタチの仲間であるカワウソであり、しかもエインはそのカワウソがかつて日本の全国の川で見られた『ニホンカワウソ』だと付け加えた。
「ニホン…?と言うのが何か知りませんが、まあ、カワウソなのは間違いないですね」
当然『日本』と言う国は聞いたことがないためロイルは意味が分からず首を傾げるもカワウソと言うのは肯定するのだった。
「しかしこのカワウソがどうしたと言うのですか」
「この子達は泳ぐの得意で魚やカニなんかを獲ってくれるんだよ」
水の中で生活するだけあって魚捕りの名人であり、このニホンカワウソ達ならば魚を獲るぐらいは訳ないとナクアはキオナに説明した。
「ちょっと待って。そう言えばあたしらが地下に閉じ込められてた時にあんたどうしてあんな所から出てきたのよ」
それは白いデイノスクスに追われて行き止まりに追い詰められ、出口が水中にしかないと困り果てていた時にそこからナクアが泳いで出てきたのだが、トランは今思えば何故泳いで現れたのか不思議だった。
「それにあんた何でこのカワウソを呼べれたのよ」
「あー、そう言えば言ってなかったっけ?」
更に気になったのがこのニホンカワウソを呼べれた理由だったのだが、ナクアは思い出したようにスカートのお尻辺りをゴソゴソとしており暫くすると腰辺りから長い何かが出てきた。
「それ…尻尾?カワウソと同じ…?」
「それにその頭の耳は…」
ナクアの腰からは滑らかな毛に覆われた長い尻尾が生えていて、そしていつの間にか彼女の頭の上には小さな丸い獣耳があったのだが、まるでニホンカワウソと同じ形状をしていたのだ。
「あたしね、カワウソの獣人のハーフなの」
「「「ええええっ!?」」」
照れくさそうに頬を掻きながらナクアは自身が半獣人、それもカワウソの獣人だと明かしたことにほぼ全員が驚いていた。
「ナクアちゃん…獣人だったの?」
「何でもおばあちゃんが獣人族だったみたいでね。隔世遺伝みたいなのでね」
「どうりで生魚をよく食べると思ってたけど、そう言うことだったのね」
特に同じキプロニアス王国出身の面々は驚いてしまうも、それならそれで食堂で生魚をよく食べたり、泳いで地底湖に来れた上にニホンカワウソとも仲良くなれるなど色々と腑に落ちることがあった。
「たからさ、あたし達が魚を獲って来てあげようか?」
「じゃあ、お願いしようかな」
「ちょっと待った!それで良いの?」
このままナクアとニホンカワウソに魚をお願いしようとしたエインだがナミアが小さな身体を大の字に広げて止めに入ってくる。
「どう言うこと?」
「あんたが親になったんだから人任せはどうかと思うの。それにあの時はたまたまナクアが来てくれたから助かったけど、もしそうじゃなかったらあんたらあのブラッディダイルに食べられてたわよ」
イタズラ者のナクアだがここぞとばかりに痛い所を突いてくる。
「あたしとしてはあんたは泳げた方が良いと思うの。それでその子のためにも魚を獲ってくるのよ」
「…そもそもあなた達のせいで私達はあんな思いをしたのですけども…一理ありますね」
あんな目に遭ったとは言え、ナミアの言う通り泳げを会得すれば大変な思いをしないだろうとキオナは考える。
「この際ですし、泳ぎの練習しましょう。エイン」
自身が泳げないこともあるし、共に泳ぎをマスターしようとエインに持ち掛けるキオナ。
「大丈夫かな…水浴びはたまにするけど、泳ぐのは…」
「それよそれ!水浴びは毎日しなさいよ!あんたら妙に臭うのよ!」
不安に思うエインだが、ナミアはそれとは別にエイン達の匂いを気にしていた。
「そっちがメインじゃないの…って、言いたいけど確かに最近はお風呂入れてないかも」
「水にはたっぷり浸かったんだけどねぇ…」
指摘されて気付いたが最近はまともに入浴、もしくはキチンと身体を洗えていなかったために、さすがに匂いがキツくなっていることに女子達は気にし始める。
「せっかくだから私達も水浴びする?」
「それには賛成でござるが、男達の目線がな」
ボーイッシュなラピスもさすがに匂いは気になるらしく水浴びには賛成するが、ハヤテの言うように今は男も一緒にいてこの場で裸になるのもどうかと不安がる。
「それなら問題ないわ。水に入るための服を用意したわよ」
イタズラ者と言うだけあってか、水に入ることをある程度予測してたナミアは仲間の妖精達に合図する。すると妖精達は下着のような形状の衣服をその場に落としていく。
「これ…下着?」
「いいえ、これは水の中に入るために作られた衣服の一つである『水着』ですわ」
最初はやはり下着かと思われるがロイルはそれらの衣類が水着だとすぐに言い当てた。
「あたしらたまに商人とかにイタズラして、そいつらが落とした物をたまに失敬してたのよ。これはその内の一つよ」
「そう言えば元の世界ではたまに変な仕掛けやら罠があって俺らも酷い目にあったな」
ナミアの話を聞いて、キャラバンの護衛をしていたドランは思い出したように呟く。
「とにかくあたしらが服を綺麗にするから、それ着て泳ぎの練習したら?」
「服を…脱ぐんですか?恥ずかしい…」
下着のような見た目であるため一度全部脱ぐ必要があると聞いて流石のキオナや他の女子達も恥ずかしそうにする。
「でも匂いがしたままではレディーとしては由々しきことですわ。それに水着は下着と違って水に強く、作りがしっかりとしているので透ける心配もないですわ」
「…そうね、ここは何事も経験ね」
ロイルのフォローと後押しもあり、女子てしては綺麗な方が良いと考え水着に着替えることにする。
「オイラは別にスッポンポンでも良いけどなぁ〜」
そんな恥ずかしがる女子を尻目にレーヌだけは既にほとんど脱いで肌着状態になっており、そのまま肌着すらも脱いで着痩せしたスレンダーな身体のラインとヘソを男子の視線がある中で堂々と見せてくる。
「って、あんたは潔過ぎ!?ここで脱ぐんじゃないわよ!?」
「エイン!?見ちゃダメですからね!?」
危うく全部脱いで胸まで見えそうになった所でトランとキオナがレーヌを止めに入り、潔い姿を見て恥じらいも躊躇いも消え失せたのか着替えるためにレーヌの腕を引いて岩陰の方へと駆け込んで行くのだった。




