不遇の騎士団
今後も本作を宜しくお願いします。
あたし達が一昨日の夜に受けたアンデットからの襲撃に関する情報収集の為の呼び出しの為に訪れたオストブルク第三騎士団副団長のライーザさん、あたし達はライーザさんの案内の下ファレノプシスからオストブルク第三騎士団の詰所へと移動した。
第三騎士団の詰所は昨日あたし達が入場した門とは反対の位置にある門の近くにあったけど、その規模は騎士団が使用していると言う割には小さくしかも壁面に至っては所々が剥がれてしまっていると言う状況だった。
「ここがオストブルク第三騎士団の詰所、ですか?」
新編された騎士団の詰所としてはあまりに痛みが目立つ外見を目にしたあたしは思わずそう呟き、それを聞いたライーザさんは少し陰のある微笑を浮かべながら口を開いた。
「お恥ずかしい話ですがここが我がオストブルク第三騎士団の詰所ですわ、ここは元々リッサの町の自警団が使用していた施設でしたの、自警団の規模が大きくなった為自警団は新しく作られた詰所へ移り、新編間も無く規模も小さい我がオストブルク第三騎士団が間借りして使わせて頂いておりますの、所でリリカさん、この騎士団創立の経緯についてどこまで御存知かしら?」
「……それは、その、あ、あらまし位なら、」
詰所の事についてくれていた説明してライーザさんは陰の浮かんだ表情のままあたしに問いかけ、あたしが口ごもりながら答えると寂しげに微笑いながら言葉を続けた。
「……現在オストブルク第三騎士団に所属しているのは騎士団長であるマリーカ・フォン・オストブルク様と私の他には騎士見習いが三名となっておりますわ、ですから恥ずかしながらこの規模の施設ですら持て余していると言うのが現状ですの」
ライーザさんはそう言いながらドアを開けるとあたし達に入ってくる様促し、あたし達はそれに従って詰所の中へと入った。
詰所の中は傷みの目立つ外見からは意外に思える程綺麗に整えられていて、その様子を目にした一美は感嘆の表情を浮かべながら口を開いた。
「しっかりと整えられていますわね、少人数で持て余し気味とのお言葉でしたが、とてもそうは思えませんわ」
「それは嬉しい言葉ですわね、皆喜びますわ」
一美の言葉を耳にしたライーザさんは綻んだ表情を浮かべながら言葉を発し、その後に少し恥ずかしそうに微笑みながら言葉を続けた。
「詰所の清掃では騎士見習いの皆様だけでは手が足りずマリーカ様や私にマリーカ様お付きのメイドの方々も加わって清掃していますの、少々外見が綻んでいようともせめて内部は騎士団として恥ずかしく無いように努めておりますの」
「素晴らしい心意気ですね」
「ああ、中々良い心掛けだな」
ライーザさんの言葉を聞いた蓮華と信姫が清々しい微笑と共に声をあげ、ライーザさんが誇らしげに微笑みながら一礼しているとライーザさんと同じ様な造りの鎧に身を包んだ金髪の三つ編みお下げと鳶色の瞳のあどけない雰囲気の少女姿を現した。
「あっライーザせんぱ……っじなくて……副団長、清掃終わりました、今訓練場で鍛練の準備をしています」
「はい、分かりましたわ、アリーシャさん、私と団長は暫くこの方々とお話がありますので、暫くは皆で素振りをしておきなさい」
少女、アリーシャさんの報告を受けたライーザさんは少し苦笑しながら今後の方針を告げ、アリーシャさんは頷いた後にあたし達に向けて丁寧に一礼しながら口を開いた。
「オストブルク第三騎士団騎士見習いのアリーシャ・フォン・リーゼンダールと申します、お騒がせして申し訳ありませんでした」
「ルーキーハンターのリリカです、お気になさらないで下さいアリーシャさん」
アリーシャさんの言葉を受けたあたしが一礼しながら応じた後に蓮華達も丁寧に一礼しながら自己紹介を行い、あたし達の自己紹介を受けたアリーシャさんは笑顔でペコリッともう一度一礼してから駆け出し、あたしが笑顔でその背中を見送っていると蓮華が怪訝そうな面持ちになりながらライーザさんに向けて口を開いた。
「ライーザ様、先程の方が騎士見習いとの事でしたが、少々、その……」
「……驚きましたでしょう、騎士見習いにしてはあまりに華奢で」
蓮華が言葉の途中で口ごもってしまうとライーザさんは陰のある微笑と共に口を開き、その言葉を受けた蓮華が躊躇いがちに頷くと寂しげな笑みと共に言葉を続けた。
「……無理もありませんわ、アリーシャさんはリーゼンダール伯爵家の御令嬢で、王立魔導院でマリーカ様や私の後輩をしておりましたの、学院には騎士課程もありましたけどアリーシャさんは騎士課程は選択してありませんでしたから騎士団での生活はここが初めてですわ」
「そりよあ、ちょっと無茶過ぎねえか、魔法の才能があるにしても未経験の伯爵家の御令嬢を騎士見習いにしちまうなんて」
「し、信姫」
「構いませんわ、リリカさん、信姫さんの仰る通りですもの」
ライーザさんの説明を聞いた信姫は思いっきり顔をしかめながら呟き、それを聞いたあたしは慌てて信姫に声をかけるとライーザさんは寂しげな笑みと共にあたしの言葉を遮り、更に言葉を続けた。
「……現在この騎士団にいる騎士見習いはアリーシャさんの他にララサーバル伯爵家御令嬢のリリア・フォン・ララサーバルさんにクライスト伯爵家御令嬢のティアナ・フォン・クライストさん、御二方はマリーカ様と私の同期生でしたの、そして御二方も騎士課程の経験はございませんわ、この御二方とアリーシャさんは学院時代とても懇意にさせて頂いておりましたの……だからこそ、皆様は騎士見習いに任じられたのでしょう」
淡々と言葉を続けていたライーザさんの口調は最後には絞り出す様な口調になってしまい、それを聞いたあたしは躊躇いながら口を開いた。
「……それじゃあ、アリーシャさん達がこの騎士団に騎士見習いとして配属させられたのって」
「……ええ、あの方々がこの騎士団に配属されたのはマリーカ様と懇意にしていた事、より正確に言うならばあの卑劣な断罪の際にマリーカ様を擁護しようとした事に関する懲罰ですわ」
あたしの躊躇いながらの問いかけを受けたライーザさんは苦虫を噛み潰した様に顔をしかめさせながら答え、あたしが逆ハーメンバーへの評価を零どころかマイナスにまで駄々下がりさせながらその言葉を聞いていると、言い終えたライーザさんは自嘲する様な笑みと共に言葉を重ねた。
「……長々と要らぬ話をしてしまいましたわね、ごめんなさい、こちらにどうぞ」
ライーザさんはそう言うとあたし達を促して歩き始め、あたし達は無言でライーザさんに続いて詰所の中を進んで行った。
ライーザさんに案内されて訪れたオストブルク第三騎士団、その内情はあたしの想像を遥かに凌駕する窮状で、あたし達は不遇の騎士団の現状に言葉を思わず喪ってしまっていた……




