第一話 召集令状
その日の【H.P.O.】本部は騒然としていた。
作業中の私語は絶えず、廊下を行き交う者はすれ違った職員に噂を広めた。
昼休みには社内掲示板で大きな話題を呼び、任命式中も静かになる事はなかった。
今日は赤城実総司令官兼局長直属の【A.R.K.】第一隊隊員任命式。
隊員及び役職は何者かがリークしており、長い間話題になり続けた。
そのエリート部隊の副隊長は、赤城直属の【H.P.O.】内最強部隊の副隊長は、戦闘経験ゼロの学生なのだ。
——3日前——
俺は萩谷悠。
何の取り柄もない(はずの)高校2年生だ。
今は3648年10月。
ラオ星軍の猛攻が止んでいる。
だが、それも【A.R.K.】が有効だったので、ほんの一瞬の間作戦会議をしているだけだろう。
また奴らは攻めてくる。
それに備えて【H.P.O.】が結成されたのだ。
そんなことより、3日後は【H.P.O.】の最強部隊・第一隊の隊員任命式だ。
それをテレビで観ることが、今の俺が唯一の楽しみにしていることである。
数十分が経過した。
しかし、相変わらずひm
コンコンコン
? 誰だ??
コンコンコン
俺の思考を遮って、ノックの音がした。
ドアの向こうから「失礼しまーす。萩谷悠さんで合っていますかー?」と男性の声がする。
「はい、そうですが……何か?」
「私、こういう者なのですが」
彼が差し出した名刺には、
[【H.P.O.】五等職員]
と印刷されていた。
は? 【H.P.O.】職員??
ますます謎が深まった表情をする俺をよそに、男性は続けた。
「おめでとうございます」
そう言うと、1枚の赤い紙を差し出し、呼びかける間もなく、彼は足早にどこかへ行ってしまった。
……。
待てよ……赤い紙?
どこかで……そうだ、確か、歴史の教科書で……
……………………………………。
屈んで、思わず落としてしまった紙を拾う。
彼の悪い予感は当たっていた。
「召……集……令……状……」
家の中に戻り、椅子に座って改めて赤紙を読む。
「召集令状 萩谷 悠 殿……」
———
召集令状
萩谷 悠 殿
貴殿を右の職に任ずる
【H.P.O.】第一隊 副隊長
西暦3548年10月14日
【H.P.O.】最高司令官 兼 局長 赤城 実
———
え?
は?
えぇぇ?
副隊長?
俺が?
最強部隊の??
赤紙を、もう一度落としそうになった。
その知らせは、第一隊の隊員たちにも届いていた。
隊長・鶴飼玲人は、(赤城さんに白神さんまで言うんだからまあいいだろ。どのみち部下だし)と心の中でつぶやいた。
赤城実の長女・文美は、「“Fenrir”の操縦者かぁ……」
三条秀貴。
誰も見てはいないが、露骨に嫌な顔をした。
藤井陵。
「学……生……⁉︎」
込山兼。
(実力で抜くまでだ)
三上恒一。
(赤城さんは何を考えているんだ……)
北村翔太。
「氷室さんは拒んでいないんだよな……」
白神夏芽。
「私より10歳も年下の上官? 面白いね」
若尾彰。
「納得できん」
推薦者である赤城実は、「面白い部隊になりそうだ……」と不敵な笑みを浮かべた。




