第四十三話 まだ見ぬ強豪
「1001番と1168番の選手、大闘技台へ」
魔道士の前にまず彼を倒さなくてはな。
「私は空魚族の者。強き者よ、私に勝てるかな?」
彼の破力がじわじわと増幅、俺も後を追うように魔力を増やす。結局第五圏まで開放することになった。
まだまだ居るもんだ、強者が。
「これだから戦いはやめられない」
武器を召喚、今回は盾剣。盾と剣を合体させて使うこともできるが、今回は剣と盾を分離させそれぞれ片手に持つ、よくある基本的な持ち方で戦う。
「いやはや、これ程者がこの世にいるとは。私が世界最強だと思っていたが」
男の所持武器は短剣。スピードタイプか?
「始め!」
試合開始の合図、と同時に彼が消えてしまうほどの速度でこちらに接近、短剣を振りかざす。対して盾で防御。予感的中、彼はスピードタイプか。剣をふるい追い払う。
「これが防がれるのかよ、アンタの体はどんな構造をしているんだ」
しかし早いな。そうだ、威力はあまりないが雷の魔法ならとらえられるのでは。
「ライトニングピアス」
高速の雷魔法が男を襲う。しかし、右手の短剣で雷を絡め取り、振り払って退けた。
「この短剣は特別性でね。苦手の雷をうまく片付けるための工夫を施してあるのさ」
男は笑顔でこちらに武器を向ける。ならばこれならどうだ?
「テンペスト」
先程の雷魔法が千本。
「冗談きつい!」
愚痴を言いながら右方へ高速移動。それを追って俺が動く。
「なっ!」
男以上の速度で近づき、めんを食らった男を盾で弾き飛ばす。
その勢いを殺せず、男はそのまま場外へ。
「じょ、場外! 1001番選手の勝利!」
やれやれといった様子で男は場外からこちらへ高速移動をした。
「もう少しやれると思ったんだがな」
「いやいや、面白い戦いだった」
男と握手を交わし、大闘技台から降りた。
「続きまして――」
その後の試合も順調に消化。目立って強いやつは仮面の二人かな。また空魚族の男みたいなやつが隠れているかもしれないけど。
「1001番、大闘技台へ」
魔道士との戦いか。
ルーナ、しっかり見ておけ。対処法を見せてやる。
「962番対1001番の予定でしたが、962番体調不良につき戦闘不能ということで1001番の勝利となります!」
ああそう……
試合が進み、俺の番。もう準決勝か。
「1001番と1549番の方大闘技台へ」
「ウォーー!」
「ぶっ殺せー!」
客席から歓声、罵声が上がる。
「アンタ強いな。まさかアイツがやられるとは」
空魚族の男のことかな?
「知り合いかい?」
「聞いたことがあるだけよ、強いってな。確かに聞いたとおり強かった、だがアンタはもっと強い」
「俺は赤龍族のアクバ・レイン」
「青龍族と似ているのか?」
「これが全く違う。アイツラは知力特化だな、戦闘は微妙だ」
「で、俺達赤龍族は戦闘特化だ」
アクバの破力を見ればわかる。先程の男より強い、思わず生唾を飲み込んだ。
「見せてやるぜ。赤龍の力を」
今までの獣人達の破力とは迫力が違う。
『グォォーーーン!』
その力の波は観客席にまで及ぶ。しかもこれでも本気ではなさそうだ。
『さてやろう、と言いたいところだが』
『率直に言おう、こんなところでやらねえでもっと広くて暴れられるところでやらねえか? ここじゃ本気で戦えねえ』
確かに俺とアクバが戦ったら会場が木っ端微塵だろう。うーん、非常に嬉しいお誘いだが、目標を優先しなくてはなぁ。そうだな、ダメ元で交渉してみよう。
場外に居る審判を呼ぶ。俺の考えを説明すると彼は納得してくれた。
「一時中断! ターイム!」
審判の男から説明する。
「本来なら一時中断はありえませんが彼らが戦うことで甚大な被害が出る可能性が出てきました。そこで1001番さんが解決できる策を探すとのことなので皆さんお待ち下さい」
とりあえずルーナを呼ぶ。
「というわけなんだ。なにかいい案ある?」
「それならば私に妙案が。少々お待ちください」
そう言うとルーナは仮面の獣人に近づき話しかけた。獣人族の男は驚いてルーナを二度見したがすぐに会話を再開。
話が終わりルーナがこちらへ帰ってくる。
(私が思っていたとおり、彼は麒麟族の王子様でした)
(よくわかったな)
(仮面から突き出たツノが麒麟族のソレなんですよ。珍しい種族ですからわかりやすいですね。それで妹を無茶な話から救おうと動いていたみたいです)
(なるほどなぁ。ああ、ってことは)
(そうです。魔王様とアクバさんが失格になっても問題ありません)
(いいぞ! 素晴らしい策だ!)
(ありがとうございます)
アクバと相談、二人共辞退で話がついた。それを審判に説明。
「1001番と1549番、双方辞退により勝者なし。よって522番が優勝となります!」
イマイチ盛り上がらない会場。それよりもアクバの迫力に皆気圧されている感じだ。
『俺に乗れ、仮面の戦士よ』
大きく飛び、背中の隆起している部分を掴む。
「よし! アクバよ。このまま戦いの場へと赴こう!」
『グォォーーーーン』
「わーっはっは! 行こう、闘争の向こう側へ!」
観客達を置き去りにし俺達はこの場を飛び去った。




