第四十二話 勝ち抜き戦
予選が終わる。ぱっと見で有力そうなのは長髪の仮面の剣士、魔力総量が多そうで髪がモサモサな仮面の魔道士、大きな体躯に破力総量が多そうな仮面の獣人。
仮面が多いな、俺もそうだけど。
と言ってもまだわからない。簡単に終わった試合や、明らかに本気を出してないやつも中にはいる。全員要注意だな。
「皆さんお疲れ様でした。予選はこれにて終了となります。今からお昼休憩とします、勝ち上がった方は午後の部が始まるまでにこちらにお集まり下さい」
ほとんどの者がため息混じりに引き上げていく。約1600人中16人だからな、仕方ない。
「あ、あの。少しお話よろしいですか」
長髪の仮面の剣士に話しかけられる。
「いいとも」
スッと近づき耳打ちする長髪の剣士。
(気づきませんでしたか?)
(ん?)
あ~、声でわかった。ルーナか。
(今わかったよ。ルーナも参加していたのか)
(急な参加でしたから前もってお話できなかったんです。申し訳ありませんでした)
(いや気にしなくていい)
(ありがとうございます。魔王様はもちろん、他強者があらわれるであろうこの大会、私も参加したくなってしまって)
(ハッハッハ、魔族っぽくていいんじゃないか?)
(女ですけどよくよく考えたら変装して男を名乗れば大丈夫だなーと。あ、この後はこちらでお店の手配をしております。会場の外でお待ちしております)
ルーナが一歩下がる。
「では試合、楽しみにしております」
「こちらこそ」
ルーナは丁寧にお辞儀をし、会場から出ていった。俺も一旦出るか。
ゆっくり歩きながら会場から出ると、仮面を外し着替えた姿でルーナが待っていた。
「お疲れ様でした、お昼食べるところを用意してあります。ついてきてください」
「ふむ」
後ろについて歩く。それにしても人が多い。収穫祭、大盛況だな。
予約をとっていた店で昼食。食事中ルーナが小声で話しかけてきた。
(魔王様は麺類が好きなんですね。アリスの家でもよく頼んでいたみたいですし)
(ああ、うまいものは豪快に食べたくなるんだよね。それに適したかたちが麺なわけだ。しっかり噛まないと体に悪いと言われたこともあるが)
(ほうほう)
食事後会場へ戻る。
「お姫様どうなっちゃうのかな~」
客席から声が聞こえる。午後からはお客さんも入っているようだ。会場は円形型闘技場になっており集客数は3万人くらい入りそうかな? とにかくいっぱい入る。
「参加者の方々はこちらでくつろいでいてください」
「番号を呼ばれたら大闘技台にお登りください」
「もう少しお待ち下さいね」
少々手持ち無沙汰となり観客席を見渡す。一際豪華な客席に王と王妃、従者にフロイアがいることがわかった。
フロイアは浮かぬ表情だな。無理もない。
それからしばらく経ってから司会役が会場の客へ向け試合開始の口上を述べる。
「皆さんおまたせしました。これより獣王戦を開始します」
「38番と129番の方は大闘技台ヘ」
試合は順調に進む。どちらかが圧倒的に強いという状況が多いな。
「813番と962番の選手は大闘技台へ」
ルーナと仮面の魔道士との戦いか面白そうだ。
「始め!」
ルーナは強敵と見て魔力を全開放。わかっているな。対して魔道士も魔力を開放、ルーナより少々少ないくらいか。
魔道士は遠距離から炎の魔法を放つ。ルーナはこれを軽くかわした。
「バカンッ」
かわした先で急に爆発音、数メートル吹き飛ばされた。
(やるわね、しかしアレは何の魔法だろう)
(魔力で空気を高圧縮、解き放つことで爆発が起きるわけだ。面白い発想だな。一応風魔法になるのだろうか、見たことも聞いたこともない魔法だが)
ちらりと魔道士の男がこちらを見た。
(やっぱりあの人は魔王様っぽいですね。私達の戦いを余裕で見てるし。しかもなんかうなずいちゃってますね、一回見ただけでこの魔法がどんなものかバレちゃってる感じですか。小遣い稼ぎで参加しましたがとんでもない方がいらっしゃいましたね)
「よそ見なんて余裕じゃない!」
魔道士に突っ込むルーナ。しかしまたしても爆発、吹き飛ばされる。どこで爆発するかわからない、魔法が見えない、これは厄介な相手だな。
俺が戦いたいくらいだ。
「グゥッ!」
更に次の爆発が続け様に起き吹き飛ばされる。それが繰り返され、遂には場外まで運ばれてしまいルーナは負け。
「ふぅ、参ったわ。最初は勝てると思ってたけど慢心は良くないわね」
「いえいえ、強さならアナタのほうが上です。セコイ技で勝ったに過ぎませんよ」
「勝者962番!」
なかなか面白い試合だった。おっと、次の次で俺と彼との試合じゃないか、いいね。
「負けてしまいました」
「厄介な魔法だったな」
「アレはどんな魔法だったんでしょう」
軽く説明する。うなずくルーナ。
「そんな魔法だったとは。全く気づきませんでした」
「外から冷静に見ないと分かりづらいだろうな」
「やはり魔王様は凄いですね」
笑顔で俺を褒めるルーナ。悪い気はしない。
「ははは、どちらにせよ次の次の相手はあの魔道士だ。しっかり試合を見ておくといい」
「はい、見させていただきます」




