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第三十話 海が好き

「海よ! 夏はやっぱり海よ! もう一回!」


「メインはお仕事だけどね。今日は遊べる、後は仕事が終ってから次の日は自由に遊び放題」


「そうなのよねぇ」


 今回はギルドの依頼で海へ来ていた。


「ここのギルドはっと」


 ギルドを見つけ中に入る。


「いらっしゃい。いやー、人手が足りなくてね。助かるよ」


 この時期は一年のうち一番お客さんが来る。冒険者達も遊びたいから常に人手不足とのことだ。


「3日間森から魔物が出てきたら退治。交代制で君達は朝から夕方の部だね。明日からよろしくー」


 ギルドの宿舎に荷物を置き、着替えて早速海へ突入。


「泳ぐぞー!」


 走って海の中へ。多数いるお客さんの中に突っ込んでいくイリス。どこにいるかわからなくなった。


「本当に海が好きね」


「カレンは泳がないのか?」


「ええ、明日から仕事だからやめておこうかと」


「なるほど」


「終わってからでも泳げるしね」


 俺も今日は泳ぎの練習だけにしておこう。それぞれ思い思いに時間を過ごし、日が沈み夜となる。


「ハー泳いだわ。御飯も美味しい」


 ギルド指定のお店で夕飯。海に近いということで魚料理が多かった。


「いつもとは違う料理が多いから面白いわね」


「生の海水魚なんて海の近くでしか食べられないからね」


「どうだい坊主共。海の料理は」


 店長さんが話しかけてきた。


「美味しいですね、田舎や街じゃこんなに新鮮なお魚は食べられませんよ」


「そうだろそうだろ。たくさん食っていってくれ」


 そう言うと厨房に入り軽快に鍋をふるい始める。


「こりゃ仕事がなきゃパーフェクトな旅行だったわね」


「仕事がメインでしょ」


 朝、指定の場所へと向かう。


「おつかれさまです。交代します」


「おーう。夜勤はやっぱきついぜ。後は頼んだ」


 数人の冒険者達は宿舎へ帰っていった。


「さて、お仕事。しっかりやろう」


 今回は非常に難易度が低い仕事。滅多に魔獣があらわれない上に、たとえ出現してもかなり弱い。仕事が簡単で海も近い! ってことで人気が出そうなのだが実際はそうでもない。


「暇ね」


「暇ってことはいいことだよ」


「遊んでいる人達を後ろに仕事、もしかしてこれ精神的にきついんじゃ? さらに暇だし」


「お姉ちゃんが決めたんじゃなかったっけ?」


「ハイ、そうです」


 仕事を終え昨日と同じお店へ。


「疲れたわ~。魔獣が0匹とか違う意味できつかったわ」


「ハッハッハ、楽すぎてもきついよね」


 一緒に仕事をしていた若い冒険者が話しかけてきた。


「ただ海の方は大変らしいぞ」


「何かあったんですか?」


「ああ、海水浴場は大丈夫。漁場に最近大きな魔獣があらわれるらしい」


「漁場ですか」


「そっちは私達じゃどうしようもないわね」


 うーん、海か。雰囲気から察するに結構な被害が出てそうだな。詳しく聞いたところ、小島がいくつかあって、ここから一番遠い小島付近にあらわれるということだ。

 後で調べてみるか。


「そういうことだ。海ではな、船持ってないと話にならないし」


 皆が寝静まったのを見計らって変装、海へと向かう。小島へは巨人の王冠(テュポーンフォーム)で巨人化し泳いで渡った。

 目的の小島に到着、眺めのよさそうな場所をみつけ魔獣を探した。


「ん? 海で何かが発光したな、薄っすらと巨体も見える。アレかな」


 じっくり観察すると発光の正体は魔獣の一部が光ったものだとわかった。


「さてどうするかな」


 どうするか考えていると魔獣の近くに船が近づいていっている。気づいていないか。


「ヤバイかな」


 飛び出そうとしたが、魔獣が船から逃げた。


「おや、もしかして」


 その後も何度か船が来たが襲う気配はなかった。


「なるほど。暴れまわる魔獣というわけではないか。もしかしたら魔獣ではないかもな。まあ、この際どちらでもいいか」


 敵意がなくとも巨体というだけでも恐ろしく見られるものだ。なんだか昔の俺と似ているな。

 巨人の王冠を使用。魔獣を手ですくい、船が来そうにない小島まで運んだ。


「ここなら良さそうか。それではな」


 魔獣を海に放し、俺は宿舎へと帰った。

 翌日、食堂で朝食。


「店長、良かったな。魔獣は居なくなったとよ」


「聞いたぜ。これで旨い魚が食べ放題だ」


「だが巨人が出現したって話だよな」


「ああ、漁師の話だと巨人が捕まえて食べちまったって話だ」


 あちゃー、見られていたか。そうは言ってもアレだけの巨体を運ぶ方法は他になかったしな、仕方ない。まあ、その巨人は俺だし後は大丈夫だろう。

 食べたってのが事実と違うところだけど。


「さーて仕事に行きましょ」


 3日間のギルドの依頼を終わらせイリスが愚痴る。


「海水浴客を見ながらの仕事、地獄だったわ。来年は普通に遊びに来ましょ」


 魔獣、巨人騒ぎも一段落。魔獣はあれから出現していないようだな。


「今日一日遊びまくってスッキリするぞ!」


 海に飛び出していくイリスの背中を二人で眺める。

 お昼ごろ。


「足りない足りない! もっと遊びたい!」


 結局それだけでは物足りないということでもう一日宿に泊まって遊びまくることになった。


「遊んだ遊んだ! 満足したよ!」


「それじゃ帰りましょ」


 三人で馬車に乗る。賑やかな海水浴場を背に馬車は街道を走り出した。

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