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第十五話 学園七不思議

「ねえねえレイ君、知ってる?」


 同じクラスの子で噂好きの女の子、メリア。


「この学園には七不思議ってのがあるんだよ~」


 この学園の不思議は知らないけど学校、学園で起きた恐怖体験、不思議な出来事などをつづった本はよくみかけたな。


「へ~、七不思議?」


「そそ、七不思議。例えばトイレの恐怖の魔王様とか、恐怖の魔王様の標本があらわれて動くとか」


 待って待って。何でもかんでも俺の名前つければいいてっもんじゃないでしょ。まあ、本でも似たようなものだったけどさ。


「それで、お願いがあるんだけど七不思議の取材したいから付き合ってくれない? レイ君強いから護衛役を頼みたいんだ」


 彼女は新聞部だったな。なるほど、格好のネタではあるな。


「すでにイリスとラムファにはOK取ってある。休み前に行く予定なんだ、時間があったらお願い!」


 ラムファはメリアと仲がいい友達。そうだな、イリスも居るし付き合ってみるか。


「いいとも、いつ動く?」


「明日の夜1時集合だけどいいかな?」


「わかった」


 次の日。多くの者が眠りについている深夜、メリアの家の前で七不思議攻略班が集合する。


「よ~し、皆集まったね!」


(ん~、レイ君落ち着いていて良い人だけど大丈夫かな)


(護衛役は多いほうがいいでしょ。イリス以外にもうひとりは欲しいところ。ルーナを呼べれば一番なんだけど、王女様を深夜に連れ回すのはアレだし、基本的に男子は危険。となるとレイ君しかいないのよ。もしもの場合はイリスを投げつければいいっしょ)


(それもそうね)


「学校へシュッパーツ!」


 深夜だが街灯がついているため学園までの道中は明るい。眠らない街ドラグリート、他の街にはない魅力の一つだ。


 学園前に到着。ランタンに火を灯して校内に侵入する。

 なんとも雰囲気があるというか、趣きがあるというか。普段明るくざわついている廊下がランタンの光で不気味に照らし出される。これだけでも少し背筋が冷たくなるな。


 談笑しながら移動をし学園の先生専用トイレの前に到着。


「ここに恐怖の魔王様の鏡がありま~す」


「決まった時間に鏡を見ると自分ではなく魔王様がうつしだされるという噂。時間の2時までもうちょいね」


 時間になって一斉に鏡を見る。魔王の姿はうつしだされなかった。


「ハズレね。次行こ~」


 基本的に七不思議はデマであることが多いとか。今回の鏡の噂は作り話だったというわけだ。


「はいはーい。お次はココ、学園長室の魔王様。深夜歴代校長の自画像画を見るとすべて魔王様に変わっていて涙を流しているという。泣いているのはその昔ここの学生を救えなかったことがあるからだとか」


 むむ、珍しく良いエピソード? ただ俺が魔王だったときこの学園はなかったから作り話確定だな。あ、でも魔王の優しさが伝わる良い話なんで残しておいてもいいと思う。


「どの絵も変わらないなー。そもそも恐怖の魔王様がそんなことで泣くわけないよねー」


 うん、皆が俺に悪いイメージを持っているのはわかってるさ。


「まだまだいくよー!」


 その後いくつかの七不思議を試したが何も起こらなかった。

 そして最後の七不思議。


「これで最後だね、恐怖の魔王666階段、全段上がると魔王様があらわれる」


 半分登ると踊り場、もう半分登ると2階。学校によくある標準的な階段だな。


「とりあえず登ってみよう」


 3階まで上がると階段はなくなった。学園は3階建てなので普通だ。


「あ~あ、全部ハズレ。なにも無かったかー」


 全部身に覚えがないしあっても困るけどね。


「よし帰ろっか」


『タ……』


「ん?」


『タス……ケ』


「ちょっと、どこからか声が聞こえるよ!?」


「キャー!」


 ラムファが悲鳴を上げ、下の階へと逃げだした。メリアをイリスに任せてパニックに陥ったラムファの跡を追いかける。一階につくとしゃがんで震えるラムファ。


「で、出た!」


 確かに声が聞こえたな。『タスケテ』か。イリス達も上階から下に降りてきた。


「に、逃げましょ! ここにいたら危険かも!」


 メリアも冷静さを欠いているな、とりあえず校内から脱出しよう。


「きっと第8の不思議よ。聞いたことがあるわ、7つ全部試した後に8つ目があらわれることがあるって!」


 まだなんとも言えないが一番近そうな答えをつぶやく。


「多分精霊じゃないかな?」


 実際に怪異が起こることがあった。その場合詳しく調べると精霊の仕業であることが多いそうだ。


「後は俺が引き受けるよ、イリス二人を送ってあげて」


 怖がっている二人を送るイリス。

 このまま放置しておくと俺の悪名が増えることになるだろう。解決するしかないな。

 先程の声が聞こえた場所まで戻る。周りを見渡しあるものを見つけ俺はニヤリとした。


「やはりそうか。精霊だな」


 小さな光の塊が帯を引くように空中を動いていた。


「迷子かい? 精霊さん」


『タス……ケテ……』


「ここから出られなくなった? 窓を開けようか?」


『チガウ、ウシロダ!』


 後ろを振り返るとそこには上半身しかない人型の物体がいた。こちらへ這いずり向かってきた。


「本物か、こいつは魔獣だな」


 腐食した体、いわゆるゾンビだな、魔獣だ。魔獣ならやることは一つ、退治だ。魔力を放出、苦手だが神聖魔法を放つとゾンビは消滅した。


『アリガトウ』


 精霊に聞いたところ魔獣に追いかけられここまで来てしまったとのことだった。窓を開け精霊を外へ逃した。

 ゾンビの方と出会っていたら大騒ぎになっていたかもな、見慣れてないと見た目が怖いからね。


 休み明けの月曜日、メリアにこのことを伝えた。ちょっとやつれていたが起こったことを話すと安堵の笑みを浮かべた。


「そっかー、それなら大丈夫ね。もし魔王様だったら私はもう終わりだと思ってたよ~」


 ラムファにも伝え、同じく安堵の表情を浮かべる。

 ふふふ、これで解決だな。また一つ魔王の悪行が減ったか。


 次の日、七不思議についての新聞が張り出されていた。


「7つの不思議を乗り越えたどり着いたその先にはなんと8つ目が待っていた! やはり魔王様が関与していた!?」


 あっれー? 解決したはずだけど。教室でメリアにそのことを尋ねると周りを気にしながら耳打ちしてきた。


(何もなかったじゃ面白くないでしょ? 盛り上がり重視で!)


 いつの日か彼女にお仕置きをする日が来ないことを願う俺だった。

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