第十四話 魔王の力
ルーナから離れ、魔獣の元へ向かう。
押し倒され、引き千切られた大量の樹木の中、エレメンタルマスターと対峙している。
それにしても素早い、その上ブックを吹き飛ばすほどの力を持っているとは。強力な魔獣、いや精霊だろうか。見た目は馬の体にドラゴンの羽、頭は牛で立派な角がついている。
素早く動き回りスキを見つけて突撃、角で弾き飛ばすという行動が基本か。単純だが強力な戦法だ。
エレメンタルマスターは精霊魔法を駆使して戦っている。
うーむ、少し押されているな。魔獣の動きが早くかわしきれないため防御に精霊魔法を使用しているようだ。魔獣の激しい攻撃を受け止めるたびに少しずつ総魔力が落ちていくのがわかった。
出番がありそうだ。一気に魔力を開放すると周りに被害が出るからな、今のうちから少しずつ開放しておこう。
その後数度攻撃を受け、魔力が切れ精霊魔法の防御壁を貼れなくなった。
(ここまでだな)
魔力を第五圏まで開放する。
「いでよ『奈落戦器』No.11『百選腕武』
闇が俺を包み込む。どこからともなく聞こえていた笑い声が叫び声に変わる。すると闇が俺の右腕に集まりだし大きな盾が形成された。
こいつは特殊で武具を好きな形に変化させることが出来る。盾を剣に、剣を槍に。一応制限があり、手で持って扱う武具に変化可能、鎧、兜には変化できない。
飛び込んで間に割り込み盾で魔獣の攻撃を防御、そのまま弾き飛ばす。
「あ、ありがとうございます。恐怖の魔王様」
彼にはすでに気づかれていたか。
「後は任せてくれ」
魔獣が吹き飛んだ方向へ走りながら武器を棍棒に変化させる。魔獣は空中で体制を整え見事に着地、力強く踏み込み足に力をためこんだ後、地面が爆発するほどの突進を見せる。
力比べだな。
「インフェルノ流奥義、積石崩し」
斜め上段に構えた棍棒を魔獣の角に叩きつける。瞬間、大爆発。周りの木々が吹き飛び魔獣も吹き飛ぶ。着地後少しよろめき足にきているのがわかった。もう一押し、もはや武器も不要か。
魔獣へ向かって走る。左に逃げたがそこで俺は加速、魔獣のおしりから背中の部分を両手で抱え込む。
「インフェルノ流奥義、後方池投」
抱え込んだまま後方へ投げ飛ばす。轟音とともに魔獣の上半身が地面にめり込む。
勝負が着いた。
いやー、昔の俺だったら第六圏開放してごりおしだったな。武術とはホント便利なものだ。
しかし、この魔獣をどうする。このままにしておいては危険だ。
「魔王様、差し支えなければこの精霊を私めが頂いてもよろしいでしょうか?」
「ほぉ、扱いこなせると?」
「はい、ここまで弱っているのなら手があります。時間はかかりますが精霊契約は可能かと」
「わかった、好きにするがいい」
精霊だったか。見分け方とかあるんだろうな。
ちらっと周りを確認、よし今日は誰も失神させてないな。
「さらばだ」
俺はその場を去った。
「なんという強大さ。今まで鍛えてきた私より更に上におられたとは。しかしこの精霊を手懐ければもしかしたら魔王様に……。ふふふ、楽しみだ」
帰る前にブックの安否を確認。
『いやー大将、あいつは強かったな! 俺ももっと修行しないと』
元気だな。よし帰るか。
帰宅後着替えて出店をブラブラと見て回った。
一週間後、変装ファッションに着替えてヴァーンの森休憩所へ。
すぐ中には入らずその周りを確認。誰もいない、罠を張ってあるって感じでもない。これなら大丈夫か。
休憩所のベンチに腰掛けルーナが来るのを待った。
「お待たせしました、冒険者さん」
「いえいえいま来たところですよ」
ガードを連れ休憩所に入ってきた。
「いつぞやはありがとうございました。これをお受取りください」
「これはこれは、ありがとうございます」
「それから、これはお願いなんですが」
「もしよろしければ私に協力していただきたいんですが」
「ふむ?」
「私の仇敵恐怖の魔王、彼とその配下に勝てる力が欲しいとこれまで頑張ってきましたが、彼らだけでなくエレメンタルマスターも敵になりそうなんですよね」
「ですからどうしても力が欲しい、何とかならないかと駆け回っているところなんですよ」
「力ですか」
「はい、それで貴方は少なくとも私より強いでしょうから何かヒントだけでも頂けないかと思いまして」
「私を助けてくれたときの機敏な動き、意識が飛ぶ前に見えたんです」
そこで俺の力に気づいたというわけか。
「話はわかりました。出来ることがあれば協力しますよ」
おっと、そういうことなら早速協力できそうだな。
「であるならばその魔力コントロールできるようにしましょうか」
「ほ、本当ですか。コントロールできるように!?」
魔力コントロールは得意技の一つだ。大量の魔力を所持、動かしているからね。
実は前々から教えたかったけどレイでは教えられなかったんだよね。魔力を隠し持っていることが露見しちゃうから。ちょうどいい機会がきたものだ。
「手をお貸しください、貴方の魔力の流れを見ましょう」
「はい!」
その後、ルーナに魔力コントロールのコツをレクチャーした。彼女は飲み込みが早い、これなら一ヶ月もかからずコントロールできるかもしれない。
「すごい、こんな方法があったなんて知りませんでした」
「後は慣れるだけですね」
「また今度付き合ってください」
「いいですよ、それではまた来週4時にここで」
「はい!」
「それでは失礼しますね」
挨拶を済ませ俺は休憩所から出た。
(間違いなく彼は恐怖の魔王。しかし助けられ、力のコントロールまで教えてもらって、それに……)
帰宅後夕食、今日もカレンのうまい手料理が俺の胃袋を昇天させた。




