3.生徒A?いや生徒Jくらいです
3話目です。
現代パートが数話続きます。
「豊川君は、何処の高校を志望するの?」
以前から気になっていた隣の席の女の子がそう聞いてきた。
先程のHRで先生から進路希望の紙を今週中に提出するよう言っていた事を受けての質問だろう。
彼女の名前は柴原蛍。
明るくて運動も勉強も共に成績優秀、更に可愛い学年でも人気がが有るまるでゲームや漫画のヒロインの様な女の子だ。
1年の時から男子の間では可愛い子がいると噂で知ってはいたけど、2年でクラスになった時はその日の晩に部屋で神様への感謝の舞を踊って階下の母親にうるさいと怒られたほどだ。
3年でも同じクラスでしかも隣の席と言う幸運に舞い上がって同じく夜中に踊って母親に怒られた記憶に新しい。
別に付き合っているとかそんなことは無い。
彼女はみんなに優しく、クラスでも目立たない僕にさえ普通に話しかけてきてくれる。
天然か計算かは分からないけど良く言うと誰にでも優しい、悪く言うと八方美人な彼女の態度に勘違いした男子が告白をして玉砕するところを幾度も見聞きした僕は告白する勇気が持てなくて逆に良かったと痛感したものだ。
向うにその気が無いのは分かっているけれど彼女と話すのはとても楽しい。
下手に告白して玉砕していたら僕みたいな小心者じゃショックでヒキコモリになって彼女と話事なんて二度と出来なくなっていたと思う。
「うーん、公立の○×川高校にしようかと思っているんだよね」
彼女の問いかけにそう答えた。
この高校は偏差値70代の地元どころか県内でもかなりの公立進学校だ。
本当ならいつも平均点そこそこの僕の成績じゃ手が届くレベルじゃない。
それを聞いた他のクラスメイト奴らが噴出して「だからお前じゃ無理だってw」と笑っている。
「そこうるさい。だからってなんだよ。僕は中学3年になって生まれ変わったんだ。良い大学出て大手ゲーム会社に就職するには今から勉強しとかないとダメなんだよ!」
僕は不満げな顔でそう熱弁した。
それを聞いたクラスメートは呆れながらもゲーム会社に就職すると言う部分には納得したみたいだ。
勿論嘘である。
ゲーム会社に就職したいのは本心では有るのだが、○×川高校を目指す目的は他に有る。
「へぇ~将来の事、今からちゃんと考えているなんて偉いんだね。」
僕の言葉に彼女はそう感心したように微笑んだ。
「それに○×川高校って私と同じ志望校じゃない。一緒に頑張りましょう!」
そう、2年の終わり頃に彼女が友達と志望校について話しているのを小耳に挟んだので一大決心をしてそれから毎日猛勉強をしている。
如何せん今までテスト前に詰め込むタイプだったのですっごく苦戦しているのは確かだ。
なんで昔からコツコツと勉強しなかったのか後悔先に立たず。
これは秘密だが先日駅前の地域一の有名進学塾で定期的に行っている模試が通っていない者でも金を払えば受けられるという事で試しに受けてみた。
結果はオブラートには包んでいるけれど身の程を弁えろと言う意味の辛辣な寸評と共に書かれていた判定を表すアルファベットはEだった。
ま、まぁ最悪受からなくても良いとは思っている。
受かるに越したことはないけれどこの一年間同じ高校を目指す訳だから色々と話す機会も増えるだろう。
それで仲良くなって二人で勉強会とか…、更に付き合ったりとかも…。
いかんいかん妄想がうなぎ上りだ。
「え?そうなんだ!じゃあ本気出して頑張るよ」
さも初めて知ったかのように僕は答え、第一志望欄に○×川高校と書きこんだ。
僕の名前は豊川西都 この春中学三年生になったばかりの14歳だ。
成績はさっき言った通り普通。
運動も苦手では無いけど得意でも無い。
顔も平凡な超が付くほどの一般ピープルだ。
趣味もゲームや漫画くらいでどちらかと言うとインドア派だ。
とは言え重度のオタクや陰キャと言うほどでも無くたまにクラスメートと普通に釣りやカラオケに行ったり程度の交流活動をそれなりに楽しんではいる。
そう言えば小学校の時、クラスに似顔絵を描くのが得意な子が居たのだが僕の似顔絵を書こうとしたら「なんか豊川君は顔に特徴が無さ過ぎて逆に難しい」と言われてショックだった記憶が有る。
本当に平均的な漫画やドラマじゃ生徒A?いや生徒Gくらいの役の名も無い登場人物。
ゲームなら村とかの入口に居て「ようこそ。ここは○△の村です。」しか喋らない村人Aみたいな所謂モブキャラ。
それが僕、豊川斉人と言う人間だ。
生まれながらのモブだが一回くらいは主人公を目指しても良いではないだろうか?
動機は不純だけど今年いっぱい受験勉強に精を出し、そして彼女と仲良くなれる様に頑張る。
まぁ高校浪人なんて嫌だから秋くらいまでに合格圏に入りそうも無いなら入れそうなところ探すかもだけれど…。
う~ん今からこんな弱気じゃやっぱり主人公にはなれないか。




