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モブ王女に転生したら悪役王子の義兄に溺愛されました! 前世の推しを闇堕ちなんてさせない!  作者: まほりろ・コミカライズ配信中


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34話「幕間2-2・ラインハート16歳・レイアとのお祭りデート」ラインハート視点




お祭り当日。


レイアは、朝から子供のようにはしゃいでいた。


普段の格好では王族だとバレてしまうので、俺もレイアも庶民の服に着替えて街に出た。


レイアは白いブラウスに赤いリボン、ピンクのロングスカートをまとっている。


ドレス姿もいいが、こういう素朴な服装も可憐だ。


いつもと違う服を着て、くるくると回っているレイアがたまらなく愛しかった。




◆




街に着くと、レイアは市場に並ぶ屋台を見て目を輝かせていた。

子猫のようにくるくると表情が変わる彼女を、抱きしめたい衝動にかられた。


レイアを見て頬を染めている男どもを、殺気のこもった目で睨みつけて追い払う。

あまり可愛い表情をしないでくれ、牽制するのは大変なんだ。


大きな荷物を抱えた老人とすれ違ったとき、レイアが押されてよろめいた。

転びそうになるレイアをとっさに受け止めた。


「はしゃぎすぎると怪我するぞ」


注意に留めたが、本当は抱きしめてキスしたくてたまらなかった。


クロードが留学して来るまでは……と思っていたが、理性が持ちそうにない。


レイアも小さい頃のように、無闇に抱きついて来なくなった。


淑女としては当然の振る舞いなんだが、寂しくもある。


俺のことを見てキャーキャー騒いでいる女もいたが、眉間にしわを寄せて睨みつけるといなくなった。


ああ言うのは、知らない間に増えるから厄介だ。


「絡まれたら面倒だ。

 今日はせっかくの……デ、デートなのに」


レイアには俺の言葉は届かなかった。

俺はデートだと思っているけど、レイアはどう思っているんだろうか?

少しでも、意識されていたら嬉しい。




◆




レイアはおしゃれよりも食い気が勝ったようで……屋台の食べ物に瞳を輝かせていた。


こういうところは、まだまだ子供だな。


串焼き屋の主人に、「いいねお兄さん! 恋人がべっぴんで羨ましいよ!」と言われた時は、心臓がドキリとした。


そうか、俺たちの関係を知らない人間から見ると、そういう風に見えるのか。


「おじさん、私と彼はきょ……」


「そう見えるか? 彼女は俺の大切な人なんだ!」


俺は店主の言葉を否定せず、レイアの肩を抱き寄せた。

その時の俺は、締まりの無い顔をしていたと思う。


レイアの頬が少し赤くなってる気がした。

少しは異性として意識させられたら嬉しい。



◆



その後、果物屋とパン屋とりんご飴の店をはしごした。


小リスのようにパクパク口に含んでいく姿が愛しかった。


レイアもやはり女の子。

可愛い小物やアクセサリーが気になるらしい。


リボンや髪飾りなどが置いてある店の前で、商品を熱心に眺めていた。


「これにしようかな〜〜?

 こっちも可愛いかも?」


レイアが手に取るのは、黄色や金色のものが多かった。

黄色いリボン、黄色い花がついた髪飾り、中央に黄色い石がはめ込まれたブローチ、黄色い石を集めたネックレスなど。


レイアが好きな色なのか?

だが彼女が普段好んで着てる服は白やピンクだ。


アクセサリーだけ黄色を欲しがるのは、何か意味があるんだろうか?


「知ってる? 恋人の瞳の色のアクセサリーを身につけると、恋が成就するんですって」

「私は『こいつは俺の女だ』って牽制するために、男から女に自分の瞳の色のアクセサリーを送るって聞いたけど」

「本当!? そんな贈り物されたらとろけちゃう!」


近くにいた女性客がそんな会話をしていた。


アクセサリーにはそんな意味があったのか。


レイアが黄色い石や飾りのついたアクセサリーばかり見ているのは……俺の瞳の色(実際は金だが黄色にも見える)だから?


心臓がドキドキと音を立てる。

ただ好みの色なのかもしれない。

だけどレイアが意識して選んでいたとしたら……!


アクセサリーを選ぶレイアの後ろ姿が愛しすぎて、抱きしめたくてたまらなかった。


「兄様、あっちから美味しそうな匂いがします!」


急に振り返るな!

心臓が止まるかと思った!


目ぼしいものはなかったのか、それとも食べ物屋が気になるのか、レイアはその店では何も買わなかった。


俺は彼女に内緒で、黄色の花がついた髪飾りを購入した。


レイアに俺の色を身に着けてほしくて。

ついでに、クロードを牽制する為に。




◆



ほとんどの屋台を見て回り、レイアは満足そうにしていた。


日が西の空に傾いたころ、レイアがパレードを見たいと言い出した。


同じように考える人間が多く、レイアはなかなか前に進めずにいた。


「大通りに行くなら、こっちの方が早い!」


俺はレイアの腕を掴み、大通りへ向かった。

こんな時の為に抜け道を調べておいて良かった。


大通りにはすでに大勢の客が集まっていた。


はぐれないようにレイアの手をしっかりと握り締める。

レイアの頬が茜色に染まっている気がした。

夕日のせいか? それとも祭りの熱気にのまれたのか?


レイアは子供の頃からよく俺の手を握ってきた。

今更手を繋いだくらいで照れたりはしないだろう。


レイアの瞳が寂しげに揺れているように見えた。


「疲れたか? どこかで休むか?」


「まさか! 今ならパレードが始まるのにそれはありません!」


「だったらなんで寂しそうな顔をしてた?」


「それは……。

 兄様の後ろ姿を見てたら、もう立派な青年なんだとしみじみ思ってしまって……」


「はっ?」


それはつまり、俺を男として意識したってことか?


「雛鳥が巣立つときの親の気分なんです!

 ちょっとセンチメンタルになってただけです!」


意識させようとすると上手くいかないのに、俺がなんとも思ってない行動が相手の心を揺り動かしたりする。


恋は難しい。

乙女心はよくわからない。




◆



そうこうしている間にパレードの先頭がやってきた。


「おい……!

 何だあのでかい生き物は?

 魔物か……!?」


「違いますよ、兄様!

 あれはゾウとキリンです!」


ゾウやキリンは民家ほどの大きさだった。

ゾウは鼻が長く、キリンは首が長く、近くで見ると相当な迫力だった。


そんな化け物じみた生き物を見ても、レイアは全く動じなかった。


それどころか瞳を輝かせている。

意外と肝が据わっているんだな。

俺ももっと、しっかりしないとな。


その後、露出度の多い服を着たダンサーがやってきた。

周囲の男たちが熱狂している。


知らない奴がどんな服を着ていようが、死ぬほどどうでもいい。


「兄様も踊り子に興味ありますか?」


俺を見上げるレイアはどこか不安げな瞳をしていた。

嫉妬だったら嬉しい。


「知らない女が何を着ててもどうでもいい」


レイアは安堵の表情を浮かべる。

今の答えで正解だったらしい。


「レイアが着るなら、興味あるけど。

 ただし、俺以外に見せない前提でな」


その時のレイアが、あまりにもキュートだったから、ついからかうようなことを言ってしまった。


途端にレイアの顔が真っ赤に染まる。

やばい、可愛すぎる!


「兄様がお望みなら着ましょうか?」


レイアが俺の為にあの透け透けの服を……?

駄目だ!

想像しただけで理性が……!


「馬鹿!

 冗談だ……!

 嬉しいけど、そ、そう言うのは結婚したあとにだな……!」


動揺のあまり、「結婚」というワードが飛び出してしまう。


「嘘です。

 兄様をからかっただけです。

 あんな露出度の高い服は着ません」


「そ、そうだよな……。

 わかってる」


冗談でもそういうこと言うなよ……!

俺の理性は残り少ないんだ!


踊り子に熱狂した男たちによって、レイアが通りまで押されてしまった。


とっさに手を伸ばし、レイアを背後から抱きしめた。

細い腰、柔らかくていい匂いがする髪。

レイアの体は恐怖からか、小刻みに震えていた。


彼女を落ち着かせるためだと言い聞かせ、強く抱きしめる。


レイアに「もう大丈夫です」と言われても、離すことが出来なかった。


民衆のざわめきもパレードも、俺の耳に届かない。

トクントクンと音を立てるレイアの心音を感じていたい。


レイアを、一生俺の腕の中に閉じ込めておけたらいいのに。


だが、残念なことにパレードは終わってしまった。

後ろ髪を惹かれる思いでレイアの体から腕を離す。


「兄様、こうしてはいられません!

 河原に移動しますよ!」


「今度は何だよ」


「本日のメインイベント!

 灯篭流しです!」


レイアの頭の中は祭りのことで頭がいっぱいのようだ。





◆






灯篭流しを見るために俺たちは河原へと移動した。


河畔林にランタンが付けられ、道を照らしている。

俺は淡い光に照らされたレイアに目を奪われた。


儚げで愛らしくて幻想的で神話の女神のように美しかった。


「兄様知ってます?

 願い事しながら灯籠を流すと叶うそうですよ」


レイアがそう教えてくれた。


レイアに願い事を尋ねたが「人に話すと願いが叶わなくなるんです」と言って、教えてくれなかった。


「そういう兄様は?」


逆に俺の願いを聞かれて返答に困った。


俺の願いは……。


レイアとずっと一緒にいたい!


いや、それだと「兄妹として」ずっと一緒にいることになってしまうかもしれない。

レイアが他の男と結ばれたあとも、兄として傍にいるなんて地獄だ。


具体的にかつ正確に願わないとな。


『レイアと結婚しともに暮らしたい。彼女と片時も離れたくない。永遠に傍にいてレイアを守り続けたい』


そう願いを込めて灯籠を流した。


離れていく灯籠にレイアは熱心に祈りを捧げていた。


「なにを祈ってるんだ?」


そんなに叶えたい願いだったのか? 無理にでも聞けば良かった。


「兄様の願いが叶いますようにって」


レイアは振り返り、笑顔で答えた。

ドキンと心臓が跳ねた。


俺の願いの為に真剣に祈ってくれたんなんて……!


二人分の祈りを込めたんだ。

もしこの世界に神様がいるなら、願いを叶えてほしい。




◆



「レイアとずっと一緒にいたいとか……本人に言えるかよ」


俺の呟きは爆音にかき消された。


「今度は何だ?」


「本日のお祭りの締め!

 最大の盛り上がり!

 打ち上げ花火ですわ!」


毎年の爆音の正体はこれか。

円形の光が空できらきらと輝いている。

城からは木々に隠れて全く見えなかった。


人々はもう灯籠よりも、花火に夢中だ。

確かに美しい。

レイアが見たいと言った理由がよくわかった。


「もっと人の少ないところで見れるといいんですけど」


「夜の河原で人気のない場所で二人きり……?」


確かにここは人が多いが……。

レイアはわかっているのか?


ランタンの幻想的な光、儚げな灯籠の灯り、お祭りのムード、デートの終盤、ロマンチックの花火……この状況で二人きりになりたいってことは、つまりその……!

……期待するなって方が無理だろ!


だが、相手はレイアだ……。


あいつは同じ年齢の女子より精神年齢が低い。

特に色恋には疎い。

俺のことも、保護者か護衛くらいにしか思ってないんだろうな。


だから平気で人のいないところに行きたいなんて言えるんだ。



◆




レイアに手をひかれ、人気のない場所まで移動した。


レイアの鈍感。

こんな場所で二人きりになったら、何をされても文句は言えないんだぞ。


レイアは花火が上がる度に、「たまや」とか「かぎや」とか、掛け声を上げていた。


「綺麗ですね」


「ああ、凄く綺麗だ……」


俺は花火よりも、花火に照らされたレイアの横顔に見入っていた。

きらきらした瞳で花火を見上げるレイアは、子供っぽさと色気を両方合わせ持っていて、俺の心は鷲掴みにされた。


「兄様、ちゃんと見てますか?」


俺の視線に気づいたのか、不意にレイアが振り返った。


「見てるよ」


レイアの艶やかな髪を梳かすように撫で、耳にかけた。


「ちゃんと見てる」


真っ直ぐに見つめると、レイアの頬がほのかに色づいた。


「お前にプレゼントがある」


ポケットから髪飾りを取り出し、レイアに手渡した。


前髪につけて欲しかったんだが、どうやらそれはバレッタと言って後ろ髪を止めるものだったようだ。


痛恨のミスだ。


正面から見た時、俺の瞳の色の髪飾りがあれば、クロードを始めとした他の男の牽制になると思ったのに……!


「兄様、ありがとうございます!

 大切に使いますね!」


レイアは髪飾りを握り締めふんわりと微笑んだ。


まじで天使だ……!


レイアが喜んでくれたなら、付けるのは後ろ髪でもいいか。


「そうだ!

 私が持ってるもので、兄様が欲しいものがあるなら言ってください!

 なんでも差し上げます!」


「本気で言ってるのか?」


「はい!」


レイアの瞳に迷いはなかった。


この状況で言うなよ……!

気持ちを抑えるのも限界なんだ……!


「なんでも」なんて言ったら、男はよこしまな想像をするんだ!


クロードが来るまでは、フェアでいようと思っていたが……。

我慢の限界だ……!


レイアも十五歳になったんだから、そろそろ男の欲望について知ったほうがいい。

学園は狼の巣窟だ。

他の男の前で、ほいほいそんなことを言わないように、今のうちにきっちり教えておかないと!


「なら、お前の初めてがほしい」


「はい……?」


「許可はとったからな」


レイアの「はい」が疑問形なのはわかっていた。

俺はそれを都合よく「同意」と解釈し、彼女の頬に唇を押し当てた。


唇にキスをしなかったのは、ギリギリ理性が残っていたからだ。


唇を離すと、レイアは真っ赤な顔で頬を押さえていた。

レイアの瞳は潤んでいて、耳まで真紅に染まっていた。


これで少しは俺のことを男として意識してくれたら嬉しい。


「レイアの初めてをもらうって言っただろ?

 おでこへのキスはクロードに取られたから、ほっぺたは俺がもらった」


レイアにジト目で睨まれたが、そんな顔もたまらなく愛しかった。


レイアを抱き寄せ、腕の中に閉じ込めた。


レイアの心臓がドクンドクンと早鐘のようになっていた。


「クロードが留学してくるからもう遠慮しない。

 奴への借りは返した。

 もう負い目はない。

 優しい兄でいる必要もない。

 ボディーガードは終わりだ」


もっと俺を意識してほしい。

兄妹だなんていえないくらい。


レイアの心を俺でいっぱいにしたい。





◆






翌日。


「兄様、今日の朝食は兄様の好物のカリカリのベーコンとスクランブルエッグ、デザートはりんごのタルトですよ!

 食堂に急ぎましょう!」


レイアはいつも通りだった。


俺は昨日眠れなかったのに……。

あそこまでしたのに、レイアは俺を男として認識してないようだ。


なんか腹立つ。


やはり、頬ではなく唇にキスするべきだったか?

いや、さすがにそれはクロードが留学してからだな。


よく見ると、前を歩くレイアの耳が赤く染まっていた。


そう言えば、さっき俺と視線を合わさなかった。

手も繋いでこない。


ふーん、少しは効果があったみたいだな。


俺はレイアが妹ではないと知っているが、レイアは俺たちに血の繋がりがないことを、知っているのだろうか?


侍女が知ってたくらいだし、俺が国王の子供ではないことは、公然の秘密だと思っていた。

レイアは鈍いから、知らない可能性もあるんだよな。


告白する前にちゃんと伝えないとな。

俺たちは兄妹じゃないって。


覚悟しろよ、レイア。


これからは、兄として接しない。


お前にも保護者扱いはさせないからな。



――幕間・終わり――





最後まで読んで下さりありがとうございます。

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