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【完結】刻の檻刀シリーズ②偽りのsânge ー赤き薔薇が示すものー  作者: 慧依琉:えいる


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第5話:輝夜の落ち込み、励ます満流。だが実は満流も…



酷く落ち込む輝夜……………。


満流は塾講師に連絡を入れ、そんな輝夜の肩を抱いたまま夜月神社へと向かった。とてもじゃないが、こんな状態じゃ塾には戻れない。




夜月神社はさっき輝夜たちが戦った公園からは塾の場所を挟んで正反対の方角にあたる。長く歩き続けないといけない。だがそれよりも満流は輝夜の心を心配した。満流は黙って輝夜を支えながらゆっくりと歩いた。




〝輝夜のことだ。きっと胸を貫くつもりはなかったのだろう…。だが輝夜の中の本能がそうさせたんだろうな…。負ければ待っているのは「死」だけだからな…。こいつにとっては残酷な話だ。俺に力があれば輝夜をこんな目に遭わせずに済むのに……………。〟




満流はただただ悔しかった。

輝夜の力になりたいのになれない現状に悔しくてたまらなかった。二人は無言のまま帰宅。社務所には行かず、いつもの狛犬たちの石造があるあの場所へと向かった。


あの悪鬼たちとの戦いの時以来、ここにみんなで集まるのがいつの間にか習慣のようになっていたからだ。




狛犬たちのそばに来て、輝夜を座らせてから満流はそっと隣に座った。




〝あの時は悠一もいたんだがな…。明日学校でちょっとアイツと話してみるか。〟




満流はそう思いながら輝夜を見た。まだ顔色が悪い。








「輝夜……………。大丈夫か…?」




満流は大丈夫なわけがないと思いながらも輝夜にかける言葉が上手く思いつかず、つい、そう口走っていた。


輝夜は俯いていたが、満流の心配する声で顔をあげた。




「まだ…。ちょっと…。あの時、確かに彼女の身体に剣先が当たったの。なのに、一瞬で貫いていた…………!」




輝夜はその瞬間を振り返って、やっとの思いを言葉にしたが、その両手は震え、身体もガクガクと震えていた。輝夜が受けた心の傷がそれだけ物語っていた。


満流は余計な言葉を使わず、自分なりに分析して思ったことを輝夜に伝える。






「もしかしたらさ、あの影切刀が銀の剣になったからじゃないかな?ほら、吸血鬼って銀に弱いって言うじゃん、だから例え〝チョン〟と当たっただけでも〝グサッツ〟となっちゃうとかじゃないか?」




「満流…。」




輝夜は満流の冷静さに少し救われた気がした。夜風がほんの少し気持ちいいと思った。




「うん…。そうだね。」






そう言いつつ満流を安心させようとわざと笑おうとした。満流はそれに気付いて




「そんな無理して笑わなくていい!辛い時はちゃんと辛いって顔してろ。俺は責めたいわけじゃない。」




「ん…、ごめん。」




「………………チッツ。」




満流はそう舌打ちをしてスイッと輝夜の唇に軽くキスをした。






輝夜は驚いた。


軽く自分の唇に触れた満流の唇…。その瞬間、輝夜の心の奥に〝ポワッツ〟と暖かい光が灯った。




そして満流の方を見ると彼は顔を真っ赤にしながら




「別に、白のキングとクイーンとしてのキスだけが全てじゃないんだぞ?したい時はいつだってしたってかまわないんだからな!」




そう言った。






〝不器用な満流…ふふっ…。〟


輝夜はそんな満流をとても愛おしく思った。すると自然と笑みがこぼれた。




「ふ…。ふふっ…。」




輝夜が笑った。満流は何故輝夜が笑ったのかわからず困惑した。




「満流もしたかったんだ。でもTPOは弁えてね。」




そう言った。




満流は輝夜のその笑顔を見てドキッツとした。




「ああ。お前はそうやって笑っていればいい。」




そう言って輝夜の髪にそっと触れた。








が、ハッツと気付く。






〝────こまちゃんっ!!〟




慌てて満流から離れると満流はちょっとムッとした表情で




「なんでいきなり離れるんだよ!?」




と言うが彼は気付いていないようだ。






「バカッ。ここ、こまちゃん達の前じゃん!」




輝夜は顔を真っ赤にしてそう言った。それでやっと気付く満流。






「ハハハ…。そうだったな。ま、俺たちが仲良くしてる方が安心するんじゃねぇ?」




何とも呑気に答える満流。




「もうっ、知らないっ!」




輝夜は恥ずかしさで怒って社務所へと走って行ってしまった。






残った満流は




「ま、なんにせよ、輝夜が元気になったならよかった。」




そう呟いていた。








「ですなー。」




と、後ろで声がする。






「なんだ…。やっぱり見てたのか。エッチ。」




満流がそう言うとケン(石造の狛犬の人間化:属性黒のナイト)はゲラゲラ笑っていたが




「あんなところでいちゃつかれると困るのですが?キング。」




ダナ(同じく石造の狛犬の人間化:属性白のナイト)がそう言った。相変わらずの美しい銀髪のイケメンだ。満流は彼を見て思った。






〝そう言えば輝夜も戦闘態勢になって覚醒した時は銀髪だったよな…。俺は黒髪のままだ…。それも関係あるのか?〟




「そうだ、お前たちに聞きたかったんだが、今日、新たな敵に遭遇したんだ。」




「────!」




狛犬のケンとダナの二人はその言葉に反応した。






「新たな敵とは一体……………!?」




「ああ、奴らは吸血鬼だ。さっき戦ったのはそいつらの眷属だと言っていた。」






「眷属ということは、吸血行為の時に血を与えられた奴らってことだな。」




ケンがそう説明をした。ケンはダナとは違って同じナイトであっても黒の属性だからか、黒髪だ。




「そのうちの一人を輝夜が神刀〝影切〟で貫いたんだ。」




「影切刀で?だが、それだけだと奴らは死なないだろ?」




「ああ、それが輝夜が影切にキスをしたことで十字架の飾りがついた銀の剣に変わってたからな。」




「なるほど…。それで消滅した、と。」




満流と冷静に会話をしているのはいつもおちゃらけ気味なケンだった。








「────!だったら姫は大丈夫なのか?」






やはりそういう心配をするのはダナの方だ。満流は気付いていた。ダナはただナイトという立場だけで輝夜を見ていないということを…。だが輝夜は誰にも渡さない。






「さっきまでは酷く落ち込んでいたさ。」




「そうか…。キングがついているんだ。きっと大丈夫だな。」




「………………心のケアはな。だが、俺はあいつの力になれてないのが悔しい。俺は名ばかりの〝キング〟だ…。」




満流が珍しく弱音を吐いていた。






ご覧下さりありがとうございます。輝夜がどんなに落ち込んだとしても彼女を癒す役目はいつだって満流なんですよね。

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