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刻の檻刀シリーズ②偽りのsânge ー赤き薔薇が示すものー  作者: 慧依琉:えいる


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第29話:輝夜、とうとう意識を奪われて人形になる

聖痕の言い伝えは永い時の中である程度知り得た情報ではあるが、とこまでが本当の事か、その効力についてもわからなかった。


だがロワールは自身にかけられた呪いを解く鍵になるのではないかと期待していた。


─────ふっ


彼は小さく笑った輝夜を監禁している部屋へと向かった。



部屋に到着するといつものように入る事が出来ない。それが輝夜の仕業だとすぐに気付いた。


「む…。小賢しい。結界か。」



────そう。さっき輝夜が張った結界により、ロワールは輝夜の部屋に入る事が出来なかった。もちろん、ロワールが元の姿であれば簡単に解除できたであろうが、今は本来の力を出し切れない状態。


「ハハハ!やはり面白い!……………だが、我もこのまま黙って引き下がるわけにはいかないのだ。時間はかかるがこの結界を解いてやろう。」


ロワールは自分と張り合う能力の持ち主がいなくて退屈していたのだ。全ては自分の吸血行為による眷属化。対戦を願ったとしても皆本気ではやり合えない。だから輝夜に興味を持った。その人間離れした回復力にもだ。



ロワールはアレコレして結界を解くことに注力した。

2時間ほど扉の前でいただろうか。ロワールはゼーハーゼーハー、肩で息をしていた。


「や………、やっとだ…。あの娘め…。ははっ…。」



ウィーン……………扉が開いた。





ロワールはズカズカと部屋の中に入り輝夜に向かって言った。


「おい、お前!ちょっとは手加減せんか!?」



輝夜はベッドから半身を起こして


「………………もう、うるさいなあ。ゆっくり眠りたかったから仕方ないじゃない。」



2時間ちょっとじっくりと眠ったおかげで体力共に身体はほぼ100パーセント回復していた。だから今、体力を落としているロワールに対して指先から霊力を放出してまるでレーザービームのように〝ビュンビュン〟放ってやった。いつも好き勝手にされてるのが悔しかったのだ。


ロワールだって肩で息をしていてもそれにやられてやるつもりはない。


「お前っ、人が話してる時にだな、………!」



輝夜の霊力ビームを避けながら言葉を発していた。輝夜は段々面白くなってきた。


「あら、私に勝手に吸血した報いよ。ほんと、痛いんだからやめてよね!」


そして手加減せずにガンガン狙い打ちをする。



「チッツ。相当お転婆な奴だな!」


─────バッツ


次の瞬間ロワールは輝夜の元に一瞬でやってきた。



「────!わ、びっくりした!」


輝夜は驚いているが、ロワールはニヤリと笑って輝夜の両手をグイッツと掴み、そのまま輝夜の首筋に牙を立てた!




「────ッツ!!…だか…ら、痛いっつて…ば!」


輝夜は全力で拒絶する


〝子供の姿なはずなのに何て力…!!〟


圧倒的な力に押さえつけられてそれ以上に身動きが出来ずにいた。そしてまたもや〝クラッ〟としてそのままロワールに身体を預ける形になってしまった。


〝……………やば……………い…。また戻るのに……………時間がかかってしまう…。〟


そのまま気絶してしまった。

ベッドの上には漏れた血が滴って染みになっていった…。




満足したのか、ロワールが輝夜の首筋から口を離した時、ポタタ…と血が滴り落ちた。


「おっと、留めをしなくてはな。勿体ない。」


そう言って首筋をペロリと舐めた。そして手を上げて輝夜を宙に浮かせて指をパチンと鳴らしてベッドの寝具を一瞬で変えた。そう、今、ロワールは元の姿なのだ。つまり最強な状態だ。

ゆっくりと輝夜をベッドに寝かせ、


「ちょっと吸い過ぎたか?まあ、このまま早く意識を奪ってしまえたらもっと楽になるのだろうな、お互いに。だが!それだと我は面白くない。少しだけ自我を置いておいてやろう。」


ロワールにとってほんの一瞬の輝夜との対戦はまるでお遊びではあったが、それでも自分に対してそういう行動をする者がいなかったので彼にとってはとても斬新だったのだ。かなり輝夜を気にいったようだ。



それからというもの、ロワールは頻繁に輝夜の部屋を訪れた。



「何しにきたの?」


「わかっているだろうに…。」


「大人しく吸われるばかりじゃないから!」


輝夜は抵抗するが体力が戻りきらない状態なのでいつも最終的にはロワールに血を奪われるのだった。


〝悔しい…!〟


輝夜は薄れゆく記憶の中でロワールの何とも表現しがたい表情を頻繁に目撃することとなる。


〝どうしてそんな顔をするの…。〟


そう思いながらいつも気絶していく。



ロワールは輝夜との攻防戦で楽しそうに笑う姿も見せていた。


〝敵なのに……………!あんなに楽しそうにされると調子が狂う!〟


またある時は


〝陛下って呼ばれてたからもしや、こんな風に出来る相手がいないのかしら…。〟


ロワールの心境を考える時もあった。



敵なのに輝夜の前で色んな顔を見せるロワールに輝夜は戸惑いの気持ちが見え隠れしていた。そうやって彼と過ごすうちに何度、目を覚まして体力を戻しても、何度も突撃に遭い、輝夜は徐々に意識が朦朧としてきた。


「逃げなきゃ…。逃げるって何?」


輝夜の深い意識の底には〝逃げなきゃ〟という気持ちがある。だが、複数回による吸血行為の副作用で意識を徐々に奪われてきてその結果〝逃げるって何?〟という相反する気持ちを持っていた。この頃になると吸血される時の痛みは感じなくなっていたのもあるのだろう。


最初は抵抗していた輝夜だが、ほとんどボーッツとして過ごしていてまるで人形のように動く事が少なくなっていた。



「ちょっと…やり過ぎたか。これだとただの人形だな。つまらん…。」


ロワールは久しぶりに感じる自分の気持ちを持て余していた。ただの「湧きだす血の持ち主」になった輝夜に対し、必要以上に気を寄せるのは危険だと本能で感じている。だがこの数日がいかに彼にとって特別な時間だったのか…。



「聖痕の持ち主は我ら吸血族の救世主になる、そう言い伝えられてきたが、コレがそうなのか?他の人間と変わらぬではないか?」


ロワールは吸血行為で自分に歯向かう者がいなくなる世界の怖さを感じていた。征服者としては無常にも征服していけるのだろうが、全てを手に入れると残るのは虚しさだけなのだ。

現に彼には彼を止められる者がいない。


上手くやり合えていた輝夜に希望を見出していたが、繰り返す吸血行為でやはり輝夜も同じ状態になってしまったことが残念でならなかった。ロワールの心の中に大きな穴が開いたように虚しさが彼を襲った。





その時、ふとある男の顔が思い浮かんだ。


「そう言えば…。最近はこやつの事で忘れていたが、あのおもちゃはどうなったんだろうか。」


満流のことだった。



「ザンテ!ザンテ!」


ロワールはザンテを呼びつけた。



「はっ。陛下。御用でしょうか。」


「うむ。あのおもちゃは今どうなっている?」


「それが最近あの出没した場所に現れず…。双子に待機させております故、暫くお待ちください。」


「そうか…。……もしあやつに会わせたら娘は意識を戻すのだろうか…。」


「それは…。生きたまま捕らえよという事でございますね。」


「そうだ。必ず生きたまま捕らえよ!」


「承知しました。」


そう言ってザンテはロワールに対してお辞儀をしてその場を去った。



「あのおもちゃ、利用価値がありそうだ。なあ、そう思わないか?」


ロワールはそう言って輝夜に向かって手を差し伸べた。


夢の中にいる輝夜は何も反応しなかった。


〝おもちゃ?おもちゃってナニ?私には関係ないの。………本当にそうなの?〟


焦点の合わないその瞳が一瞬だけ揺れた…。






ご覧下さりありがとうございます。繰り返される吸血行為でとうとう輝夜の意思はロワールによって奪われてしまいました。しかしロワール自身は人形になった輝夜を求めていたわけではなかったのでどうにかして少しだけ意識を回復させたいと思ったのです。

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