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星霜エルフの追想録  作者: 古賀月 蜜柑


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第11話 街巡り

 窓から朝の光が差し込み、リュミナはパチリと目を開ける。体を起こし隣を見ると、布団の中でセリがまだ眠っていた。ゆっくりとあたりを見回してみる。小さな木造の部屋に、ベッドと小さな机と椅子が置かれている。そして何だか自分の体からいい匂いがする。


「……そういえば昨日、美味しいものをたくさん食べたんだっけ」


 少しずつ、昨晩の記憶を思い出す。エルフの森とは違う味付けのお肉、蜜柑の香りがする甘いお水。見たことのない野菜が入ったスープ。


「どれもすっごく美味しくて……そのあとどうしたんだっけ?」


 すると、隣の布団がムクリと膨れる。

 

「……あ、おはよう、リュミナ……体調は大丈夫?お酒弱かったのね」


 目覚めたセリがリュミナを気遣う。


「……そっか、思い出した。私あのあとお酒を飲んで眠っちゃったんだ」


 リュミナはすっかり元気といでも言うように背中を伸ばしてみせた。それを見て安心した表情を浮かべたセリ。二人は身支度を整えて部屋を後にした。



「おー、二人ともおはよう」


 部屋を出ると、朝食を食べているカイレンがいた。


「おはよう。アシュレイは?」


「まだ寝てる。昨日、夜遅くまで勉強してたからな……もう少ししたら起こすつもり」


「いい匂い……それなぁに?」


 リュミナはカイレンの食べている香ばしい匂いの朝食に興味を示す。


「ああ、これはベーコンエッグトーストだよ。ほら、二人の分もそこにおいてあるから」


 そう言ってカウンターの方を指差すと、宿屋の主人である大柄な男が朝食の皿を持ってきてくれる。


「いやぁ、カイレンがいてくれると朝食の用意や洗濯が楽になっていいな。手伝ってくれた分、宿代は引いてやるよ。いつまで泊まっていく予定だい?」


「ああ、タルローさん、ありがとう。そうだな……昨日ギルドのお姉さんに聞いたら報酬金の支払いまで1ヶ月くらいかかるって言ってたから、しばらくお世話になるよ。本当は待ってる間にギルドの簡単な依頼でもこなして稼ぐつもりだったんだが、最近の依頼はどれも数ヶ月単位のものばかりだったしね」


「そうか……確かに最近は多くの冒険者が地図を作っているようだからな、報酬金の決定にも時間や労力がかかるだろうなぁ。まぁゆっくりしていくといい」


「簡単な依頼とかは無かったんだ?」


 セリが尋ねると、


「ああ、誰も受けたがらない、危険度最上級クラスのいつもの依頼以外はほとんどヴェンティアの〇〇エリアの地図作成依頼。薬草や素材の採取依頼もあるにはあるんだが、どれもこの付近のエリアにはないもので、移動や装備にかかる費用を考えるとほとんど稼げない……」


 「ああ、最上級クラスの依頼っていつも掲示板に貼られてる、"滅多に姿を見せない幻の義賊の確保"とか、"火山付近のドラゴン討伐依頼"、"暗闇の森の魔獣討伐"ってやつね……確かにあの辺の依頼は、騎士団でも対処できるか怪しいって聞いたわ」


「そう、だからこそ!今回持ち帰った素材達はなるべく高く売らないとな!」


 朝食の席で楽しく会話をしていると、突然男部屋の扉が開き、焦った様子のアシュレイが飛び出してきた。


「わぁ、カイレン!何でもっと早くに起こしてくれなかったんだ!?もうこんな時間じゃないか!」


 バタバタした様子で階段を駆け降りてくるアシュレイに、カイレンはパンを渡す。


「こんな時間って……まだ1時限目の講義には間に合う時間じゃないか?帰ったばかりでアシュレイが疲れていたら悪いし、しばらく寝かせておこうと思ったんだが……」


「確かに講義の時間には間に合うけど、僕はしばらく講義を受けていなかったから授業の前に先生に質問したいことがあるんだ!行ってきます!」


 そう言ってパンを咥えたアシュレイは勢いよく宿から出ていった。


「忙しいやつだな……ま、いいか。それよりも、二人は今日は何をする予定なんだ?よければ、各店での素材の買取価格の見積もりを手伝って欲しいんだけど」


 食べ終わったカイレンがトライホーンの角などの素材を入れた素材袋を背負って尋ねる。


「いいよ、どうせリュミナに街を案内しようと思ってたから……いいよね、リュミナ?」


 リュミナも口をモゴモゴさせながら頷く。


「よし、じゃあ外で待ってるから食べ終わったら出てこいよ!」



 リュミナにとって、エアロムントは歩くだけで色々な発見がある。すれ違う人々の様々な会話、店で売られる見たことのない武器やアイテム、時々すれ違う強面の衛兵やたまに感じる不気味な視線。そして――


「うーん、もうちょっと値段上がらないか?これなら向こうのお店で売った方が良さそうだぜ?」


「カイレン……商談が上手くなったね……よし、いつもなら銀貨2枚に銅貨3枚のところ……これでどうだい?」


 店主のおばさんが銀貨3枚を取り出して見せる。


「いいね!この店で売れば銀貨3枚!覚えたからね。商売は信用が絶対なんだからね!後で、『やっぱなし』とか無しだよ!」


 そう言ってカイレンは店を出て、外で待っている二人と合流した。


「……よし、この店は銀貨3枚。最高記録だな。あと高く買ってくれそうな店は……あっちだ!」


 すると、店の前でしゃがみ込んでいたリュミナが興味深そうに呟く。


「……武器や鎧ならわかるけど、こんなものまで売ってるなんて……人間は変わってるね」


 リュミナは店の外に置かれた売り物である、君の悪い魔物の肝をまじまじと見る。


「魔物の素材は薬や武器の材料にできるからね。それに強い魔物の素材ほど、市場に流通する量も少ない。今は時間もたくさんあるし、いろんな店を回って一番高く買い取ってくれるところを探さないとな……」


「ついでに次の旅の準備もできるから一石二鳥だね。あ、おじさん、この商品ちょっと見せてくれない?」


 セリも道中の店頭にあった砥石に目をつけてしゃがみ込む。不意にリュミナは後ろの路地へ振り返る。暗い路地の中、何かが動いた気がした。


「……?」


「どうしたのリュミナ?何か気になるものでもあった?」


「いや……何でもない、気のせいだったよ」



「次はここの店にしよう」


 カイレンがやってきたのは古ぼけた小さな建物だった。


「ここ……ほんとにやってるお店なの?なんかもうすでに潰れてそうな寂れかたなんですけど......」


 セリが疑いの目を向ける。リュミナも他の店のような活気が感じられず不安に感じる。


「大丈夫、俺は何回か来たことがあるんだけど、たまにすごい商品を扱ってたりするんだぜ?隠れた名店って感じがするんだ」


 そう言ってカイレンが扉を開く。店の奥にあるカウンターから3人に目を向けたのは気難しそうな顔の店員と、リュミナ達の見知った商人だった。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 第11話「街巡り」いかがでしたか?


 カイレンやセリに連れられて、街の様々な店を訪れるリュミナ。そんな彼女の背後に迫る何やら怪しい影...。

最後に訪れた小さなお店には、リュミナ達のよく知るあの人が...?


 次回「寂れた小道具店」月曜日投稿予定です。お楽しみに!


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