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山田くんとの休日


 日曜日、(やま)()くんと出かける事になった。


「山田くん、お待たせ……ってあれ?」


 とある休日。

 駅前に到着した(よう)()の目に、クラスメイトの姿はなかった。


「あれ、えっと、山田くん?」

()(さき)くん、おはよう」


 きょろきょろと山田くんを探す陽太の背後で、聞き慣れた声がする。


「あ……山田くん」

「驚かせてごめん、ちょっと早く来すぎたみたいで」


 現れた山田くんは、普通に私服姿だった。

 おお…とわけもなく感動し、まじまじと見つめる。


 山田くんの私服を見るのは初めてだ。パンクでもなく、ロックでもなく、ごく普通の服装だ。あえて言うなら、一般的な高校生男子という感じ。ちなみに陽太はTシャツにハーフパンツ、こちらもいたって平凡だ。


 無事に遭遇できたので、第一関門は突破した。

 大げさだと言うなかれ。山田くんは影が薄い。


「特に行き先決めてなかったんだけど、どっか行きたいとこある? 付き合うよ」

「特にないんだ。三崎くんは?」

「俺もないなぁ。まあいいや、適当に歩いて決めよっか」


 そう言うと、山田くんは頷いてついてくる。女の子とのデートだったらまずいけれど、山田くんは気にしていないようだ。よかったと内心でほっとする。


 実は楽しみにしすぎていて、ものすごく下調べをしてしまったのだけれど、考えれば考えるほど分からなくなったのでやめた。結果、母親にデートだと誤解されてしまい、追加のお小遣いまでもらってしまった。彼女じゃないと言ったのだが、どうしても信じてもらえなかった。


 山田くんは彼女じゃない。

 でも、会えて嬉しい。


「山田くん、カラオケ行く?」

「あんまり行かないな。三崎くん、行きたい?」

「俺は割と好きだなぁ。けど、今日はせっかくの初日だし、もっと別の場所にしよう」


 そう言うと、山田くんも頷いた。


 特に相談したわけでなく、駅近くの商店街へと足を向ける。ここは割とお店が充実していて、遊ぶ場所には困らない。


 一緒にお店を冷やかして、新作のお菓子を批評したりしながら、のんびり歩く。他の友達ともさんざん遊んだ場所だが、今日はちょっと勝手が違う。山田くんは黙って隣を歩く。陽太が話しかければ応え、そしてまた黙って歩く。山田くんは物静かだ。


 でも、嫌じゃない感じ。

 しばらく歩くと天井が抜けて、ちょっとした広場に出た。


「山田くん、たこ焼き食べる?」


 うん、と頷いたのを確認して、近くのたこ焼き屋さんへ行く。ここのたこ焼きはタコが大きくて青のりたっぷり、そしてマヨネーズもたっぷりなのだ。


「ソースとしょうゆ、どっちが好き?」

「しょうゆかな」

「俺はソース。でもここどっちもおいしいよ」


 ソース一択だった陽太だが、ここのしょうゆマヨはおいしすぎた。「おっちゃん、マヨネーズたっぷりね!」と言うと、「あいよっ」と応えてくれる。山田くんも普通に頼んでいたが、マヨネーズは適量だった。


 店の前に設置してあるベンチに腰掛け、並んで食べる。


「山田くん、おいしい?」


 問いかけると、こくんと頷かれる。口の中にたこ焼きが入っていたらしい。


「一個食べる?」

「え、いいの?」


 目を丸くすると、「いいよ」と言われる。どうやら食べたそうに見えたらしい。


「サンキュ。じゃあ俺のも一個食べて」

「ありがとう」


 なんかデートみたいだなぁと思っていたら、「あれ、三崎?」と声をかけられた。


「こんなところで何してんの? ひとりで買い食い?」

(よし)(かわ)さん」


 立っていたのはポニーテール姿の美少女だった。同じクラスの吉川さん。一年生ながら、陸上部のエースである。


 大人びたトップスにミニスカート、クラスの女子の私服姿は初めてでどきどきする。ミニスカートからスラリと伸びる脚がまぶしい。ちょっと目がくらんだ陽太をよそに、彼女は後ろを振り向いた。


「やっぱ三崎だったよ、ミサキ」


 うん? と思ったら、その後ろからメガネ姿の少女が現れた。


「こんにちは、三崎くん」

(ふじ)(さき)さん」


 現れたのはもうひとりのクラスメイトだった。名前は藤崎()(さき)。ちょっと韻を踏んでいて可愛い、こちらも私服の藤崎さんだ。小花柄のスカートがよく似合っている。


 そういえば三崎と美咲なんだなと思っていると、吉川さんが寄ってきた。


「ねー三崎、一個ちょうだい」

「うん、いいよ」


 しょうがないなあと苦笑して、竹串で一本刺してやる。そのついでに、「ひとりじゃないよ」と言ってみた。


「え、うそ、まさかデート?」

「そうじゃないって」


 きょろきょろと辺りを見回す彼女に、どうして隣にいる山田くんに気づかないのかと思う。言っておくが、彼女はまったく悪気がない。普通に見えていないのだ。

 どうしようかなと思っていたら、「あ、あのね、(なお)ちゃん?」という声がした。


「いるよ? ここに、山田くんが」

「え、うそ、ホントだ」


 おずおずと指示したその場所で、山田くんがたこ焼きを食べている。藤崎さんには見えているらしい。彼女は眉を八の字にして、「ごめんね山田くん、こんにちは」と言っていた。


「いやー、ごめんね山田。見えなかった」

「もう、尚ちゃんたら」


 藤崎さんは心やさしい女子で、ひかえめだけれど陽太は好きだ。山田くんとも仲が良く、ちょくちょく話しているらしい。吉川さんとは真逆のタイプだが、二人はれっきとした親友だ。


「ねえ山田、美咲にたこ焼き分けてあげてよ」

「やだ尚ちゃん、いいよ、いいから!」

「まあまあ。あ、駄目ならいいけどさ」


 物おじしない性格の彼女は、ちゃっかり親友の分まで要求している。陽太に二個目をせがまなかったあたりは感心だが、さっきまで見えてなかったんじゃないか?


 しょうがないなあと思う陽太の横で、山田くんがたこ焼きの入った紙皿を差し出していた。


「わー、ありがと山田! 太っ腹!」

「いや、ほんとに大丈夫だから!」


 きゃあきゃあと騒ぐ女子二人は、うるさいけれど可愛らしい。吉川さんはまごうかたなき美少女だし、藤崎さんも地味だが可愛い。しきりに遠慮する藤崎さんだが、山田くんが差し出したままなのを知って、「ありがとう、いただきます」と言っていた。


 女の子がたこ焼きを食べる姿は、とても可愛い。


 熱いのではふはふしながら、口元を押さえて、ごくんと呑み込む。吉川さんは熱いのが平気なようで、ばくっと豪快に食べられた。


「熱!……でも、おいひい」


 なんかちょっと得しちゃったなぁと思っていたら、ぽんとお菓子が放られた。


「たこ焼きのお礼にあげる。山田と二人で食べて」


 渡されたのは個包装の揚げせんべいだった。ちゃんと二枚入っている。


「あ、それじゃあ私も」


 藤崎さんが鞄をごそごそして、一口キャンディを添えてくれた。女の子の鞄は魔法みたいだ。きらきらしたものが色々出てくる。……一方は揚げせんべいだけれども。

 二人が去っていくと、急に沈黙に包まれた。


「にぎやかだったね、山田くん」

 山田くんの方を見ると、うん、と頷かれる。


「山田くんは飴好きだったよね。はい」


 キャンディを渡すと、山田くんは「ありがとう」と受け取った。そのまま、じっと見ている。


「あれ、その味苦手だった?」

「いや全然」


 手のひらに乗ったキャンディを、何も言わずに見つめている。ちなみに味はレモン味だ。どうしたんだろうと思っていると、彼はそれを軽く握った。


「?」

「三崎くん、見て」


 一、二と数え、ぱっと開く。


「……消えた!?」

「一応仕込んでおこうと思って。驚いた?」


 驚いた。


 消えてしまったキャンディはどこへ行ったのか、山田くんは平然としている。ちょっと得意げに見えるのは気のせいか。

 びっくりしたよと言いながら、おかしくなって笑った。


 六個入りのたこ焼きは、あと半分残っている。

 一個が陽太で一個が山田くん、もう一個が吉川さんと藤崎さん。


 せっかくだから他にも友達来ないかなぁと思っていると、「ああっ、こんなところに山田!」という、非常にありがたくない声がした。


「てめ、なんでここにいやがるんだ!? 俺の思考回路を読んだのかよ! ストーカーか! いやエスパーか!? マジシャンかよ!!」

「……(みね)()くん」


 現れたのは峯田くんだった。こちらも同じクラスの人物で、割とかなりのイケメンだ。服装はロックみたいな、パンクみたいな、よく分からないけどそんな感じ。両脇に友人の姿もある。(あお)()くんと(よし)()くん。彼らは峯田くんと仲がいい。


「また峯田が吠え出した。……よー三崎、何、たこ焼き食ってんの?」


 小指で耳をふさいだ片方が、陽太を見つけて手を上げる。


「うん、おいしいよ」


 彼らとは一度トラブルになりかけたが、今では普通に話している。というか、元凶のほとんどは峯田くんであり、彼が絡まなければ平和である。あと、多分、一応反省はしたらしく、一度などはジュースを(おご)ってもらった。


「俺も食おっかな。……あ、やべ、もう金ないや」

「一個食べる?」


 ポケットをごそごそしてから情けない声を出した芳野くんに、陽太は笑って竹串を差し出す。


「え、いいのか?」

「いいよ。ジュースのお礼」


 やった、ラッキーと言いながら、芳野くんが串を受け取る。彼は猫舌のようで、冷めかけたたこ焼きにも苦戦していた。


「あつ……熱っ、あふっ、……でもうまい」


 ありがとなー三崎と言う彼に、ちょっとだけほのぼのする。

 隣にいた青根くんにも差し出してみると、こちらも目を輝かせた。


「……でも三崎の分なくなっちゃうんじゃね?」

「いいよ。おすそ分け」


 悪いなぁと言いながら、青根くんも喜んで食べる。まあ色々あったものの、これで手打ちだ。何かお礼をと言われてしまい、カラオケのサービス券をもらってしまった。


「俺らいっぱい持ってるし。使えよ、三崎」

「ありがとう」

「三崎、カラオケ何歌う? アニソン好き?」

「そうだなぁ」


 平和そのもののこちらをよそに、隣ではやかましい叫び声が続いていた。


「だから! なんでこんなとこにいるんだよ、山田! てめーのことだよ、こっち見ろよ! いや見んな! やっぱ見ろ!」

「……」

「無視すんじゃねえよ!!」


 最初は相手をしていた山田くんも、今ではすっかり放置モードだ。峯田くんの扱いに慣れてきたらしい。あと、彼は吹奏楽部に入った方がいいんじゃないかと思う。その肺活量はもったいない。


「聞けよ山田! お前らもなんか言え!」

「おー山田、相変わらず影薄いなぁ」

「山田何味食ってんの?」

「しょうゆマヨ」

「こいつらには答えてんじゃねえよ!!」


 答えても答えなくてもうるさいけれど、峯田くんはようやく黙った。さすがに疲れてきたらしい。


「峯田くんもたこ焼き食べる?」

「いやいい。食うならこいつからもらうから」


 こいつ、と山田くんを顎で示す。……常日頃から思っているのだけれど、峯田くんって山田くんのこと大好きなんじゃないか?


「なー山田、たこ焼きよこせ……っておい! いつの間にか全部食ってんじゃねえよ!!」


 気づけば山田くんの皿からたこ焼きは消えていた。山田くんは口をもぐもぐしている。


「えー峯田ってばちょっと理不尽」

「これは山田のたこ焼きだよな」


 たこ焼きの(わい)()が効いたのか、彼らは山田くんに肩入れする。


「どっちの味方なんだよ、お前ら!」

「今は山田」

「山田だよな」


 うん、と左右で頷き合う。峯田くんはわなわなしていたが、うまく言葉にならないらしい。怒りのあまり、彼は足元の小石を蹴りつけた。


 ガツン! と蹴った小石は思った以上によく飛んで、道を歩いていたお兄さんの頭にぶつかる。


「……あ」


 お兄さんの頭は見事なスキンヘッドだった。


「オラ!! てめえかクソガキ!!」


 お兄さんに怒鳴られて、峯田くんはダッシュで逃げた。その後ろをスキンヘッドのお兄さんが追いかけていく。革靴を履いているとは思えないほどの見事な走りっぷりだった。


「あーやった。さすが峯田」

「不幸男なだけあるよなぁ」


 彼らはしみじみ頷いている。一応説明しておくと、峯田くんはとにかく運が悪い。おかげで、ついたあだ名は不幸男だ。……半分くらいは自業自得のせいもあるのだけれど。


「じゃあな三崎、たこ焼きサンキュ」

「山田もまたな」

「え、行くの?」


 目を丸くすると、彼らは笑って頷いた。


「だってあいつ世話が焼けるし、ほっとけねーよ」

「しょうがないよな、峯田だから」


 割としょうもない事ばかりして先生に叱られている彼らだが、友情は成立しているらしい。陽太が手を振ると、山田くんも無言で手を振っていた。


 最後のたこ焼きは余ったが、割と盛りだくさんな内容だった。

 すっかり冷めてしまったたこ焼きを、陽太は器用に二つに割る。


「山田くん、はい」

「……三崎くん?」

「せっかくだから、一緒に食べよう。はい」


 自分のを口に放り込み、残った半分を山田くんに差し出す。


「三崎くんの分がなくなるよ」

「いいよ。せっかくだから、最後は半分こ」


 一個交換しているけれど、山田くんは峯田くんに絡まれていたので、あまり食べた気がしないだろう。そう思って差し出すと、山田くんは頷いた。


「ありがとう。いただきます」


 ぱくん、と半分食べられる。


「なんだか色々あったなぁ」

「そうだね」

「たこ焼き食べてただけなんだけど。今日が休日の気がしない」

「確かに」


 吉川さんに藤崎さん、峯田くんに芳野くんに青根くん、みんな陽太のクラスメイトだ。明日も学校なので、彼らとはまた明日会う。


 休日みたいで、平日みたいで、なんだかちょっと不思議な感じ。


「そうだ、カラオケのサービス券もらったんだった」


 そこでふと思い出し、陽太はそれを取り出した。


「今度はカラオケ行こうか。山田くん、アニソン好き?」

「どうだろう。いくつかは知ってるけど」

「俺も。なんか歌えるやつある?」

「そうだな、どうかな」


 並んで話しながら、次の約束をしている事に気づく。急にくすぐったい気持ちになったが、特に言及はしなかった。


 だって山田くんは友達だ。友達と遊びに行くのはおかしくない。


「三崎くん」


 そんな事を思っていると、ふと名前を呼ばれた。

 山田くんが涼しげな目でこちらを見てくる。


「三崎くんは、どんな歌が好き?」

「俺? そうだなぁ……」


 陽太は最近の流行曲を挙げた。町で流れていたのを偶然耳にして気に入ったのだ。山田くんは頷いて聞いている。その顔がちょっとだけ嬉しそうだ。


「山田くん、どうかした?」

「ううん、別に」


 首を振った後、山田くんはふと思い出したようにポケットを探った。


「三崎くんに渡そうと思ってたんだ。たこ焼きのお礼になったけど、よかったら受け取って」

「え、何?」


 手のひらに載せられたのは、小さく光る粒だった。


「基本的に物質は持って来られないんだけど、小さいものなら平気みたいで。すぐ消えるから、使えるのは今日中かな」

「これ何?」

「暗闇で光る花の成分を閉じ込めた種。暗い部屋で割ると光って綺麗だよ」

「なんでそんなすごいもの持ってるの!?」


 どこかの研究所に提出したら、世界中の科学者が目の色を変えて飛びつきそうな代物だ。


「姫様が三崎くんを気に入ったみたいで、ぜひ何か贈り物をと言われたから。気に入らなかった?」

「まさか!」


 ありがとうと言って種を見つめる。種と言ったが、カプセルのようなものらしい。中では小さな小さな光のかけらが、ぶつかり合ってきらきら光っていた。


(今ここで言及する事ではないが、山田くんは異世界の勇者である。知っている人は驚かないだろうが、知らない人はそのまま呑み込んでほしい。山田くんは勇者だ。そうなっている。だからこんなものも手に入る)


「山田くん、今日は来てくれてありがとう」

「急に何?」

「いや、なんか、なんとなく」


 へへっと笑って頭をかく。山田くんは目をぱちくりさせていたが、特に何も言わなかった。


 それから二人で連れ立って、商店街を端まで歩いた。途中でもう一度吉川さんと藤崎さんに遭遇して――吉川さんはまた山田くんが見えなかった――峯田くんたちとも再会した。峯田くんはすぐに山田くんに気づいた。やっぱり彼は山田くんの事が好きだと思う。ちなみに、他の二人は言うまで気づいていなかった。


 笑ったり、騒いだり、峯田くんに困らされたりして――。

 なんだかんだで時間は過ぎ、そろそろお開きになった。


「楽しかったなぁ。ちょっと疲れたけど」

「そうだね」


 疲労の原因の八十七パーセントくらいは峯田くんだろう。彼はまた山田くんに絡み、腹いせにその辺の空き缶を蹴って、また通行人の頭にぶつけた。奇しくも、同じスキンヘッドのお兄さんだった。

 あとはお察しである。峯田くんが無事に逃げ切れた事を願う。


「それじゃあ、また明日」

「また明日」


 互いに手を振ってお別れする。

 本当に盛りだくさんな一日だった。陽太はとても楽しかったが、山田くんはどうだっただろう。次はカラオケの約束もした。山田くんは歌が得意だろうか。


 楽しみで、楽しみで――口元がゆるんでしまう。


 家に帰ると、母親がデートの成果を聞いてきた。デートじゃないと言ったのだが、やはり信じてくれなかった。


 寝る前になり、陽太は部屋の電気を消した。

 真っ暗な部屋の中、山田くんに渡された種を割ってみる。それはパキンと簡単に割れて、きらきらした光が部屋を照らした。

 ほのかに光る光の粒。それがいくつも浮かび上がり、幻想的に輝いている。


「わぁ……」


 まるで星空の中にいるみたいだ。

 光はしばらく浮かんでいたが、やがてすうっと消えていった。あとには何も残らない。

 しばらく余韻を楽しんでから、陽太はベッドに潜り込んだ。


 明日山田くんに会ったら、綺麗だったよと話をしよう。


 それから宿題の話をして、今日の話題でお喋りして、それから次の約束の話をしよう。


 明日が来るのが待ち遠しい。

 そんな事を思いながら、陽太はベッドで目を閉じた。

 休日の夜は静かに更けていく。

 山田くんも楽しかったらいいなと、眠りに落ちながら陽太は思った。



    ***

    ***



 同時刻、山田くんが陽太に初めて質問できた事に感動して、小さなガッツポーズをしていたのだが――それはまた、別のお話。


お読みいただきありがとうございます。(「とても楽しい一日でした(山田)」)


▼NEXT:『友達の山田くんには秘密がある』

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