巨人(後編)
コウテイアホウドリ族の伝聞が世界に渡りきるまでの5年間、14歳になったこの俺ナルガスとコウドルはもはや日課となったキリング・ミールの駆除依頼を順調にこなしていた。
「おーいコウドル!そっちは何匹駆除できたんだー?」
「やあナルガス!今日は一人で10匹ほどは倒せたよ?そっちは……うわぁ、こりゃまたたくさん狩ったようだけれどざっと30匹位かな?…って空間の中がパンパンじゃないか‼︎一体何に食わせる気なんだい」
気さくな会話をしながら、数を確認し合う俺とコウドル。
今ルガースとラーナはキリング・ミール以外の強敵を求めて少し国を出てはいるが、間もなく帰ってくるとコウテイアホウドリ族随一の伝聞エキスパートから便りをもらった。
「あはは、ちょっとしたお土産にと思ってね!
そろそろみんなでゲラルドに向かっても良い頃かなと思うから」
「…もうそんな時期になったんだな?今日私達にここまでの力がつくまで訓練に付き合ってくれて本当にありがとう
一族を代表してお礼を言わせていただきたい!」
「俺も教え甲斐のある5年間だったよ…こちらこそありがとな!」
俺達は互いに、片腕を軽く交差して組む形で気持ちを伝えた。
「おーいナルガス、コウドル!そろそろコウテイアホウドリ族の国[コウドリア]に戻るんだろ?乗せてってやるから早いとこ戻って都市ゲラルドに行こうぜ!」
「「ゲルル!」」
なんともタイミングよく迎えに来てくれたもんだ…じゃ、一旦彼らの国に戻って支度をしよう!
「ありがとよゲルル!そっちはもう『彼ら』の指導はしなくて良いのか?」
「ああ…既に新しい師範代も育っていたしな?後の事はそいつに任せときゃ良いだろ」
「ハハハ!君は本当にスパルタだったからねぇ…私でもあんなのどこまで耐えきれてたかどうか」
「へっぬかせ!とっくに一族の中で最強になっちまったお前がそんなセリフを言ったと連中に聞かせてみろ?やっかむやつしかいねぇぞ」
「「ハハハ!」」
共に笑いながら、彼らの待つ国コウドリアへと戻っていく俺達。
「ところでよナルガス…昨日、神様に例の事を聞いたから今日みたいな依頼を受けてたのか?」
「まあな…何かあってからでは遅いし念のため最終調整のつもりで特訓はしてたから」
「いよいよやって来るんだね?『例のその人』が…」
それは昨日の夜、俺が神々の智恵で神様に毎日の日課である報告中に聞かされた内容が、今回の依頼を受けた理由であった。
・昨夜、神の間にて
「ナルガス…明日からゲラルドに帰ってこい」
「どうかされたのですか?神様」
「ルシフェルがついにゲルルの巨人を完全に体へ馴染ませてしまったんだ……
先代の神達がしばらく封印を続けておられていたそうだが、奴は早くても明日中にはこの俺達がいる天界を強引に占拠し、下界にいる者達を襲って支配しようとするだろう
俺はあくまでもこの世界の秩序を守るための管理者だ…すでにゲルルから聞いただろうが実際に最後の裁きを下すのは[古の3巨人]のうち今は2人のみ
だから俺と天使達は一度、あえてタブーを犯す!それは下界に降りて行く事だ!」
「……この天界はどうやって取り返すおつもりですか?」
「心配すんな、あいつがここでできるのはせいぜいこの椅子に座るだけでもはやひとつも権限はもてねぇ…
だが、それに気づいたら怒りの矛先を下界に必ず向けるからそこで決着をつける」
「分かりました!俺もそうでしょうけど一緒に旅してきたルガースとラーナはとうに化け物扱いですから、多分余裕で向かいうてそうですけどね
ただ、いつまで俺のレベル上限を固定したままにされているのですか?」
「う!ま、まあ……お前の場合は国どころかこの世界まるごと壊しかねない力がついているのでな?これでもどうしたもんかとずっと悩んでんだよ」
「そんなになってましたっけ?」
「嘘だと思うんなら自分の目で見てみろ‼︎レベル上限してたってのに何故それ以外が強くなってんだ……ブツブツ」
言われてみれば、長いこと俺のステータスを確認してこなかったから分かんないけれど……よっぽど今はとんでもない数値なんだろうか?まあ良いや![ステータス]
ブォン!
ナルガス レベル70(レベル制限中)
HP150000(↑) MP150000(↑)
スタミナ500000(↑)
攻撃力500000(↑) 防御力400000(↑)
素早さ600000(↑) 器用100000(↑)
破壊不能アクセサリー
封印の首輪(装備中)解除済み
[装備対象の禍々しい力を、最低限にまで抑える装備品] 現在着脱可
・ユニークスキル
シックスセンスSS(↑)
(周りにいる全ての動きを見極められるようになった。常時発動中)[パッシブスキル]
・オリジナルスキル
神々の智恵SSS(↑)
(天使や神からの助言を聞くことができるようになる。)
習得スキル
回避SSS 爪攻撃D 斧S(↑)
解体S(↑) 罠師C(↑) 調合B(↑)
逃走SSS(↑) 毒耐性D(↑)
麻痺耐性D(↑) 風魔法SSS(↑)
収納魔法SSS(↑) 剥ぎ取りSS(↑)
ナイフS(↑) 解毒魔法C(↑)
魔石喰らいC モンスター喰らいC(↑)
サーチSSS(↑) 鑑定S(↑)
ステータス閲覧SSS
神眼SS(↑)
空間操作SSS(↑) 威圧SSS
危険察知SS(↑) 風魔法SS(↑)
水魔法A(↑) 土魔法A(↑)
ダークレールG 鬼猫変化G
双剣SSS(↑) 超鬼猫化D(↑)
弓術B(↑) 空間転移B(↑) ウォームC
魅了B(↑) クリーンテッドS(↑)
称号
猫を愛する者 復讐者
神業の逃走者 New一級調合師
プロサバイバー 一流狩人
隠密者 デュアルプロ
切り裂き魔 罠の達人→プロトラッパー
神速回避 ウリボアの天敵
敏腕狩人 New風使いの極意
斧の玄人→アックスマスター
韋駄天MAX(↑)
上級レンジャー 神の見聞(↑)
鬼人が恐れし者
ゴブリンハンター見習い
モンスタークラッシャー
一人前弓使い 神の眼
封印されしもの
異種族を魅了する猫 etc.
「げ、何だこれ~~⁉︎」
「バカ野郎、それはこっちが聞きてぇよ‼︎」
この5年間に行ってきた危険なモンスターからの逃走やスキル技の開発、更には攻撃もできて移動もできるようイメージで組み換えた円風刃を完成させた話など、そんなやり取りを神様の間にいたまま昨日は寝てたんだったよなぁ……
「おっ!見えてきたぞ?どうやらルガースとラーナも本当に戻ってるみたいだぜ」
「久しぶりの再開か……どんな変わりかたをしているんだか」
楽しみのようでどこか不安な気持ちを覚えつつ、俺とコウドル、そしてゲルルはコウドリアへと帰還した。
「おおナルガスじゃねぇか‼︎久しぶりに会うがなかなか良い面構えするようになってんじゃねぇかよ」
「あ、ナルにぃ良かった!もう先に行っちゃったのかと思って心配したじゃない」
「大丈夫!これから出発の準備をするところだから二人もしたくしてね」
「おう!」
「はーい!」
これはすごく驚いた。二人とも想像してたより雰囲気が変わってたよ!
ルガースはあんなムキムキで身長の高い猫になってて、思わず前世の某バトルアニメキャラを連想しちゃった。
ラーナは何て言うか、その……10歳とは思えない色気を漂わせているんだよなぁ。
服装も昔はゴスロリだったのが今やその整ったスタイルを強調するかのように、ピンクをベースとした黒入りのシャツの上にライトアーマー、そしてきれいなくびれが映える水色のミニスカと真っ白なニーソックス…って絶対これは、過去に来てたという日本人転生者が自身の趣味をこの国に残しまくってやがるな!正直似合いすぎるぜコンチキショー‼︎
「んん?どしたのナルにぃ.もしかして今のあたしの格好を見て興奮してきたのかしら?…チラッ」
「わ、わざわざスカートをめくってパンツを見せながら誘わなくても、十分すぎるくらい魅力出てるよ!
間違いなく全ての猫族にモテるから安心しな」
「えっへへぇ!そう言ってもらえると嬉しいなぁ♪」
ピョンピョンとその場を跳ねる度にラーナのはいてるミニスカの下から何度も黒色パンツが見えてくるので、俺は意識して視線をよそに反らす。
「こらこらラーナ、今更ナルガスを口説くのか?」
「そんなんじゃないわよにぃに!ちょっと反応が見たかっただけだもん♪ペロッ」
うん、こりゃ魔性の雌猫だわ…今後狙われる男が哀れに思えてきたぞ?
「いやはやナルガス様達!旅の準備はできておりますかな?どうかご無事でお着きになりますように…」
「色々していただきありがとうございましたギルド長…そして皆さん!」
「がんばっといで!」
「またのお越しをお待ちしております」
もはやこの国での我が家と思えてしまったくらいに彼らの宿屋にも世話になったし、たくさんの住民に暖かく見守ってもらえて俺はとても嬉しかった。
「はい!じゃあみんな…行こう‼︎」
一行「おお!」
ゲラルドとゼンドランを始め、全ての種族を守る為の戦いが今、始まろうとしている。
いよいよここ、[コウドリア国]を立つためコウドル達に運ばれる事になったので、俺一人に二人で運ぶ。
ルガースは三人…そしてラーナはとても軽かったので一人で運ぶといった形で、ブランコのような紐に付けられた小さい板の上にそれぞれが腰かけて出発した。
「コウドル、今のペースで進むといつ頃着くんだ?」
「そうだね……今日までに強くなった私達ならば、3時間くらいはかかるかな」
「十分な時間だな!最初は俺の編み出した新タイプの円風刃で移動することも考えてはいたけれど、とんでもなく魔力の消費が激しいから…」
そう……速く移動できる代わりに急激に魔力が無くなってしまうからこれは最後の切り札みたいな扱いにしかできないのだ。
「無茶は良くないさナルガス!君の持つその技はみんながいつも恐れている最強の手段だから、できるだけしっかり温存しといておくれよ?」
「わ、わかったよコウドル…君もリオンに向けて謝る言葉はまとまってるか?」
「もちろん…まあ、謝ってる時に殴られないか少し不安ではあるけどね」
努めて笑っているようではあるが、やはり心配事は完全には消えないらしい。
「以前のリオンなら確かに頭に血が登っていたらやりかねないが、流石にもう無いんじゃないか?コウドルだって昔とはかなり変わったって俺も思うし」
「そうかい?そう言ってくれると嬉しいね」
ナルガス達が到着するまでの間それぞれが談話しながら移動をしてる一方、ゲラルドの上空では不穏な空が大きく広がりつつあった…
「ん?…ねぇレダ姉ちゃんあの空を見て〜!」
「どうしたの~ラオーガ……えっ、何あの空⁉︎お父さんお母さん大変!すぐに外に出て来て~!」
「なんだ、どうしたレダ……何だアレは」
「もうあなた達!昼食の準備ができてるって言うのに……えっ?」
家族が見たものは、まるで何もない空から異空間にでもつながっているかのような巨大な穴が開いた光景だった。
その中から全身が白い光に包まれている巨人が現れたのだが…その顔つきは凶悪そのもので、地面に降り立つと高らかな笑い声をあげていた!
突然現れてきた存在に、ゲラルド中のみんなが茫然と立ち尽くしていた。
たった一人を除いては……
「おのれ、よもや再び現れよってからに‼︎ナルガス坊っちゃまを吹き飛ばした報いを、今晴らさずにおくべきかぁ‼︎」
ルードス学園の校長・ゼムノスがルードスの町外に飛び出し、かつて自身も恐れていた巨人が更に凶悪な姿となった存在を、その目にやけつけていた!
「お、お待ちくだされゼムノス校長!一人で行かれては危険です‼︎」
「止めるなライ坊!ワシはあのとき、守ろうと思えば命を落としてでも坊っちゃまは守れたはずなのに、逆に生かされた…
だが今回は大事な生徒達やお主らがおる……僅かの間なら、万年龍の姿に一瞬だけ戻りやつと張り合うくらいはできるぞい‼︎」
「ならばせめて我も共に…」
「お主!その愛くるしい子供達をナルガス坊っちゃまが帰ってくるときにお見せするのが楽しみなのじゃろう!
確か神ゼオはお前に告げたと今朝言っておられたのではないのか……『今日、ナルガスは帰ってくる』とな
ならばお主はまだ死んではならん!」
「ゼムノス校長ー」
「ゼムノスせんせー」
ライが今連れている二人の子供、両方とも6歳になってこの学園の生徒になったばかりの娘達がいた。ジルカの娘アイカとメルマの娘メイナである。
「…大丈夫じゃよ二人とも、ワシは必ず帰ってくる
じゃからお前さん達は父親の言うことをよく聞いて、安全な所に行ってなさい」
「「はーい!」」
「ゼムノス…殿」
「すまんのライ坊…これは単なるワシなりのケジメじゃから、行かせとくれ!」
ゼムノスはそう告げると、一瞬で空高く飛んでいった!
「ゼムノス殿ぉ⁉︎」
「ゼムノス校長…お父さんお母さん、私行ってくる!」
「何を言っている…俺達もだ!」
「そうよ!」
なんと両親も、すぐに着替えて戻ってきた!
「お父さん達どこへいくの?」
「ラオーガ……私たちはね、あなたのお兄ちゃんが帰ってくるまであの怪物を止めなくちゃいけないの
だからあなたは先に、町のみんなと一緒に安全な場所に行っててね?」
「いやだ!あんなの相手に戦ったらぜったい生きて帰れないんじゃないか…なのになんで‼︎」
「「「ラオーガを守りたい(んだ)の」」」
「う、うぐっ!だ…ダメだよぉ死んじゃうよぉ‼︎」
「大丈夫よラオーガ!私たちはこの国の英雄ナルガス兄ちゃんが必ず戻ってくるって信じてる!
だから、このくらいの無茶はどうって事ないのよ?」
レダは震える足を無理矢理両手で押さえながら、前屈みでラオーガの前まで顔を近づけてきた。
「お、お姉ちゃんだってめっちゃ怖がってるくせに!」
「そりゃ誰だって怖いわ?お父さん達だってそう……だからと言ってなにもしないまま文句だけを言って死んじゃうよりも、自分の意志で動いてあがかなきゃ後で嫌な思いをするのは自分だけだから!」
「……」
ラオーガは何も言えずに、その場を動けなくなってしまった。
「行こっ?お父さんお母さん!サラティ達もきっと今ごろ向かってる!…ラオーガは安全な所に避難してるんだよ?絶対だよ?」
「…うん」
レダ達はラオーガを残し、彼らが向かっているであろう戦場へと走っていった。
ラオーガは家族の後ろ姿が見えなくなるまで立ったままその方向を見続けたあと、言われた通り町のみんなの元へと泣きながら走っていく…
「来る、災いの巨人とそして強き英雄達…それにこれは別の巨人が二人どこかで見守っている光景?これはどういう事なのかしら…」
皆が避難行動を移してる間も自宅で何やら呪術の結界らしきものが書かれ、その中央に膝をついていた月のごとく真っ白な体毛へと変わったルーナの姿が、その中心ににいる間清い輝きを放っていた。
「未来視…完全にはまだ扱えないけれど、今見えたものが本当にこれから起きるのならこの世界が滅ぼされるかも知れないって事なの?
正直分からないけれどこれは私も出るしかないようね……式神達よついてらっしゃい」
彼女は結界の力を解くと、元の小麦色の狐族に戻っていた。
「「御意」」
彼女の側に仕えているであろうこの世界の住民とは思えない二体の蛇が、既に6本の尻尾を生やしていたルーナが移動する際に寄り添いながらついてくる。
ちょうどその時、ナルガス達もあの巨人の姿を目視できる距離まで近づいて来ていた。
「はぁー……でっけぇなおい!あんなのにお前は吹き飛ばされてたんだな?」
「えへへへ…とっても切り甲斐がある相手がいるわね、そうでなくっちゃ!」
ラーナは不気味な笑みを浮かべながら、一刻も早く倒したくてウズウズしているようだ。
コウドル達「あわわわわ⁉︎」
「みんな慌てないで…俺達をあの怪物めがけて投げつけてくれれば、後は住民達を守る方に専念してくれたら良い!」
「…あの野郎本当に俺の体を好き勝手に使いやがって、絶対許さねぇぞ‼︎
ナルガス俺をさっさと空間から出してくれ!先にぶん殴ってきてやる‼︎」
「オッケー!派手にやって来てね…行くぞ?」
俺は手に持っていた空間内の彼をそのまま下に落とし、頃合いを見て元のサイズに戻した。
「おっしゃあ‼︎あのクソ野郎をぶっとばす!」
ゲルルは瞬時にマッハスピードで突っ込んでいった!
「大丈夫かコウドル…やっぱ怖いか?」
「そ、そりゃあ怖いさ‼︎でも私だって決めたのだ……二度と己の弱さから目を背ける真似はもうしないと!」
「良く言ったぜコウドル!お前ももう、見かけ倒しじゃなくなったみたいで安心だぜ」
「ル、ルガースそんな昔の話今は良いじゃないか!」
「アハハハ!なんでも良いじゃない、今は目の前の相手だけを見てれば良いんだから!」
「ラーナの言う通りだ…行くぞみんな‼︎」
全員「おおーー‼︎」
いよいよ、全ての種族が団結しあの巨人との全面戦争が始まった!ナルガスは今まさに戦おうとしているレダ達の元へと間に合うのだろうか?
そして先に降りている筈の神様率いる天使軍も、あの巨人が降りてきたのと同じように天から次々と降りてくる。
来たるべき戦いが今、始まろうとしていた!
決戦の火蓋は、切って落とされた!
次回から最終章となる事をこの場で訂正いたします…
今後とも皆様からの貴重な評価と感想がもらえる事を喜びの力に変えながら、日々精進して参りますのでどうぞよろしくお願いいたします!




