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救世主(?)を歓迎.2

旅の疲れが癒せぬまま、俺たちは宿屋の旦那[ドーリス]さんに無理矢理ギルドまで連れて来られてしまった。

中を入ってみたがまあ予想通り、全員がコウテイアホウドリ族だけだった……


なぜかって?こんな砂漠の辺境地帯にわざわざ大陸を超えてやって来る種族なんて、行き着いた俺達以外もうないからだよ‼︎


「申し訳ないな…古い時代では他の種族もちらほら来ていた事があったそうなのだが、この時代となると僕らのように空を飛べる種族でなければこれなくなったのだ…」

そりゃ当然だわな〜。


「…それで、俺たちはここでいつまで待てば良いのですか?最初に入ってからずいぶんと時間が経っているのですが

まあ、体は休ませる事ができてるのでそれはありがたいですけど」


「むぅ、長が今高齢でな?だいぶ時間がかかるのだ

なので僕もしばらくは一緒にいるからこのままくつろいでいただきたい…」


「え、えと…あなたは宿屋の主人ですよね?何故そんな自分の家みたいな話し方を?」


「ん?ああ、ここは僕の家でもあるんだ!ついでにこう見えても冒険者ランクはなんとCランク…そこそこ腕はたつのだよ?」

何故か力こぶすらできそうにない羽の生えた腕で、力強く見せようとしているドーリスさん。…俺がAランクだって言ったらどんな反応するのだろうか?


「「ぐー、ぐー…」」


「二人がもう寝てるのなら、俺も寝ようかな」


「構わないよ、来たら起こしてあげるから」

それは助かる。じゃあ失礼して…スピー


お言葉に甘えてしばしの時間眠りについていると、なにやら外が騒がしくなってきた。

もちろんまだ、ギルド長の姿が見えない…


「…ん?ふあぁ~外がやけにうるさいな」


「な、なんだなんだ?」


「ふみ~…」

俺と一緒に二人も起き始めた。そのとき急いでこっちに来るような音が聞こえてきて…ってあれ、ドーリスさんは?


「救世主様はこちらか~‼︎」


「「「み"ゃ~~⁉︎」」」

いきなり老人のばかでかい声が室内に響き渡り、俺たちは一斉に驚きの鳴き声を出してしまった!


「おお、すまぬな救世主様達!お休みいただいてる時に起こしてしまわれたようで申し訳ない…

ただ事が急なのでこちらもなりふり構ってはおられなかったのだ、許していただきたい!」


「はぁ、はぁ…」

あ…ドーリスさんはこの人を連れてきてたのか。


いくらこの人をおぶって来たとはいえ、そんな息を切らせるような体力ではCランク冒険者なんて務まるわけないだろ。


「い、いえちょうど起きたばかりですので…それでこの騒ぎは?」


「おおそうじゃった!実は半年前からどこからともなく現れた、黒く巨大なドラゴンがこの国に挑発をかけて来るのじゃよ…ほれ、もうじき聞こえるぞい?」

ギルド長が話し合えて間もなく、天からの大声がこの国全土に響き渡った!


『俺の名はエウルーガ・ドラゴンのゲルル!お前らの中で強い奴がいるなら東の砦跡に何人でも良いからやってこい!そこで俺と勝負しろ

もしその事をあと一年間拒んだりしたなら俺はこの国を消し飛ばす!弱い奴の居場所なんか必要ねぇ‼︎』


「…とこのように、月に一度現れてはこのように叫びまた去っていくのです

ワシらコウテイアホウドリ族の中で強いとうたわれていたコウドル殿は2年も前から引きこもっていて、誰も戦いに行こうとは思わんのだ

それもこれも、件のエルフ娘とやらのせいで!」

はぁ…ここでも説明しておかないといけないのかよ。


仕方ない、またしておこうかな…


「ギルド長、いえ…父上!その事なのですが少しお話があります」

なるほど親子か…道理でここを家と言うわけだ。


「む?どうしたのだドーリスそんなかしこまって

なんでも良いから言うてみろ」


「はい……実はこちらのナルガスさんが言うにはですね…」

ドーリスさんが俺の代わりに彼の愚行を説明してくれたよ!しかも最後は、本人が聞いたら絶対へこむではすまない言葉も出た気もする…


「なんと‼︎ではあの者は関係ない相手を襲うどころか謝ることなく、その方々にやられた傷を直せと命じていたと言うのか⁉︎

なんたる恥さらしじゃ…そんなやつだとは正直思わなんだわい!

本当にドーリスの言う通り、ただの腰巾着で見かけ倒しなアホウじゃわ‼︎」

うん、それには同意したいけど同族をそこまで批判したって自分の立場なんて守れないと思うよ?ギルド長さん。


「ナルガス様!ワシらの恥をどうかお許しください…ワシもあの[アホウ]にも罰をと言われるのであれば慎んでお受けいたしますし、要求にもできうる限りお応えしましょう!

ですからどうか、一時で構いません!ワシらの代わりにあの迷惑な竜をおとなしくさせてくださいませ!お願いいたします‼︎」


「追い払うかぁ…二人ともどうする?行けそう?」


「さあなぁ…あっという間過ぎて鑑定も追い付かなかったが、まあ備えだけはしておきたいかもな

俺とラーナはまだ冒険者ってのになってねぇし」


「おお、それならば話が早いですな!ちょうど今新しい冒険者を募集し続けていてのぉ……早速下に降りて手続きをしてくれい、さあさあ!」


「わっ、ちょっ……じいさん押さなくたって行くぞ!」


「おじいさん‼︎さりげなくあたしのおしりをなでないでよこのえっち!」

 ガリッ!


「ギョヘェ⁉︎」


「ち、父上~~‼︎」


「やれやれ、ここの手続きは世話しないな全く……ねぇ?神様」



神の間にてこの様子を見ていた神ゼオは思わず笑いたくなった。


ただナルガス達の心配と同時に、あの黒い竜族の存在から放つ違和感が気になっている様子である。


「ナルガス達、奇妙な相手に挑もうとしているようだが何故だろうか?転生者とも転移者とも違う、何かの力を感じてならないのだが…なんだこの違和感は?」

神が玉座で唸り声をあげながら眺めていると、突然白以外なにも見えない空間から異次元空間らしきゲートが開く。


ゲートから一人、人間の姿をした存在が現れそこから宙に浮いたまま彼のまえまで近づいてきた!


「まさか…あなた様は⁉︎何故このような場所にいきなり現れて来られたのですか!

もしやもう、滅びの時を迎えたと言うのでしょうか?流石に早すぎるのではないかと!」


「これこれ落ち着くがよいゼオよ、全く相も変わらず慌てやすい男よな…ワシが今来たのは滅ぼすためではないく警告じゃ!

ルシフェルが亜空間の城跡に戻ってきたようなのじゃが、珍妙な格好をして帰ってきての

それどころかそやつがワシら[古の3巨人]のうち、バカ孫であるゲルルと言う名の者が巨人になれる体を捨てて、あそこで飛び回っておるドラゴン族になりよった

その隙にバカ孫の体を、あやつはワシらの目を盗んで奪って行ったのじゃ‼︎」


「あ、亜空間…え?それはどんなところかは私にはよく分かりませんが、もしかしてこの世界はあいつの手にかかると?」


「ウム、奴の手によって根こそぎ滅ぼされるじゃろう

だが幸いにもやつはまだ孫の体との相性はいまいちらしく、同化にてこずっておるようじゃ!

ただ何年かする頃には動かすくらいはできるようになるじゃろう…」


「ど、どうすればよろしいのですか?」


「今はワシと息子のインマヌス…二人の巨人で押さえることはできておる

だがおそらく10年も持たぬ故、あのナルガスと言う猫族になった子供と全ての種族をひとまとめにできるよう、今以上に働きかけよ!その為にお主を世界の管理として任せておるのじゃ!」


「は、はい!しかし今更ですが是非ともお聞きしたい事が……

何故私たちの暮らす世界をおつくりになろうとされただけではなく、この世界で[スキル]と呼ぶものを備えられた訳とは一体?」


「うむ……話すと長くなるのだが、かつて我らのような人間嫌いの同志達がそれぞれの好きな動物を連れたまま過去の地球で不慮の事故にあい行方不明扱いとされてらしくてな?

なので次世代となったワシらが存在している亜空間内は地球の次元・時間軸とはかけ離れており、寿命の概念は無くなった…

長い年月を過ごすうち、次第にそれぞれ意思の具現化によってこの世界を作り上げる事ができるようになったのだ!

なので人間とは無縁な所で幸せに暮らして欲しいが為に連れてきた動物達に人以上の知性と能力、そして[スキル]の可視化を顕現させるプログラムを2万年もかけてあみだし、今お前のいる神の間を含めた箱庭の楽園・『エデンキューブ』が完成した!

ただ、ワシらは所詮"元"人間……罪を犯すワシらが『エデンキューブ』の中に入ってしまったせいで、人の呪いとも言える[罪]とともに入ってしまった!

それは瞬く間にこの世界に広がってしスキルで善悪を見極めてくれる種族が現れ全土てのぉ、動物だった種族がてんで気づいてくれなかったのが残念じゃ……」


「えー…初代神のアバ様?過去にこの世界で人族として暮らしてもいた私ですが、ご無礼を承知で一言だけ言わせていただいてもよろしいでしょうか?」


「む?構わんぞゼオ、何が言いたいのじゃ」

神ゼオは思いっきり息を吸い込みそして止めた。


その先からくり出される大声に、初代の神…アバは思わず仰け反る事となる。


「何でもっと初代の教会やら神官やら種族達に、スキルだのステータスだの最近入ってきたばかりの日本人だったナルガスがやっと分かるような事を真面目に教えてこなかったんじゃいゴルゥア~~‼︎」


「んぬ~~‼︎⁉︎」

その後アバはインマヌスが心配してしまうほど、耳を押さえながら落ち込んだ様子で亜空間に戻ると無言でルシフェルの封印に力を注いだのであった。



こんな天界のいざこざがあったとはつゆ知らず、俺達は冒険者登録と武器などの支度、そして倒したキリング・ミールの素材を高額で買い取ってもらえた。


今更ながらラーナは長い間シャツ一枚だけしか来ていない故に、当然下着は全て着けずに生活してきた…

それを知った防具などの女性店員さん達からは…『信じられない!』と、俺は怒られてしまう。


この機会にルガースには防具であるライトアーマー、そして驚いたことに手甲というナックル武器…ちょうど素手で炎甲と呼んでいるスキルを使っているルガースにピッタリな武器を手にいれた。

それとラーナには服と下着を買ってあげる事にしたんだが、どうしても突っ込みたい事がある。


それは……なんでこの世界、しかもコウテイアホウドリ族の国に[漆黒のゴスロリドレス]なんてもんがおいてあるんだよ!

これは俺以外にここに来てた転生者の発案だって言うのか?

確かに似合う!似合うけど…ファンタジーはどこにいったぁ⁉︎


「わぁいかわいい~!ねぇどうどう?ナルにぃ‼︎」

まあ、ラーナが喜んでくれたのならもうそれ以上は言わないでおこうか。

一通り買い物を済ませた俺達は宿屋で食ううまい食事を三人で堪能し、一晩ぐっすりとその日はゆっくり眠りについた。


翌日の朝…朝食を取る為に降りてきた俺達に、宿屋の奥さんとドーリスさんから「それを食べてからでいいから、あとで外に出てみてほしい」と言われた。

よく分からないまま宿屋の外に出た俺達のまえには顔と全面がボロボロに殴られた後のような格好をしたコウドルが、泣きながらじっと立っていた…


「うぇ⁉︎コウドル……なのか?どうしたんだそのけが!」


「「うひゃあ…」」

後ろにいるルガースとラーナもドン引きである。


「な、ナルガスさん!あの時はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした……もう二度と手当たり次第に通行人へ攻撃を仕掛ける真似はいたしませんのでお許し下さい!」


「あ、ああうん……分かってもらえたのならそれでいいんだけれど、もしドラゴンの件が片付いたなら力を貸してほしい事があるんだ!良いかな?」


「は、はい!私などでよろしければ‼︎」

こうも変わるもんなんだな。


「ありがとう!じゃあ行ってくるよ…行こう二人とも!」


「おう!」


「うん‼︎」

さあて、どんな強いドラゴンご相手かな?流石にゼムノスほど強くないことを願いたいところだけど。


俺達がそのドラゴンがいるという東の砦内に入ってみると、ゼムノスほどではないがそこそこ黒くて大きいドラゴンが目の前で眠っていた!


「おい!お前が昨日コウテイアホウドリ族の国にちょっかいかけてた竜だろ?俺達が相手してやるから早く起きろよ‼︎」


「…んあ?ようやく来たか、退屈で死ぬとこだっただろうが…って‼︎てめぇはあのとき吹っ飛ばしてやった猫族のガキ!なぜ平気そうに生きてやがんだ⁉︎」


「ん?誰と間違えてんだ?俺はお前みたいな特徴的な黒色のドラゴンになんか会った事ないぞ?」

俺は素直に話しているのだが、相手はかえって混乱し始めた。


「ふざけんじゃねぇ‼︎確かに俺は2年前、あのちっせえ竜に抱えられたままのお前を巨人化した俺の白炎弾によって吹き飛ばしてやったってのに、なぜまだ生きてやがる‼︎答えろ!」


「何?まさかお前が…あの時俺をこの砂漠の大陸まで吹き飛ばした巨人だってのか?」

俺の体の周りから久しぶりに、赤と黒が混じった雷が暴れ始めてきた。もう封印が破れそうなくらいに…


「うげっ!やべぇ⁉︎」


「ひゃあ~~⁉︎」

二人は後ろで震えていたが、俺は構わずゆっくり前進しながら問いただす。


「本当にお前があのときの巨人で間違いないんだな?

ならちょうど良いや!俺も是非お礼がしてやりたかったんだよ

ここまで吹っ飛ばしてくれた……オレイがな‼︎」

一瞬で間合いを詰めた俺は、刀を構えて奴の腹を勢いよく切りつけた!


「ギャア~~‼︎」


「二人とも俺に続いてくれ!こいつは……とことんぶちのめす‼︎」


「お、おう…(怖すぎだろナルガス)」


「キャッキャッ‼︎……良いの?いいんだよねぇ?切り刻んじゃってもいいんだよねぇ‼︎」

 

「ラーナがまた興奮して……ああくそ!もうどうにでもなりやがれ‼︎いくぜラーナ!」


「はーい‼︎ウフフフ!」

ラーナはデモンイーターを魔力のみで形成・展開し、ルガースも武器である手甲にスキル『炎甲』を発動して戦いに備えた!


「行くぞオラァ~~‼︎」


「ギャア~‼︎…この世界の種族がこんな化けもんだなんて聞いてねぇぞ、ルシフェル~~⁉︎」

三人の連携攻撃が一度に炸裂し、エウルーガ・ドラゴンもとい…元巨人のゲルルはなす統べなく気を失うまで切り刻まれ、殴られ続けてしまったである。


(こんなことなら、巨人のままでいれさえすれば勝てたかも知れねぇってのに…俺のばか野郎~~!!)

 ズタボロに敗れた彼の目には、後悔の涙が零れ落ちていた…


「…とりあえず、凝らしめる事はできた訳だしさっさと戻るか?ナルガス。」


「フゥ……そうだな、ルガース。ん?ラーナはどこだ?ラーナ~!」


「ここだよ~!」


「「??」」

 声がする方に向いてみると、デモンイーターを使って黒いドラゴンの尻尾を切る所だった!

 サクッ!


「…!?ギャー!!」

 うわぁ、かなり痛そうだな…あんなので切られちゃ。


「えへへ!倒したってことで持っていきたくなったの!!」

 悪意のないまま行動に移す、子供の純粋さが時折恐ろしいもんだなと感じた俺だった。


「あ、ああ!そうか。まあ、今日のところは凝らしめる事ができたわけだし、この辺で帰ろうぜ?」


「おう!」「はーい!!」


「ま、まってくれ…ナルガス、と言ったよな?行く前に一つだけ教えてくれ。」


「…なにを?」

 威圧をたっぷり込めて問いかけた。


「!?…あ、あの時お前は『盾で防いでただけ』のはずなのに、何で傷一つ負わなかった?」


「ああ、そうか。お前は空間操作のスキルを知らなかったんだな?

 冥土の土産に…って言っちまったら俺が今度は悪役になっちゃうから、その身で覚えてもらいながら一緒に来てもらうか。

 二人とも、こいつを持って帰ってみんなにちゃんと謝らせてやろう。それで今回は許す。」


「…まったく、怖いんだか優しいんだか!ナルガスの好きにしたら良いぜ?」


「あたしは、この子のひめいをもっと聞きたくて仕方なかったんだけどねぇ?…ナルにぃが決めたんなら、良いや。」


「ひっ!?」

 固い鱗に覆われている全身に、例えようのない悪寒が湧き大量の汗を流し始めたゲルル


「こらこらラーナ?敵ではあっても俺らとおんなじ生き物なんだよ。相手の心を痛め付けて喜ぶ真似ばかりしていたら、今度はラーナが怖い思いをしちゃうんだからな?」


「ひゃう!?ご、ごめんなさい…ナルにぃ」


「…お前ら、本当に動物から出た種族なのか?」

 何か『ひっかかる』言い方をするゲルルに、俺は一応空間操作でぐるりと囲い圧縮してから拾い上げた。


「!!こんな魔法、見たことねぇ…」


「魔法じゃない…『スキル』だよ。さて、さっさと帰るか!これで俺達は帰って報告すれば、今日の依頼は完了だよ?」


「………」


 ゲルルは、こいつらは巨人化した俺なら倒せたかも知れないと考える一方で、もし全ての種族がこれほど厄介なスキルを持っていたとなれば、勝てたかどうかわからないのではと、同時に考えていたのであった。


このシーンに書く文が、思いの外長く感じましたよ…

次の更新は9月25日の土曜夜21時頃です!

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