ルーナに扇子を
俺はノーガルド10世様(王さま)達を空間にいれて運び、ライさんは今大樹までの道を案内してくれている。
「そう言えばライさん、蜂の巣ってかなりでかかった?」
「ええもちろんですとも!大樹のウロの中に入ってみたら、天上に数多とおりましたぞ」
「そうか、木の中は燃やしたくないなぁ……外に出るとき一番火の通り道になるもん」
なるほど、それは俺も嫌だ。
「えっと…レダさまにナルガスさま、少しよろしいでしょうか?」
オーガの女性が声をかけてきた。
「どうしたの?オーガの…えっと」
「失礼しました、わたしはオールカと言います!それとこっちは……」
「オークのオクリーナです!よろしくお願いします」
「オーガのオールカさんとオークのオクリーナさんだね?よろしく!それで、どうしたの?オールカさん」
「あっはい!本来この国の大樹内に住んでいたヘル・ホーネットは、外部からの攻撃がない限り外に出ることはしないんです…何故、やっつけてしまわれたんですか?」
「うーん、実はね…」
レダが俺達の町で起きたこと。そして、ヘル・ホーネットを召喚したのが竜族のグルーソという奴でライさんの封印を解き、その手で潰されて絶命したこと。
その巣から戻った大群に、再び町が襲われてしまったことなどをかいつまんで説明をしてくれた。
「そうだったのですね…」
「私たちもあの者は正直信用しがたい印象はありましたが、そんな事が…」
「む、ううーん…」
あ、王様が目を覚ました。
「「王さま!」」
「おお、お前達…これは一体?」
「今ナルガスさま達がわたし達を運んでくださっているのです!ここなら、安全との事ですよ」
オクリーナさんが、王さまに自分達の身に起きている事を伝えた。
「そうか……すまんかったのぉナルガス」
「別に構いませんよ、王さま」
「お、ナルガス殿!見えてきましたぞ」
「…改めて間近で見るととんでもなくでかいなぁ」
「お兄ちゃん!上を向き続けちゃって首が痛くなるよぉ〜」
「つらいなら一度前を向いときな?レダ」
「うん」
「我が一人で来たときはあらかた出払っていたので数匹が残っていた程度でしたからなぁ……残ってるのは蜂の子供くらいかと」
「中に入っても大丈夫そう?」
「恐らく……ですが、油断をなさらぬように」
「分かった!ならこれで…サーチ」
うん、なんか上にいるね。一匹だけか?
「お兄ちゃん、なんか上から来た!」
「おっと!」
「かえれ、かえれ!」
勢いよく上からお尻の針で攻撃をしてくるヘル・ホーネット…しゃべれるのか。
「邪魔してすまない…ここにはお前しか住んでいないのか?」
「だったらなんだ!」
「いやたいした用じゃない、ここの木材が欲しいから取りに来ただけだ
木材を手に入れたらさっさと帰るから、心配しないでくれ」
「ほんとだな?うそじゃないな?」
「ああもちろんだ!取っても構わないか?」
「…わかった」
「ありがとう……ライさん、木を削れそうな場所ってどこかな?」
「うむ、我の採った場所はこっちですぞ」
目線の先にあるのは、うろの中にできたコブみたいな場所だ。確かに切り取った跡が見える。
「ま、まった!もうそこからはとるなー!」
ヘル・ホーネットが慌てて俺達の前に飛んできて、威嚇し始めた。
「え!じゃあどこならとって良いのさ?」
「……ついてきて」
俺達は、このヘル・ホーネットに案内された所にたどり着いた。
「これはまた、歪な形ですな」
「ここも、このおおきなきにできたこぶ…でもこれはいらない!もっていって」
「わかったありがとう!みんな、これを手に入れるから少し下がっててね」
俺はレダに三人が入った空間を渡してから、ライさん達に安全な所まで下がってもらった。
「あいつ、なにするんだ?」
「あはは、見てれば分かるよ?ぜったい驚くから!お兄ちゃんのやること」
「レダ……まあ良いか、ホイッと!」
俺は円風刃でこぶのところを丁寧に切り取って行く。それこそ、前世で言うところのチェーンソーみたいに…
「………」
「ね?驚いたでしょ」
「うん…」
「フムム、我も炎魔法で同じことをしてみたいものですなぁ」
「ライさん火でそれをするのだけはやめて‼︎下手したら森が全部焼けちゃう!」
「し、承知した」
「よし切り終えたぞ!後はこれを収納して、と…これならいくらでも作れそうだ!」
「お兄ちゃんおつかれー」
「いやはや、見事なお手際でしたな」
「…ありがとう?おまえいいやつ」
「どういたしまして!良かったら君も俺たちの町に来ない?」
「おれはもんすたーだから、みんなかならずころしにくる」
「大丈夫!ブラックビーのビーって名前の女の子蜂もいるんだから気にしなくて良いよ?」
「ぶらっくびーさまが?すごい‼︎」
へぇ、上位種の蜂には敬語を使うんだな。
「じゃあ決まりね!あなた名前はある?」
「ない」
「うーんどうしよう…レダにライさん達も、何かいい名前がある?」
「ハッチャンはどう?お兄ちゃん」
「フム、ヘル・ホーネットならばヘルネットはいかがか」
「ワシならば、ヘルンと名付けたいのぉ」
「私は…ヘルーネ」
「わ、わたしは…ヘルッホですかね」
「みんないい名前ばかりだな」
みんなが良い名前の候補を上げてくれているなか、ヘル・ホーネットが足の一本を使ってツンツンと俺を突っついてくる。
「おまえ、おれになんてつけれる?」
「俺か…そうだな、ヘルートってどうだろう?」
「いいなまえいっぱい、まよう」
「じゃあ移動しながら決めよう?みんな空間にいれるから広いところに移動してねー!ほら、君も早くおいで?」
「??」
彼が頭にはてなマークを浮かべつつも、みんなと一緒に広いところまで来た。
「じゃあ行くよー……はい!」
「うわわわ!」
よし、この乗り物でみんなを運ぼうか。
「ほらほら大人しく座ってて?移動し終わったらまた外に出すから」
レダとライさんはストンとすぐに座るが、他はどうしたらいいのか分からずにいた。
「みんな体の大きさが違うもんね…大丈夫!まず好きな所で腰を下ろしてみて」
言われた通り、皆がそれぞれ座ってみた。
「これは!なんとも座り心地が良いのぅ……今はこんな素晴らしいものができておるとは、長生きして良かったわい」
「べとべと…なのにあんしんする?」
「その説明は移動しながらにするね
ライさん、今なら夕方には帰れるかな?」
「無論!どうか安全にお願い致しますぞ?」
「はーい」
みんなで大樹を後にした。
移動しながらこの乗り物の説明をレダが代わりにしてくれた事になったのはとても嬉しい。正直、話しながら走るのは疲れるから…
それからざっと1時間半くらいかけて、俺達は夕方にルードスへと到着した。
「おう、ナルガスおかえり!お目当ての木材は手に入ったのか?」
「うん、バッチリだよジグルさん!それともう一つ…新しい仲間を連れてきた!」
俺は乗り物を広いところに置いて、元の大きさへと戻した。
「いやー、行き来共によい乗り心地でありましたナルガス殿!レダ嬢、着きましたぞー?」
「……はっ!ね、寝てないもん」
「レダ嬢、よだれよだれ」
「はぅ!」
かわいいなぁもう!
「さて皆様方、降りましょうぞ?」
「おお?なんだ、また新しい住人か…っておいおいおい⁉︎マジかよこりゃあ!」
町の皆が見守るなか、ノーガルドの王様と側つきのオークとオーガが降りてくる。
そして最後に、ヘル・ホーネット君が降りて来たせいでジグルさんを含めた町の皆がひどくパニックになってしまうが…
「皆の者恐れることはない、彼らは己らに害を及ぼすことは一切していないのだ!
現に我らが無傷であるのは明白ではないか」
「そ、そうは言うけどよライ…」
ジグルさんも、まだ警戒が抜けてないのは無理もない話だわな。
「待ちなされ犬族の長よ」
「王さま?」
俺はノーガルドの元王さまに声をかけた
「もうワシは王でも何者でもない、ただのノーガルドと言う名だけの老いぼれじゃよ
それにこのヘル・ホーネットは本来、外部から攻撃がない限り襲ってはこんのじゃ!
原因はライ様とそこのレダ嬢ちゃんから聞いたぞい?
竜族のグルーソ……奴が我が国を訪れてきた際に、おおかたこの者らが暮らす巣の下に召喚術を施し、召喚術の結界に洗脳の印を記したんじゃろう」
「そうだったのか……くそ、つくづくあいつをもっと殴り付けてやりたかったと感じるぜ!」
ジグルさんは悪態をつきながらも、新しい住民となる彼らに町長として挨拶をした。
「正直いって、すぐ気持ちを切り替えるのは難しいがせめてこれだけは言っとく……ようこそ、すべての種族が集まる町ルードスへ!町の者を代表して歓迎するしよう‼︎」
うん、ひとまずは良かったと今は言っとくべきだな。
「よぉナルガス!なんかまたたくさん連れてきたな」
「ヴォルスにみんな、紹介するよ!ノーガルドの元王さま、ノーガルドさんと付き人の…」
「オーガのオールカです」
「オークのオクリーナです!」
「「よろしくお願いします!」」
「まさか、オークやオーガまでもが仲間として仲間になるなんて!
やっぱりナルガスは何でもありだね」
「今に始まった事じゃないでしょ?エリオル」
「ナルガス、ヘル・ホーネットのオスを連れてきたの?」
「ぶらっくびーさま!」
「ひゃん!」
「ヘルス。落ち着いて?」
ヘル・ホーネットの名前は俺が運んでいる間にその名前で落ち着いたので、これからは彼をそう呼ぶことにしたのである。
「わかった…」
「ナルガス、なんかまた色々おきそうな気がするんだけど…オイラ」
「ごめん、こっちも色々あってね…」
「ナルガス!何か良いものとかあった?」
「うん、一応倒したモンスターの素材とヘルスが済んでいた巣の奥に大樹のコブがあってね?それを一つもらってきたよ」
ドルファ達の目の前で、俺はどかっ!と大樹のコブを置いた。
「これはすごく丈夫そうだね!もし余るようなら僕も少しもらっていい?」
「うん良いよ!その前に…ルーナ〜!」
「はーい、空間の隙間からこんばんは〜!」
「あれぇ?なんかルーナの雰囲気が更に変わってる⁉︎」
「す、すまんナルガス」
「お父さんにお母さん、一体どうしたの?」
「実はみんなで食べるための食事を準備するときにお酒も用意してたの
そして私たちが少し目を離してた間に、ルーナちゃんたら一口飲んじゃったのよ…」
「あーなるほど…それじゃこれは酔っぱらってるんだな」
子供のうちからお酒飲んでしまったら、将来それがクセになりそうだ。
「えへへへ~♪」
「もう、ルーナったらやっと捕まえたわ!
あっ、ナルガス兄さん達お帰りなさい…って更に何人か増えてるね?」
コルナもすっかり、俺の周りに集まる不思議体験に耐性がついちゃったみたいだな。
「コルナもなんか大変だな」
「まあこれはこれで楽しいよ!そう言えば、ルーナに何か用だったの?」
「ああ…実はねルーナに合いそうな武器を作るつもりなんだ
出来上がったらすぐに渡したいなぁって思うんだけど、これじゃあ…」
「あははは♪大丈夫だよ~」
「…そんな格好で言われても全然そうは見えないのは俺だけか?」
ルーナの着崩れた服の中が見えそうなので、目をそらす俺。
「「⁉︎」」
コルナとレダが、見事なコンビネーションでルーナの服を整えていく。
「と、とにかく!食事前にはルーナの武器は出来上がるから期待して待っててね」
「は~い」
俺は皆から離れて、早速扇の小型タイプである扇子作成に取りかかった。
大まかな部分を円風刃で二つ分切り落としてから、今度は木工用の小道具をフルに使い、プロ並みの手際で素早く細かい骨組みを作る。
あとは、薄い紙にする為に残しておいた端材を、かんなですぐ途切れないように削る。
本当は紙をすぐに用意したかったんだけど、今からゲラルドまで買いに行っても間に合わないので、急ごしらえである。
絵具作りのついでにつくっておいた糊を取り出して、扇子の紙代わりになる削った木の皮を両面に貼った。
もう一個も同じようにして、レダに呼ばれる前に無事2つほど完成した!
「うわぁ!お兄ちゃんそれ何?」
「あれ?レダは前世で見たことなかったっけ…これが扇子だよ」
「ないよー、これってどう使うの?」
「これはね、こうやって自分に向けて軽くパタパタと仰いだら涼しい風が…」
ビュオー‼︎っと、まるで強風に煽られたかのような感覚をこの扇子から感じたんだが気のせいだろうか?
頭の毛が不自然な方向にまとまってしまう。
「………ほぇ?」
「お、お兄ちゃん⁉︎」
「あはは、おっかしいなぁこんな風が吹くなんてあり得ないのに…」
パタパタパタ!……ゴオォォーー‼︎
「ウンギャーーーー⁉︎ケホッ!ケホッ‼︎……どうしよう、ヤバイ物を俺作っちゃった」
「お兄ちゃん……それ今度作るときは普通の木にしとこ?」
「うんうんうん⁉︎」
こうして俺の想像を遥かに超える風力を生み出す扇子を二つ、誤って完成させてしまった。
ひとまず約束通りルーナへ渡しておいたが、翌朝の魔界出発で現地につくまでは[絶対に扇子を開かないで]と、俺らしくもないくらい口を酸っぱくして注意してから、皆と食事を済ませて今日は寝ることにしたのだった。
魔界にいる魔物に同情はしたくないが、間違いなく明日の魔界は強烈な嵐が巻き起こる事となるだろう…
じぶんの未熟な作品を見に来ていただけた方々には、感謝しかありません。
そして図々しくはありますが、願わくば一言でも感想やささやかな評価をいただけるとよりいっそう心が勇気づけられますので、どうかお願い致します。
次回の更新は、今夜の10時頃にまた上がる予定ですのでどうぞよろしくお願い致します。




