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もうピクニック気分で…

ルードスの先に見えた平原から、今度は北の国方面へと向かう俺達。

もう、後一時間もしないで着きそうだな。


「ナルガス殿、少し先に見えてきたあの壊れている白い壁の先が北の国[ノーガルド]ですぞ」

そうか。となると、手前に見えてきたのが町だった所の[ラノーガ]か…これはもう、瓦礫跡にしか見えないな。


「ライさん、ノーガルドで蜂の大群が沸いてた原因ってもう解決済みなんだよね?」


「もちろんですぞ!なのでこのまま突っ切って頂いても構いませぬ」


「分かった!とりあえず、いつでも止まれるように少しずつ遅くするからね」

町中では恐らく猫族であろう骨と、ゴブリン達の死体が所々に点在していた。


「…お兄ちゃん、気持ち悪いよぉ〜」

レダも流石にまいってしまったみたいだ。


「少しどこかで休むか?」


「うん…」

いったん死体が比較的少ないところに、俺達は移動することにした。


ライさんが水のありそうな所を探してくれている間、俺に今できるのはレダの背中を優しくさすって落ち着かせる事くらいかな。


「お兄ちゃんありがとう、少しだけ楽になってきたよ…」


「そうか、それは良かった…ここから歩いていくと国につくのはもう少し時間がかかるしまた後で運ぼうか?」


「ううん、ちょっと私も歩いとく……見るのはまだあまり慣れないけど。」


「そうか、無理はしないでね」


「うん!」


「ナルガス殿~!レダ嬢!飲める水がありましたぞ」


「本当?ライさん!じゃあ行ってみようかレダ」


「うん!でも怖いから離れないでね?」


「わかったよ」


「ははは!こうしてみるとやはり年相応の反応で、見てると微笑ましいですな」


「もうライさん!」


「どうどう、レダ」

馬じゃないもん!と文句を言いつつ、俺達と一緒に歩くレダ。


「もうそろそろ見えてきますぞ?あちらです」


「井戸だ!ちょっと壊れてるけど」


「喉かわいたー」


「分かった分かっ……‼︎二人とも構えて!」


「「‼︎」」

俺達が戦闘態勢に入ったのを見て、身を潜んでいた連中が姿を現した。


「ギャッギャッ!ギャ‼︎」


「ギィー‼︎」


「ギャイギャイ!」

急にゴブリン三体が現れた!


「ただのゴブリンでありましたか、なら問題なく倒せ…」

ライさんが言い切る前に、三体が驚く速さで撹乱してくる。


「むっ!」

こいつら、速いし賢い動きをするんだな。そっちがその気なら…


「ライさん、レダ!」


「「(頷)」」

三人で背中合わせで構えることにした。そして、オーバーセンス発動!


「俺のスキルの前ではお前らの動きは…無力だ!」


「ギィヤァァ‼︎」

まずは一匹、難なく始末できた。


「ギ!」


「ギガ⁉︎」

二匹は警戒して高速移動はやめたようだな。


「あ、撹乱はすんだのか」

さて、あと二匹はここからどうでる?


「……ギギー‼︎」


「「「逃げた!」」」


「せめてもう一匹だけ倒すか……[円風刃]!」


「ギャ!」

仕留めたか。後の一匹は逃げちゃったけど


「さてこいつらの解体をしといてっと……あったな魔石」


「「本当に容赦ない…」」


「モチロン!襲いかかるのなら俺は遠慮しないよ?仲間は別だけど」


「え、えへへへへ…」


「はっはっはっは…」

二人はひきつった笑顔しかできない…

この後俺達は一旦井戸から水を飲んで一息ついてから、再び国に向けて出発した。


井戸の所から歩いて30分くらいかな。ノーガルドの城門跡を見つけていよいよ城下町に入ろうとする俺達を、熱烈に歓迎してくれてる奴等が現れる。それは、モンスターパレードにいたモンスターどもだった!


「ははは!これは、なかなかのおもてなしでありますなぁ‼︎」


「ライさん楽しそう!」


「左様ですともレダ嬢、久方ぶりに体を動かせるのですからな!」


「ねぇお兄ちゃん!今度は私とライさんにやらせて?」


「ああ、良いよレダ」


「ふふ、我も久しぶりに張り切ってみせますぞ?……いざ‼︎」


モンスター達「グオオォーー‼︎」

相手のモンスター達もやる気いっぱいだった。


「んじゃライさん、先にわたしから行くね?てーい‼︎」


モンスター達「⁉︎」

後方にいる味方のモンスター達を、レダの上級炎魔法で焼き付くした。


「やりますなレダ嬢‼︎では次は…我ぞ!」

今度はライさんの目にも止まらぬ速さで、大小問わず目の前のモンスター達は切り殺されていった。


「……」

速攻かよ⁉︎残る敵モンスターは…あと二匹か。


「モンスター相手とはいえ怯える相手を切るのはちと気は引けるが…許せよ?お主ら」

ライさんは再び血糊がついた刀を勢いよく振って飛ばすと、改めて鞘へとしまい居合い斬りの態勢になった瞬間目の前のモンスター二匹が口を開き始める!


「待ってください‼︎降参、降参です!」


「こ、殺さないで下さいませ!」


「「「……え⁉︎」」」


「オークとオーガがしゃべって来た~!」

俺が大声出して驚いたのを見た彼ら(?)は、両手をあげて降伏のポーズのまま更に口を開く。


「ちょっと軽く実力を見てみようかなと思ってただけなんです!」


「お願い‼︎できることだったら言うこと聞くから殺さないで~!」


「こ、これじゃあ俺達が悪者じゃないか…」


「私も、これは流石に殺せないなぁ」


「フム…ではお主らに尋ねるが構わぬか?」


「「ハイ!」」


「ノーガルドの国王はおられぬか?我らは神に命じられてここまで来たのだが」


「まさか!あなた様がかつておに猫となってお暴れになられたという、ライ様なのですね‼︎」


「良かった~!てっきりそちらの男の子かと思っておりましたので」


「ああいや、その…」


「すまぬお主達、こちらにおられるのはナルガス殿とその妹君・レダ嬢だ

そしてこのナルガス殿もまた、おに猫となった我に匹敵する力をお持ちなのだ」


「「………」」


「あはは…ども」


「「……ブクブクブク」」


「なんか泡吹いて気絶したー‼︎」

できれば案内してもらいたんだけどなぁ。


「どうしようお兄ちゃん、起きるのを待つ?」


「まぁ、そうするしかないわな」


「ではこの者達は一度、我が道の端に避けておきましょう

お二人は死体の処理をお願いしたい」


「「はい」」

俺達は処理の前に死体から素材になりそうな部位と、ついでに魔石を集めてからレダの上級炎魔法で火葬してもらった。


ちょうど火葬が終わった頃、二匹は目を覚まして来た。


「うう…私たちは気絶していたのですね?」

そりゃもう、長いことね……


「お手数をお掛けしました!王の元にご案内致しますのでどうぞこちらへ」

仲間の死には一切気にする素振りはなく、そのまま王の城へと俺達は通された。


目の前から少しやつれた猫族の王らしき相手が近づいてきた。


「よ、ようこそおいで下さいましたライ様、そしてお連れの方々……ワシがこの国の元国王・ノーガルド10世でございます」

老猫なのか、それにしてもひどい有り様だ。


「お見苦しい姿で申し訳ありません

ですが、どうしても生きてる間におに猫になってしまわれたライ様とお話がしたかったのです……その為にワシはこの手を汚して…」


「良い、過ぎた事ゆえもう己を責める必要は無かろう」


「ありがたきお言葉!やはりご先祖様のおっしゃっていた通り、お優しい方で安心致しました」


「……ノーガルドは我になんと申していた?」


「『我らが嫉妬してしまうほどに優しく、強く……そして勇敢な友だった』と、いつもおっしゃられたと代々語り継がれて来ました

ただ、全種族の女に好かれていた事だけは解せぬとも言われておられたと」


「……」


「「あー…」」


「ラ、ライ様って女垂らしだったのかな」


「シー、聞こえてるから!今の私たちでは完全に無力でしょ‼︎」

女の方でしたか……そしてレダ、何となく人の尻尾を握らないで。

言いたいことは分かってるから!


「…我も、今にして思えば当時に何故たくさん寄って来られたのか知るすべもなく戸惑い続ける日々を送っていた為、何をどう接すれば良かったのかずっと分かりはしなかった

だが、このナルガス殿達のおかげで、我の身に起きていた原因が分かったのだ」


「おお!それは一体何だったのですか?」


「む!う……」

ライさんは気まずそうにしていたので、俺が代わりに話すことにした。


「えっと、その辺については俺からお話します……実はライさんには魅了スキルと言うものが備わっていた為、俺達が今いるルードスに暮らす女性達も、ライさんの体から出る光を見た女性は種族とは関係なく魅入られ、この人にみんな殺到してました…ここにいるレダも同様に」


「おおお⁉︎お兄ちゃん~!」


「そんな慌てなくとも…よしよし」


「にゃうー…ずるいよぉ」


「…あなた様ももしや、おモテになられてるのではないのですか?」


「そうです!お兄ちゃんもとてもモテてます‼︎」


「え?レダ⁉︎」

舌をちょろっと出して小声でおかえしだよ?って言われちまった…くそぅ、抱きてぇ!


「事情はよく分かりました

あなた様が語り継がれて来た通り良きお方だということが分かっただけで、私は満足して天命を迎えられそうです…」


「ノーガルド10世殿!」


「良いのです…この国をここまでひどくしてしまったのは、ワシの身勝手さが招いた結果なのですから

ワシは先祖の気持ちが知りたかった…

その為に若い時から何度も訪ねて南と東の王に二人の先代が何を思って、ライ様を封印されたのかを聞く為、何度も足を運んでいたのです」


「「「……」」」

とても一生懸命な方なんだな。


「そんなとき、8年前もワシが帰り仕度を早めに済ませて帰る最中、扉越しに二人が廊下を歩きながら話しているのを聞いたのです

『おに猫様を封印したご先祖様達は正しいよな?お気に入りのメスをいつもとられててムカつくと言ってたんだからなぁ!』

そう聞いた瞬間、ただの妬みなのではないか!と、あの嘲笑っていた二人に対して初めて殺意が込み上げて来たのだ!

故にその日から一年もの間ワシは冷静さを完全になくし、二つの国を滅ぼす為魔物を呼ぶ術を無理やり完成させたのです……」


「…それで南と東の王を殺そうとしたんだね」

俺は正直、怒りたいけど怒れなかった。

この人は殺戮を楽しむために、東の国を滅ぼしに来たわけではなかったから。


でも、俺もこれだけは伝えておきたい。


「…ノーガルド10世様、俺はライさんと同じく異世界から来た元人間です

そして同時に、あなたの従えるモンスター達によって蹂躙された東の国の生き残りです」


「な、なんと‼︎」


「実は俺、赤ん坊の時からついこの前まで、あなたの連れたモンスター達の中で一番憎んでいたゴブリン達に国中の猫族が殺される所を何度も思いだし、復讐を必ず果たしてやると考えながら生きてきました」


「…」


「ですが、神様からの説得や最近できたゴブリンの友達…コルナという存在がいまおかげで、その気持ちが少しずつ癒えてきたんです

そして、ライさんを思うご先祖の気持ちをあなたは持っておられた。

こうしてその事を聞くことができて、今本当に嬉しいのです

だからせめて、天命を迎える前に俺達の町に来てください!そこであなたが見たかったものが必ず見れますから」


「すまん……本当にすまんかったのぅ‼︎」


「ノーガルド10世殿…」


「私も一つ聞いて良い…ですか?」


「レダ?」


「どうして賢者だった私の本当のお父さんとお母さんは死ななきゃいけなかったの?」


「…すまん、ワシはあの二人の王に復讐することしか考えてこなかった

そして反対していた賢者達は儀式から外し閉じ込めるよう命令しておったのだ

だが、頭に血が登っておったワシは脱走の知らせを聞いたとき、感情のままに『生かしておくな!』と愚かな命令をしてしまったのじゃ……

本当に、本当にすまんかった‼︎」


「…そっか」


「レダ…」

俺は後ろからそっと抱いてやる。以前泣きじゃくっていたレダをあやすように…


「ううぅ…」

俺の方に向き帰り、声を殺しながらレダは泣いていた。


「…お前達には、たくさん悲しい思いをさせてしもうたの

こんなワシでも、お前達は町に連れていきたいと思うか?」


「グスッ…本当はまだ気持ちがモヤモヤしててなにもわからないけど、見てほしいのは変わらないもん!それでみかたを変えてくれるなら!」


「俺もレダと同じですよ」


「そうか……ではすまんが、二人だけになってしまったワシの配下も一緒に連れていって頂けないだろうか?今日までこんな老いぼれの世話をしてくれておったのでな」


「「王さま!」」

オークとオーガの二人は、目を潤ませてノーガルド10世様を見つめていた。


「承った!ナルガス殿、レダ嬢…よろしいのですかな?」


「「うん」」

こうして俺達は三人を連れて町に帰還することになった。だが、気になる奴がそばにいるからさっさと始末しないと…


「そうだライさん、帰る前に寄りたい所があるんだ

ライさんがヘル・ホーネットの巣を解決してくれた所で木材の採取をしたいんだけど…」


「もちろん構いませぬぞ?すぐ案内致しましょうか」


「うん!とりあえずノーガルド王さま達も来てくれますか?俺が運びますので」


「は、運ぶとはどうして……む?」


「そう、アイツがずっと睨んでるのでね」


「ギャ!ギャッ‼︎」


「あれは!先程のゴブリンか」


「王さま!野生のゴブリンエースですから早く下がって!」


「あいつは仲間じゃ無いんだな?」


「もちろんです!ただの野良だから……でも、すばやさに関してはゴブリンの中では最速よ」

なるほど、道理すばしっこいわけだ。


「じゃあいっそのこと、先にアイツも残りの二匹と同じところに送ってあげようか!二人はその間、王さま達を守ってて?」


「はーい!」


「あまり遊びすぎないで下され?」


「あはは…わかったよライさん!」


「ギ!ギ!ギ‼︎」

なんだ挑発はしてるようだがさっきから全然襲ってこない。

まるで俺が離れるのを待ってるみたいだ。


ようし、そっちがその気なら…


「円風刃×2‼︎」


「「…え”⁉︎」」「「「……?」」」


「ギギィ⁉︎」

あ、また逃げた!


「今度は逃がさねぇよ?…はぁ!」

逃げたあいつは、二つの円風刃でしっかりこま切れにしておいてやった。


「ふぅ〜!……さあ、終わったし早く行こう」


みんな「…………」


「…おーい」


「…はっ⁉︎う、うん!行こっか」


「我は…ナルガス殿についておいて誠に良かったと心の底から思いましたぞ‼︎」


「ライさんそこまで強調する⁉︎」


「当然です‼︎」


「うーん、まあ良いか!王さま達は…驚きすぎて固まったみたいだしこのまま運んじゃお」


「…ライさん、私いろいろあきらめて良い?」


「案ずるなレダ嬢、我は既にあきらめた」

驚かれることに慣れすぎたナルガスは二人の様子を気に留める事なく、ライさんに案内されながらノーガルド王達を空間で囲みそのまま運んで大樹の所に足を進めるのであった。

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