皆と探索中に…
ナルガスからのアドバイスもあり、町長であるジグルの指揮に従う形でヴォルス達・子供冒険者達の立ち位置変更をした結果、最初とは嘘みたいに戦いが様になった彼らを見て安心したナルガス達。
討伐依頼などをある程度済ませ帰路につきかけていたところで、一つの存在にシエッタが気づく。
ナルガスはその方向をスキルの[オーラ視]で眺めてみるとそこには……
俺達は今後の方針を決めた後、一度改めてサラティ達の立ち回りを見ようと外に出た。
薬草採取の依頼をしながらモンスターと戦うスタイルを考える為だ。
ジグルさんの読み通り、ヴォルスとリオンを前衛にしたらスムーズに狩りができている。
二人にはモンスター達を追いかけて、遠くに離れないよう釘をさしておいたからもう大丈夫。
シエッタによるサーチのおかげで、どの位置からモンスター達が襲ってくるのかが正確に分かるのは助かるよ。
そして後衛のサラティとシエッタ、中衛のエリオルとルネーガがカバーしあって、死角となる場所を減らす事ができたのだ。
「すげぇ!さっきよりも全然動きやすい」
「ええ!安心して戦えるわ‼︎」
「ハッ!ビー戻ってエリオルを守って!」
「ウン!」
ルネーガはビーを後退させてから、装備している弓矢でビーが先程までいた所から顔を出してきた敵を射ぬく。
そして、ビーはエリオルの上から落ちてくるモンスターを上空からぶっ刺した。
「ありがとルネーガ!ビー!」
「じゃあ私たちも行くわよ?シエッタ」
「うん!」
サラティとシエッタは、それぞれが側面から襲いかかってくるモンスターを魔法と弓矢で撃退していく。
「よーし僕も‼︎エリア・ブースター!」
エリオルの補助系範囲魔法・エリア・ブースターにより、パーティ内全員のステータスを一時だけ上げることができるらしい。
もうこの子達、Cランクまで余裕でいけるような?
俺は呑気に考えながら、茂みから出てきたお馴染みのファングラビットやベオ・ウルフという、Dランクの狼モンスターを余裕で倒していく。
おまけに空間操作で血抜きと解体、そして剥ぎ取りや素材回収を行いながら、皆の少し後ろをレダやジグルさんと一緒に歩いていた。
「……お兄ちゃんどんだけでたらめなやり方をこなしてるの?そんな真似私にはできないよ」
間近に迫っているベオウルフを鞭だけで軽く倒していたレダが、どこか諦めたような目で俺の事を見ている。
「いやあ、皆の倒したモンスターの素材集めとスキルの熟練度上げにはちょうど良いやり方だなぁと思いついたんだけど……やっぱ変か?」
「変!でもすごい」
「なははは…」
「お前らも、それにあいつらも余裕で討伐してくれるな
まあおかげで俺は薬草採取に安心して専念できてるから楽だが」
「「えへへ…」」
ひとまず、ジグルさんが一定数の薬草を探索で手に入れるまで俺達はしばらく進んでいた。
「よし……この薬草で最後だ
お前らお疲れさん!そろそろ都市に帰るぞ?夕方までに帰らねぇと翌朝まで野宿になるからな」
「野宿か……なんか懐かしく感じるなぁ」
俺は遠くを見る目をしながら、感慨にふけっている。
「えっ!お兄ちゃんしたことあるの?」
「うん…3歳の時に一度だけモンスターから逃げ回ってた時があってさ
無事に帰れて良かったけど、お母さんにいっぱい怒られたのを今でも覚えてる」
一同「うわぁ……」
「な、なるほど……お前の素早さが速くなったきっかけってわけか」
「うん…」
「……よし!じゃあ早いとこ帰ろうぜ
俺達はナルガスみたいには速く走れねえし、何度も空間の中に入れてもらうわけにもいかねぇからな」
「ヴォルスの言うとおりね
シエッタ、モンスターはもう出てこない?」
「ちょっと待ってねサラティ……うん!周辺にはいないみたい
だけど一つだけここから少し離れた所から動いてないモンスターがいるよ?」
「方向は?」
「ウチから見て東だから、方向は右のしげみ」
「っ!…レダ、オーラ視を使ってみて」
俺は真剣な目をしながらレダに伝え、右の茂みに向けて指差した。
「?うん……えっ⁉︎」
レダは、俺と同じく標的の放つオーラを見て自分の目を疑う。
なんと、赤色の下に青い色が重なっていた。つまり誰かが何かに襲われている!
「お兄ちゃん‼︎急いで助けないと!」
「ああ!みんなも急いでついて来て!」
「おう!行ってこい‼︎」
ジグルさんの言葉に押されて、俺は急いで駆け寄ると見たこともない怪しい色のスライムが人型の何かに覆い被さっていた。
このままでは、肉体すべてがあの変なスライムに取り込まれてしまう。
「~~‼︎~~!」
相手は苦しそうだ、早く助けよう!
俺は装備している双剣を手に取り、相手に傷がつかないよう素早く切りつけ無事に倒すことができた。
通常のスライムよりは強い感じだったけど、いったい何だったんだ?
「キャッ‼︎……いたた」
尻餅を着いたのは、もしかして女の子?何の種族だろう。
「…あっ、ありがとうございます!おかげで助かりました」
「いや、どういたしまし…て……なっ⁉︎」
俺はお礼を言ってきたこの子の姿を見て、思わず警戒して武器を構えた。
「ひぃ⁉︎」
彼女も怯えているが、俺は殺意を押さえきれない。
何故なら……その子はゴブリンだったからだ!
「お、お兄ちゃん何やってるの⁉︎助けた相手をどうする気‼︎」
すぐ近くまできていたレダが大慌てで俺の腕にしがみつき止めようとしてきたので、俺はレダに言う。
「どうするもなにも、この子はゴブリンだぞ‼︎」ら
「…えぇ~~ん!」
「ゴブリンなのに会話できるの⁉︎」
レダは違う所に驚いていた。
「と、とにかくゴブリンでも相手はお話できる女の子だよ!だからお兄ちゃん殺さないで‼︎」
「ぐっ‼︎」
唇を強くかみすぎて、口元から血が少し垂れてしまう。
「お兄ちゃん!」
「……くそっ‼︎」
ザンッ!
俺は苛立ちを隠せないまま、ゴブリンの女の子がいる場所からずらした場所へ空間を作ってから斬撃を放つと、真空ごと切り裂いてしまった!
その斬撃はどこまでも遠くへ飛んでいく
「う、うわあぁん‼︎」
「大丈夫、もう大丈夫だからね…」
レダが優しく、ゴブリンの女の子を抱き締めて落ち着かせていると、皆もようやくたどり着いた。
「お前ら!無事みたいだな……!そいつはゴブリンの子供か⁉︎」
「ひぅ‼︎」
「ジグルさん、今怯えちゃってるから少し静かに…ね?」
レダが悲しそうな顔でジグルさんに訴えかける。
「すまん、一体何がどうしたんだ?」
「それが…」
レダは、俺が倒したスライムの件から今に至るまでにおきた出来事を全て伝えた。
「ナルガス……お前は会話ができてお礼が言えるようなゴブリンでも許せねぇのか?」
「………」
俺は押し黙ったまま、なにも話さない。
「フゥー……そうか分かった!しばらくそうやって一人朝まで頭を冷やしてろ
俺達は都市にこの子を連れて戻るからな」
「………」
一人無言で立ち尽くす俺を尻目に、皆はゴブリンの女の子を連れてゲラルドに戻っていく。
「お兄ちゃん……」
悲しい顔のまま、レダは皆と一緒に帰っていった。
しばらく長い時間、一人ポツンと立ち尽くしていた俺はやり場のない怒りをこめて全力の拳で地面を殴り付けた。
ドンッ‼︎っと、地響きを起こすほどの強烈な一撃による打撃音が、広大な森の地面に響き渡る。
木々に止まっていた動物、鳥類が怯えてその場から離れてしまうほどに。
「神様‼︎なんでわざわざ倒したいほど憎いゴブリンまでも、俺達のような知性を与えているんですか!
俺はあんなやつらと一緒になんてなりたくねぇよ⁉︎
俺にどうしろって言うんだよ!」
最早怒ってるのか泣いているのか分からないほどの叫び声を、俺は夜のとばりがおりかけている上空に向かって吠えていた。
「フー……こうなったらスキル・神々の知恵で文句を言い続けてやる‼︎」
スキル発動
「おうナルガス!何が文句をあるのか今すぐ洗いざらいしゃべってみろや‼︎」
「なっ⁉︎なんで神様が直接話してんの!まあちょうど文句言いたいから良いけど」
一度言葉をきって、俺は思いのままに文句をぶつける事にした。
「転生前からあんたは俺に過酷な所だと言ってくれた通り、本当にきつすぎだよ!
倒したい相手も根こそぎ倒せないんじゃあ、安心して暮らせるわけないじゃん!」
「俺は敵をみんな倒して生き残れなんて言った覚えはねぇぞ?俺はお前に、この世界に癒しと和みを教えてくれと頼んだじゃねぇか
もう忘れちまったのか?」
神様も怒るのを我慢しながら、俺の相手をする。
「じゃあ、あんな害のあるモンスターでも手を取り合って生きろって言うんですか!」
「そうだ……お前の前世である日本だって憎いと思う相手同士でも長い世代を越え、許しあって手を取り合う時代を作り上げて来れた
だから、国内での紛争があまりないおかげで少しでも楽しいと思える所が残った
お前がよく行っていた猫喫茶ってのも、平和をつくってくれたやつらがいたお陰だろ?」
「何故敵だと思う相手を許すなんて真似をしなければいけないの?攻撃を返さずにいたら守れる者も守れないじゃん!」
「だーかーらー!何のためにお前はこの世界にいるんだよ!
俺は世界を裁く為にお前を呼んだ覚えはねぇ
許し合う者で溢れる世界になって、お前にもこの世界の連中にも、俺は幸せになって欲しいんだよ!
それが、お前にならできると確信しているからこの世界に呼んだんだ
癒しと和みってのは、力や血を流して得ることはできねぇ……
お互いを認め合う勇気とお前を含めた転生者達を通して伝わる想いがなければ、それを確かなものにすることができねぇんだ!」
「……じゃあ、この抱えきれなくてぶつけようがない怒りはどうすれば解消できるんですか!
力自体は封じられてるし、暴れて晴らす事なんかできませんよ!」
「簡単だ!お前が今使ってるスキルや祈りの間で、何度でも俺に文句を言ってくりゃいい
その間に俺はお前の怒りを存分に吸い上げて落ち着かせてやる!
物足りないなら試しに誰もいない所で大声を出せば良い
ちっとはスッとするぜ?他にできるとしたら歌でも歌ってみるこった
音痴でも誰もいないなら平気だろ?」
「う!歌は苦手だよ…」
「だったら楽器でも何でも作っちまえ!
気持ちを出せるものならなんでもいい
やるだけやってみな」
「分かりましたよ……やってやりますよ‼︎」
「おう!楽しみながら見といてやらぁ」
「冷やかしか‼︎」
「はっはっは!そうだ一つ言い忘れてたが、今後は俺が直接助言することになったからよろしく頼むわ!」
「えっ?天使じゃないの!」
「まあそうだ……近々その辺の事も仲間達が集まった時で良いから呼んでくれたらその事を少し話しておくんでな?
じゃ、ゆっくり楽しめよ?色々と……」
ん?なんだ最後の意味深な言葉は。
不思議な事に神様とのやり取りが終わる頃には、あれだけ怒りに満ちていた気持ちが静かになっていた事に、俺は気がついた。
「本当に俺は、何に対して強く怒っていたんだ……復讐心か?相手が女の子だからか?いや…多分違う
俺は、本当はゴブリンみたいなモンスターに対しての嫌悪感はとっくに無かったのかも知れない
ただ、既にそんな気持ちが抜けてしまっていたことに気がつくのが怖くて怒ってしまっていたんだ」
俺が、自分のしていた事を後悔して気持ちを落ち着かせられるようになった頃、ちょうど木の間から朝日が登り森の木々を照らし出す。
ふと、何かに導かれるように手頃な木のそばに寄るとそのまま上に登る俺。
ある程度高く登ってから、日が昇る方向を見ると今まで気にしてこなかったがとてもきれいな朝日が見えた。
「あれっ?なんでだろ涙が…」
心のなかにある刺が抜けていくような癒しを朝日を眺めてる間に感じる。
「何故だろう? 心が軽い
怒りがとられたから?
日の光 優しい
優しさに 包まれるように
優しさは どこにあるだろう?
神様が 与えるのかな
力なら 負けないけれど
許すのは 自信がないな」
あれっ、俺は歌ってたの?
不思議とすんなり言葉が出てたな。
「「わ~~!(拍手)」」
んっ?誰か聞いてたのか?
俺はひとまず木から降りてみる。
するとそこには、レダとそしてあのゴブリンの女の子が笑顔で拍手しながら近寄ってきた。
「うぇ!なんでいんの!」
「なんでって……この子がやっぱりちゃんとお礼が言いたい!って言うから夜明け前に都市を出てお兄ちゃんを迎えに来たんだよ?
そしたらお兄ちゃん木の上にいきなり登ってくのが見えて、慌てて近づいたら歌い出したんだもん……ビックリしちゃった‼︎」
「あわわわわ⁉︎」
軽くパニックになった俺に、更なる追い打ちがかかる。
「へぇ、こりゃいいもんが見れたぜ!なあラルガ」
ふぇ?
「ああ、まさかうちの息子がこんな良いものをもってたとは……」
「ええ…本当に嬉しいわ!あなた」
父ラルガと母レアナが現れた!
「ええええ⁉︎なんで~!」
「フム、ナルガス殿は歌の才能もあったとは……どうだろうジルカ、教会に歌というものを取り入れてはみぬか?」
「良いですね!ライ様‼︎」
「……きゅ~」
パタンッ!
俺は混乱しすぎて気絶してしまった。
「お、お兄ちゃ~~ん⁉︎」
レダが慌てて駆け寄り皆も寄ってくる。
それから何時間過ぎていたのだろうか。
俺はどこかのベッドに寝かされていたようで、目を覚まして窓の方を見るとここはどうやら二階部屋らしい。
景色からしてこれは宿屋か?
「うみゅ…」
「うーん…」
あれっ?この展開ってまさか……
案の定、レダが俺の体の上で丸まって寝ていた。おまけに何故か、ゴブリンの女の子までも俺のベッドの端から落ちないようにすやすや寝息をたてていたのだ!
ちょっとこの子……上着がはだけてやや発育が良いぶん、見えてはいけない恥ずかしい部分が見えてんだけど!
(マズイマズイマズイ、マズイ!)
心のなかで慌ててると、上で寝ていたレダが起きてきた。
「あっお兄ちゃん起きた~?」
寝ぼけた声で嬉しそうに話してきたレダは、俺の隣に寝ている子を見た途端、一気に目が覚める。
そして俺から素早く飛び降り、慌てて寝ているその子をベッドから必死に引き下ろし、その顔にスパーンっと強めのビンタを食らわした。
「⁉︎」
「いたーい!何すんのよレダちゃん~」
「何すんのじゃないよ!お兄ちゃんと一緒に寝ていいのは私だけなのー‼︎
コルナちゃんさりげなくお兄ちゃんの顔を間近で見れるところに来ないで!」
「やーだー‼︎」
なんだこの展開…修羅場ってやつ?
「え?えーっと二人ともいったんちょっと話を…」
「「お兄ちゃん(さん)はだまってて!」」
「は、はいぃ~⁉︎」
ビックリして固まる俺をよそに、二人は喧嘩をし始めた。
女の子同士が男をかけて戦う、キャットファイトさながらに。
あまりの激しさに俺がしばらく固まってると、ジグルさん達が慌てて駆け込んできた。
「お前らいい加減やめやがれ~~!」
見ると、他の子供達も来て慌ててレダとゴブリンの女の子・コルナをそれぞれが引き離した。
「た、助かった…」
「おいおい大丈夫かナルガス?」
「ヴォルス、みんなも!……ありがとう」
「んもう、昨日から今まで二人を何とかするの大変だったんだからね!ナルガス」
「サラティ、俺はそんなに長い時間寝てたのか?」
「ええ、二日ほど寝てたわよ?驚いちゃった!一昨日の夕方からあなた一人でそんなに疲れる事をしてたの?」
「二日も⁉︎」
「そうだよ!オイラ達がここに着いてからすぐにどこからか強い揺れも感じたけど、大丈夫だったの?」
強い揺れって、俺がやったあれかな?
「ごめん…その揺れは俺のせいだ」
一同「⁉︎」
皆はあまりにも衝撃的な事実を聞いて、息を飲んで固まってしまう。
「あはは、怖い思いさせてごめんね?
あと、一昨日の事も皆に謝りたいんだ!もちろんその子にも…」
「…!」
俺が穏やかな顔をしてその子を見たとき、本人は泣きそうになっていた。
「……分かった、早く下りてこいよ?」
ジグルさんは安心したように、皆を連れて下に降りて行く。
「二人も先に降りててくんない?着替えたいし」
「あっ!ごめんお兄ちゃん
ほら早く降りるよ?コルナちゃん!」
「えへへ……私は気にしないですから遠慮せずに着替えてくださーい!」
「やめなさい!」
パシーン!
レダに頭を叩かれて、彼女の頭から小気味よい音が響く。
そしてその子の首根っこを鷲掴みにし、俺から強引に引き離す形でレダ達は出ていった。
扉の外から二人の口喧嘩が聞こえなくなるまで俺は眺めてから、ベッドから降りて急いで着替える。
「おまたせ」
改めて皆を見ると、全員がホッと安心する顔をしていた。
「みんな、色々と迷惑をかけてごめんなさい……それと君も、怖がらせてごめんね」
「いえ!私こそありがとうございました!
あと改めまして、私はコルナって言います!よろしくねお兄さん♪」
あれっ?ゴブリンなのに何故こんなに礼儀正しく振る舞えるんだ?
「あっ!お兄さん、その顔はどうしてゴブリンなのにって顔してません?」
「えっ何⁉︎心読めるの?」
「あはは!違いますよー?顔にしっかり出てますって」
「ハァ……もうお兄ちゃんってば」
レダは不満そうに口を尖らせている。
「えっと、ここにいる皆さんには既に少し話してるんですけど……実は私、転生者なんです!」
「また転生者!一体何人この世界に来てるんだよ⁉︎」
「えへ!レダちゃんから聞きました
あなたはレダちゃんと同じで日本からの転生者なんですよね?」
「えっ?君は違うの?」
「はい!私はアメリカ生まれです
前世ではセーナって名前でした!」
「そうだったのか……でもよりによってゴブリンって」
俺は少し気まずそうに目をそらしながら片手で頭をかく。
「……私も、初めてこの世界に転生した姿がゴブリンってだけで生まれて初めてあっちの世界の神様を呪いました!
でも結果はどうあれレダちゃんやライさん、それとお兄さんという共通の相手とめぐり会うことができて嬉しいです!」
なんと言うか、自分の気持ちをまっすぐ言う子なんだな。
「えーっと……一つだけ聞いておきたいんだけど、なんであんな森のなかで一人変なスライムに襲われていたの?」
あんなの見たこと無いし、気になる。
「……あれは、同じ仲間のゴブリンにやられました
ゴブリンの毒素が混じった排泄物と唾を食べさせられたスライムです」
全員「⁉︎」
「ひどいなそれは‼︎」
「いえ、もう良いんです……最初から仲間意識を向けてもらえなかったですし私もいいかげん逃げたかったから
だって、他の種族の若い女性を襲っては巣穴に持ち帰ってみんな彼らの子作り用に使われてて……
何度もやめてと訴えてるうちにいじめられるようになって最後にはあんな目に」
「………」
バチバチっと、俺の体から黒い稲妻が現れかけた。
「きゃっ!お兄さん⁉︎」
驚いて目を見開くコルナに、俺は大丈夫と片手で合図した。
「そうだったのか……ごめん嫌なことを聞いたな」
皆も沈んだ顔になってしまっている。
「いえいえ!気分が悪くなる話をしてごめんなさい」
「…ねぇコルナちゃん」
「ん?何レダちゃん」
「もし、コルナちゃんみたいにこうして会話できるゴブリンがいたら倒さないでいた方が良い?」
レダが、俺の一番知りたい事を代わりに聞いてくれた。
「……そうだね、説得してわかってくれるゴブリンの仲間が居てくれたら私も仲良くしたいけど
彼らみたいに女性を犯す真似を繰り返す連中に関しては……知らないわ」
ブルッ‼︎
今、背筋が凍るほどの殺気を感じたぞ。この子が出したのか?
「…そっか!じゃあ大丈夫だよ
私のお兄ちゃん、そういった相手には全く遠慮はしないもん!ねっ?お兄ちゃん」
「ああ、もちろんだ」
俺は、レダも俺に近い殺気を放っていた事に気づく。
ゴブリンの女の子・コルナ。彼女のようにモンスターとして生まれた転生者がまだ大勢いるのなら、討伐だけではなく対話が可能な相手と交流を深めてみるのもありかも知れないと、俺は密かに考え始めていた。
ゴブリンの少女…[コルナ]。
彼女はなんと、ナルガス達と同じく地球の神から転生でこちらの世界に導かれたアメリカ人の女の子だった!
当初はゴブリンとして生まれ変わった事について地球の神を初めて恨んだものだが、今ナルガス達とわかりあう事もでき、同時に楽しいひと時を送れるようになったこの運命を心から感謝する。
こうしてる間にも、彼らを待ち受けている苦難が立て続けに起きる前触れが少しずつ現れ始めていた……




