お風呂を作ってみた
冒険者達に子供達を含めたルードスの町民、そしてナルガス達一家は見事ヘル・ホーネットの大群を討伐することに成功した。
その後は、この町でスキルとステータスを含めた様々な事を勉強できる場所…つまり、「学校」を建てようと言う話が持ち上がり始めていき……
蜂討伐後、俺はレダと一緒に何事もなく家の回収が済んで空いた土地に家を置いた。
その間もずっと行われていた、町のみんなと冒険者達を混ぜて行われた宴会が落ち着いたのが夕方頃。
どの冒険者も顔元が緩みきっている状態で帰り支度をしている理由は言うまでもない。
ハチミツをなめただけではなく、魔石も食べたからだ。
そのため、家族と町のみんなが冒険者達に食い過ぎると魔力太りする事と、食うことで得られるステータス閲覧や魔力の上昇もわかりやすく教えておく。
「こんなすごいものが世の中隠されていたなんて、全く気づかなかったぜ。」
「私、これはギルドにも伝えた方がいい気がするわ。新しい発見だもの!」
マジか、まあ知ってもらえるのは良いことかも知れないけど、こういった新しい発見には同時に争いの元も簡単に生まれてしまう。
この世界に学校とかがあれば、正しく教えて学べそうなんだが。
「皆さん、ギルドに報告するのは良いですけど悪いことに使う人もたくさん出てしまったりしないんですか?
もし、学校という誰もが勉強できる場所がゲラルドにあるならそこに正しく伝えた方が良いかも。」
「「「「「「ガッコウ?」」」」」」
あれ?この世界には無いのか。
「坊や、不思議なことを言うのね。都市にはガッコウはないのよ…
まあ確かに、子供から大人までこの事をちゃんと知る場所は欲しいかも!
私だってそういうのには興味あるわ。」
そう冒険者の竜族お姉さんは言ってくれた。
周りのみんなも、聞きなれない言葉に一瞬戸惑ってはいたけど、そんな場所を作れたらという話に興味を持ち始めた。
「俺は、このルードスに学校を建てても良いんじゃねぇかな思うんだがおめぇらはどうだ?」
「「「「「異議なし!!」」」」」
ちょ!何言ってんだこの冒険者達は!ここはまだ、家自体も建て直してる最中なんだけど。
「あー、おたくらの考えは良いかも知れんが見ての通り俺達の家はまだ建て直してる最中でな、人手と資金が増えれば上手くいくかもだが。」
「それもそうか。じゃあいっそのことジグルさんよ、町の代表者としてゲラルドに来て申請してみたら良いぜ。
幸いゲラルドの国王様はどの種族にも公平な判断を下してくれる良識的な人だから、無下には多分しないだろう。」
ジグルさんが分かりやすく説得してくれたおかげで、無理の無い話になってきたように思えるんだけど当の本人は…
「お、俺がこの町の代表者だと!?長老様の代わりなんて俺にゃ務まらねぇって。」
「長老様って人がいんのかい?」
「ああ。まあ…いた、と言った方が良いな。
ギウルがよく知ってるグルーソってヤツがヘル・ホーネットを召喚してきた時に、長老様がその蜂モンスターに殺されてしまったんだ…」
「…悪い、辛いことを聞いちまったみたいだな。」
悲しい話を聞いてしまって気まずい顔をする犬族の男性冒険者を、ジグルさんは気遣う。
「気にするこたぁ無いさ。俺自身、その時はまだ力が足りてなかった事に変わりねぇ。」
「……グルーソの件では、ジグルには辛い思いをさせてしまって申し訳なかった。
俺はその償いとして、ここの学校建設の推薦状をギルドに書いてもらうよう頼んでみようと考えている。」
ギルドって、そんなこともしてくれるのか。
「ギウル……ありがとう、俺がどこまでできるか分からないが推薦をしてくれるっていうなら、俺も一緒にギルドに行こうと思うんだが良いだろうか?」
「おお、構わんぞ。むしろ本人が一緒に来てもらわなきゃ証明されんからな(笑)」
「がはは!まんまと釣られたぜ。」
ジグルさんもまんざらではなさそうだった。
「あっ!俺も一緒に行くよ。まだギルドに報告してないし。」
「私もいきたーい!」
「「「「「「いきたーい!」」」」」」
あらら、レダとみんなもゲラルドに行きたいって言い出したな。まあ、止める気はないけど…
「ガハハハ、しょうがねぇなぁお前ら。
分かった!みんな朝一に出発と言うことにして良いか?」
「あなた、私達も行きましょうか。」
「そうだな。」
こうして俺ら家族と、子供達を引き連れてゲラルドに向かう事になった。
「ナルガス殿、お気をつけて。
我はギルドからの依頼をした後に、少し北の様子を見て参りますゆえ同行はできませぬ。」
「ライさん、北のってことは…まさか蜂の巣がある所を壊す為?」
「左様。いつまたあのような大群が現れては、ここも落ち着くまい。
我にとっては、蜂の大群など雑魚に等しいが駆除はしなくては!」
「分かった、でも気を付けてね?北は俺もまだ行ったことが無いから分からないけど、あのオークやゴブリンが大勢帰って行った場所らしいから。きっと何かあるんだよ」
「肝に命じておきます。」
「うん。じゃあ、行く前に一つお願いがあるんだけど。」
「む、何でござろう?」
「あのとき鑑定でライさんのステータスを見た後、初めてライさんが女性陣から脱出したときに転移したのを今日ジグルさんと一緒にギルドまで運んでくれたから思い出したんだ。
それで、俺も空間転移みたいな事をしてみたいんだよ。」
「確かナルガス殿は、空間操作?というものでできてはいたのでは?」
「確かにあれでもできるんだけど、常に帰還用のポインターと呼ぶ魔法の塊を置いてからじゃなきゃ使えないんだ。
それまでは自分の足で行かなきゃならないし」
「なるほど、あい分かった。
我に分かる事で良ければ教えさせていただきましょうぞ。」
「「「わたしたちも聞く!」」」
レダとサラティ、シエッタも会話に加わる。
そしてライ先生(?)による空間転移の仕方をみんなで学ぶ事になった。
しばらく聞いてみた限り、どうやら俺のやってたやつと少しだけ似ている。
記憶に残る場所を頭の中で連想させてから、自分の周りにある空間を空気ごと入れ替える。
こんな感じのイメージを近いところから試してたら、できるようになったとの事。
俺達も早速実践しようと、まずここから少し離れた場所…町の入り口にしてみる事になったので、みんなで一斉にやってみた。
「では、そなたら準備は良いか?始め!」
ライさんの合図で、俺達は全員それをやってみた。
結果俺達はどうなったかというと…
「わーい!!一発で着いた~!」
サラティは完全に入り口の前に着いた
「もう少しかぁ~」
レダはその手前の5メートルくらい
「レダより距離が少なかったか。」
俺はレダより10メートル手前
シエッタはスタート地点とゴールのまん中辺りまでだった。
「あうぅ……ウチが一番短いじゃん(泣)」
シエッタが一人落ち込んでいたのを見て俺とレダは駆け寄り、あっさりとコツをつかんで転移して戻ってきたサラティが近くに寄ってきた。
「何が悪いのか俺にも全く分からないけど、この移動が出来た事はすごく嬉しい気がするよ。シエッタはどう思う?」
「もちろん嬉しいよ?嬉しいけど、もっとみんなの近くまで行きたいなぁ。」
「フム。我が思うに、シエッタとナルガス殿、レダ嬢とサラティには魔力の質と量が大きく分かれておるのやも知れませんな。」
すぐに追い付いてきたライさんが言うには、MPの差で変わってしまうということだった。
「だが、心配せずとも何度も体を休めながら使い続けて行けば、必ず目的地までの転移ができるようになる。」
ライさんはシエッタを安心させるように言ってくれた。
「…分かった、ウチ頑張る!」
「うん!私たちも一緒だからがんばろ!」
レダもいっぱい励ましている。
「シエッタ、私も思わずはしゃいでたけど私はあなたがこの転移魔法を極めてしまいそうって思う。
だってあなた、どんなことにもひたむきにがんばり続けるタイプなんだもの。だから大丈夫!」
「サラティ…ありがとう!」
幼馴染みの付き合いって、こういうものなのかな?見ててとても気持ち良い。
「さぁて、俺達も今日は家に戻って明日の朝はちゃんと早く起きよう!」
「「「はーい!」」」
三人とも元気よく返事をしてそれぞれ家に帰ろうとしている。
「お兄ちゃん、早く~!」
「すぐ行くから、先に行っててレダ。」
「??分かった!」
「どうかされたかな、ナルガス殿」
「うん…明日ギルドに寄るついでに教会で神様と話そうかなと思ってるんだけど、ライさんはお祈りとかしたことは?」
「教会で神様と話せるのですか‼︎
祈りはしたことはありませぬが、会話ができるのならぜひ我もしておきたい!」
「う、うん!分かった。ギルドの用事が済んだらいってみよう。」
「承った。では我は皆が起きてくる前にすぐに済ませて参ろう。
最も、依頼は薬草探しであるがな。」
「うん。じゃあまた明日、お休みなさいライさん!」
俺がそう言いながらレダの所まで駆けて行く間、ライさんはその場で手をふり俺達が家に帰りつくまで見送っていた。
俺とレダは自宅に戻り、両親とそろって食事を済ませた。
欲を言えば前世のようにお風呂があったらさっぱりするんだけど、サバイバル生活が長かったから仕方なく川とかの水を汲んで濡らしたタオルを使って洗ってたんだよな。
「お父さん、ここでは川が無いから水を汲みに行けないけど水魔法を使って体洗えないかなぁ?」
実は空間操作で家ごと運んだから、水道の類いは全く使えないので今まで川の水を汲んで暮らしていたのである。
「そうだなぁ。大きい樽みたいなのに入れておきたいが、水を勢いよく出されると壊れてしまう。
ゆっくり流してくれれば安心して使えるぞ。」
なかなか難しい事を言っているお父さん。
「うーん、私とレダは加減できるかもだけど正直難しいわね。」
「私も、ずっと小さく出すのはつかれるよ~!」
「みんなはオフロって知ってる?お湯のなかで体を洗う所があるんだけど、みんなが丸ごと入れる大きさの場所を作ってみようかなと思ってるんだ。
よかったら手伝ってくれない?」
「「「オフロ⁉︎」」」
…やっぱり知られていなかったか。
「うん。前世の暮らしで入ってたんだ。
あと、たくさんの人数でもすっぽり入る場所もあったんだって。」
「すごい!おもしろそー‼︎」
「良いわねそれ!みんなで洗いっこしてみたいかも。」
「お父さんは何でも手伝うぞ!」
みんなが目を輝かせていたので、俺も分かる範囲で大まかな作り方を説明した。
「……なるほどな。木を均等に同じ形で少し小さく切ったり組み合わせたりして、風呂場は作る事ができるのか。だがお湯はどうする?」
「うーん、お湯を作るのは木だけでは無理だよね。
前世で聞いたことあるんだけど、鉄で作られた風呂の底部分に熱くないように木の板をひいてたんだって。
その風呂の下が地面なら、穴を少し掘って燃やす木とかをいっぱい入れてから火で燃やしていたって、聞いたことあるよ。」
「そんな方法があったとは…早速木を切りに行くか!」
「うん。じゃあ、ジグルさんに事情を話してから切りにいこ!」
俺達はジグルさんにこの事を伝えに行くと、どんなものか興味を持ったらしく見せてくれるならと快く承諾してくれたので、気兼ねなく作業に入る事にした。
向かってる途中、町のみんながどこに行くのか訪ねてきたのでオフロを作るという事を聞き、冒険者を含むみんなが興味をもち、一人また一人と結局全員が参加して作ることになった。
こうなれば、大衆浴場にする他はないと考えた為、まずはどこが切っていい場所かをジグルさんに教わって、俺のサークルカッターで必要な分だけ切っておいた。
後はそれを俺やレダを含め、収納魔法を覚えている者達が楽々と運んで行く。
「よーしみんな、チャチャッと切ってくぞ!」
「「「「「おーー‼︎」」」」」
「…ム?ナルガス殿、これは何の騒ぎでございますかな?」
ライさんは食事を終えた所なのか、顔を覗かせてきた。
「あ、ライさん実は……」
俺はみんなと風呂を作る話をしたらライさんの目付きがギラリと変わっていく!
「そっ、そのような大事な事を何故もっと早く我に相談してくれなかったのですか!」
「え?え⁉︎」
俺は、ライさんの表情と気迫に押されてあとずさりしてしまった。
「風呂とは我のいた前世では至福な社交的な場であり体を癒すに最適な場所‼︎
それを作ると言うのならば、我が動かぬ理由など無きに等しい‼︎
ここからは我も全面的に尽力させていただきます故、これにて御免!」
ライさんは疾風の如く駆けていった。
「……な、なあナルガス。ライのやつはどうしちまったんだ?今までと雰囲気が変わりすぎてるんだが。」
ジグルさんは戸惑いながら、木々を積んだ広場でほぼ暴走状態で作業をしているライさんを見ながら俺に聞いてきた。
「俺も分かんないけど、ライさんにとってはとても大事な事みたいだというのだけは分かった気がする。」
そして俺達はいつのまにか、ライさんの指示に従う流れで風呂作りに取りかかるようになってしまった。
その勢いはまさに鬼そのものだと、俺を含め皆が感じながら今は言われた通り作業をそれぞれがこなしていく。
作業に取りかかって一時間が過ぎたあと、誰もが驚くほどの出来映えでお風呂場が姿を現した。
「す、すげぇ!これが俺達が作った風呂か‼︎」
「素敵!すぐに入りたい‼︎」
町のみんなが、普段以上に頑張って物を作る体験の苦労を味わったのが大きかったせいか、感動で涙が止まらなかった。…もちろん俺ら家族も
みんなが作った大浴場は、とにかくデカく広かった。
ざっと、長老様のいた土地の広さに匹敵する広さで、南の森林を切り開いて作ったからだ。
「皆!我のわがままに付き合わせる形で作らせてしまったようで、まことに申し訳ござらん‼︎どうしても、このこだわりだけは捨てきれんかったのだ!」
ライさんは俺達に深々と頭を下げ、申し訳なさそうに謝罪をしてきた。
「ハァ、ハァ……へへへ、あんたがこだわりたくなるのもうなずける姿だから、気にやむこたぁねえぜ?ライ」
ジグルさんは息を切らしていたが、とても楽しそうな顔をしていた。
「ええ、それにこんな温かいお湯に体を丸ごと浸かるなんてとても楽しみよ!」
町の女性達はとても喜んでいたから、作ることになって良かったと俺は思った。
ただ一つだけ気にしないといけないのは…
「ウム‼︎では皆で服を脱ぎ、裸で入ろうではないか!」
「ちょっと待った⁉︎まだダメー‼︎」
俺は慌てて服を脱ごうとしたライさんを止めて、ちゃんと忠告しておかなければならない。
「どうされたのだナルガスど……」
ライさんはそれ以上は言い切ることはできなかった。何故なら……
「ラーイーさーんー?あなたは魅了SSSのせいで体が光ってるから、男女に別れて入ろうね~?」
俺が威圧を少し混ぜてライさんを説得した為、大人しくさせることはできた。
「め、面目ございませぬナルガス殿!
では仕切りの厚い板を作って参りましょうか?」
「大丈夫。こっちで作っておいたから」
そう言って俺はポーチから、小さく縮めた物を浮かして元の大きさに戻していく。
そのまま風呂場の中心に来るように俺はゆっくり空間を下ろしてから解除した。
「よもやこんな見事なついたてを作っておられたとは、我も気づきませんでしたぞ。」
「えへへ、サラティから空間の中の物を動かすコツを教えてもらったから。
中にサークルカッターを閉じ込めた状態で木を切ってみたんだよ。」
「お兄ちゃん、どんどん器用になってくね…」
レダがあきれと感心が混ざったような、変な顔になりかけている。
ライさんを含めみんなも毎度の事だと言わんばかりに、ウンウンとレダの言葉にただうなずいていた。
そんなに変な事なのか?と俺は思いつつ、ひとまずは風呂場の入り口に男は黒、女は赤の布と男女分けて入るように指示を出すと、みんなは聞いてくれた。
「ウム、では入る前に我から一つ注意だ。
そのまま入ると汚れが湯船に浮かんでしまう故、お湯を器で汲みまずは浴びてから入って頂きたい。」
一同「はーい!」
やはりライさんはこういった事をよくご存じである。
・男風呂の様子
男衆「おおおーー‼︎」
完成した風呂場の中を改めて見たら、俺が最初に考えていた風呂なんかよりもとっても凄かった。
至るところに割った石の上部分が湯船から顔をだし、外からは見えないように木の壁が囲まれている。
お湯はなんと俺とレダ、お母さんを始め水魔法が使える町民と冒険者の人達が協力して浴槽に大量の水を溢れさせた。
下準備として、土魔法で作った釜戸の中の熱を土トンネルの中に通す形で、下から上に熱が行くよう整えた。
熱気を外に出せるよう、水が入らないように土でできたパイプへ手作業で無数の小さい穴を開けていくのはとてもしんどかった…
「…お風呂に入るためだけに何度も水魔法を使うのは、正直俺も苦しいな。」
俺と同じことをこの男風呂の町民と冒険者、恐らく女風呂のレダ達も、きっと考えているんだろうな…
「無茶をさせて悪いなナルガス、それにライやみんなも。だが、おかげでこんなに素晴らしい風呂に大勢で入ることができたんだ。
どうか俺の方からお礼をさせてくれ、ありがとう!」
ジグルさんがみんなに感謝の言葉を送った後、みんなが笑いながら風呂の湯加減も兼ねて器ですくい手をつけてみるとちょうど良い具合だった…
「と、とてもあったけぇ⁉︎こんなに良いものなんだな、お風呂って!」
「うっ…くっ!……よもやこの世界に来て風呂場を作れるとは‼︎」
男達は口々に称賛し、ライさんも念願の風呂に入れたからか、泣いて感動しているようだ。
こうして見ると、お風呂の提案を出して良かったなと俺は思った。
「ナルガス!ぼさっとしてると入る場所がなくなっちまうぞ。早く来いよ‼︎」
「ナルガス君、行こう!」
「ナルガス、君のおかげで気持ち良い風呂場ができたよ!ありがとね~!」
ヴォルス達がはしゃぎながら早く入ろうと俺を呼んでいる。
このルーダスに住む事ができて、本当に良かった。
・女風呂の様子
女性達「わぁーーー!」「キレイ⁉︎」
女性達の場所も男性達が入っている場所と同じく、外からは見えないようにしている木の壁とナルガスが作った仕切り壁、そして山を切り開いてできた高い雪山が見える絶景が広がっていた。
「お母さん!いっぱいがんばって良かったね‼︎」
「本当ねレダ!正直死ぬかと思ったわ…あんなに水魔法を使うなんて思わなかったから。」
…そう、一番水を出していたのはレアナとレダだったのだ。
冒険者を含む他の人達も頑張って出してはいたのだが、出る量でたくさん貢献していたのは二人である。
「ねぇお母さん、後でお父さんとお兄ちゃんにもお水のこと話そう?」
さすがのレダもこのときばかりは疲れていたのか、元気なくレアナに相談してきた。
「賛成ね、多分ナルガス達も同じ考えをしてると思うわ。」
「うん!」
レダ達も他の女性達と同じように、湯加減を確かめてから満足して思いっきりお湯を頭からぶっかけたあと、二人でお湯に浸かる。
「ふわぁ~!気持ちいいーー‼︎」
レダも隣にいるレアナも大満足なようだ。
「「「レダーー‼︎」」」
レダが自分の名前を呼ぶ方へ顔を向けると…
サラティ、シエッタ、リオンがお風呂の中を移動して近づいてきた。
レダは今5歳だが、みんなは7歳。
年相応の体つきで、まだ膨らみやくびれなど女らしいボディランゲージは目立ってはいないが恐らく5、6年経てばこの娘達の容姿に男の子達はきっと目が離せなくなるだろう。
「みんな、がんばって作れて良かったね~!」
レダの言葉に、彼女達は深くうなずく。
「ほんとにね!私はナルガスに空間操作のコツを教えるのが一番楽だったけど、後は死ぬかと思ったわ……ライさん人使い荒すぎ‼︎」
サラティは湯船に腰を下ろしながらプリプリ怒っている。他の二人も同様に腰を下ろした。
「本当ねぇ。ウチも空間操作の練習するつもりで作業してたんだけど、まさか掘った土をたくさん運ぶ事になるなんて。」
シエッタは、ナルガスやサラティが使う土魔法で穴掘りで出した土を運び続けていたのだ。
その後は土で作られたパイプをナルガスと必死に穴を開けていくという苦行をさせられて、この風呂でようやく疲れをとることができたのである。
「……みんなはまだ良いわよ。私は修行のつもりでやってみてくれと言われて、たった一人だけで素手と蹴りで必要な分の大岩をライさんの言われるように砕かされてたんだから!」
「「「「うわぁ~~……」」」」
なんかもう、何を語ってあげたら良いかわからないほどの苦行だなとレダとレアナを含む、周りの子供達も不憫な目を向けていた。
「…リオン、誰がなんと言おうとあなたが一番頑張ったわ!だから思う存分この温泉を楽しみましょう‼︎」
レアナは精一杯リオンを褒めて、優しく抱き締めた。
「…!は、はい‼︎」
リオンも涙を流してレアナに抱き、レダ達も一緒に抱きつく。
こうして男女ともども念願の風呂をみんなの手で作った喜びを満足するまで味わい、各自風呂場を後にして明日のためにぐっすり寝ることにした。
風呂場の維持管理と学校設立、やることが増えてしまったが多くの相手と協力できればこれからもきっとなんとかなると信じて、この一日は終わりを迎えた。
明日からいよいよ王都市ゲラルドへ行く。
新たな冒険者パーティになる子供達を連れて…
この町に学校建設を進めるにあたって西の都市国家、ゲラルドに翌日向かう事となったナルガス達一向。それとは別に、なんとこの世界で初めて![温泉]を作る事になった。
初めは一つの家庭でのみ使えそうな風呂を作ろうかと言う話だったのが、材料を取りに行く際にジグルさんや町民達に伝わると自分達も入りたいとの声が上がり始めた。
いっそのこと温泉を作ろうと彼は言って、皆その意見に合意した。
ついには、ナルガスと同じ日本の転生者…ライの耳にもその話が入る。そこからはライによる指示のもと、全員が協力して手がけていったのだった。




