出発
「エルザはそこから狙撃、レイナは攻撃魔法、俺は前衛リックと橘は剣で攻撃、桐生はM4で援護」
中庭でケインが指示を飛ばした、ケインの後ろに隠れた桐生がM4でエルザがドラグノフを使い急ごしらえの棚に置かれた木の板に銃弾を撃ち込みリックと橘とレイナが訓練用の案山子を攻撃していくのを観察していく、桐生もエイム上手いし俺のいる意味はあるのか?
「今の所これが一番の陣形だな「勇者様!王国から使者がいらっしゃいました、応接間までご案内いたします」
急な呼びかけに遮られたケインはチッと舌打ちをした、とりあえず屋敷の使用人に連れられ応接間に入る
質素ながらも気品の良さを物語る木の家具達、木のソファーに鎧を着た騎士が座っていた
「えっと、どうしました?」
「ああ、勇者様。旅に出てすぐに申し訳ありません、我が国は前線に大半の兵を回しておりまして王国領の国に援軍を頼んでいただきたいのです」
「それぐらい数人の騎士で充分じゃ?」
それが…と騎士を声を詰まらせた
「他の国は遠く前線に送るのに膨大な食糧などが必要で、その国付近のダンジョンで王国まで転移できるようダンジョンの攻略には1人で一千の兵を凌ぐ勇者様に攻略を手伝ってもらいたいのです」
いや、俺とか一般人のステータスだし、騎士一千とか1人も殺せず死ぬだけだし
「もちろん他の勇者様を数人送ります、ですのでどうかお力をお借りしたいのです」
「わかりました、この世界でできるのは王国に力を貸すだけです他の国のダンジョンを攻略し援軍を呼びます。」
ありがとうございます、と返し魔力倉庫で麻袋を取り出し中を見せた
「王国からの援助金とまだ援軍を呼んでいない国の地図です、武器や防具などの必要な物にお使いください。」
ではと言い残し騎士は応接間から出て行った、麻袋の金を数えていく
「銀貨30枚で金貨20枚枚か、思ったより多いな」
国ならもう少しよこせよと心の中で呟く、まぁ適当なクエストよりも多いし必要な物を買い揃えてもお釣りが出る
「この地図はダンジョンが攻略されたら赤いバツがでるのか…シゲイはまだ攻略されてないな」
「じゃあ、鉱山で素材集めてからダンジョン攻略して1度王国に戻ってからここに戻って渡してから他の国に行くで良いか?」
「俺らに言ってもな、ケインとかに聞こう」
________
勇者についての文献、罠の仕掛け方、霊薬の作製法。
3冊の本を出し金貨3枚出す、稀に希少なスキルを持って生まれる者がいる、最も多いのが見た本を白紙の本に印刷できるスキル
そのおかげでこの世界は本がそれなりに流通している、それでも有識者の手記を纏め白紙の本を用意し国や街の本屋に届ける配送料などで高く売るしかなく冒険者はなかなか買わない
馬車はかなり高く冒険者は基本徒歩、そんな中かさばる本は邪魔になる上知識は経験を積めば得れるので買う者は少ないが右も左もわからない俺には本が手っ取り早い
俺たちは明日に迫った商人の護衛クエストまでに準備を整えていた、俺とケインは本屋にレイナと橘は武具店魔術店にはリックとエルザと桐生
あの日の夜の質問以外でなかなか喋る機会が無くせめてそれなりに仲良くなろうとついて行ったのだが会話はなし、自分から話しかけることはできないしなと諦めていた
外は少し雲が出ている、この後は商人の護衛クエストの説明があるのでその集合場所までする
目的の場所はギルドハウスだ、クエストが貼られている掲示板と素材の買取及び冒険者登録などの受付だけでなく酒場を兼ねているギルドハウスは多い
肉の匂いがこもる室内、少し腐った木のテーブルに地図が置かれており前で男が羊皮紙に書かれた事項を読み上げている
「我々はここの山を越えるルートを使う、商人狩りが多い地域なので注意してほしい。到着に10日はかかると思うがその分報酬ははずむ」
20人程が二階の酒場に集まっている、商人の5つの馬車を警護しながらシゲイまで向かうのだが馬車を持つパーティーは俺たちを含めた2つは前と後ろで冒険者を運ぶ
「こちらからの支給品は回復薬5つと魔力薬3つ、野営時の料理はこちらが用意する。何か質問のある者は?」
手を挙げるものはいない、それに頷いた男は明日の早朝には馬車に乗っておけと言うとそれぞれのパーティーが解散していく
俺たちもそれに習いギルドハウスから出る、肉と煙のむせそうな匂いは消え新鮮な空気を肺に入れる
「早朝ってどこからが早朝なんだ?」
桐生は質問をした
「街は定期的に鐘がなるの、まず深夜次に夜明け日が登った時、昼で夕方に夜の順ね」
「時間の概念はあるのか?」
不思議そうにエルザが答えた
「時間はあるけどそれを数えるものはブダルっていう魔法を研究してる国が時計って言うのしかないよ」
つまりこの世界は生活習慣と鐘の音だけで過ごしてるのか、凄いな異世界人けどこっちでも時計ができてるって事はかなり科学も進歩しているのか?
「これからどうする?準備は済ませておいたしあと何かやることは?」
「俺たちの馬車を待合場所に預けにいくぞ」
屋敷の馬小屋に向かった、馬車を馬につけ荷積場へと送る
宿屋で馬車を預けれる場所は少なく積荷場に金を出して止めてもらう事が多いらしく袋と草のマークの商人組合の印のついた馬車だけでなく普通の馬車もある
「すまない、明日の早朝まで止めさせてくれないか?」
「あ?ガキか、しかしいい装備だな貴族の子供か?」
威圧感を放つ上半身裸の男、こちらを少し見ると空いている場所を指差した
「あそこに留めて置いていいぞ、銀貨4枚だ」
「ああ、ありがとう」
リックは銀貨を渡すとケインに留めてこいと送った________
次の日 早朝
「では、お気をつけて。少ないですがどうぞこちらを」
「ありがとうございます、何から何まで。では」
ディアと屋敷の使用人達に見送られ昨日の積荷場へと歩む。今にも降り出しそうな雨雲、多分今日は降るな
馬車の奥に荷物を置いて待っていると鐘がなった、周囲の馬車が走っていく
「遅いな、そろそろ出るか?」
俺達の馬車には1つパーティがのる剣士とシーフと魔法使いの初心者パーティー
「俺たちは最後だし、まだ待ってもいいだろ」
馬車は残り5…4…3…2
1…「待ってくださいぃ!!」
長剣を背中にかけた白髪の少女が走ってきた、その後ろから杖を肩にかけ走ってくる髭の男 「すいやせん!寝坊しやした!!」
「早く来い、そろそろ出、うわっ!」
シュッと何かが馬車に飛び乗ったそれに驚いたリックがよろけ馬車が揺れた、侵入者は麻色フード付きのマントを深く被ている、見た感じ体は小柄で中性的なライン男か女かもわからないが弓を背負っているのであのパーティーのシーフだろう
「すいませんでした…今日に限って寝坊とは…」「不覚でやんす…」
反省を口にしているがマントは何も言わずただ一礼だけし座った
「剣士さんは北領地の出身者だな、その白髪かなり血筋が濃い貴族か?」
「いえいえ、ただの平民ですよ!」
ケインの質問にあたふたと答える白髪剣士
なるほど、北寮地は白髪が多いのか。魔法使いの方は冴えない顔だし普通の王国らへんか?
「そうだ!自己紹介しようよ!私はエルザ、盗賊だよ!」
「俺はケイン、ガーディアンをしているものだ」
エルザの提案に最初にノったのはケイン、いつもより柔らかい挨拶。落とそうとしてるのか
レイナに耳打ちされたリックは頷き話し出した
「俺はエリック、剣士だ。で、こっちは魔法使いのレイナ」
軽く会釈したレイナはすぐにそっぽ向いた、何?照れてんの?
「そいつは呉島、シーカーで勇者だ」
「「勇者?!」」
エリックに紹介され俺も軽く会釈する。「おい、勇者って教えていいのか?」「そっちの方が荷物を盗られる可能性が低くなるからな」
リックに小声で問いかける。まぁ確かに勇者と知って何かしようとは思わないだろう、こちらが何か言えば王国を敵にするようなものだ
「俺は橘、エンチャンターで同じく勇者だ」
「バッファーの桐生、勇者です」
相手は何も言わず口をパクパクとさせている、なんか優越感を感じるな
「わ、私はセイス・ルイです。キレス公国領の村出身です」
「おいらはゼン・ハドンでやす、自分もルイスと同じ出身でやす」
で、こっちは。とマントを指差した
「ケルアさんです、この街に来る途中に会ってパーティーに入ってもらってます」
何も言わず会釈したマント。これどうやって勧誘したんだ?
「けど本当の勇者でやすか、これは武勇伝の一部に入りやすね!」
「そうだねゼン!これはアイスドラゴンを倒した時よりもすごいよ!」
「アイスドラゴン?」
「おお!気になりやすか!おいらがお話ししやす」
ゼンは少し興奮気味に語り始めた。
あれは寒い日でやした____
「ルイス、待つでやんす!」
「遅いよゼン〜」
ルイスが何を考えたかAランクのアイスドラゴンの討伐クエストを受けてラヴィネベルクの洞窟に向かってた時でやす
本来、アイスドラゴンは10年に一回卵を産んでどこからに行くんでやすが、どこも見たなんて情報はないんでやす。それの調査を行った他のパーティーは口を揃えてアイスドラゴンは山の怒りを買ったなんて言うもんですから急いで討伐クエストを発注したんでやす
それを受けたパーティーはおいら達だけでなく他も出発して時間を置いて出発するんでやす
「冷えるでやすね、離れたら凍傷になるでやすよ」
「うん」
おいらは火属性石のランプで温度を保っていたんでやす、そしてそのアイスドラゴンの住処に着いた時に目に入ったのは他のパーティーの死体でやした
アイスドラゴンからは黒い瘴気を纏ってやして本来温厚な性格のドラゴンとは思えない程の咆哮
「ど、どうするの?!勝てないよ?!」
「おいらに考えがありやす、ルイスはあいつを奥に誘い込んで欲しいでやす」
ルイスは傷だらけになりながらも必死に致命傷を避けながら持ち堪えやした__
「そこで、おいらが必殺の爆発魔法を奴の魔力が溜まった氷柱に撃ち込みやした!!」
「それでそれで?」
「アイスドラゴンに突き刺さった氷柱に魔力を流し込んで爆発させてなんとか奴を倒しやした!!」
「私が、ね。爆発魔法でゼンは魔力切れて倒れたんだ、それで私が飛び乗ってある限りの魔力で過剰投与で爆発アイスドラゴンを倒したの」
これが討伐の証、と首にかけたペンダントを見せた
「アイスドラゴンの鱗でできた首飾りで私たちの武器にも使ってるの、ゼンの杖は尻尾の骨で私の剣は鱗と魔鉄の混合鉄」
アイスドラゴンを倒すとか凄いな
ドラゴンには階級があり一番上がヴェノムドラゴンなどの感情竜、その下が魔法の属性の属性竜でそこからどんどん弱くなっていく
一番弱いのがワイバーンなどの翼竜だ、普通のドラゴンは4本の脚と尻尾があるのだが翼竜に分類される竜は二本の脚と翼だけで一体だけなら雑魚だがかなりの数で襲ってくるので定期的に討伐隊が派遣される
そんな事を考えながら馬車は進んでいくのだった