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アイデンティティ

何故かドアを開けた黄月より先に青海が中に入る。

「えっ!?」と蒼空が先ほどまで自分の近くに居た青海が先頭に移動してることに驚く。

「甘寧一番乗り!!」ノリノリでどっから取り出したか不明の鉄球を振り回す青海。

部室の中には、一人の女性が席に座り本を読んでいた。

制服のリボンの色が緑だという事は二年のメガネで黒髪ストレートだった。

変なテンション青海を一瞬見て、また本のほうに目を戻した。

黒髪の女性は、全く動じていなかった。

ふっと青海の後ろから黄月が前に出て言う。

「弓弩先輩、こんにちは。今日は入部テストを受けに来ました」丁寧に言う。

「こんにちは、黄月君。そういえば今日って金曜日だったのね」と席から立ち上がり言った。

彼女の名前は、弓弩 陽狐 エンタメ探求部二年副部長。

青海の渾身一発ギャグも、見なかった事にする完全スルースキルの持ち主だった。

青海が一生懸命鉄球を振り回している背後から、赤羽、蒼空が声を掛ける。

「なんか、残念だったな。青海」赤羽が青海の肩をポンと叩き優しく言った。

「帰りに、肉まん食べてくか?」蒼空も同情し言う。

しばらくポカーンとしていた青海だったが口を開く。

「たのむから、今のぼくに優しくしないで!!」涙目で全力で言う。

「それで、そっちの賑やかな人たちは?」弓弩が黄月に聞く。

「はい、全員入部希望です」

「・・・・そう、今年は入部希望者多いわね」メガネの位置を指で直し弓弩が言う。

「尾田先輩はまだ来てないんですか?」黄月が中の様子を見て尋ねる。

「もう来る頃だと思うんだけど・・・」

そんな話をしているなか、後ろから疾走と何者かが部室に入ってくる。

「おぃース、陽狐ちゃ~ん」ハイテンションで小柄の少女が弓弩に飛びつく。

「先輩、いきなり飛びつかないでください」冷静に弓弩が言葉を返す。

そこに黄月が声をかける。

「尾田先輩、こんにちは」

「来たな~!我が天敵の兎ちゃん。カチカチ山での恨み晴らさでおくべきか!」

いきなり駄々っ子パンチで襲いかかるが、黄月が手で頭を押さえた為に届かない。

「何の話ですか、それって!?尾田先輩、落ち着いてください!そうだ、これを献上しますので、許してください」と黄月は何処からともなく飴を差し出す。

ぱっとそれを取り尾田と呼ばれる人物が言う。

「今日は、これで勘弁してやろう」満面の笑みで答える。

それを見て蒼空がぼそっと言う。

「コイツと同じ匂いがする・・・」青海指し言った。

「ん?で今日はお客が多いけど、どーゆーこと?」不思議そうに飴を舐めながら聞く尾田。

「先輩、黄月くんと他の子たちは入部希望者です」弓弩が答える。

「おういえ」

もの凄いFMのラジオのパーソナリティが言いそうな感じのいい声で尾田が言う。

「・・・ねぇねぇ黄月・・・この、ちんまいは誰?」

スルーされて現実逃避した青海が帰ってきた。そして尾田を指し黄月に聞く。

「えーっと、尾田先輩なんだけど青海くん知ってるって言わなかった?」

尾田が両手を腰に当てて言う。

「えっへん!!」

「ぼくが、知ってるのはこの学校一番の美少女の尾田 摩狸だよ!何なのこのお子ちゃまは!?」

「キミは、失礼な子だなぁ~。リボンの色が見えないのかな?そこの一年生」

尾田がリボンを青海に見せ付ける。

色が赤だった。自分が三年生ということアピールしている。

「うそだぁー!どう見たって小学生でしょー?」おちょくる青海。

「まあ私はOTONAだから、子供の言う事は許してあげないとね」尾田が眉をぴくぴくさせながら言う。

「ぷっぷぷぷー!お子ちゃまが無理してなんか言ってるよ。もしかして、黒の組織のお酒の名前が付いてる人達に危ない薬でも飲まされて小さくなったんですか?」ニヤニヤとどこまでも煽る青海。

「青海、もうやめろって・・・」蒼空が止めに入る。

「はじめてですよ・・・このわたしここまでコケにしたお馬鹿さんは・・・」不適な笑みを浮かべる。その尾田の威圧感に当てられて硬直する青海。

「先輩!!遊んでないで、そろそろ本題に入らないと」その尾田を物ともせず弓弩が割ってはいる。

「陽狐ちゃん、ごめんごめん。あんまり面白かったからついつい~」さっきまでの威圧感は消え去り、穏やか顔で弓弩との会話する尾田。

「青海、誤っとけって」蒼空がフォローをする。

青海がほんの少しの間、沈黙していたが口が開く。

「なんか、いろいろとさーせんでした」少し不貞腐れながら頭を下げて言った。

「まあ~私は、先輩だから、な。許すよ~」笑いながら尾田が答える。


「では先輩、入部テストの方をお願いします」弓弩が尾田に話を振った。

「あ~OKOKんじゃ、テストやっちゃおうか~」と言いながら尾田が自分の席に着く。

弓弩も自分の席に着いた。

「で?兎ちゃんはマンガで、他の三人は何を見せてくれるのかな~?」わくわくした様子で尾田が聞く。

「僕と彼(赤羽)はコンビでマンガ家希望です」黄月が答える。

「どーも、赤羽です。よろしくお願いします」赤羽が頭をペコリと下げ二人に挨拶した。

「赤羽?あー、やんちゃな子が今年の一年生は多いって聞いてたけどキミがあのスザクくんか~よろしくね」尾田が言う。

「赤羽君、よろしく」弓弩も答える。

「こんにちは、蒼空です。えっーと俺とコイツ(青海)はお笑いコンビ希望です。よろしくお願いします」蒼空も頭を下げ挨拶する。

「わーお!?今年のワイルドルーキーがみんな来ちゃうんじゃない?うちの部。天下統一狙えるんじゃね?」尾田はご機嫌で言った。

「蒼空君ですね、よろしく」弓弩も再度答える。

「そしてこのぼくがー・・」青海が言おうとするがそれより先に割り込まれる

「甘寧君ですよね。先ほど聞きました。よろしく」弓弩が真顔で言った。

その言葉で青海が崩壊した。

さらに尾田が追い討ちをかける。

「YOUは甘寧なんだ!すごいじゃん!!マジで痺れて、憧れるわw」尾田が悪ノリして言う。

「ほんと調子に乗って、すんませんでしたー!!自分は青海 龍牙です!!」耐え切れなくなり全力で謝る青海。

「分かってるって。空ちゃんの相棒だから名前は知ってるよーん」尾田が言う。

「そうでしたか、失礼。青海君、よろしく」弓弩が修正して挨拶を返す。

「改めて、あたしがエンタメ探求部部長の尾田 摩狸なのだー」椅子の上に立ち上がり言った。

尾田は前下がりショートボブの背が低い女性だ。

「私が、副部長の弓弩 陽狐です」淡々と自己紹介をする。 

「コンビ×2か・・・うん。おもしろいね♪」と尾田は満足そうに言う。

「うれしそうですね。先輩」弓弩が少し口元緩めて言った。

「どっちから、テストする?」尾田が問う。

「黄月、悪いけど俺たちから先にやらせてもらっていいか?」蒼空が言う。

「うん。いいよ」

「サンキュー」蒼空が言う。

「決まったみたいだね。じゃあ、ネタの一つでも見せてもらおうかな」尾田が楽しそうに言った。

「青海、準備はいいか?」蒼空が問いかける。

「はいはい、いつでもいけるよ」青海が答える。

「それじゃ一発かましますか」蒼空が力強く言う。

「それではどうぞ」弓弩が言う。


蒼空、青海はコントを披露した。ネタ的には万人受けするように考えられていた。

二人が昔から友人という事もあって息が合っている。

尾田と弓弩はまじめに二人のコントを見守っていた。

コントを見ていた赤羽は何かがツボに入ったらしく、腹筋崩壊状態。

テストの邪魔にならないようにと、教室の端の方で一生懸命笑いを堪えている。

黄月は口とお腹を押さえ、声を殺し笑っていた。

二人が一通りをやり遂げる。

『どうも、ありがとうございました』蒼空と青海が声を合わせて言った。

赤羽以外が拍手をする。

尾田と弓弩が蒼空・青海コンビに近づいてアドバイスを始める。

その助言がとても分かりやすく二人にとって実に納得出来る内容だった。

蒼空と青海が自分たちにまだ足りてないものが明確に見えた。

尾田の的確な助言に感銘を受けた青海は尾田を先輩と認める。

「ちっちゃいのに尾田パイセンは凄いっス」青海が言う。

「海ちゃん。あたしは変身するたびに戦闘力がパワーが増す・・・その変身をあと3回も残している・・・その意味が分かるかな?」尾田が微かに笑みを浮かべ言う。

その顔に青海は背筋がぞっとする。

「すんませんしたー」即座に土下座した。

「あははは」尾田は上調子に笑う。

「次は、黄月君達の番ですね。・・・赤羽君は大丈夫なのかしら?」弓弩が赤羽を見て言った。

赤羽が床でうずくまりながら小刻みに震えている。

「赤羽君、大丈夫?僕たちの番だよ」黄月が赤羽に近づき心配そうに言った。

「・・・大丈夫だ・・・問題ない・・・マンドラゴラって・・・くくく」また笑い始めた赤羽。

蒼空達のコントに出てきたマンドラゴラというワードが相当ツボに入ってるらしい。

「赤羽の意外な一面を見た!」青海が親指を立てて良い顔で言った。

「馬鹿やってないで、赤羽をこっちの世界に連れ戻すぞ」蒼空がいう。

その後、黄月、蒼空、青海の三人で赤羽を正常に戻すのに10分消費した。


「何か、ホントにすみませんでした」赤羽が全員に謝る。

「おお、立ち直ったね~スザ君。いや~いい笑いぷりだったね~」尾田がニヤニヤと言う。

「もう、平気そうですね。準備が出来たら声をかけてください」弓弩が言う。

「黄月~前座は終わってるからさ、派手にぶちかましてきなYO」青海が明るく言う。

「本命は後からやってくるものだからな」蒼空が優しく言う。

「それで、さっきは先にやらせてくれて言ってくれたの?」黄月は蒼空の言葉の真意を理解した。

「頑張れよ」蒼空が黄月の背中を押す。

「んじゃ、行こうぜ。黄月」赤羽は準備万全の様子で言う。

「ありがとう、青海君、蒼空君。いってくるね」

黄月、赤羽が尾田と弓弩の前に向かう。

「準備は万端かい?んじゃ、兎ちゃん達の作品見せてもらおうか」尾田が興味津々だった。

『お願いします』黄月、赤羽が声を合わせて言う。

尾田は二人の合作の原稿を真剣に読んでいる。

黄月は落ち着かないようで貰われて来たばかりの子犬のようになっている。

赤羽が黄月の様子に気づく。

「大丈夫だ」と小声で声を掛けて、黄月の頭を優しく叩く。

黄月はそれで落ち着きを取り戻した。

尾田と弓弩は一通り目を通し終える。

「今回はどうでしたか?」黄月が問いかける。

前回は黄月一人で入部テストを受けたが、尾田にいろいろと指摘をされて、再入部テストを受けるようにと提案された。

黄月はそれに応じて、赤羽とコンビになり再びテスト受ける形になった。

「うん。・・・良いと思うよ、まだまだいろいろ粗い部分もあるんけど。前に言った事はちゃんと改善してあるし。あと、兎ちゃんの書きたかったバトルもののジャンルに合う絵を・・・相棒を見つけたみたいだね」尾田が嬉しそうに言う。

「私も前回よりも断然良く成ってるとおもいますよ」弓弩も口元が緩めて言った。

「そうでしょ~陽狐ちゃん。兎ちゃんの絵は、日本代表する2代RPGの世界に認めらている方に対して、スザ君の絵はもう一つの日本を代表するRPGの国民に愛されている方よりなんだもんね。ある意味この出会いは革命じゃない?」尾田が楽しそうに言う。

「RPG(ルチノーイ・プラチヴァターンカヴィイ・グラナタミョート)」ノリノリで青海が言う。

「お前は黙ってろ」蒼空がグーで突っ込む。

「で、結果はどうなんですか?先輩」赤羽がいつもより強張った声で聞く。

「ん?全員の熱意は伝わったよ。だから合格!うちは部員も少ないからね」

「みんな、おめでとう。私も後輩がいっぱい出来てうれしいです」弓弩が優しく言った。

「・・・・やったな!!黄月」赤羽が喜び言う。

「よっしゃー。気分的には勝訴!!って書いた紙を持ってドヤ顔している感じだよ!!」青海が言う。

「何の訴訟に勝ったのだよ、お前は。なぁ黄月?」蒼空が呆れながら言う。

「うん・・・みんな・・・ありがとう」黄月は瞳に涙を浮かべている

「また、すぐ泣く。嬉しいなら笑っとけよ、黄月」赤羽が黄月の頭をポンポンと頭を軽く叩く。

「ごめんね。何かほっとしちゃって・・・・」黄月は一生懸命笑おうとする。

「うんうん。いきなり戦力3倍になっちゃったね~陽狐ちゃん」満足そうに尾田が言う。

「そうですね。今年一年、賑やかになりそうですね」

「尾田先輩、部活の活動内容はどうなってるんですか?」蒼空が問いかける。

「部室で本を読んでも、マンガを描いても、お笑いのDVDを見ても、お菓子食べても、宿題をしても、基本自由にしてもらっていいんだけど、文化祭には何かしらの形で結果を出してもらうからね」尾田がびしっと言った。

「あとは、平日は急な用が無い限りは授業終わりから18時までは参加して下さい。土日はお休みですね。たまに、部長権限のイベントがありますが、必ず参加と言ったところでしょうか」弓弩が補足説明をする。

「最後にあたしの言う事は絶対だからね」尾田がもの凄いドヤ顔で言った。


入部テストが終わり、全員合格という一番良い形で終える。

帰宅時間になり、メンバーはそれぞれに別れのあいさつを済ませ散っていく。

蒼空と青海が肉まんの話を覚えてたらしくコンビニに向かう。

尾田と弓弩は仲良く帰宅の途につく。

「ふぅ~取り越し苦労だったな、黄月」赤羽が徹夜の疲れが来たのか疲弊した表情で言った。

「でも合格出来て良かったよ・・・」黄月は目を潤ませる。

「ああ・・・すまない、すまない、泣くなって。そうだ!黄月、今からささやかだけど合格祝いに、一杯飲みに行かないか?」赤羽がジェスチャーで表現する。

「駄目だよ!!僕達、未成年じゃない!!」黄月が制止する。

「酒じゃないからな。珈琲だよ。コーヒー」赤羽が即返答する。

「ああ、いいね。行きたいな」黄月が目を輝かせ言う。

「昼飯も作ってもらっちゃったから、俺が奢るよ」

「えっと・・・いいの?」黄月は申し訳なさそうに言った。

「ああ、任せなさい。黄月に紹介したい店なんだけど、そこでいいか?」

「ありがとう。そこでお願いします」

「俺がすごいお世話なってる人がやってるんだけど、その人がまたいろいろ凄いんだよ」赤羽が楽しそうに言った。

「そうなんだ、行くのが楽しみだよ」黄月が微笑み言う。

その時、黄月の携帯が鳴る。

液晶には姉のカグヤの名前が出ている。

「姉さんだ・・・めずらしいな、なんだろ?」

「早く出たほうがいいんじゃないか?」赤羽が言った。

「ごめん。ちょっと出るね」黄月は赤羽に手を合わせて謝る。

着信のボタンを押す。

「もしもし姉さん、どうしたの?・・・・・・・・・・・・っえ!?」












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