2.ファミリーレストランって意外にファミリーで来ないよね
海で一騒動あってから一日がたった。
正直言って、多幸感でニヤニマしかしてなかっただろう。今思い返しても胸がほんわり暖かくなる。
「ちょい、そこ邪魔よ!掃除するからどいて!」
優雅に振り返りタイムをしていた俺に容赦なく母親の掃除機が襲いかかる。
「へいへーい。」開いていた動画を一旦閉じて。冷蔵庫に飲み物を取りに行く。少しうるさく感じる掃除機の音は、似てもいないエンジンの音のように聞こえた。
ほんのり磯の香りがする宝箱を運転して隣町のマストに向かう。いわゆるファミリーレストランだ。
梨紗が奢ってくれるっていってたし、なんかお高めのやつ食べたい。ちょっとだけね。
梨紗とのやりとりを見返す。
ええと今日くるのが?アキと紫音、それに健か、紫音主催なのでアキと梨紗を誘うのはわかるが、健を連れてくるのか、
昔からの付き合いで女性三人衆とは程よく関係が構築されているが、健にいたってはまだ浅い。
なんなら紫音がある日パッと連れてきて、気づいたらくっついていた。が、健はめっちゃ女の子との距離を近づけたがって、なんか気持ち悪い。まぁ俺視点だけかもしれないが。
店に着くと、梨紗とアキは入り口にいた。窓越しに手を振ってくれた。
「おっす!お二人さん。アキ久しぶり!」
「聞いたぞぉ、羽流、梨紗と海行ったんだって??えぇ??」
「暇でしたので。楽しかったっす。」
「アキも呼べばよかった。今度行こーよ。」
「その時は是非とも、、あー、美味しいものを、、。あっ!あと紫音たちちょっと遅れるらしいから先入ろう。」
おい主催者が遅れんなや
とりあえずドリンクバーを頼み一通り雑談を花開かせた後に。
「ごめーん。、」
紫音と健がこちらに向かってくる。ちょうど梨紗とアキが飲み物を取りに行っていたので、空いていた向かいの席に二人が座った。飲み物を片手に持った二人組も帰ってきた。
「あーそっち座っちゃった?じゃあ私らこっちに座るから荷物ちょーだい。」
もしや横に梨紗が、、?期待に胸を躍らせながら横を向く。
おいアキ、テメェじゃねぇ
「いやーごめんごめん健のこと迎えに行ってたらちょっと遅れちゃった。」
「マジごめんなー。」
という謝罪の言葉をよーいどんのピストル代わりに止まらない雑談が繰り広げられる。
小学校時代に流行っていた漫画のアニメ化の話から小学生時代の話まで飛んだ。
ア「みんなちっちゃい頃何やってたの?」
紫「私はソフテニやってた。」
梨「小学校は特に何もやってなかったなー。」
羽「小学の頃は習い事と、ミニバスやってた。穴埋め要因だけど。」
健「俺クラブチームでサッカーやってたよ。」
ア「羽流ってバスケ経験者だったの?!どーりで体育のフェイント上手い訳だわ。」
羽「そこまで上手くなかったわ。普通にボール落としてたし。」
梨「私もなんかやっとけばよかったなー。、」
紫「アキバスケ部主将だもんねー。目の付け所が違う。」
健「そういやさ、林っていう強化選手知ってる?多分アキは知ってると思うけど俺サッカーやってた時にあいつのチームに勝ったことあるよ。」
ア「あー林晃大ね。あいつ今競合のとこからのスカウト受けてサッカー頑張ってるはずだよ。」
健「まじかぁ。俺サッカー好きだから審判の三級の資格取ったんだよね。のちのちアイツの試合担当するかもな。」
おわかりかもしれないがこの健という男。自分に関係のある話に脱線させそれとなく自慢を始めるのだ。
現にバスケからサッカーに急に路線が変わった。
このモードになるとサッカー以外にも自慢話がポンポン出てくる。
ちょっと別の話をしたとて「さっきのやつなんだけどさ」で戻されてしまう。
長々とした会話を終え、現在の話に持っていくことができた。ぼちぼち食べるものも無くなったので店を出る雰囲気になったが、まだ時間もあったのでカラオケに行くことに。
各自歌いたい曲を予約して、それぞれの声を聞き合っていた。中でも紫音はめっちゃ歌うま。時点で俺、梨紗、なんかねっちょりしてるけど健、雰囲気は一丁前なアキだった。
「らーらーらららーらーーらんらーらーらー」
アキのステージを全力で楽しんでいた。
すると梨紗が俺に向かって何か言っている。聞こえなかったので顔を寄せて耳を貸した。
「この曲デュエットしない?羽流もファンだったよね。」
ヒソヒソ声でする話は特別感がある。
曲名が「遊ぶ歌は缶詰とマイクと」という明るい男女のデュエット曲だ。健以外の四人はこのバンドのファンクラブ会員だったりする。
俺も梨紗の耳に近付いて答える。
「おっけーあそぶうたね。いいよー思う存分やろう。」
「ひゃう」
なぜか梨紗がビクッとした。ちょっと息が耳に入ったのかもしれない。
ハモリどうだったかなーと思いつつ順番を待っていると、紫音と健が飲み物を取りに行った。
アイツらほんとに仲良いな。何をするにも大体一緒だしな。本当にお熱いことですこと。
似たような顔のアキと目が合った。
考えてることは皆同じってこと。
梨紗も歌い終わり。次の次でデュエットだな。
そう思った矢先
いきなりだった。
俺たちはただ見て固まることしかできなかった。
紫音が空のコップを持って一人で帰ってきたのを
そして、目に浮かぶ涙と、悔しさを噛み締める口元を




