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1.来たる確変

空にはそりたつ雲とこの前食べたブルーハワイシロップを垂れ流したような快晴の青。

夏だ。

お盆だから実に一年ぶりに帰省する、とは言いつつ卒業してまだ一年なのであまり久しぶりな感じがしない。けど、庭の草に違和感を覚える。予定通りに家を出発し、道中親と他愛もない会話をしてご先祖様に参る。暑いし、止めた車にぶつかってくるアブが鬱陶しい。


しかしなぁ、やることやってしまって本当に暇だ。あと数日はこちらに滞在することにはなるのだが、実家の長所は程よく田舎ということだが、短所は程よく田舎であるために近所にこれといって行くところがない。全部今住んでるところに上位互換が全てある。

実家の犬の写真をSNSにシェアし、可愛さを存分に共有したところでとりあえず寝た。


ピロン


通知オンが目覚ましの代わりになって起きた。まだ30分程度しか寝れてないのに、と思いつつエアコンで乾いた喉を潤しながら携帯を見た。DMがニ件。

「かわいい。」

「羽流(うる)もこっち帰ってきてるの?」

と高校時代に何度もやりとりしたアイコンが喋る。思わず声が出た、梨紗(りさ)だ。体が一気に動かなくなり止まり固まる。向こうから連絡してきただと?

彼女は俺が高校2年間ずっと片思いしてきた人であり、6年間同じ学校である。けれど受験シーズンに突入して告るタイミングを逃したっきりだった。そこから全然話す機会もなかったし、個人的に気まずい。


「久しぶり!リサもこっちに帰ってきてるの?」

と送った二十分後、

「そーだよ!お盆だからね」と送られてきた。通知をタップしてしまったせいで速攻既読をつけてしまった。恥ずい。、、

「懐かしいんだけど、マジやることなくて暇」

「どっか行こうかな」

送ったあとすぐに既読がついた。

返信中のメッセージが出ると毎回気分が高揚してしまう。


「こっち友達と遊ぶ予定あるけどそれ以外の三日何もすることない」

「暇人仲間だ」


「じゃあ暇な時どっか行かない?車出すよ」

昔からの悪い癖だ。可能性があると何も考えずに誘ってしまう。


「免許取ったの?!」「素晴らしい」


「お褒めの言葉誠に感謝です」


「OKどこか行こう」


「マジで?やったぜ」


お暇な帰省期間が一気に色付いた!このなんとも言えない梨紗の雰囲気は大学でも変わってないようだった。


来たる八月七日、約束の地までアクセルを踏む。梨紗の実家は知ってるのでその近辺のコンビニにて待つ。カフェラテを飲みながら待っていると、見覚えのあるシルエットがこちらへと向かってくる。がしかし、髪の色が少し明るい。女っぽくなってる。


「久しぶり!」 夢の中で何回も聴いた声が耳を通る。幸せホルモンが分泌されるのがわかる。

助手席に梨紗を乗せ、いざゆこうぞ海!!俺がおかしいのは自覚してるが、梨紗も梨紗でおかしいと思う。久々に会って即海なのは流石にエネルギッシュすぎる。

車内では大学生活のこと、懐かしい話とかしながら俺監修のプレイリストを流す。うん。素晴らしい。

こんな形で過去の自分が理想としていたデートができるなんて、、感謝感激雨あられでごさいますよ神様。


「サップ楽しみだねー。」

「マジでいきなりごめんね。」

「全然いいよ海行きたかったし、車乗れたし。」

お互いやはり何も考えていない。これでも梨紗は上澄みの頭のいい大学生のはずなんだが、

「この前友達と会った時にさ、ーーー」

そこからは梨紗の友だちの話が続いた。俺にとっても友人であるから話が弾む。そうこうしている間に目的地に到着しましたというカーナビの声が会話を遮った。

ちなみに会話を要約すると、ご友人は先輩に誑かされてるというものでございました。


一面の海、気持ちいい。受付のために道路を挟んだ小屋にてサップの受付を済ませて浜辺へと向かう。サップボードがずらりと並んでいた。

説明を受け終わり海上へと漕ぎ出す。

「見てー立てたy」

梨紗の方を向く頃には視界のどこにも彼女は映らなかった。浮かんでくる光景が面白かった。なかなか上がれないらしくお手伝いのために俺も海に入る。

あーここにきて一番のミスをしてしまったと頭を叩きたくなった。レジャー系だから水着じゃなくて水陸両方いける服で行こうと提案したのは俺だ、かろうじてヘソだしの衣装だが刺激が足りない。クソっ!!

でもこれはこれでいい。


サップも一通り終わって陸に上がった。

喉が乾いた。

「喉乾いてない?買ってくるで。」

「まじ?ありがとう!お願いします。」

「あそこの自販機行ってくるー。」

といって自販機に小走りした。

買い終えて振り返ると短い距離だったのに、日焼けのために来ていたのか知らないが薄焦げた二人組が梨紗に話しかけていた。

梨紗の顔は迷惑そうだった。ナンパやんけ!!

「お姉さんちょっといいスカw?」

「聞いてくださいヨぉ、うちらほば全員が酒買ってきちゃってて、飲みきれないナぁって、」

「向こうでバーベキューしてるんですけどお姉さんも一緒にどうスカw他の女の子もいるし肉美味いっすヨ!」

「えっ?、いやっ、その。私まだ19ですし、」

「いいっていいって!取り締まる人なんて居ないんだしさー。」

「ごめんなさい、予定があって、、」

流石にニ対一では梨紗も強気には出れないよな。

「あの、、俺達になんかようですか?」

「オレたちこの女の子に話してんだけド?誰?」

「連れです。彼女の。」

「キミが?まぁいいや、ねぇー行こうヨ、絶対こっちの方が楽しいっテ!」

「ですから、行きませんって、、」


こいつら俺が細いからって舐めてるな、、見た感じこいつら筋トレはしてるっぽい雰囲気しかない。

「もう行こう。」

と彼女の手を取る。

「オイ!人が話してる途中でしょうガ!!」

「そうだぞ!オイ!インキャw」「言い返せないの?www」

イライラするけど我慢、我慢

「やめてください。このあと予定あるんで。」

離れようとするけどついてくる。なんだァテメェ、、

「なぁ、絶対オレらと一緒の方が楽しいって、オレらもアニメ見るヨ!!」「そこの鬼に一刀両断!!www」「雑な鬼は滅ぶべしwなぁお前もそう思うよナ!」

と俺の肩に手が置かれた。


プツっ


確かに音が聞こえた。


「あ?」思わず手首を掴んだ。

ドスの効いた声で二人の方を睨む

「さっき予定あるって言わなかった?」掴んでいた手首を離して、梨紗を片腕で守った。

「なんだヨ、、キレちゃったw、?ウォ、カッケェ、w」

「だから、もういいって、関わらないでもらえる?わかった?」

「なんだヨ、やる気なの?、、暴力でしか解決できないのかよ、、」と相手が退いたのを確認して


駆け出した

「えっ?えっ?」

困惑する梨紗をよそにお姫様抱っこして逃げた。幸い追って来なかった。


ーーーーーーーーーー

「ごめん怖い思いさせちゃって。大丈夫だった?」

「ううん、私は大丈夫、、」

言葉が詰まっている。やっぱり結構怖かったのだろう。二人で浜辺に座り、落ち着きを取り戻すために俺は水平線を見た。

「さっきの二人組、多分二人じゃないとイキがれない可哀想な人たちだったんだよ。だから引くに引けなくなってずっと絡んできてたような気がする。」

「たしかにねぇ、、」


沈黙が波のように来ては引いてを繰り返す。


「あのさ、さっきの羽流さ、なんか違う人みたいだったね。」

「ごめんねだいぶ怒っちゃってて、ああいう自分が嫌だと思う人に触られるのが嫌でさ、溜まってたイライラが解放されちゃうと好戦的になるっていうか、なんというか、、。」


俺は昔から怒るのを耐えるという癖がある。そしてなんとか穏便にその場をおさめようと我慢してしまう。なので昔の俺のイメージは優しい、とかほがらか、とかなんだと思う。実際は攻撃的な面を頑張って隠してるだけに過ぎない。他の人に嘘をついてる感じがしてあんまり好きじゃない。


「かっこよかったよ。」


「え?」

思わず声が出た。


「なんか凄い頼れる感じがした。」

「なんかお父さんに抱っこしてもらった時みたい。」

梨紗が体育座りでうつむいて言う。

「でも嫌な思いさせたのは俺で、」

「あれはあいつらが悪い。元気だしな。」

と背中をポンポンされた。


よし、触られたのが嫌なテイで少しふざけよう

「あっ、今、、触った?」

「あっ。ごめん、つい。」

ちょっと距離を詰める

梨紗の目が少し大きくなったのがわかった

怒るふりだと場がしらけるし、、、

考えた末に、耳元で

「急に抱っこしてごめんね。」と囁いた。

「んん、」

流石に変なことしたと思って謝罪をして少し遅めのお昼ご飯を奢った。割り勘は今の俺にはできない。


帰りの車ではあまり会話はなかった。疲れたのもあるが、少々気まずかった。沈んでいく太陽がより赤く見えた。


大体午後5時過ぎぐらいに梨紗の実家に着いた。

「今日本当にありがとね!めっちゃ楽しかったよ!」

「こっちこそ!色々あったけど付き合ってくれてありがと!めっちゃ夏だった。」

「突発的に行くプチ旅行も悪くないね!」

「じゃ!また今度!」

「またね!」


梨紗の姿がミラー越しに小さくなっていくのにセミの声だけは変わらなかった。


あーまた告れなかった。やっぱり俺は勇気がないや。ノリだけで訳わかんないことしてしまった。クソクソクソ。もうこれで告る機会がないのは嫌だな。あー可愛かった。

頭の中をぐるぐる思考がメリーゴーランドする。

来年のお盆とかまたいけねぇかな、、

とか考えながらベットに寝っ転がる。



ピロン



通知だ。

梨紗からだった。

「今日ありがと!マジで楽しかった!」

「明後日もし予定なければさ、アキとか他の暇人募ってご飯食べに行かない?」

「借りを返すべくお代は私もちです。」


既読をつけるのがもったいなくて、その場で飛び跳ねた。


よっしゃぁぁぁ


俺は次こそ梨紗に告る!


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