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働きたくないにゃ

「働きたくないにゃ」


ベッドの上で転がりながら私は言った。


天井を見上げる。


平和だ。


実に平和である。


働かなければもっと平和なのだが。


「働いて」


キッチンから声が返ってきた。


セカイである。


私の恋人である。


冷蔵庫を開けたり閉めたりしている音が聞こえる。


「嫌にゃ」


「そう」


「もっとこう……『大変だったね』とか『今日は休もうか』とかあるにゃ?」


「今日は休みだよね」


「そうだったにゃ」


なら仕方ない。


仕方ないので寝返りを打つ。


ごろん。


「お腹空いたにゃ」


「さっき朝ご飯食べたよね」


「過去の話にゃ」


「一時間前だよ」


「過去に変わりないにゃ」


セカイがため息をついた。


聞こえた。


今、確実にため息をついた。


失礼な話である。


私はまだ何もしていない。


「何か食べる?」


「食べるにゃ」


「働く?」


「食べるにゃ」


「質問に答えて」


「答えたにゃ」


違うらしい。


解せぬ。


私は再びごろりと転がった。


今日は良い天気だった。


窓の外では鳥が鳴いている。


世界は平和だ。


私以外は。


「働きたくないにゃ」


「そう」


「働かなくても生きていける世界にならないかにゃ」


「ならないね」


「世界が悪いにゃ」


「そうかもね」


「おっ」


思わぬ援護射撃が来た。


私は勢いよく起き上がる。


「セカイもそう思うにゃ?」


「でも働いて」


「裏切り者にゃ」


「最初から味方じゃないよ」


「ひどいにゃ」


「家賃払って」


「ひどいにゃ」


現実というやつは本当に容赦がない。


私は再びベッドに倒れ込んだ。


ふかふかである。


人類の英知である。


このまま眠ってしまいたい。


「お昼どうする?」


「食べるにゃ」


「作る?」


「食べるにゃ」


「そう」


セカイが笑った気がした。


気のせいかもしれない。


気のせいということにしておこう。


私は毛布を抱きしめる。


人生は面倒くさい。


働くのも面倒くさい。


でも。


「セカイ」


「なに?」


「お腹空いたにゃ」


「知ってる」


「ご飯まだかにゃ」


「もう少し待って」


「仕方ないにゃ」


そう言って私は再びベッドに沈んだ。


今日も私は働きたくない。


そしてきっと。


セカイはそれを許してくれない。

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