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探し物は何ですか?

見付けられるモノですか?

 つぎのひっ!


『みんな、おはよぉ~♪』

「う~ん、良く寝た……」

『ふにゃ~あ……』

『良い夢見れたわ~』

《《良い朝ですね~》》

『プティング~♪』


 眩い朝日を浴びながら、たくあんたちが欠伸混じりに目を覚ます。魍魎跋扈する古代遺跡のど真ん中で熟睡とは良い度胸だ。ディオメデスとケリュネイアが見張りをしていたとは言え、油断し過ぎである。

 ……まぁ、空の大怪獣の亡骸をバックに眠る輩に喧嘩を売る奴はそうそう居ないだろうが。


『さて、それじゃあしゅっぱつしようか~?』

《う~ん、ちょっと探検してみません?》

《もしかしたら、伝説のアイテムとかあるかも!》


 と、早速旅を再開しようとしたたくあんに、ピグミーたちが欲に塗れた提案をした。


『え~、あぶなくない~?』

《大丈夫大丈夫。ラドンとの激戦で魔物は殆ど逃げ出してますって》

《それにここで一晩熟睡している時点で、気にしても仕方ないですよ》

『そうかなぁ~』


 確かに一理あるが、そもそも徒労に終わる可能性がある。働き者のミュルミドンが、有用なアイテムを見逃しているとは思えない。


「まぁ、良いんじゃないか? 急ぐ旅でも無いし、やらせておけば良いさ。流石に一日で疲れは取り切れないよ」

『う~ん、それもそうか~』


 ポダルの言葉に、たくあんは渋々従った。未知の世界を大冒険したい気持ちも分かるけど、休息もまた大事だ。傷は癒えても溜まった疲労が取れているとは限らない。カリュブディス戦でぶっ倒れた過去もある。ここはしっかりと休んだ方が良かろう。

 幸いピグミーたちの言う通り、ラドンの死骸が近くにあれば大抵の魔物は恐れて近寄って来ないので、安全性はある程度確保されている。独断専行なんて死亡フラグを立てなければ、自由行動をしても問題はあるまい。


《流石はポダルさん、話が分かる!》《いや~、腕が鳴りますね~!》

「コソ泥の腕がか?」

《やだなぁ~、僕らがそんな事する訳ないじゃないですか!》《そうそう、僕らは何時でも何処でも品行方正ですよ!》

「どうだか……。おい、ラゴス、付いてってやれ。監視の意味も含めてな」

『分かりました』

《《う~ん、信用がない!》》


 そういう事になった。流石に信用しろと言うのは無理があるだろう。

 ちなみに、行くのはラゴスとピグミーたちだけで、たくあんたちは休息タイムである。クリス、たくあん、ポダルの三人で川の字に、スプリガンの上で夕方までスヤスヤ眠るのだ。平和な光景だなぁ~。


《《じゃあ、行きますよ~♪》》

『何だかなぁ……』


 そんな感じで、ラゴスとピグミーたちは探索を開始した。地下に潜る訳にはいかない為、地上部分の遺跡をガサゴソと漁っていく。


『無いなぁ……』

《無いですね~》


 むろん、そう簡単に見つかる筈も無く、時間だけが過ぎていった。


『あ~あ、ボクも向こうで一緒に寝たかったですよ……』

《まぁまぁ、そう言わずに》《これもまた良い暇潰しですよ》

『楽しいのはキミたちだけでしょ~、まったくもう……』


 ウッキウキなピグミーたちに対して、ラゴスは不満がタラタラであった。当たり前だけど。


『大体、墓荒らしなんかして、そんなに楽しいですか?』

《随分な言い方ですね》《楽しいですよ~♪ こうして宝探しをしていると、昔を思い出しますよ!》

『昔を思い出す?』

《はい。我々は昔からこうなのです!》《そうそう、何時も三人揃って――――――》


 そう言い掛けて、ピグミーたちは押し黙った。明らかにテンションが下がっている。昔は三人で、今は二人でつるんでいるという事はつまり、


『……ごめん、聞かない方が良かったかな?』

《いえ、良いんです》《今はラゴスさんや、たくあんさんたちが居るので》

『そっか……』


 ピグミーたちの作り笑いを見つつ、ラゴスもまた嫌な事を思い出していた。

 今まではお互いに明かして来なかったが、ラゴスもピグミーたちも過去に大切な人を失っている。起きる筈の無い(・・・・・・・)巨大な嵐によって(・・・・・・・・)


『ボクのお母さん、嵐に巻き込まれて死んだんだ』

《……そうなんですか》《僕らの相棒も、嵐に巻かれて行方不明になっています》

『そうなんだ。……嫌な偶然だね』

《はい、まったく》《どうなっているんだか……》


 ぎこちないながらも、三人は笑い合った。あまり話したくは無い過去ではあるが、話題に出てしまった以上、仲間同士で隠し事はしたくない。詳しくは言いたくないけど、これくらい話すのは良いだろう。折角、同じ釜の飯を食っているのだから。


『戻ろうか』

《そうですね》

《帰って寝ましょ》


 結局、それから暫く探してもゴミしか出て来なかったので、ラゴスとピグミーたちは戻る事にした。旅の仲間たちの下へ……。

◆スーパーセル


 「メソサイクロン」という回転する継続した上昇気流域を伴う、非常に激しい嵐の事。上昇気流と下降気流が分離した状態で発生する為にかなり寿命が長く、地上に甚大な被害を齎す。

 ……世界中何処でも発生し得る現象ではあるのだが、もちろん色々な条件があるので、広範囲で同時多発的に起こる事は、普通なら絶対にあり得ない。




 そう、自然現象に限っては。

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