グローアの力
「________直ぐにそっちに逝く。」
グローアは足を引き摺らせながら、アスラウグの元へと向かう。既に満身創痍に近い状態であり、戦える状態ではない。だが、グローアは聖剣レーヴァテインを強く握り締め歩き続ける。
(あの獣を葬るまでは死んでも死にきれん。)
神聖国を不動のものとする為にはスコーネの女王スクルドの存在は消さなければならない。
(平和を歌いながらも芯を辿れば侵略者の国だ。)
滅び、従属した大国らからすれば神聖国は蛮族に他ならないのかも知れない。だが、自分達のしたことは間違っていないと前を進み続けなければならない。
(後悔などするな。それを感じればお前は悪となる。)
正義を掲げての侵攻だ。大量殺戮ではなく選別だと言い切らなければそこに正義はない。
「スローライフ計画は平和で誰もが笑える国を作ることなんだろう?」
叶えろ。その理想を実現しろ。あと少しで手が届くだろう。
「ジークフリート......俺はただの冒険好きの戦闘狂いだ。」
新しい景色を見せてくれそうだとお前やロキと手を結んだ。
「そんな奴がお前とここまで来れたんだ。スケッゴルド、ノルナゲスト、エイリーク、カーラ、エイル、ハーラル、ランドグリーズ、ニュービーズに蒼髪、そしてディートリッヒ........全員が己の世界を変える為に戦い、散っていったんだ。」
此処までの道程は決して優しいものではなかった。
「無駄にするな。戦友であった者達の意思を継ぎ、手に入れろ。」
手にしなければならない。
「欲しいものは手に入れる。それが俺達、冒険者だ。」
(人を踏み潰した肉の感触を確かに感じた。わっちの勝利じゃ、暗黒騎士の小娘。)
土埃が舞い、足場が見えない。だが、フェンリルはアスラウグを踏み潰したと確信していた。
「_________________よぉ、死にそうじゃねぇか?」
土埃が徐々に晴れていく。
「.............貴様」
フェンリルは鋭い眼光へと変わっていく。
(剣帝を倒した........馬鹿な。洗脳を施したとは言え、その実力は変わらない筈だ。寧ろ、出力はスクルドの改良で上がっている筈。)
即座に距離を取り、土埃が完全に晴れるのを待つ。すると聖剣の炎圧で土埃を切り払い、意識を失ったアスラウグを姫を守るように抱き止め、剣を銀狼へと向ける冒険王の姿があった。
「...........そうか。スクルドが警戒するわけだ。」
(権能が戻ったか。)
暗黒騎士の意識が途切れた事で封印の効力が失われたのだ。
「その死に体でどう動く。立っているだけで苦しかろうに。暗黒騎士の能力はもう働いてはいない。剣帝に打ち勝った功績は認めよう。だが、今の貴様ではわっちには勝てぬぞ?」
フェンリルの言葉にグローアは鼻で笑う。
「冒険王の覚醒能力は他職の覚醒能力を二つ選択し、使用できる権利を得る事が出きる。そして俺は第一に剣帝の覚醒能力を選び、ディートリッヒを下した。」
「何を言って...........」
「ただデメリットとして、選択した覚醒能力は日に一度しか使用できない欠陥仕様だ。俺はもうお前に対して次元斬りは使えない。」
グローアはアスラウグを優しく寝かし、立ち上がる。
「では、第二に選択した職業適正は何だと思う?次元斬りを除き、お前のような神話の化物へ有効打を与え得る最強の覚醒能力_____________」
「まさかっ、くっ!!」
フェンリルは即座に権能を使う為に大口を開けるが遅い。
「______________________ファフニールのお宝でも見つけたか、フェンリル?」




