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第12話「お兄ちゃん、空から全裸の女の子が!!」後編

 小さい?

 幼い?

 とはいっても10歳は越えてそうだ。

 綺麗な艶の銀髪ショートカット。

 眼を回しているが、ふっくらした幼少の可愛らしさがハッキリと判る。

 頬などは柔らかそうだ。

 これ以上、兄や妹が欲しいとまでは思わない真愛であるけれど、こんなに可愛かったら少しは考えてしまうかもしれない。

 ソラ寄りの北欧系の顔立ちで、大河や真愛の妹というには違和感があるが······


「違うよ!」


 真愛は首を振って、己の思考にツッコミをいれてしまう。

 問題がある。

 この娘のルックスではない。

 いや、それはルックスに入るのかも知れないがこの娘は何も着ていない。

 お外なのに真っ裸。

 全裸なのだ。

 そして······何故か。

 

「なんで、この娘はお兄ちゃんに抱きついて倒れ込んでるの!? お兄ちゃん、何やってんのよっ!? お兄ちゃん、お兄ちゃん、おにぃちゃぁぁん!!」


 ソラの背中を両手で掴みながら涙声を上げてしまう真愛。

 その剣幕に、


「いてててぇ······な、なんだぁ?」

「いたたたぁ」


 気絶でもしていたのか、大河と銀髪の少女は互いに頭を擦りながら目を開けて······


「うわぁぁぁぁぁ!!」

「きゃああぁぁぁ!!」


 大河は頭をおさえて起き上がり、銀髪の少女は胸を隠して座り込みながら、互いに声を上げる。

  

「俺の頭の上に落ちてきたの、お前かァァァ!?」

「そっちが落ちたら下にいたんじゃんかぁ!! 見たろ? もろ見たろ? メチャクチャ見たろ? おもいっきり見たろ? このエロガッパ!!」

「落ちてきた? もろ見た? 見ちゃったの? お兄ちゃん、こんな幼女さんの裸を見ちゃったとか、お兄ちゃん······」


 怒鳴る大河に、負けずに返す少女。 

 混乱する真愛。

 巨大な塔の静かなふもとが騒がしくなる。


「······」


 ソラは3人を交互に観てから、頬を掻き、自分のしている白のマントをバッと翻して外すと、座り込んだ少女に優しくかける。


「え!?」


 銀髪の少女は驚きの顔をした。


「私はシュティエルテルの神聖聖徒会少年少女部長のソラっていうの、貴方の名前を教えてくれるかな?」

「あ、ありがとう、あのね······わたし、イシュタル」


 彼女から見れば年上のお姉さんに優しくマントをかけてもらえたからだろうか、銀髪の少女は大河に怒鳴り返した剣幕とは違い、素直に名前を名乗り、かけてもらったマントを嬉しそうに身体に巻く。


「で? そのイシュタルちゃんはなんで、塔の周りを偵察していた俺の頭の上に、マッパでご降臨なされたのですかぁ!? 脳天へのリベンジャーが結構痛かったんすがぁ?」

「うるさいっ!!」 

「お兄ちゃん、頭突きをリベンジャーとか言わないの、わかる人この世界にはいないから」


 コブが出来た頭を真愛に介抱されながら口を挟む大河。

 イシュタルはべーっと舌を出す。


「ゴメンね、でも何で貴方が塔から裸で落ちてきたか、私もそれを聞きたいんだ」

「了解、了解!! それはねぇ!」


 ソラが聞くと、イシュタルはマントを羽織ったまま立ち上がる。


「それはねぇ!!」

「うん」


 胸を張るイシュタルに、三人は揃って近づく。


「······むまむ? むまむむ?」 


 嫌な間。

 顎に手を当てたイシュタルは意味不明な言葉を発して、眉をひそめ、腕を組み始める。


「ん、ん、んんんっ!?」

「お、おい? どうした? 落ちた時にどこか痛めてたか!?」


 大河が声をかけるが、イシュタルは唇を噛み締め、一層難しい顔になる。

 そして······フゥと脱力するように大きく息を吐くき、


「なーんにも出てこない、思い出せない、わかるのはイシュタルって名前だけなのだ!」


 と、罰の悪そうに舌を出した。



 

         ***



「落ちてきた、そう言ってもそこまで高い筈がないんだよね、そんな高さから墜ちてきたらお兄ちゃんも潰して、もっとお互いに大怪我してただろうし」


 真愛が大河の倒れていた場所から上を見上げるが、見えるのは天まで伸びる塔の壁。

 少なくとも見える範囲に窓などは見えない。


「うーん、魔法でならそういう事もできますけど、高くなればなるほど、高い魔力と高度な術式が必要になりますね」


 ソラも真愛と一緒に塔を見上げる。


「もしかして、ワタシは魔法使いさん?」


 マントに包まったまま得意がるイシュタル。

 結局、彼女は自分の名前以外は何も覚えていなかった。

 塔から落ちる前後どころではなく、自分が何者なのか、なぜ塔にいたのか、家族友人の事すら抜け落ちている状態であった。


「とりあえず街で聞き込みしてみたら? ここにいたんだから、もしかしたら街の子供かも?」

「そうかもしれませんね、イシュタルちゃん、街は覚えてる?」

「住んでた所も思い出せないなぁ〜」


 真愛の提案に頷いたソラが聞くと、イシュタルは申し訳無さげに首を振る。

 

「覚えてなくても、街の子供だったら景色で思い出す可能性もあるね」 

「ですよね、もし誰も知り合いがいなくても教会で世話をしてあげればいい事ですしね、イシュタルちゃん、それでいい? もし街にも知り合いがいなかったら、私の所にいらっしゃいな、あなたよりも小さな子供達ばかりで騒がしいけど、寝る場所はあるし、温泉もあるよ」


 ソラに笑顔を向けられたイシュタルの表情がパアッと明るくなる。


「いいの?」

「ええ、家事を色々と手伝ってもらうけどね?」

「やるやる! ソラと一緒なのはいいね、真愛も一緒なんでしょ?」

「まぁ、俺もいるけどな」


 そこで大河が口を挟むと、


「げぇ~、ワタシの裸が忘れられないからって、温泉覗かないでよ!?」


 イシュタルはべぇと舌を出し、グッと言葉に詰まってしまった大河に、真愛とソラは声を上げて笑うのだった。


 

続く

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