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異世界出張!迷宮技師 ~最弱技術者は魚を釣りたいだけなのに技術無双で成り上がる~  作者: 乃里のり
第4章 出張からの出張は最早拉致に近い件について
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87:国家機密並みに情報規制

「国家機密並みに情報規制されてるぅ!? ねねっどゆことシトゥ?」



 あーそれはこの世界に来たばっかりなのと『愚物』の件でのギルドのご厚意だな。

帝輝龍グランツドラゴン』ってのは、なんすかね……?



「情報を追ったバレーガでも『ゴロックトラップ』に『ガチャ』、『かき氷』に『あら汁』、色々監修しているはずなのに、その詳細にはほとんど誰もが口を噤んだわ。饒舌だったのは『エアークーラー』の販売営業だけ」



 かき氷にあら汁?!

 それはもう本当に監修してないからです。

 なんかすいません。



「しかも目撃情報を追っても、近づく前に猛吹雪のような寒さと炸裂魔法に邪魔されたのよ? そのお陰で丸2日治療に費やした」



「治療? あーあの後、風邪引いちゃったもんねー」



『猛吹雪のような寒さ』は多分『ボルテックスチューブ』特訓の巻き添えです。

『炸裂魔法』は凍裂って自然現象です。

 なんか本当にすいません。



「でも、やりすぎたわね。あなたは遂に尻尾を出した。謎に包まれていた『水晶獣ドランゴルムの討伐』。これはあなたの仕業ね?」



「ッ!」



「うふふっ気が付かないと思ったのかしらぁ? 討伐情報が何も出なかったことが逆にあなたと結び付けたのよ!」



「どういう事なの! シトゥ!」



「いいかしら? 最初は『英雄の胎動』なんて『ご大層な名前が付けられた』と思っていたわ。でもねペイリ、もしその大層な名前の通り、あの戦いが『前哨戦』だったとしたら?」



「前哨戦?」



「思い出してみて、『故郷に帰る手土産に帝輝龍グランツドラゴンを狩る』という噂を」



「ん、どゆことー?」



「火のないところに煙は立たないわ。そう考えれば見えてくるの。繋がってくるの。あなたが次に何処に向かうのかが! ふふふっあなたは王都に向かおうとした。違うかしらぁ?」



「え、えぇまぁそうですが……」



「うふふっ今更誤魔化そうとしても無意味よ。なぜ分かったか教えてあげましょうか。『帝輝龍グランツドラゴン』が出現するのは、『シュナイフェル火山』。そう。討伐に行くためには王都経由で向かうしかないのよ」



「すごいっ! シトゥ! ずっと停留所に張り込んでいたのは、そのためなのね! あっでも……それはまだ推測の域をでないのではないかしら? 証拠がないわ。気ままに観光しているだけかも知れないじゃない」



「えぇその通りよぉ。確たる証拠はない。でも、一つ一つの行動が浮かび上がらせるの。ある真実をねぇ!」



 なにこれ……いつの間にか寸劇名探偵が始まってたんだけど……

 助手ペイリの方がいい線いってるし。



「まず『帝輝龍グランツドラゴン』は『水晶獣ドランゴルム』と同じ高硬度で高耐久の相手。武器には『硬くて、マナを通しやすい素材』が選ばれるわ。それに『シュナイフェル火山』は強い磁気を帯びている。そこかしこが強力な磁石のようなものね。だからほとんどの金属は持ち込めない。あらぁ? まさに最適な『黒晶』って新素材があったわよねぇ?」



「そういえばあれの開発はっ『迷宮技師ダンジョニア』!」



「それに不審な行動が見えてこないかしら? 王都に向かうなら、なぜ彼はすぐにロンメルへ向かわずにバレーガに寄り道をしたのでしょうね?」



「確かに遠回りだわ!」



「それは寄り道ではなく、必要な過程だったとしたら? うふふっもう分かるわね? 『シュナイフェル火山』は高温迷宮よ。常時冷却が必要になるわ。『エアークーラー』のような物がね!」



「あぁぁ! まさか……全ては繋がっていたというの!」



「そう。全ての行動は『帝輝龍グランツドラゴン』を狩るための布石。いえ、核心をついてあげましょう。全てはあなたを『英雄』として祭り上げるための陰謀だったのよぉ!」



「「な、なんだってー!」」



 ◇



「ギルド繁栄の裏で数多の汚れ仕事を請け負ってきた影。これがあなたの正体よ!」



 迫真だぁ……

『ズビシッ』って擬音が似合いそうな恰好で指をさされてしまう。



「分かったかしら? あなたほどの手練れを捕らえるには、こうするしかなかったのよ」



「全然違いますって! 『帝輝龍グランツドラゴン』だってさっき初めて聞きましたよ!」



「ふふっそりゃあ自分の口からは言えないわよねぇ。でも『痛撃』にも顔色一つ変えないなんて一体どれほど過酷な鍛錬を積めば、そうなれるのかしら? 寒気がするわ。『隠密』『隠蔽』に『状態異常耐性』『高火力速攻魔法』。あなたの能力は要人暗殺するためにあるようなものよ。いいえ、むしろ暗殺してない方がおかしいわ」



「えぇ……そ、そんなに?」



「恐らくあなたの低すぎる【耐久】は、その能力の代償。『増魔禁術』。聞いたことがあるわよねぇ?」



「無いです……」



「ふふっ笑っちゃうわね。何が『良き魔素と共にあれ』よ。率先して禁忌をやってたのはあなた達ギルドじゃないの。ギルドが情報を隠蔽、秘匿したのはそのため。『故郷に帰る』は『裏稼業から表舞台に戻る』の比喩。共謀した数々の功績と『帝輝龍討伐』はまさに手土産。『英雄』としての舞台を作ろうとしたのよぉ」



『ギルドの広告塔に――』

『英雄プロパガンダの――』

『抑止力として――』

『経済戦争を――』


 なぁんてこった! 全然着いていけねぇ!

 迷探偵だよっ! 明後日の方向に推理が飛んでったよ!


 何を言っても、『誤魔化すのが下手だなぁ』って顔をされちゃうもの。

 陰謀がサイクロン掃除機みたいに渦巻いちゃってるもの。



「もう、何て言ったらいいか……とりあえず一旦落ち着きましょう?」



「落ち着きましょう? ……ダメ、全然似てない!」



「いや、そりゃ流石に真似するのは無理があるんじゃないですか?」



「ううん、違うっ どうにもならないの! 怖いっ! トモヤン怖いよ!」



「あらぁ。難しいんじゃなくて怖いのねぇ」



 先ほどからペイリはテントの端っこでこちらを伺っていた。

 耳はペタンと垂れ、尻尾はクルンと丸まっている。

 そんなに露骨に怖がられてしまうと凹んでしまうじゃあないか……



「さっきのやりすぎましたかねぇ……」



「そんなことねぇ。んっいい感じだったぜぇ」 



「良かったっ起きたん――えっ」



「んっ なんなら、もう一回頼むよ! なぁ? はぁはぁ いいだろ? なぁ?」



「ちょ、ほんと一旦落ち着いて!」



 もう一回とかなにそれ怖っ! 怖いし近い!

 破れたインナーから色々見えそうなんだって!



「あらぁ? 以外に『こっち』の方がいいのかしらぁ? ねぇもし協力してもらえるならイ・イ・コ・トしてあげるわよぉ///」



「詳しく聞き――ってあーぶねぇ! そ、そんな照れながら言われても! 慣れてないならやめましょうよ」



「う、うるさいのよっ! こ、こういうのがイイんでしょう! ほらぁ」

「んっ はぁはぁ もう一回ぃおしおきぃ」



「ちょっ圧が強いっ! なんかキッツイ! 腕の血圧測るんじゃないんだから!」



 あっさてはこれ落ち着かないやつだ。

 全然進まない感じのやつだこれ。



「ただいま。手荒なことはしてな――――」



「えっ」



 なんだこの爽やかなイケメンは……はぁっ! 救世主かも知れない?

 唯一話の通じる人かも知れない!



「――あっ間違えました」



 開いた入口が、すぐに閉ざされた。



「……あっ待って待って! 間違えてないですよ!」



 夕暮れの迫る森に一際大きい叫びが木霊した。

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