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「危ないよ、弱い人間の身体じゃ壊れてしまう」
ぶわり、と熱風が身体を包む。
しかしそれは、余りにも熱い。
「────っ!あああああぁぁぁっ!!!!」
「っと…あれ、どうしたんだい」
誰だこれは
何だこれは
頭が思考を放棄する。
「うーむ、久しぶりだからか?力が上手く使えないのか」
「あ゛っ!!!!」
今度は冷たいを通り越して、痛い。突き刺さるような痛みが肌を駆け抜ける。
なんなんだ本当に。
「ごめんね、マルガリータ」
この人は誰なんだ。
「あ、ようやく目が覚めた?」
「っ、エリオ…っ!」
…いや、なんか違う。
姿声は私の知るエリオットそのものだ。
でも、
触れている手が、違う。
「誰、ですか」
「…………マルガリータ?」
「私はペルラ、マルガリータではありません」
「な、なにを言っているんだい?その漆黒の髪、白い肌、赤い唇。そして魂全てがマルガリータそのものだ」
「っや…!」
頬に触れようとした手を払った。
エリオットを象るそれは、目を見開いて、後、歪ませた。
「────そう、忘れてしまったんだね。あの日々を」
「っ、これ、は…っ!」
その人から禍々しい程の瘴気が溢れ出る。エリオットを飲み込んだ、あれだ。
────まさかっ!
「エリオットが、私の代わりに乗っ取られたというの…!?」
確かに、基本の死亡ルートは乗っ取られ、それを浄化するために倒されることだ。友情エンド以外ではこの結末が採用されている。
もし、エリオットがその話を聞いたことによって、身代わりになってしまっていたとしたら…?
エリオットを待つのは、死のみ。
「あ、…あぁ…っ」
なんてことをしてしまったのだろう。
私のわがままで、彼を殺してしまうなんて。
「最ッ低だ…っ!」
どうしよう、どうしたらいい。
空気がだんだん重くなる。胃も空っぽになるほど吐き出した。
地面に押し潰されるように身体は重くなり、視界も霞む。
…私は、私も、ここで死ぬのか。
「あぁ、可哀想なマルガリータ。今、救い出すから」
鋭く尖った指が、頬をなぞる。手足が全く動かせない私は、なすがままになるしかなかった。
ぽたぽたと、滴り落ちる感覚がある気がする。
呼吸もままならない状態で、もう、諦めた。
「っ、ペルラ!!」
「あ゛っ!!!!」
「ペルラ、大丈夫ですか!?ペルラっ!!」
少し空気と身体が軽くなった気がした瞬間、私は意識を手放した。




