閑話:リュカの独り言
40000PV、9000ユニーク超えありがとうございます…!
古の夢小説サイトより読まれてる…_(:3 」∠)_
「リュカさん頼もしすぎて惚れそう」
危なかった。本当に危なかった。
「じゃあ惚れてください」
言わなくてよかった。本当によかった。
彼女はこのまま行けばいずれ女王となる。
女王は恋をしてはならない。その想いは弊害となる。
ただでさえ、彼女は、出逢う前から彼しか見てないというのに。
僕に出来るのは、彼女が女王になるための手伝いと、魔物から守ることだけだ。それ以上は、赦されない。
第一印象は、歳の割にしっかりしている子だと思った。
「リュカ様、本日はよろしくお願いします」
後ろで駄々こねる弟(実際には違ったが)を宥め、馬車に乗り込む顔は、覚悟を決めた顔だった。
綺麗だと、思った。
14も離れている子供に何を思っているのか。さすがにそれはダメだと言い聞かせ、その想いを打ち消した。
漆黒の闇のように揺蕩う黒髪に、白い真珠は星のように輝いていて。
「綺麗だ」
そう、自然に零していた。
慌てて口を噤むも、相手にはしっかり聞こえていたようで、大きい瞳を零れそうなくらい見開いていた。
「貴方も、この真珠の良さがわかるのですか…?」
よかった、バレていない。
ゆっくりと頷くと、彼女は弾けたように真珠について語り出す。
…黒髪に気を取られていたが、確かにこの真珠も相当の上物だ。宝石好きだった母のコレクションと同等──いや、下手すればそれ以上に。
…贈ったら、喜んでくれるだろうか。
聖殿への送迎は、その真珠の話で盛り上がった。
「お姉ちゃんっ!!」
「わっ!」
彼女の家に着くなり、犬──いや、彼にタックルされていた。
「ただいま。ちゃんと帰ってきたでしょ?」
「よかった、よかったよー…っ」
尻もちの痛みに顔を歪め、彼に戒めの言葉を告げる。
落ち込む彼に、はいはい、と呆れたように頭を撫でるも、その瞳は愛おしくて堪らないという気持ちでいっぱいだった。
なんだ、よかった。
彼女には既に相応しい相手がいる。僕の出る幕なんてないじゃないか。
胸にちくりと走った痛みには見向きもしなかった。
「僕が、ですか」
「ああ。女王候補が君のことを大変気に入ったそうだ」
彼女が。そうか。
高揚した。
四聖剣は特殊な力を授かる。それは歳を重ねるのを緩める力もある。気にしていた歳の差も、近く気にならなくなる。
彼女が女王になるならば、四聖剣になれば力尽きるまで共にいられる。未だ幼い彼には叶わない、半永久的な時間を。
自分が空席の緑の四聖剣候補に名が挙がっているのは知っている。
今まではさして興味が無い──いや、なりたくはなかったが、彼女の支えになれるのならば。
この件はその1歩だ。
抑えつけていたはずの気持ちが顔を出したことに、気付かない振りをした。
「そうだ、リュカさん。私も戦えるようになりたいんです」
力強い瞳が、僕の心を射抜いた。
「…女王を護るのが聖騎士団、四聖剣の役目です。貴女は覚えなくても良いのでは」
「いえ、そういう訳にはいきません」
彼女の力が発現したあの日、魔物が出た時、溢れ出る力でなんとか浄化していた。
けれど、本来なら弱らせてからでないと相殺されてしまう。
その時、聖騎士団の到着は遅かった。
「あの時は…」
「謝らなくていいです。でも、今後もあるかもしれない」
なら私は自分も戦えるようになりたい。
もし聖騎士団がいなくても、何とかできるように。
護られるだけでない、私だって護りたい。
確かに、一応近くに数名の聖騎士団を配置しているとはいえ、この週1の頻度では彼女を守るのは難しい。
それに、…これなら、彼女の今後に役に立つかもしれない。
「───わかりました」
ふぅ、とため息をつくと同時に懐から白銀に輝く短銃を取り出した。
彼女はまだ1人では力を使いこなせないと見た。なら、これで慣れされるのはいいと思う。
「僕が威嚇用で使うものです。なので威力がどれ程のものかはわかりません」
聖騎士団謹製で、力を弾にして撃ち込む。
女王の力であれば、実用化出来るのではないか。
魔物を浄化するにも、力を操る媒体にも。
それにこれなら、そこまで近付かなくても魔物に攻撃出来る。いざとなった時、守りやすい。
「これの扱いはダリウスが1番上手い…ダリウス」
「かしこまりました」
本当は僕が教えるべきなんだろうが、銃の扱いはあまり得意ではない。
実用化させるなら、得意な人に習うべきだ。
長年共にしてきた戦友で、きっと僕が四聖剣に上がれば、彼が隊長へと昇格するだろう。
それに、ペルラは水の力と相性がいいと見た。
ダリウスも水の力を扱う。僕より適任ってわけだ。
僕には彼女に頼まれた、重要な任務があるからね。
「僕は引き受けたからには、中途半端にはやらない。…生半可な気持ちで聖騎士団に入ろうと言うなら今すぐ辞めろ」
「…辞めない、決めたもん。絶対なるって」
「…そうか。でも、浄化能力がないと話にならんぞ」
「ある!絶対あるもん!聖騎士団になるんだー!!!」
「威勢だけはいっちょ前だな」
最初はちょっとした嫉妬心だった。
少し痛めつければ、すぐ挫けると思っていた。
けれど、彼は何度でも立ち上がり、向かう。
次第に、本気で教えるようになった。
僕が四聖剣に昇格してからも、ダリウス含む部下たちに、本気で指導するよう伝えた。
その成果もあり、彼──エリオットは、特例中の特例で、13歳にて聖騎士団…しかも、一つ星を賜った。
「…何、不満?」
「いえ、どちらかと言うと疑問です」
「そう?彼の力に気付いていると思ったのだけど」
あぁ、とっくに気付いていた。けれど、そんな話を聞いたことは無い。
本来、団長が代々受け継ぐ天地の力を先天的に持っているだなんて。
「これも、彼女のため。この宇宙のためなの」
彼が来れないと思い込んでいた領域をいとも簡単に侵された時、僕はどうなるのだろう。