近況報告85
もう3月も終わるんだ。 キバごんです。
いま、世界ではコロナウイルスが蔓延していますね。 しかし、しかしこういうときこそ慌ててはいけません。 テレビやネットで見える感染者、亡くなられた方の人数を見て慌てることは良いことではありません。 こんなときこそ冷静に予防をしていきましょう。 冷静になれた人が多ければ多いほどウイルスにとってはイヤなのですから。
じゃあそんな上から目線のキミはなにをしていたんだといえば、ひたすら小説を書いていました。 どこの?
女王救済編でございます。
何度書いたら気がすむのでしょうか? なんか一年くらいまえにも書いた気がします。 でもしっかりと意味があるんです。 まだそれを語るには早い気がするので伏せますが、(簡単に気づける人もいると思いますけれども)あれですね、同じ長編を書くよりも自分の成長に気づかせてくれるものはありませんね。
自画自賛キバごんになりますが、少しは成長しているような気がしました。 気、だけですが。
で、今月中にこの長編を書き終わらさなければならないので、申し訳ございません......またイラストがないです。 あと次の改稿文もないです。 おうお前、神経ずぶとくなってきたな。
その代わりと言ってはなんですが、女王救済編の改稿文をのせます。 ご覧ください、どぞ。
*
城の廊下には、アイナ1人の足音だけがあった。むこうまで連なる窓から見える空は雨でも降り出してしまいそうで、時計はほぼ真昼間を語っているのに、太陽はいまも顔も出さずじまいである。
だから廊下の壁から飛び出るランタンの形をしたランプが出す、蜜色の光がよく映えた。それはむしろまぶしいくらいで、ずっとさきにある廊下の終着点までよく見える。比べて眼下に広がる街はうっすらとしていた。見える家からは光が漏れず、その暗さ具合から、ここが空に、はさまれでもしたのかと思う。国外に広がる草木や大地が、どれほど日々に彩りを与えてくれていたのか痛感する。たちこめる暗雲のふちを、遠雷でもほのかに照らしてくれないものだろうか。
それに、この天気はもう1人の自分を見ているようでイヤなのである。普段、休みのときには本を読む。そこでは作者は競うようにして、物語だけでなく、読者にとってわかりやすい心情表現をあみだしていく。その中に、主人公が悲しみを抱いたら曇り空にするという表現がある。いまがまさにそれだ。
姫が、今日、他国の王と結婚される。政略結婚である。いや、正しくはそうは言わないのかもしれない。ただ、姫が私たちを守らんとして結婚に臨まれることは確かである。
姫は男どもに狙われていた。美しさや凛々しさをかねそろえた女を男は欲しがるという気持ちを、いまだに私は理解できないが、それが一国の王となるとその欲が、それはもう強いのだという。姫はそれらを何年も昔からさんざん断ってきた。どれだけ武力で脅されそうになろうが、媚びようとしてこようが、姫も、私たちもそうはさせなかった。
しかし、そうして女の手しか支えるものがない薄い壁が、あっけなく崩れる日がやってきたのである。
忘れもしない、ちょうど2ヶ月前の今日、ここより東にあるフェロスアニマという国の王が、武力を持ってして求婚を迫ったのである。ただ一国で迫ったのならばこちらにも考えはあるが、複数の同盟国の武力さえも使ってきたものだから、口出しの機会がこちらにまわってくることがなく、そのまま今日に結婚式が行われることが決まったのだ。それも、最終的には姫の一声によって。
流石に束になった武力には、この国もあらがう手段はなかった。それなりに実力者がいても、数には圧倒されるしかなかった。だからこそ、姫は自分が犠牲になることで、国の将来をとったのだ。
アイナは、自分が長をまかされている、ここ「アリフトシジル」の自衛軍、「三槍団」を思った。部下たちも、この景色を見、私と同じことを思っているのだろうかと。
名前にある三槍は、ここの国旗が由来する。中央に、天に伸びる矢印のような鋭い1本の槍を、外に湾曲した2本の、これまた黄色い槍がはさんでいる国旗。国旗の背景は紺色であるが、アイナの黒服の、股から膝元にまで垂れ伸びる布にもその刺繍がほどこされていた。三槍団の制服の背中にも描かれている。
その3本の槍は、武力、知力、胆力を意味する。しかしどうだ、我らがまず守らなねばならぬ姫を守れずここにいたる。いままでそのために鍛錬を積んできた自分や、部下、極めつけには自分の指導にも疑問を浮かべる始末だ。
気づけばアイナは、姫の部屋の前にいた。 ここにくる気もなくきてしまったことに、アイナは胸の奥で狼狽した。
姫はよく、力について語ってくれた。武は間違いなく力であると。知は間違いなく力であると。しかし、それが誰かの上に立つ絶対の理由にはならないこと。それを胸に鍛錬をつむことを良しとせよと。
同時に姫はあやまった。私個人の思いで、男を寄せ付けぬ、女人のみの国にしてしまって申し訳ないと。
そんなことは構わない、自分たちが寿命が短い人間などの種族ならばあれであるが、寿命が途方もない悪魔ゆえに問題はないと言ったアイナの言葉は、いつも彼女の胸に響いてくれていたのかと、いまとなっては悩みの種である。もしかすれば、求婚を受けいれたのもそれにあるのかもしれないと邪推する。こんな思想の持ち主を、早く国のトップから落とし、新しい風をふかす者が玉座に座ればいいと思い、他国の女王となるのを良しとしたのかもしれないと。
そしてアイナの手は、扉をノックしかかっていた。手は、見れば見るほど震えていた。
ノックしたければ、いつものように、気楽にすればいいのだ。姫は国民の来訪を嫌わない。姫が、姫自身に与えた、(姫いわく、自分が姫だからといって仕事をしなくていいなどといった特別扱いはいやだという思いから)貿易などの執務を終えたあとであれば、気楽に尋ねても良いのだ。この国で唯一の子どもであるラーファも、2ヶ月前は、時間をうかがっては尋ねていたではないか。
そして驚くことに、いま尋ねても姫になんの用事もないのである。それがこの手を震わせている理由でもあろう。しかし、自分の胸の奥底には、会わねばならぬという、いわば義務にも似た焦燥感が鎮座しているのだ。そしてそのときは大そうあっけなく訪れた。下くちびるの肉を噛んだ、ごりっとした感触を歯をつたわせたほんの直後、自分はノックしていた。
部屋の奥から、かすかな返事が聞こえた。
アイナはそれを聞き逃さず、出来るだけ音を立てぬように開扉した。それでも腰に差した剣の鞘がコツンと当たってしまい、申し訳ない目で鞘を見て、直立した。
部屋はうすぐらかった。天井に吊るされた、薄く伸ばしたへらべったいシャンデリアも、寝台や化粧代のすぐそばに設けられた照明もつけることなく、姫は、寝台の横の壁にある大きな窓のすぐそばに置いた丸椅子に座り、眼下の町を眺めていた。
姫が持つ、腰までのびた銀髪の髪が、部屋の暗さに混濁し、床を貫いてどこまでも落ちているように見えた。しかしそれでいて、むこうに向く高い鼻や艶やかなくちびる、そして赤と青のオッドアイを隠すベールのようなものであるとも思えた。それらの美しさがそこなわれるこの暗さにあっては見てはならぬと、ある種の優しさを持っているような、そんな気が。
「……どうしたのですか」
姫の声はこの状況にあっても、いつものように涼しく、冷静なハリのある声をしていて、それがアイナの背中をよりまっすぐとさせた。
「あ……いえ、その……」
2ヶ月前は、来訪を嫌わなかったがいまはどうであろうか。1人になって、気持ちを整理したいのではないだろうか。──そう思った途端、急に額から汗が流れるのを感じた。それは頬をつたい、バラやイバラが刺繍されたカーペットの部分に、あごからポタリと落ちた。
どもって言葉が出ないアイナは、泳がせた目で、寝台とは反対の壁にとりつけられた丸い時計を探し出した。ちょうど12時をさしていて、式まで6時間である。
*
いかがでしょうか。 僕はまずまずなものにはなってきているのかな、とは思います。 といってもテンポが悪い部分はあったり、数えれば山ほど拙い部分は出てくるのですが......。
ただ、なんか楽しいです。 こうして、ちょっとの成長でも見ることができたら、いままでの努力は無駄じゃなかったんだという1つの達成感を抱けて、非常に良い感じでございます。
来月から社会人としての生活が始まり、ますます筆の遅いところ極まるかと思いますが、お付き合い頂ければ幸いです。
ではまた必ず来週にお会いしましょう。 キバイバイ。(唐突な新挨拶)




