はい
夕方、一週間ぶりに母を風呂に入れた。
身体を洗い終えて浴槽に入れた。
「身体が温まったら呼んで」
しばらくして母の呼ぶ声がした。
身体を拭いてバスローブを着せた。
いつものように後ろから抱えてリビングまで歩いた。
そして食卓椅子に座らせた。
「後片付けしてくるからここで休んでいて」
浴室の清掃を終えリビングに戻った。
母が顔を上に向けて寝ていた。
「母さん、終わったよ。起きて」
返事がなかった。
「母さん?」
母の身体を揺すった。
「母さん!? 母さん!?」
母は力なく上を向いたままだった。
「父さん! 母さんの意識がない!」
二階にいる父に向かって叫んだ。
父が急ぎ足で階段を降りてきた。
私は母の身体を抱き起こし床に寝かせた。
「父さん、救急車を呼ぼう」
受話器のボタンを押す指先が震えた。
「心臓マッサージを行ってください」
オペレーターの指示で心臓マッサージを開始した。
「一、二、三、四⋯⋯」
母の様子を見た。呼吸が止まっていた。
人工呼吸を試みた。浅く短い呼吸が戻った。
心臓マッサージを再開した。
母の口から「あ、あ」と声が漏れた。
「母さん! 母さん!」
返事はなかった。
遠くからサイレンの音が聞こえた。
外に出て、救急車に向かって手を振った。
救急隊員が家の中へ入っていった。
「聞こえますか?」
隊員が母の耳元で声をかけた。
「はい⋯⋯」
母の意識が戻っていた。




