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一杯のご飯
夕方六時、病院に行くと母は食事の最中だった。
母の前に置かれたトレーを見た。
トレーの小鉢はほとんど手がつけられていなかった。
「美味しそうだね」
「どれを食べても甘くて美味しくない」
「ちょっともらうね」
淡い赤い色の煮物が目に入った。
一切れ、口に入れた。鶏のトマト煮だった。
「味は薄いけど美味しいよ」
「全然美味しくないよ。
我慢してお茶で流し込んでいるんだから」
母はスプーンを置いた。
「ご飯だけでも食べよう。
そのおすましをご飯に入れれば食べやすくなるよ」
「わかった」
母はご飯を少しずつ口に運んだ。
時間はかかったが食べきった。
「がんばったね」
「これで家に帰れるかな」
食べ残したおかずといっしょに
トレーが下げられた。




