6話 返り討ち
『お祝い』が終わった後、料理を片付けて、今後の方針について検討した。
「やっぱり依頼を受けていきましょう。それがランクアップの近道よ」
クレアがそう言うと
「でも、その前に、前に行ったダンジョンで連携を深めるのも必要だと思う」
とアイリスが反論した。
「それもそうかも知れないわね」
結局、僕たちはアイリスの意見の通り、まず、ダンジョンで互いの連携を深めることにした。
再び僕たちはダンジョンに向かった。
僕は『ライト』の魔法を唱えた。周りが明るくなった。
「進みましょう」
クレアが言った。
僕たちはダンジョンを進んでいく。途中でゴブリンに遭遇した。
「今回は連携を取るのが目的よ。魔法で全部倒さないでね」
僕はそう言われて後方で待機した。
そして時折、限界まで威力を抑えたファイアーボールで援護した。
「いい感じよ、その調子でお願い」
クレアは言った。
そしていい感じにゴブリンの群れを倒すことができた。
「この調子で連携していきましょう」
そして僕達は魔物に遭遇しながらもどんどん奥へと進んで行った。魔物はみんなで連携して倒すことができた。
そして前回よりも深い場所までやって来た。
「ここからは相手が手強くなるわ。気をつけて」
出てくる魔物にホブゴブリン、オーガ、トロールが加わるらしい。
そしてオーガが現れた。怪力を持つ怪物で、クレアとアイリスでは勝つのは難しいだろう。
かと言って高出力の魔法を使っては連携の練習にはならないだろう。
そう考えているうちに、前衛のクレアとアイリスは苦戦していた。
その隙を縫って少し威力を上げたファイアボールを放った。魔物が怯んでいるうちにクレアはオーガを倒した。
今度はクレアとアイリスに『疾風』と『鉄壁』をかけた。
クレアとアイリスの素早さと防御力が上がって、残りのオーガを倒すことができた。
「さすがニコルね。いい援護だわ」
クレアが言った。
「ニコルは攻撃魔法だけでなく、バフも使えるのだから心強い」
アイリスが言った。
「私はあんまり出番がないわね」
シャルが少し拗ねて行った。
「そんなことはないよ。いつまでも無傷で進めるなんてことはありえない」
そうして進んでいると大きく開けた場所にたどり着いた。
しばらく進んでいると後方から声が聞こえた。
「久しぶりだなニコル。今日はお前に死んでもらうことにした。さ、先生どうぞ」
なんとダスティンが来ていたのだ。
「ふむ、あいつらを殺せばいいのだな」
すると、先生と呼ばれた男の近くから巨大な魔法陣が出現し、そこからフェンリルが現れた。
「フェンリル、あいつらを殺せ」
すると命じられたフェンリルが私達を襲って来た。
私はフェンリルに向かい自分に『疾風』の魔法をかけて前に出ると、魔法陣を展開し、最大級のファイアーストームを放った。
魔法陣を展開すると魔法の威力が何倍にも上がる。
フェンリルの前に巨大な火炎が襲うと、フェンリルは火に包まれて悶え苦しんだ。
そして、しばらくするとフェンリルは灰になった。
「フェンリルが、こんな簡単にやられるだと……」
「先生、ここは撤退です。早く逃げないと」
「ああ、しかし厄介な仕事を持って来てくれたものだな」
そう言うとダスティン達と先生と呼ばれていた男は逃げて行った。
「ふう、なんとか倒せたな」
「あいつらはニコルを殺しに来たのね、許せない。ギルドに報告しなくちゃ」
「でも証拠がないな」
「とりあえずダンジョンから出ましょう」
僕達がギルドに戻るとダスティン達は僕達に攻撃されたとギルドに訴えていた。
僕達はそれに反論した。
しかし、証人も証拠もないため、結論は出ないようだった。
しかし、証人は現れた。たまたまその場の近くにいた冒険者がいたのだ。
それによって、当初はダスティン達よりだった意見は一気に覆された。
ギルドの裁定はダスティン達の非を認めるものであった。
ダスティン達のパーティーはDランクに降級の上、1ヶ月の活動停止となった。
ダスティン達のパーティーはもはやこのギルドでは相手にされないであろう。
そしてダスティン達は『双竜の牙』を解散することになった。他のメンバーである、イーサンとメリッサに愛想を尽かされたのだ。
また、ダスティンは『先生』と呼んでいた召喚術師に対しても多額の報酬を要求されており、八方塞がりとなって、この街をひっそりと出て行った。