4話 密着
迷宮の探索もずいぶん時間が立ったので戻ることにした。僕は見つけた財宝や、魔物の討伐部位は収納箱に納めていた。収納箱から集めたものを一度出して整理する事にした。
収納箱とは魔法使いドリスが発明した魔道具の一種で、見た目の何倍もの収納力がある。これがあれば荷物は持たなくていい。
「ちょっとニコル何してんの?」
「いや、収納箱を整理しているんだ」
「何? 収納箱って?」
僕は収納箱の事を、自分で発明した事にして説明した。まあ、実際自分で発明したような物である。
「凄いわ、ニコル。そんな物があればこれからの冒険がとっても楽になるわ」
そう言ってクレアが抱きついて来た。クレアの胸が防具に当たる。
「それって食料とかも入れることができるの?」
「もちろん、それに入れた食料は腐ったりしないよ」
「それは便利だな! 」
そう言ってアイリスも僕に抱きついてきた。アイリスには胸は控えめであるので防具に当たりはしなかった。
「私も〜」
シャルも意味もなく僕に抱きついて来た。ちなみにシャルにはまったく胸がない。
そして冒険者ギルドに帰って、討伐部位を換金して分配した。
魔物の討伐部位は価値があるので依頼を受けていなくても一定額で引き取ってもらえる。
そして冒険者ギルドでパーティーメンバーと談笑していると、ボロボロになったダスティン達『双竜の牙』の姿があった。
「あのラルフの野郎、『ライト』の魔法は使えねえわ、魔法だって名前ばっかり派手な割にはニコルの数分の1しか威力がねえ」
「全くだ、今日は本当に死にかけた。生きて戻って来たのが奇跡だな」
「しかも、あのラルフの野郎、途中で逃げやがって……」
そう憤慨するダスティン達と私は目が合ってしまった。
「おお、これはニコル、偶然じゃねえか。ちょうどよかった、パーティーに戻って来てくれ。ラルフの野郎が散々でな……」
「何を都合のいいこと言ってんだ。あんだけ馬鹿にしてクビにしといてそれはないだろう。第一、あの時行ったよな『後悔するなよ』って」
「そうよ、第一ニコルはもう、『漆黒の影』に入ったのよ。今更、渡せないわ」
クレアがそう言ってくれた。
するとダスティンは酷く落胆した表情で他のメンバーを連れて酒場を出て行った。
「せいせいしたわね」
クレアは言った。
今日の報酬は少なめではあったが、新パーティーでの初仕事と言うこともあってお祝いすることにした。
場所は昨日と同じ、ギルドの酒場である。テーブルにみんなで席に着くが、何やら距離が近い。
「あの……近いんですけど……」
「うん? そうか? 私はいつもこんな感じだけど」
「そうだ、私もそうは思わんぞ」
「もっと近い方がいいです〜」
何やら妙に密着した感じのお祝いとなった。クレアの胸が終始当たっていた。