表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

245/252

第26話

 十二月二十四日。

 その日、由弦は夕方前には帰ってきた。


「ただいま、愛理沙。約束通り、今日は早く帰ってきたよ!」


 いつになく、嬉しそうな声を上げながら由弦は玄関の扉を開けた。

 しかし愛理沙の出迎えはない。


「お帰りなさい。今、お料理中で。目が離せません」


 代わりに台所からそんな声が聞こえて来た。

 クリスマスイブのための料理を作っているのだろう。


 仄かに懐かしい……醤油っぽい香りがする。


「そうか。着替えてから手伝うよ」


 由弦は大声でそう返してから、自室に戻る。

 窮屈なスーツを脱ぎ、普段着に着替える。


(しかし何の料理だろう? 和食かな?)


 由弦はクリスマスイブ特別メニューに想いを巡らせながら、台所へと向かう。


「愛理沙、手伝うよ。何をすれば……」

 

 由弦が台所に到着すると、そこにはエプロンを来た愛理沙が立っていた。

 エプロンだけ・・を着た愛理沙がそこに立っていた。

 下着も水着も着ていない。

 真っ白い肌に、赤いエプロンだけを身に纏っている。


「あ、愛理沙……!?」


 裸エプロン。

 そんな用語が由弦の脳裏を過った。

 形の良い臀部がエプロンの結び紐と合わせて、踊るように揺れていた。


「由弦さん」


 由弦が驚いて固まっていると、愛理沙はゆっくりと振り返った。

 エプロンを押し上げ、なお食み出てしまうサイズの胸が跳ねるように揺れる。


そんなあられもない姿の愛理沙は、恥ずかしそうにはにかみながら笑みを浮かべた。


「いいところに来ました。火加減、見ていていただけますか?」

「あぁ……うん」


 促されるままに、由弦は鍋の前に立った。

 鍋にはアルミホイルで落とし蓋がされていて、グツグツと何かが煮込まれていた。


「これ、何の料理?」

「里芋の煮っ転がしです」


 愛理沙の言葉に由弦は心が躍るのを感じた。

 里芋の煮っ転がしなど、ここ数年食べていない。

 

「ちなみに……他の料理は?」

「豚汁と焼き魚を作ろうと思っています。あとは炊き込みご飯ですね」

「いいね」


 クリスマスっぽさはない。

 しかし久しぶりの和食だ。

 出来上がるのが楽しみだ。


「ところで……その、愛理沙」

「何ですか?」


 由弦は炊き込みご飯の準備をしている新妻へと視線を向けた。

 先ほどからずっと、愛理沙はエプロンだけを身に纏って料理を続けている。


 手を動かすたびにその大きな胸が――高校生の時よりも大きくなっている――揺れる。

 時折、エプロンと肌の隙間から大切なところが見え隠れする。


 ジロジロと見る物ではないと思いつつも、どうしても誘惑に抗えず見てしまう。


「えっと、その恰好は?」


 ずっと気になっていたことを尋ねる。

 何しろ裸エプロンだ。

 長い同居生活でも、そう何度も見たことはない。


「由弦さん、好きでしょう?」


 愛理沙はそう言いながらエプロンの肩紐に指を掛け、引っ張った。

 チラっと胸の際どいところが見える。

 由弦は慌てて目を逸らした。


「そ、それは否定しないけど……」

「なら、いいでしょ?」


 愛理沙はそう言うと、手に土鍋を持ったまま由弦の方に進み出た。

 由弦は思わず後退りする。

 愛理沙はそんな由弦には目もくれず、コンロに土鍋をセットし、火をつけた。


「お魚の準備をするので。こっちも見張っておいていただけますか?」

「あ、あぁ」


 由弦は頷いた。

 愛理沙の指示通り、火の番をしながら……時折、愛理沙の方へと視線を向ける。

 横からだと、愛理沙が動くたびに大切な部分が見えそうになる。

 それが気になって仕方がない。


 愛理沙もそんな由弦の視線に気づいてか、調理の合間に由弦の方へと流し目を送る。

 そのたびに由弦はドキドキしてしまった。


「お魚の方はもう良さそうですね。里芋はどうですか?」


 グリルを覗き込みながら、愛理沙は由弦に尋ねた。

 由弦は鍋が焦げ付かないように、へらで里芋を転がしている最中だった。


「丁度、汁気がなくなってきたよ」


 由弦がそう答えると、愛理沙は鍋の中を覗き込んだ。

 由弦はそっと場所を譲る。


「見せてください。……良さそうですね」


 そう言ってコンロの火を止めた。

 菜箸で里芋を摘まみ、由弦の口元に運んだ。


「由弦さん。あーん」

「あ、あーん……」


 由弦は里芋を口に含んだ。

 噛みしめると、口の中に優しい味が広がる。


「どうですか?」

「美味しい」

「じゃあ、完成ですね。炊き込みご飯も……うん、良さそうです。配膳しましょう」


 愛理沙はそう言うと、由弦に背を向けた。

 真っ白い背中と、形の良いお尻が由弦の視界に映る。


「愛理沙」

「え? きゃっ!」


 気が付くと、由弦は愛理沙を後ろから抱きしめていた。

 愛理沙は小さく悲鳴を上げ、後ろを振り向いた。

 由弦はそんな彼女の顎を掴むと、強引に接吻した。

 由弦は欲望のまま愛理沙の体を弄りながら、口の中に舌を入れ、掻き回す。


「ゆ、由弦さん……い、いきなり、どうしたんですか?」

「こんな格好しておいて、何を今更」


 由弦の指摘に愛理沙は恥ずかしそうに目を伏せた。

 最初から“誘う”目的だったのは明らかだ。


「先にお食事にしましょう。冷めちゃいますよ?」

「……少しだけ、ダメかな? 我慢できそうにない」


 由弦は今にも愛理沙を襲いたい衝動に駆られながら、そう言った。

 ここ最近、愛理沙とはいろいろとできていない。

 それは帰るのが夜遅くで、疲れていたからだ。


 しかしそれは欲求が湧かなかったからではない。

 むしろ解消できず、溜まる一方だった。


「ダメです。デザートは最後でしょう?」

「それはそうだけど……」

「今日はたくさん、良いことしてあげますよ?」


 愛理沙は胸を押し当てながら、由弦の耳元でそう囁いた。

 由弦は思わず、愛理沙をギュッと抱きしめた。

 それから手を緩める。


「分かった」

「我慢できて偉いですね」


 愛理沙はするりと由弦の両腕から抜け出してそう言った。 

 幼子を諭すような物言いに由弦は苦笑した


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ