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1 たかし、選ばれる

『こんにちわ~! ニート撲滅団の者ですが、ニートを狩りに来ました~!』


 「敵」とやらの声を聞いて、たかしは固まる。


「何言ってんだこいつ。俺を狩りに来たって言うのか? 俺はニートじゃないのにな。ハハハ……」


 たかしは一応大学に在籍している。ほとんど通ってないが。ラノベ作家になろうと就職活動しているといえなくもない。一作も書き上げたことはないが。なので、ニートではないといえるような気がする。


 しかしナマポンはあっさりとたかしをニート認定した。


「いいえ黄山君、あなたはニートですよ? 残念! ボクのニートセンサーがビンビンに反応してますからァァァァァ!」


 ナマポンはどこからかアンテナのついたリモコンのようなものを取り出す。リモコンに表示された計器の針は、勢いよく左右に振れていた。


「あなたのニート力は通常のニートの三倍以上はあります! なので私は、あなたをニート撲滅団と戦う戦士に選んだんですよォォォォォ! さ、これを!」


 空中にいきなり腕時計が出現して、落ちてくる。たかしは腕時計をキャッチして、左手に装着した。


「これをどうするんだ?」


「上蓋を開けて、時計の針を逆に回してください」


 たかしは言われた通りに針を力ずくで逆に回す。


「変身!」


 次の瞬間、たかしの体は光に包まれ、変身した。黄色の変身スーツが装着され、頭部はフルフェイスヘルメットで覆われる。ヘルメットのデザインは非常にシンプルで、飾りといえばバイザーの下に涙をイメージしたと思われるラインが走っているのみだ。涙ラインは戦隊じゃなくて仮面ライダーだぞ。


「親に迷惑なんのその! 就活はとうの昔に捨てた! モラトリアムの戦士、留年イエロー! ……ってなにやらせるんだよ!」


 気付けば体が勝手に動き、決め台詞とともにポーズをとっていた。


「まあまあ、様式美ですからァァァァァ! それより、早く敵を倒してください!」


「そうだな! うおおおおっ!」


 たかしは玄関に向かって突進し、ドアを勢いよく開ける。なぜか犬のかぶり物をした全身黒スーツの戦闘員が吹っ飛んでいった。


「彼らはニート撲滅団の下っ端、ハロワーンです!」


 ハロワーンとやらはまだ三人ほど廊下に残っていた。たかしは突進してハロワーンたちを次々と階下の駐車場に投げる。


「すげえパワーだな! これが俺の力か!」


「いいえ、スーツの力ですよォォォォォ! イエローといえばパワータイプですからァァァァァ!」


 レッドでないというのは気に入らないが、これだけ暴れられるならまあいいだろう。簡単にレッドから主役の座を奪えるに違いない。


 ハロワーンたちを追ってたかしは駐車場に飛び降りる。ハロワーンたちは二階から落ちた衝撃でフラフラしながら起き上がっていた。


「自主休講アックス!」


 たかしが名前を呼ぶと、黄色い大型の斧が出現する。たかしは斧を振り回し、一撃でハロワーンたちを撃破した。ハロワーンたちは光の粒子になって消えてゆく。


「ざっとこんなもんだぜ」


 たかしはナマポンに向けて胸を張る。そして、誰にも見られていないことを確認して腕時計の針を元に戻し、変身を解除した。


「さすが黄山君! 頼もしい味方が増えましたァァァァァ! 明日、みんなを集めて説明会を開催するので待っていてくださァい!」


 そう言い残して、ナマポンは瞬間移動のように姿を消した。たかしは寒かったので部屋に帰って、寝た。



 次の日、宣言通り部屋で寝ていたたかしの前にナマポンは現れた。ナマポンは一枚の紙切れをたかしに渡す。


「この場所に十七時集合でェす! そこがボクたちの秘密基地になりますよォ!」


 ナマポンが渡してきたのは地図だった。


「……うちの大学じゃねぇか。1C棟地下? こんなとこあったっけ?」


「作ったんですよォォォォォ! 大学なら不特定多数の若者が出入りしても怪しまれないですからねェェェェェ!」


 それはご苦労なことだ。たかしは用もないのに大学に行くはめになった。まあいいか。講義がないのに大学に行くことがないわけではないし。学食は安いので、食事だけして帰るというのもよくあることだった。ダメな大学生の典型である。

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