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さて行くか

三話目

 何やら唖然とした顔をした少女が居るが気にしないでおく。

 その寒さに震え先の無い未来に絶望し塞ぎこんだ顔が希望に満ち溢れたものになったのは気のせいだろう。


 自分には何も見えない。


 目の前に居るのは唯の子猫だ。

 我が家では猫は飼えないのは決定済みだ。

 だから目の前の猫が人間ぽくても関係ない。

 知らんぷりして帰るか~~。

 

 ズザザザッ!

 

「今日の御飯は何にしようかな~~」


 此れでも小学生時代は短距離走の江戸さんと言われたんだっ!

 

「待ってくださいっ!」


 ダッシュで逃げる自分に声をかける少女。


 ヤバイ。


 面倒事の予感がする。

 突然斜めに進行を変える。

 唯の勘だ。

 それは正しかった。

 但し自分がもう少し足が速かったらだが。


 ガバッ!


 少女が飛びついてきたのだ。

 但し最初は自分の胴体を狙ってたのだろう。

 少女の体勢が崩れて足に狙いを定めなおしたみたいだ。

 ガシッ! 足にしがみ付く柔らかい感触に嫌な汗をかく。

 捕まった。

 此の柔らかい感触は普通の男なら喜ぶべきだろう。

 だが面倒事の予感しかしない自分には嫌な感触でしかない。


「あ~~疲れてるのかな足が重いな~~」


 なので知らないふりをする。


「ちょっとおっ! 私の声が聞こえてるんでしょうっ! 無視しないでっ!」


 少女の言葉を無視して歩く。


「いやあああっ! 話しを聞いてよっ!」

「あっ! そうか今日雨が降って泥濘が出来たんだっけ」

「無視するなっ! 聞こえてるんでしょうっ! ねえっ!」


 片足が重いが気にせずに歩こうか~~。

 気の所為だよな。

 足に誰かが、しがみ付いて何かいないさ。


「人でなしっ! 話しを聞いてよっ!」

「はっはっはっ~~餌の御礼は良いからじゃれつくなよ~~ニャンコ」


 多分傍目で見たら猫が餌をくれた自分にじゃれついてる様に見える……筈っ!

 だから実際は必死の形相で自分に縋りつく少女などと誰も思うまい。 


 何だろう自分は悪くない筈なのに良心が痛む光景は。

 親切で御飯と牛乳を上げただけなのにな~~。


「あれっぽっちの対価で私を散々弄んだ癖に用が無くなったら棄てるのねっ!」

「こらああっ! 人が聞いたら誤解を招く様なことを言うなっ!」


 思わず少女の話しの内容が酷かったので大声で反論した。

 それがいけなかった。



「江戸さん~~何やってるんですか~~」


 コンビニから元後輩が出てきて此方に目を向ける。


 ジト目で。


「……」

 


 思わず引きつった笑みを浮かべると少女を強引に引き離す。


「え? もぐっ! きゅう~~」


 戸惑う少との口をふさぎ首の後ろを叩いて気絶させる。

 思わず猫耳の少女を抱きかかえ一目散にその場を逃げ出した。

 傍目で見れば唯の誘拐犯だな~~。

 泣きたいんだが……。


「江戸さん猫を飼う気になったのか……まあ良いけど」


 その光景を唖然として見送り呟く元後輩だった。

 


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