家に着いた
四話目
生涯で一番走ったと思う。
恐らく時速ニ十キロは出ていたのではないかと思う。
少女一人を抱えてだ。
あくまでも自分の感覚での話しだが。
火事場の馬鹿力って本当にあったんだな~~。
などと呑気に考える事が出来たのは実家に着いて二時間後の事だった。
それまで自分の限界を超えた速度で走った為に家に着いた途端倒れた。
疲労困憊で。
全身の筋肉がガタガタ。
息が荒く心臓の音がうるさかった。
滝の様に汗が全身から噴き出していた。
「ハア~~あ~~学生の時以来だこんなに走ったのは……」
「ふ~~ん御疲れさん」
「有難う」
「いえいえ」
そう言いながら少女から渡されたタオルを受け取り顔の汗を拭く。
どうやら御風呂場から持ってきてくれたみたいだ。
生前父は建具を専門にした仕事をしていた。
趣味でも実家に風呂場の天井にタオルや足ふきの雑巾を入れる棚を作っていた。
仕事が趣味の父親に何度感謝したことか。
今は居ないが。
そこの棚から少女はタオルを持ってきたみたいだ。
「良くタオル置いて有る場所が分かったね」
「うん昔から失せ物捜しは得意だったの」
「へえ~~」
その言葉に感心する自分。
「だから貴方が昔失くしたエッチな本もほら」
「何で知ってるというか何処から捜してきた!?」
昔失くしたと思っていた秘蔵のエロ本を差し出してきて驚愕の声を上げる。
しかも複数。
というか何で此の子はそれを知ってる!?
「貴方の御父様の寝室の畳の下に隠してあった」
「親父いいいいっ! 盗んで隠したのかっ!?」
亡き父の悪行に絶叫する。
「それとお母様は此れを押し入れに隠してたみたい……しかも使用済み」
「……」
赤面し顔を背けながら差し出してきた物から目を逸らす自分。
大人の玩具各種。
以前彼女が出来た時にマンネリを防ぐために試しにと買ってきた代物だ。
彼女が出来た事に浮かれ勢いで買いそろえたのだが暫くしたら冷静になり捨てた物だった。
夫婦で使ったの?
知りたくなかった嫌な現実に項垂れる。
「あ~~インスタントラーメンしかないから晩飯はそれでいい?」
「うん有難う」
「じゃあ~~作るね~~」
トコトコと台所に走る少女。
暫くしたら鍋に水を入れガスの火をいれラーメンを作り出す。
出来たラーメンを二人で食べた。
「はあ~~きつかった」
「そんなにきつかった?」
「あ~~こんなに走ったのは学生の時以来だ」
「運動不足ね~~今度から朝一緒に走る?」
「そうだな」
「じゃあ~~決定ね」
「そうだな」
「あ……着替えが無いからジャージを借りるね」
「良いけど」
いつの間にか着替えていた少女に苦笑いを浮かべる。
「まてやっ! 何で自分の家感覚で寛いでるんだっ! 化け猫っ!」
「ちいいいいっ! 気が付いたかっ! だが訂正を求める私は化け猫ではないっ!」
「だったら何だというんだっ!」
「猫神様だっ! 元だけど……」
何で胸を張ったかと思うとションボリする。
「化け猫でも猫神でも何でも良い出てけえええっ!」
「いやあああっ! 野宿は嫌あああっ! 此処に置いてええっ! 住まわせてえ! 寄生させてええっ!」
「てめえそれが目的かあああっ! 出てけっ!」
そう騒いで玄関まで首根っこを捕まえ引きずる。
はっきり言って軽い上に非力だ。
猫と同じだ。
「さあ~~覚悟は良いな化け猫」
「うえ~~ん養ってよ~~寄生させてよ~~」
「何て図々しい棄ててやる……」
最後まで言葉が続かなかった。
暴れた所為でジャージが脱げかかって下着が見えていたからだ。
「ほ~~う~~女の子の下着に赤面しちゃって~~ぷ~~クスクス」
手を口に当て嘲る様に笑う猫神。
「良い度胸だ化け猫」
「あっ!?」
やらかした。
そう思ったんだろう猫神は顔を青ざめる。
それを無視し玄関のドアを開け外に放り出そうと思った。
その時だ。
「あ……江戸さん此れ差し入れです……って……何で猫に私の下着を付けさせてるんですか?」
元後輩にして元カノが鍋を手に持ちジト目で此方を見ていた。
ブワッと、嫌な汗が出た。
五話目は今から書きます。
次で完結。
高評価なら連載します。




