総会1──ユンとサリナ〜ミツキ参加〜ほぼ全員集合? #6
◆あらすじ
知識無双する賢者様と、ツンデレを使い分けるシルと、夕飯のカレーを食べた私──茶柱立花。
食後に、食事に関する基礎知識を教えてもらうという贅沢を堪能するなか、シルと同じ四大精霊のユンから通信があったらしい。
めちゃくちゃ大事な話を遮られた私は、とりま流れに押し切られる──。
◆本編
「ユンというと、四大精霊の『水』を司ってる子じゃろ?」
「そうなのよッ」
「交流はない、と言っておったのう」
「なのに、いきなり来たのッ」
「え? なんで?」
「通信魔法よッ!」
「……じゃなくって、理由」
「そんなの分かるわけないじゃないッ」
「ほう。なんて言ってたんじゃ?」
「なんか、リッカにサリナ?──の連絡先を教えて、連絡してあげてって」
「それ! 私が訊きたかったの、それ!」
「だから、いま言ったじゃないッ⁉︎」
はいはい。わかってました、わかっていました。そうよね、そうゆう子よね。うんうん。こうゆうのが好きな男の人がいるって聞いたことあるけど、本気で言ってるの?
それにしても、どうしてユンさんが、イラストっ娘のサリナちゃんに連絡を取れって言ってくるんだろ? よくわからん。そりゃ、たまたま名前知ってるネームドだし、たまたま話題に出たけどさ、なんの因果があるの?
「そういうわけで──リッカ、連絡してあげてッ。いま送るわッ」
「わかった(どういうワケだよ……)」
送られてきた連絡先へ……と──。
一応、簡単に説明だけしてあげようと思う。私、優しいから──。
通信魔法はすごく便利。大抵の連絡はこれを使うんだけど、連絡先を知ってる人と1対1でクローズドな文書、音声、ビデオ通話のようなことができる。連絡先を知らなくても、オープンチャットとか、音声、ビデオ通話みたいなこともひと通りできるし、グループでも、誰かをホストにして会議なんかもできる。
応用魔法のひとつなんだけど、私じゃどうゆう原理で成り立ってるのかは、わからない。でもさ、普通に使えてるんだからいいんじゃないの? 通常は、触媒を通して魔法を発動させるんだけど、通信魔法は空気が触媒になるらしい。だから、空気さえあれば、いつでもどこでも発動できる。超有能!
──プルルルル、プルルル、プルルルル──
『……ぁ、h、はい。もしもし──』
「もしもし──ユンさんから連絡をもらった、リンです」
『hっ──あ、ありがとうございます』
「s、すみません。詳しく事情を聞いてなくて……」
おいおい、おいおい……うつっちまったよ、息漏れ。ちょっと、「いきもれ」って響き、エッチね。
とか考えてたら、サリナちゃんが続ける──。
『sすいません。ユンちゃんには伝えてもらったはずなんですが……。
──あ、あの……。もしよろしければなんですが──』
「はい」
『リンさんと……お話したいな……と思いまして……』
「あぁ、はい。全然大丈夫ですよ」
◇ ◇ ◇
どうやら、話をざっくり要約すると──
●ユンさんは、シルと仲良くしてみたかった
●同じく、サリナちゃんも私とシルに興味があった
●しかも、賢者様ともコンタクトをとりたかった
──ということらしい。話を聴くに、サリナちゃんは好奇心オバケのようだ。消極的な印象とは真逆で、関心があるものにはガツガツいくタイプみたい。
ユンさんとの所縁は、BLという作品がキッカケだったらしい。コミケで出会い、今では一緒に出展する仲だとか。よくあんな有象無象に行く気になるなぁ、と思ったが、近頃では検閲が行われるそうで、規定の基準を超えた作品だけ出品できるんだって。──だよね。じゃなきゃ、ガチでカオスになっちゃうもんね。
そこから話は発展して、一緒にご飯に行く流れになってきた。サリナちゃんの家も、私の家からそんなに遠くないのが幸いしたようだ。丁度いいから、ミツキも誘うことになったんだけど、このふたりは合うのだろうか?
とか思ってたら、賢者様が駄々っ子みたいなことを言い出した──。
「ワシも行きたい!」
「あの……賢者様も行きたいみたいなんだけど、いい?」
『hはい。ぜひ!』
「ありがとう。じゃあ、また連絡しますねー」
『お願いします』
「はいはーい」
『はーい』
どうして通話のラストは、「はいはい」と言い合っちゃうんだろうね。不思議だね。
とりま、ミツキにチャットだけしておこう──。
『明日の午後ヒマ?』
「そゆことで賢者様、明日の午後にお願いしますね」
「ありがとうなのじゃ」
「ワタシもお母様が一緒で嬉しいわッ」
シルは今日もバツグンの安定感だね。間違いなく《足に地魔法あしがちにつく》と言っていいだろうね。
とか話してたら、ミツキからもう既読ついたんだけど、早っ──。
『暇だよー!』
『午前の講義終わったら、ご飯いこ』
『サリナちゃんって子と、
賢者様いるけどいい?』
『よきー!』
◇ ◇ ◇
ひと通りミツキに説明して、OKもらったから、そのまんまサリナちゃんにも連絡しておいた。できる女はタスクを残さないのだ。──誰? ただの効率厨とか吐ぬかしたの?
「あ、そうだ。賢者様もシルも、明日は『リン』でお願いします」
「はいねッ」
「うむ。了解じゃ」
あとは──ミツキにシルとユンさんを、どう紹介するか考えておかないとなぁ。
※ ※ ※
賢者様の講義は今日ないみたい。だからか、賢者様は朝からウチに来ている。すでに、おめかしも済んでいて、本人いわく『グランジスタイルで、皆から浮かないように気をつけた』らしい。なんたって、昨日は再三にわたって──『ミツキちゃんは普段、何を着るんじゃ?』とか、『サリナちゃんは大人しめじゃから量産系かのう?』とか、ずっと言ってた。マジで──《耳で地魔法暴発する》かと思ったわ。
まぁ、もう言うまでもないことだけど──シルも同じでだった。あの後からファッションショーが開催され、『お母様とシミラールックの方がいいかしらッ⁉︎』みたいなことを言いながら、どこからともなく複数の洋服を出してきてた。ちなみにその服は今、私のベッドの上に出しっぱだ。せっかくの機会で浮かれてるんだろうし、小言を言ってテンサゲしても可哀想なので、帰ってきてからにしてやろう。
そんなわけで、私自身のコーデは何ひとつ進んでいない。ハァ──。
(とりま、午前の講義も終わったし、服考えるかー。
ちょっと、行くの面倒になってきたぁ)
──というのは、あるあるだろう。お出掛けの日にニキビができてて、メイクがのらないみたいなもんだ。まぁ、それでも行くんだけどさ。
さて、気を取り直して──サリナちゃんはよくわからないけど、ミツキはコスパ重視だから……。うん、これでいいかな──。《ミニクロ》で買ったベージュのワンピースに、寒いから黒タイツ履いて、《PA》のブラウン色ロングカーディガンを羽織って、ウエストをベルトで絞って、歩きそうだから低めのプラットフォーム・ブロックヒールブーツで、高見えするフーディのロング丈ダウンコートにして、《Zil Volt》のライトベージュ色タングル──もちろん、あと払いサービスの分割で買ったやつね。
お昼ご飯はみんなで食べる予定だし、そろそろ出掛けますか──。
「ふたりとも、お待たせしました」
──そう、リビングに向かって声を掛ける。片方は人間じゃないんだから、“ふたり”ではないとクソリプが飛んで炎上しそうだし、この際言っておくが──人格をカウントしているんだから、これで正しいのだ。
すると、『人格とは何か?』みたいな、いち生命では解明できないようなマウントを取ってくる輩が存在する──が、私は「じゃあまず、そのレスをしてくるお前を定義してからだろうな」と言ってやることにしている。これは、その昔に父が研究者として働いているとき、先輩研究者から教えてもらった御呪いなんだそうだ。──ありがとう。今日も大活躍です、と。
「おぉ! 似合っておるぞ、立花」
まったく目はそう言っていない。自分を褒めて欲しそうな顔つきにしか見えない。巧みだ。これが年の功ってやつか。
「ありがとうございます。
賢者様も、その服装かわいいですね」
まるで3年間にわたり擦り倒したボロ雑巾のようですね、なんて口が裂けても言わない私は、空気が読めるのだ。
「そうじゃろ?──やっぱり、グランジカジュアルにして良かったわ。
このビーニーが気に入っ──」
「さすがお母様よねッ! 何を着ても似合うでしょッ」
さすが──は、シルだよ。完全に今、賢者様が言おうとしたタイミングに被してきてたもんね。雛壇芸でそれやったら、カットされて呼び出されるレベルだね。
まぁ、当たり前のようにシルも、グランジストリートっぽくデニムを着こなしてるのが、鼻につくわけだけど……この、ツンツンさえなければ可愛いのがまた、目につく。まったく、悩ましいことね……。
「──さ、行きましょうか」
◇ ◇ ◇
大型ショッピングモールで集合することになってるから、私たちは自動運転タクシーで来たわけだけど──なんで、転送魔法は人間を転送できないんだろう? それが無理なら、飛行魔法くらいあればひとっ飛びなのにね……。物体は浮かせられるんだよ?
まぁそんなわけで、待ち合わせ場所のフードコートにいるわけだけど──シルがもっと目立つもんだと思ってた私は、そうでもないことに腰を抜かすほどじゃないけど、驚いている。
よって、訊くしかない──。
「ねぇ──シルって目立ちそうだけど……?」
「阻害魔法を使ってるんだから、目立つわけないじゃないッ──?」
「リンには話してなかったがの──ワシら以外には、なんかキラキラしたようにしか見えとらんよ。まぁ例えるなら、入浴シーンとかである、謎の光みたいなもんじゃな」
「えーっと……入浴シーン? 謎の光とは?」
「あぁ、えー……」
「やって見せるから、見てなさいッ!」
そうシルが言うと──突如として、シルが消えた! いや、なんか見えるけど……見えない。──これか!
賢者様は『入浴シーン』だとか大袈裟に言っていたが、ただ激しめにハレーションしているだけに過ぎない。これのどこをどう取ったら入浴になるのかわからないが、賢者様がハレンチであることは、痛いほど伝わった。賢者様にも知らないことがあるんだな、うんうん。
(それにしても、阻害魔法すごいな!
あれ? これ使えば、出席日数稼げるんじゃね?──ムフフフ)
「あら。皆さま、おそろいですこと」
「……こんにちは──リンちゃん。賢者様……改めまして、sサリナ、です」
「こんにちは、サリナちゃん。
──と、ユンさんですね。はじめまして、リンです。よろしくお願いします!」
「こんにちは。よろしくなのじゃ!」
「よろしくお願いいたしますわ、賢者さま。
ところで、シルさまはいらっしゃいませんの?」
「いえ、ここに──あ、そういえば、阻害魔法で私、シルを知覚できないんでした……」
「大丈夫じゃ。シルはここに──いない……⁉︎」
「ぁ……あの、sシルさんという方が、ユンちゃんのお友達の──?」
「そうなんですよ。ツンデレってゆうギフテッドを持ってるんですけどね──」
「誰が先天的なツンデレですってッ!」
「……あぁ、理解しました」
「でしょ?
──で、シルはどこにいたの?」
「べ、べつにどこにいてもいいでしょッ!」
正直──どこにいたのか、なんて訊く必要はないのだ。なぜなら、シルは賢者様のビーニーから顔を覗かせているからである。
おそらくは、みんなにわからないよう認識阻害をかけたまま、賢者様のビーニーに潜り込んでいたのだろう。対抗魔法使っちゃうぞ、と。
とか考えてたら、ユンさんがヒラリ、シルの近くまで舞う──。
「お初にお目にかかりますわ、シルさま。先々代がお世話になりました」
「べ、べつに大したことじゃないわッ!」
「いえ、シルさまにとってはそうでも、ワタクシにとっては違いますの。御礼申し上げますわ」
「っべつに──どういたしましてッ」
量産乙。言語的にも怪しくなるシルを、私は生暖かい目で見守ることにした。シャーデンフロイデ、とはこうゆうことを言うのだろう。そうしみじみ感じた、春先──敬具。まぁ、まだ真冬なので、外は雪がパラついているわけだが……。
と、『べつに』製造の傍ら、賢者様がサリナちゃんにアタックしている──。
「ところでサリナちゃんは、イラストが得意みたいじゃが、精霊王さまにお会いしたことがあるのかな?」
「……いえ、お会い──というか……動画で拝見した程度です」
「ほう、動画。《アイチューブ》みたいなやつかの?」
「ぁ、sそうです。関連動画に、出てきたもので……」
「なるほどなのじゃ」
──精霊王さまがそんなことを……、とかブツブツ言ってる賢者様は放っておくことにする。
そんなことよりも、サリナちゃんには、講義の内容を訊かねば──!
「ねぇ、サリナちゃんは、成績は──」
「おまたー」
お・や・く・そやろー!──私のターンだろーに。
ミツキが華麗にやってきた。いつもながら、コスパとタイパを重視したような服装だが、お高いんだろなぁ……。何をどう着ても様になるのは、顔が小さいからであることは言うまでもない。──ドッきゃわ。そこらの地下アイドルを推すくらいなら、ミツキを推したほうがいいよ、人類は。
「あー! もしかして、そこのおふたり?──が、四大精霊さまー?」
「え……ミツキ、知ってるの?」
「うん。え、ふつーに小学校くらいで習わなかったっけ?」
「……習ったっけ?」
「「──??」」
「リン──。習うと思うぞ。
まぁでも、それをすぐに受け入れられるのは、素直にすごいと思うがの。──ミツキちゃん、だったか」
「あー、そうですかね。なんというか、昔からちょっと憧れ、みたいのがあったんで──それでですかねー」
「へぇ。意外とミツキ、ロマンチストだったんだね!」
「えー、そうだよ! あたし、空想乙女だよー」
「いやいや、本物の空想乙女は、自称しないって!」
「そーかなー?」
ね、めっかわ。どちゃくそ現実主義なクセに、さ。
「ぁ……こんにちは、ミツキさん。──sサリナといいます。よろしくお願いいたします……」
「ああ!──この前、賢者さまに質問してた子でしょー? よろしくお願いしまーす」
「hはい……お恥ずかしいのですが……」
「いやいや、ぜんっぜん! あたしなんて、まったく何言ってるかわからないくらいだったし、すごいと思う!──イラストも可愛かったしー」
ね、これである。ミツキのコミュ力は異常なのよ、マジで。だって、初対面で会って、いきなり一緒に旅行に行くような性格してるんだから。ちなみに、その相手とは──私と、私の両親ね。
「あら。いつの間にか増えていらっしゃるわ。
──お初にお目にかかります、ユンと申します。お見知りおきを」
「どうもご丁寧に──ミツキと申します。お会いするのを楽しみにしておりましたー。
そちらは、シルさまですね。お目にかかれて光栄です」
「アナタ、すごくいいわッ!
──リンも見習いなさいッ!」
「お目汚し賜り光栄ですことっ!」
「何言ってるのよッ──って、なんか引っかかるわねッ」
「……もしかして、リンちゃんが言いたいのって──」
「まあまあ、おふたりさん。皆の紹介も済んだことじゃし、ご飯──食べに行かんかね?」
「そうですね」「そうねッ」
「いきましょー」
「アナタたち、いいコンビだと思いますわよ」
「……わたしも、sそう思う」
そんなかんなで、私を先頭にフードコートを後にする。これから向かうは、生パスタが食べ放題、パフェが作り放題のビュッフェである。正午も余裕で過ぎてしまうことが確定してたため、それとのんびりできることも加味して、事前に予約しておいた。丁度この時間から、制限時間制の制限がなくなるという、ご都合仕様だからだ。
ちなみに──糖質制限を掲げるミツキが、『生パスタ食べ放』に最も食いついていたのは、内密にしておこうと思う。だって、親友じゃん。
なお、精霊2柱は、『ワンセットで1人としておけばいいじゃろう。席も特にいらんしの』という賢者様のお言葉により──6人席個室、5人分の料金となっている。それを全額、賢者様が払ってくれるという太っ腹さに感服だ。
◇ ◇ ◇
「こちらのお席になります」
と、通された個室の正面──大きな液晶魔法には、知らないVTuberがライブ配信をしている映像が流れていた。
続く▶︎




