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ふぁるでぃあにっき。  作者: コミヤマミサキ
8月 ~なつやすみ~
98/444

2-93 神秘の森ダンジョン 2

サク君の恋愛スキルは0

 とりあえず皆さんの興奮が収まったところで。


「時間も沢山あるわけじゃないので、とりあえず慣らしで蝙蝠釣りましょうか。」


 と、提案する。


「楽しみね~♪」

 と、無邪気にはしゃぐセイさん。


「り。」

 と既に釣りに行っているティラ君。

 それにともない光源も移動してしまう。自分はいいけど、もう一つ必要だな、光玉。


 自分はすぐ剥がせるように準備をするが、・・・そう言えば何を使うかなスキル。

 敏捷と・・・敏捷が切れている間に夜見を入れるか?。闇視がパッシブなのに夜見はアクティブなんて変な感じ。夜見はブーストって感じなんだろう。


 じゃあ2枠目は無難に影纏かな。


 最後は緊急回避影移動・・・まだ1匹目だし相手の挙動を完全に把握してないから空けとくか。


加速(アエ―マ)


 敵の敵視が乗る前に加速がセイさんから飛んでくる。

 先にかけて敵視を取らない小技だろう。


「なぜ神秘の森なんだ?」

 突然ガンツさんがそう独り言を言う。

 今の今で笑わせないでほしい。必死にこらえる。

 ちなみにセイさんはもう笑ってる。

 フィーデルさんはめっちゃ困惑顔で、より面白くなるからやめてほしい。


「蝙蝠1」

 真顔でティラ君が戻ってくる。


「とりあえず先に行きます。」

 もうやだ。体動かそう体。

 あれほど前回、避けるのに必死だった蝙蝠がとてもやりやすい。ダメージも通りやすいし、食らったダメージも少ない。やはりレベル差は大きいんだなと思ったり・・・。

 ああ、でも加速と敏捷もあるかな。ていうか、敏捷が乗ってるかよく分からない。1%だし体感は少ないだろう。使い続けてレベルを上げるしかない。


雷光レラン!」


 敵がMPを吸った後に大技が来そうだという事を覚えていたのだろう。

 レティナさんが雷魔法を入れてくれる。


 ギョッとレティナさんを見るフィーデルさん。ですよねー・・・。


 あー有難いけれど、レティナさん使っちゃってよかったです?ソレ?

 秘匿情報かもしれませんよ、雷魔法。もうバレちゃったけどさ。

 セイさんは震えてる。笑い上戸だな・・・。


「こちらでも受けよう。」

 ガンツさんがバコンと蝙蝠を盾で殴り倒す。強打と挑発か。

 すぐに気配希釈を入れる。

 初めは足りなかったが、徐々にガンツさんの方に敵視が移る。


 ガンツさんも岩砂漠をソロでフラフラしてられるだけあって、うまい。PTの基礎というか盾の基礎が分かっているみたい。意外だ。ガンツさんが受けてくれるなら大変ありがたい。DPSが伸ばせるからである。今まで遠慮してたわけじゃないが、回避と受けにとられたリソースとスキルを全部攻撃に回せるからダメージが伸びる。


 時々削っていく魔法。というか接敵してるのであまり大きくない獲物だとフレンドリーファイアがあるので入れにくそうだ。魔法使いってもしかしてDEXも必要なのか・・・?と思ったり。

 レティナさんは3人PTの時と勝手が違って、戸惑っている感じ。まだ休み時などが分からないみたいだが、セイさんとフィーデルさんは完全に慣れているオーラがある。いや、このPTでの最適解を探して二人は色々試行錯誤をしているので熟練者だなという感じである。

 とりあえずヒーラー役が二人もいるので、フィーデルさんは弱体デバフを付けに行ってる。時々一瞬ガンツさんが蝙蝠と離れた時を狙って早い風魔法を入れている。


 そして残り3%あたりで、やはり突然逃げようとする挙動。

 でも、ここはあの人がいる。

 高く舞い上がった蝙蝠を、ティラ君がずっと狙っていたのだろう。的確に撃ち落として削り切って終了した。


「うわぁ・・・人がいると楽なんですねぇ・・・。」

 と、レティナさんが素直な感想を述べてくれる。まぁレベルも上がりましたしね。あの頃よりはやりやすいはずですね。


「最初からガンツさんでも全然いけそうな気がしますね。」

 あんなにガンツさんがやるとは思わなかった。正直地質にしか興味ないかと思ってた。

 申し訳なかったなぁ。


「これでも、ゲームは色々とやったからな。」

 と、ガンツさん。それはそれで意外なのだけれども。


「とりあえずあと蝙蝠2匹はいた」


「じゃあそれもちゃっちゃとやっちゃいますか。皆さんも大丈夫そうです?」

「はい!」

「大丈夫よ~。」

「おう。」

「・・・(コクリ」

 三者三様の反応だけれども、もう少し早くしても大丈夫そうな印象だけど、まぁ一歩一歩行きますか。


 そんなこんなで、ガンツさんを盾のメインに据えて、2匹の蝙蝠を問題なく終わらせる。


 他に雑魚はいなそうなので、ゆっくりと気配察知や魔力感知をしながらそんなに広くない洞窟を進んでいく。

 しばらく道なりに歩いていくと、ふと開けた場所に出た。


 あたりは白く美しい結晶?水晶とかだろうか?

 あまりに巨大な、自分たちの体よりも大きい結晶が、何本も何本も辺りから惜しげもなく突き出しており、現実感が無い。

 天井にも勿論結晶があったりするので、落ちてこないか心配なんだけれども。


「神秘の森ね。・・・なるほど。」

 そうフィーデルさんが辺りを見渡しながらつぶやく。

 結晶がまるで森の様に洞窟の中に所狭しと佇んでいる。


「まるで宝石の森みたい・・・。」

 あたりを見渡しながらキラキラした目でつぶやく普通のレティナさん。

 いろんな角度から見たり、しゃがんだりしているので、SSを撮ってそうだ。


「こりゃ、まるでナイカ鉱山みたいだな。」

 と、ガンツさんが専門的な感想を述べる。


「ナイカ鉱山、です?」

 そんな自分の問いに、ガンツさんは応えてくれる。


「メキシコの鉱山で、こんな感じで巨大結晶に埋め尽くされた洞窟を抱えた鉱山だ。あそこは温度が50度以上で湿度がほぼ100%。人間には10分といられない環境だっていうがな。」

 ここは涼しいな、と言いながらガンツさんは結晶をコンコンと叩いている。ついでに下の方に落ちている欠片を拾い、触ったり、爪で引っかいたり、ひっくり返してみたりしている。


「ここにある結晶は透明度の高い水和結晶のセレナイト・・・下についてる結晶の形を見るに石膏に見える。ここもマグマ溜まりから50万年ほどかけて安定した熱水によってこれだけ成長したんだろう。」


「価値はいかほど?」

 と、現実的な問いかけをするティラ君。まぁ確かに大事ですが。


「さぁな?俺は使う方はさっぱりだが・・・」


 リアルでいいならとガンツさんは続ける。


「生薬として使ってるのは聞くがな。解熱作用なんかあるって聞くな。あとは有名なのだとピラミッドの建築に使われたり、ギブスや豆腐の凝固剤か?ただ同じ石膏という名前でも成分は違う可能性があるが。有名なので石膏は3種類くらいあった気がしたが。」

 あとは彫刻くらいか?とガンツさんは首を捻っている。

 確かに同じ名前でも若干結晶の成分が違ったり、結晶の組まれ方が違ったりするのがあるんですよね。


「あー。」

 と残念そうなティラ君。しかし、せっせと何個か結晶を拾っているところを見ると、薬に使おうとしてる気がする。


「加工の仕方なんか、もちろん知らん。」


「そういえば石膏ボードは遮音性と防火性に優れてると聞くが、ファルディアにその加工技術はなさそうだな。」

 現実的な事を言うフィーデルさん。



「いいじゃないの。」



 その声に皆の視線がセイさんに集まる。

 当のセイさんは、嬉しそうにじっと巨大な結晶を見つめている。


「私もその鉱山の名前を聞いたことがあるわ。でも、もう確か水の中に沈んで入れないんでしょう?私たちVRだけど、ほとんどの人が肉眼で見られない風景を、今見ているのね。」


 光玉に照らされた結晶群は内側に光を湛えながら、ただ、そこに在り続ける。


「それって凄いわ。」

 そう言ったセイさんが本当に嬉しそうで。

 場の空気がふわっと緩むのが分かる。


 ああ、いいなこの人って思う。

 側にいると、ポジティブになれるというか。前向きな気持ちを足してくれて、一緒にいて元気になれる人なんだなって思う。人が自然と周りに集まってくる居心地がいい人だ。

 内田とかもアホだけど、こういうタイプだ。自分にはない力だなって思う。



 セイさんのおかげで和やかになった。とりあえず、採掘ポイントはあるものの敵がまた湧くといけないので、数か所掘ったらすぐ先に進むことにした。採掘がある人が採掘して、後の人は見張りをお願いした。


 意外な事にフィーデルさんも採掘持ちだった。意外ですねと言ったところ、

「・・・セイが採集だったから。」

 とのこと。凄い相方だなと思う。

 もしくは長年ずっとセイさんに振り回されてきた苦労性の方なのかもしれない。なんとなしに内田に振り回される自分と同じものを感じて同情をしてしまう。


 採掘がある程度済んだところで先に進もうとする。

 しかし、先に進むにも足場が悪い。

 そこで、ティラ君と自分がルート確保で索敵を兼ねて先行する。

 先に蝙蝠が一匹いたので、足場がいいところまで釣ってきて倒す。

 漸く先に続く入り口を見つけたので中も探索。


 特に問題ない通路の様な感じだったので、ここまでみんなを連れてくる事にする。

 ここでティラ君たちが買ってきてくれた縄が役に立った。危ない所はにはひもをかけたり、もしくは命綱をつけてもらう。とりあえず、一回レティナさんが落ちたのでとても役に立った。


 大きな結晶の上を歩いて先に進む。

 大変だったしアクロバティックだけれど。

 物語の中に入り込んだみたいで、なんかちょっと楽しい。


 結晶群の部屋を出ると、入り口の所の様な洞窟が先に続いている。

 さらに先に進むと再び蝙蝠。

 もう蝙蝠しかここにはいないのか?確かに蝙蝠じゃないとこの場所は生活できなそうだけれども。


 これも難なく撃破する。

 そして、すぐ目の前にはY字路 。・・・・そう言えば何で二叉路って言わないんだろう?


「分岐か。」

「右か左、どちらを選ぶか。」

「考えても仕方ないので、自分とティラ君が少し見てきましょう。ティラ君、右、左どっちがいい?」

「じゃ、左。」

「そういえば、罠ってないのかしら?」

 今更ながらそんな事を言い出すセイさん。

 自然洞窟っぽいからその可能性は考えていませんでしたが、あくまでそう言えばダンジョンでしたね・・・。もっと早く聞きたかった。


「人の手は入ってなさそうだがな。」

「ゲームと考えると、あっても不思議ではない、か。」

 と、ガンツさんとフィーデルさんが考え込む。


「あったとしても、一番初めのダンジョンだから難易度が低いと思うんですよね・・・。一応、気を付けます。」

 苦笑しながら、先に進む。これは罠察知もとるべきですかね・・・?

 しかしこういうのはティラ君の方が絶対向いてそうな。


「レティナ。明かりもってて。」


「はい。」


 そんなこんなで自分とティラ君が先行する。

 右にしばらく進むとぽっと湖がある所に出る。

 中には蝙蝠が5体くらい。

 天井の高い所に・・・おそらく100メートル以上あるだろう、明かりが見えるので地上部に開いているんだろうか。蝙蝠はそこから出入りしているのだろう。

 湖がその光を湛えて青と、緑のグラデーションになっていて、綺麗だ。


 先には・・・進めなそうだが地面が比較的平らなのと視界が開けているので、休憩にはいいのか?


 とりあえず皆が待っているY字路まで戻る事にする。

「ただいまです。」

「おかえりなさい~。」

 Y字路まで戻ると、自分がティラ君よりも早かった。


「先はどうだった?」

 とフィーデルさんに聞かれる。


「とりあえず、地底湖があるだけでした。天井に穴が開いてるみたいで光が降り注いでて綺麗でしたよ。蝙蝠が5匹くらいいましたが、離れていますし・・・まぁ休憩が出来そうって感じですかね?」


 と、説明している間にティラ君も戻ってきた。


「右の道は地底湖だったそうだ。そちらはどうだった?」

 と、ティラ君に尋ねるフィーデルさん。


「またY字路。あと、少し暑い。」

 との簡潔な答え。洞窟っぽくなってきたな。暑いってあれかな?どっかで温水とか溶岩とかダンジョンっぽく湧いてるのかな。


「ここで休憩するなら湖、しないなら左か。」

 まとめるガンツさん。


 休憩か~。時間的には少し早いような気もする。

 ここに入って1時間半くらいかな・・・?あと1時間くらい進んでもいい気がするけれど・・・。

 ふと、見るとなにやらレティナさんが少しそわそわモジモジと落ち着かないような?どうしたんだろ?


「時間だけで言ったら、もう少し進んでもいいな。」

「だが、先に安置があるかも分からんから微妙だな。」

 と会話が飛び交っている。


 ふと、レティナさんの落ち着かない様子に、セイさんが気づいた様だ。

 じーーーーーーとレティナさんの様子を見ている。見られてる事に気づいて焦るレティナさん。セイさんはそんなレティナさんを見て、次ににっこりと笑う。


「私、疲れちゃったし少し休憩したいわ。」

 そう、セイさんがフィーデルさんと、ガンツさんに向けて言う。

 その話を聞いてレティナさんの顔が、ぱぁあああと輝く。


 ―――ああ、そういう事か。


「疲れがたまる前に休憩を挟むか。」

「飯を食ってもいいしな。」

 レティナさんは大人の男の人に気後れして自己主張が出来なかったから、代わりにセイさんが言ってあげたんだろう。フィーデルさんとガンツさんも、別にしてもしなくてもいいよね~って言ってただけなので、レティナさんがしたい!って主張すればきっと休憩を入れてくださったとは思うんですけどね。


「それに、折角初めてのダンジョンに来たんですもの。綺麗な場所があるならちょっとでもいいから見たいじゃない?」

 まぁ・・・みたいな微妙な反応の男性陣だが、セイさんがこっそりレティナさんにウインクしているところが見えた。きっとレティナさんに言ったんだろう。


「いいやつ。」

 ボソッっと自分だけに聞こえる様にティラ君が後ろから言う。

 そういうところを見逃さないティラ君も偉いなって思うんですけどね。



 全員で右の道を進み、地底湖の開けたところに出る。

 比較的近くにいる蝙蝠2匹だけ狩り、各々が休憩の準備をする。

 たき火を焚いたらどの程度まで蝙蝠は感知するかな?って思ったけれど100M以上離れているとこちらには来ないみたい。それだけここは大きい地底湖の空間だ。火を炊いたときは少し警戒したけれど、遠い蝙蝠は全く反応しないので、すぐに安心して座って休憩を取り始める。まぁ気配察知や魔力感知、夜見は入れているんですけどね。


 ハムハムと、携帯食を食べる皆。

 皆にお茶を淹れて回る、おかあさんみたいなセイさん。

 じっとこの地底湖の構造を考えているのだろう、職人気質のガンツさん。

 一方、この先どうするのかとか難しい事を一生懸命考えて守ろうとしている、眉間にしわが寄ったフィーデルさん。

 無表情だけど、みんなの隙間を埋めようとしてくれるティラ君。

 ニコニコと嬉しそうに純粋に地底湖と食事をを楽しんでるレティナさん。


 気の置けない仲間と、気の置けない食事。

 内容はそっけない携帯食だけれど。


 だけど。


「はーい、エルフティーできたよー。セイさん特製だよ~!」

 セイさん持参のマグカップでもらったお茶は、いつもより温かくて美味しくて。


 皆個性的だけど、それぞれ守ってくれている場所が違う。

 それがとても嬉しく、くすぐったく。そして何か嬉しい。


 こういうのが、人間の、家族の幸せなのかなって何となくそう思った。



能動アクティブスキルは、同時発動3つ迄。例外は剣術など。

 例:気配察知、魔力感知、各種魔法、技


受動パッシブスキルは、その限りではない(稀に制限がついている物もある)

 例:回避、受け、軽業、大陸公用語、各種耐性系 など



ナイカ鉱山・・・実在の鉱山。ファルディアが発売されているころには、結晶部分は完全に水没してると思われる。

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