2-90 半影
続・ステータスの話の続き
しかし、ステータスを見ていると不思議だな。
思ったよりもHPが伸びている。
VITだけで考えるともっと低くてもいいはずなのだが、HPだけはSTRとVITが関係しているのかもしれないな。
確かにVITだけでHPを決めると盾職以外のプレイヤーのHPが物凄く低くなるしねぇ?後はレベルでも入ってきてるのかもしれない。
ONTも地味に伸びてきて嬉しい。高ければ高いほど余力があるはずだ。PNTをなるべく使った方がステータスの伸びが良い気がするので、これからも余力がある限りはなるべく使っていきたい所。もっともただの体感だけなので誤差の可能性もあるけれども。
武術系スキルは結構上がったなぁという感じ。スキル上げ頑張ったもんねぇ。
一方で種族系スキルは全然伸びない。どうしてもPNT切れを考えてしまうし、そもそも伸び辛いスキルであるのだ。もっと効率的に伸ばす方法を考えなきゃなぁ。
なんかいつも同じような事を言ってる気がするけれども。
後、増えた物はどれだろう?
称号:『初めてダンジョンに突入したもの 』かな?
これは、ただの記念称号みたい。スキルを作りしものと同じ扱いなのだろう。
こんなところかな。
さて、自分もスキルなんか追加したいんだけどな。
ティラ君みたいにバフ的なスキル?技がいいんだろうか?
でも月光との関連もあるし悩むよねぇ?
方向性として考えてるのはソロ用だと攻撃強化系。
PT用だとレティナさんに言った受け流し系だ。
もしくは、敵の行動阻害とか、とにかく自分のHPが減りにくくなるようなそういうバフとかデバフ系。そもそも紙装甲だからなるべく被弾しない方が有利になるのだ。
などと見ていくんだけれど・・・なんか結構増えてないです?取得可能スキル欄。
これは魔力感知を取った影響なの?
それともセレネーツァ様の加護のせいなのかイマイチ判別がつかない。
そして取得可能リストに捕獲も出ている。笑ってしまう。調教なんかもあるけれども、・・・兎君元気でやってるかなぁ?
意外なのは技系もちらほら追加されている。
技系って道場とか流派がないと出づらいって聞いたんだけど、実際今まで出てなかったんだけどティラ君の技を見たせいか?行動のせいか?少し取得可能リストに存在する。
と言っても、強打とか、敏捷辺りの基礎的な所なんだけれども。
敏捷はいいなぁ・・・。
速度がAGIに対して数パーセント早くなる模様。スキルレベルを上げれば上げるほどパーセンテージが上がりそうな予感。レベル1は1%なんですけどね。
これって加速と重ね掛けできるんですかね?そこも問題だ。
バッシュもいままで強引に種族スキルの重ね掛けで疑似的に再現してただけなんだけど、このスキル取ったらバッシュ+影纏+影硬質化とかできちゃう?あれ?お得なのかな?でも、そんなに変わらない気がしないでもないんだよね。実際、今影族をここまで進めてるのって自分だけなはずなので、取った人がいるとは思えないんだよね。うーん仕様が分からない。悩む。
そしてスクロールしていくと目に留まる。
月光操作
月光属性回復
・・・今までは絶対なかった。
そんなに真面目にも見ていないけれど。少なくともPNT切れを起こして暇に任せて読み込んだ時には絶対なかった。
何でだろう?シュライブングの剣を直そうって決めたから?それとも気づかぬ間に何かフラグを立てた?それともレベルが上がったから?・・・色々考えられるけれども、いま解放されている事実は事実だ。
そして、コストを見てみる。月光操作も、月光属性回復も12SPとかなり重い。
そうすると、かなり強いスキルなのか?
月光操作なんて、魔法かなと思ってたんだけど実は魔法ではないのか?月光系の技とかなのか?などと考えたりする。
加護からは出なかった細かい情報はでないだろうか?と思い文字をタップする。
【月光操作:月光属性の魔法、および技に対するプラス補正がかかる。】
うーん、シンプル。でも、これで月光属性の技があるという事が分かる。
そして自分が伸ばしていくべきも、月光属性の技方面、という事だろう。
魔力感知と一緒で無駄にならなそうではある。ただ、今すぐ使うかどうかわからないのがミソだ。というか、確実に使い方が分からない。本当に早急に・・・何でしたっけ?元の持ち主さんのクリートゥス家さんの類縁を探したい所。何時かは取るだろうけど、今採るべきかが分からない。
そしてもう一つのスキルはといえば、
【月光属性回復:月光属性の魔力の自然回復値に補正される】
うーん?魔力回復の属性限定の回復なんでしょうか?
でも、変だよね?魔力ってプレイヤーの中でもそんな区別がついてるストックされているの?ちょっと調べる必要があるのかなぁ?これが精霊使いならわかるんですけどね。きっとあの人たちは呼ぶ精霊によってスキルが違うそうだしその関連かな?って思うじゃないですか。でも技に関してはどうなんだろうな?果てしなく謎だ。
考えれば考えるほど訳がわからなくなってきて、ゴロンとテントの中に横になる。
時間はファルディアの中で夜の23時程。
満月に近い月が空に上がっている。
綺麗だなぁ・・・と思って空を見る。
ファルディアの月は何故地球と同じ様に作られたのだろう?
大きさも、自転周期も大体一緒だろう。
逆に何故月が二つとか、赤い月とかじゃなかったんだろう?
太陽だって、SFみたいに3つあるとかそういう事でもよかったんじゃないかなと思う。
そう、ファルディアは他のゲームよりもリアルを踏襲しているというか、魔法や技やポーションとかはあったりするのだけれども、ひどく現実臭い所がある。
毒消し薬などもそう。
そんな面倒な仕様にしてゲームとしていいのかな?と思うのだけれども。
それでも。
それでも、今の所ファルディアが好きな気持ちの方が強いんだよなぁ。
たとえ、アイツが作ったゲームだとしても。
アイツは何で自分にギアとゲームを送ってきたのだろう。
どんな気持ちでこのゲームを作ったのだろう。
里美おばさんが言う様に意味がない事なんだろうか。
そして、どうして月はこんなに綺麗なのだろうか―――――。
ほんのちょっと左右が不ぞろいな月の光が、白く優しく降り注いで来る。
月を見ていたら思い出す。
「兎君に会いたいなぁ。」
あのフカフカの手触りが、それだけで自分を慰めてくれていた。
あの優しい兎の温もりが、いまは無性にほしかった。
――――――――――――――――――――
結局何も決められぬままログアウトの時間が近くなったので、走り込みだけしてログアウト。
唯一出来た事と言えばPNTの回復くらいか。
レベル上げしている間に考えて、何かスキルを取ろうと思う。
そして夜にも約束のレベル上げのために定刻通りログイン。
レティナさんもティラ君も異様に張り切っている。
自分もダンジョンは楽しみだけどさ。でも、なんか張り切りすぎて逆サイドにテンションが落ちてしまったような・・・?
いや、まぁ入ればバーンと上がりそうな気はするんですがね。
昨日の月を見てたらなんかズーンと落ちてしまったというかね。
ハハ・・・。
で、リアルで3時間、ファルディアで6時間弱、かなり集中してツチノコを回して全員3レベル程上がる。
これはあれですね。明日の月曜日のレベル上げで3時間再び回して3レベル上げると、自分のレベルが38かぁ・・・。少し心もとない気がする。40あると楽なんだろうけどなぁ。入り口蝙蝠で40前後でしょ?奥に行けばもっとやばい敵が居そうなんですよねぇ・・・。
物理の層が薄いし、少しだけレベル上げておく・・・?上げておきます?
う~ん。
・・・いや、明日のレベル上げ次第で考えるか。
ティラ君とレティナさんには準備をしてもらって、自分でソロでレベル上げなら走り込みや筋トレなしでずっと走っていればステータスはSTRかAGIどっちか上がるしな。ならば数を捌く蟻がいいんだけど、回避のスキルレベルを考えるとツチノコがいいんだよね。
でも、ツチノコはそんなに数が居ないのでソロじゃそんなにレベルが上がらなそうだ。
そう言えば、ツチノコの毒消し薬ですが。
ティラ君が自作してくれた所、毒腺1個につき5個もできたらしい。
勿論他の材料はあるけれど、後は水とか薬草とか他の草とかでそこまで高い物じゃないらしい。よって、ツチノコレベル上げが非常に楽になった。毒を沢山確保してティラ君も嬉しそうだ。
ちなみに毒腺のギルド買取価格は1個2500F程。自作毒消し薬の原価が700F(ティラ君の人件費を除く)。店頭販売末端価格が1200Fだから、かなりお得だ。毒腺はティラ君がギルドよりもう少し色をつけて何故か買い取ってくれている。フラウの代わりに現物支給でもらってますけどね。そして、順調に麻痺毒も作れている様でウハウハオーラを感じる。イベントの時は出店でも出すんですかね?
とりあえず、申し訳ないけれど明日のレベル上げは午前中にしてもらいたいと申告する。
時間帯的にファルディアが昼なのと、レベル上げ如何によってはPTの物理層が甘くなるので、少しソロでレベルを上げに行きたいと伝える。
追加レベル上げも一緒に行くとティラ君とレティナさんが言ってくれたものの、PTだとステータストレーニングがきっと追いつかない事と、レベル上げばかりするとダンジョンの準備が終わらないので、二人にはそちらをお願いしたいと伝える。
二人ともレベル上げもしたいだろうけれど、結局のところ了承してくれてそういうことになった。
盾役が安定していれば、ある程度何とかなるからね。
必要な事だと思って飲んでもらおう。
そして、次の日。
ダンジョン攻略前日の月曜日だ。
ティラ君とレティナさんに経費の試算を出してもらった。PTで使う薬がポーションが5つ、解毒薬が3つ、そして2食分の食事などがついて3000Fで作ってくれた。安っ・・・。
ポーションはギルドで単価1000Fで売ってますよね・・・?そして、PTとしての装備としても不安だったので、ランタンやら光玉という熱を使わない使い捨ての光源(蝙蝠が火の玉に食いついたのでそのためだろう)、縄なども用意してくれた。こちらは3人で割ろうという事で、一人2000F支払った。どうせまた3人でPT行きそうだしね。
二人とも気が利くなぁ・・・。
ガンツさんとセイさんには「必要経費としてポーション5つ解毒薬3つ、携帯食2食分入れて一人3000Fのご用意をお願いします。水は持参でお願いします」というメールを送っておく。
そして、朝一番からティラ君とレティナさんとツチノコで再度レベル上げ。
大分レベルも上がってきているので、強めのツチノコを取ってもやっていける。リアル3時間休憩を混ぜながらお昼までやって、全員が2レベル上がった。
うーん、ちょっと足りないな。ツチノコとのレベル差が詰まってきてるので取得経験値が下がった結果だろう。
でも、スキルは上がったのでよしとする。
特に回避。大事な回避スキルが上がってる嬉しい。
そして午後。
ソロレベル上げの時間だ。
空を見ると綺麗な満月。PNTも心配ないから飛ばしていけそうだ。
今の自分のレベルが37。ティラ君が36でレティナさんが35まで追いついてきた。
頑張って大分上がったし、ステータスもちゃんと上がっているけれど、洞窟に入るには安全マージンがまだ心もとない。
ツチノコは麻痺毒があって事故を起こす可能性があるから却下。
一応麻痺毒耐性Lv.1は生えたけど(たくさん噛まれました。本当にありがとうございました)、ソロじゃ事故からリカバリーできないから却下。
少し戻って、蟻が多い方、蟻のレベルが高い奥地の方に進んでいく。
数が多く、レベルの割には弱いとされる蟻。
狩るのも慣れているのが、こちらも複数体同時相手なので不安が残る。
受けと回避は上がるもののHPの減りも早い。
一応ティラ君にポーションの追加作成依頼をメールで出しておく。
ポーションにもリキャスト時間というものが存在する。
腹が膨れるし、一度に飲むと中毒になるという設定なのか?
兎に角も魔法程頻度が多く使えない。あくまで緊急回避用なのである。ソロのリスクの一つだなぁ。
自分もティラ君みたいに毒とか麻痺とか撒いて時間稼ぎをするスタイルが正道なんだろうか。イマイチ自分に合わない気もするけれど・・・。
レティナさんに言ったような敵からの攻撃をかわす技が自分には必要だと思う。
分体を作って被ダメージを減らす方面の奴。
もしくは、ダメージを無効にしたり、極小にしたりする技。
そんな便利なものがあれば盾職がこぞってとっているだろうけれども。
何か自分にあったものはないかなぁ。
風魔法とか風属性の技が得意な人は風で受け流すとかありそうなんだけどねぇ。
・・・うーん。
レティナさんには雷魔法が生えたし、ティラ君もあれはあれで麻痺弾の生産とかしているので戦術の幅を広げている。
幅が最近停滞していると感じるのは、自分だけだ。
焦りはあるけれど、焦っても仕方ないとも思うのだけれども。だからといって、将来どうしたらいいのか見えてこない焦燥感がある。
それとも、シュライブングの剣を強化する事で変わるのだろうか?
機能の一つを剣にゆだねるというのもそれはそれでアリだ。
自分には分不相応な剣を頂いている。
ついでにその長所を伸ばすべき月光属性に関して情報がないのもある。
イメージがつかみ切れていない。
まさにこれが原因だろう。
だから他のスキルも取れない。
月光属性について、早急に深めたほうがいいな。うん。
とりあえず、スキル敏捷は取ろう。
2SPを払い、敏捷を取得する。
これでスキル1枠使うのはもったいないけれど、AGIが生命線の自分にとって、加速を自発できるのはとても重要だ。勿論時間制限もリキャストもあるけれども。
そしてまだ、1レベルだし1%しかつかないけれどね。とりあえず、これをずっと使ってレベルを上げていこう。
それで・・・・
ふと、周りの空気が変わるのが分かった。
何故だか分からないけれど、ゾワリという悪寒が体を走る。
ああ、また感覚が先に立ったな、と慌てて臨戦態勢に移る。
魔力感知も気配察知もハッキリとしたものじゃないけれど何かを感知する。
第六感も軽く警鐘を鳴らしている。
強く、ヤバい敵でも湧きましたかね・・・?
雰囲気的には今まで変なものに会った時に似ている気がするんですが、・・・何だろう?
辺りを見回すがただ、夜の森が変わらず続いていく。
ザワザワと風が森の葉を揺らす。
ふと、視界にはいる空の月が少し欠けて、赤い―――・・・・?
あれ?さっきまで普通の白い丸い月だった様な?
―――――ズリッ
ふと耳に何かが這いずる音が届く。
―――――ズリッ
――――ズリッ
―――――――――ズリッ
―――――ズリッ―――――――――ズリッ
いつの間にか数が増えている。
365度あらゆる方面から突然湧いた感じ・・・?
何かが這ってこちらに近づいてくる?
それを理解しただけでゾワッっとする。
多分、頭ではわかっていない。でもすごく良くないものの気がする。
倒せるとか倒せないとかではなく、会わない方がいい存在。
毛穴があるかわからないけれど、きっとあったら全部開いたんだと思う。
それくらいゾワッっとした。
そして、ゆっくり草むらを這い寄ってくる黒い泥の様なソレを目にしてしまう。眼にしてしまった。
『ニクイ・・・』
『ドウシテ、アイツダケ』『ズルイ』『キライ』『ドウシテ』『ザマアミロ』『ワタシバカリ』『ダメダ』『ムリ』『シニタイ』『ダマサレタ』『ツカレタ』『ツライ』『モウ、ヤダ』『キエタイ』
すぐに押し寄せてくる悪意。これは・・・これが完全に裏返ったもの?
分からない。
でも、ありとあらゆる汚い悪意の汚泥が。
自分の周りを取り囲んでいて―――――。
『近寄るのはあまりお勧めしないですよ。完全に裏返ると『処分』しなければならなくなりますから。 』
こんな時に、場違いにあの神官の言葉がよみがえる。
―――魔力感知を切らなければ、このままでは・・!いや、そもそも観測者が・・・
押し寄せてくる気持ち悪い物に対して、大分混乱してたんだと思う。
どうしよう、どうしようという気持ちが空回りして。
どうしようもなく気持ち悪くて。
それで。
――――――――――パンッ!―――――――――――――
あんなに気持ち悪かった存在達が、一瞬にして水風船みたいに呆気なく、軽い音を立てて一斉に割れた。
自分の中の気持ち悪さや恐怖なども夢だったみたいに完全に消し去って。
だがしかし、目に映る月は先ほどより、ずっと赤く赤く。
大分混乱していたんだと思う。
目の前に女の人がいたけれども、全然認識できていなくて。
そっと抱きしめられて、漸く女性が目の前に居た事が認識できた。
「あ?あれ???」
そして、その女性は幽霊のシュンさんよりも、ずっとずっと儚く透けていた。
最近、自分が夜中2時ごとになろう様に出没する不審者みたいな感じになっていないかと、勝手に心配になってます。




