2-83 レベリング珍道中1
レティナさんのレベルを上げに狩りに行くことになったので、自分としては珍しく板や攻略サイトを調べました。
その結果、特に情報がありませんでした。
終了。
冷静になって考えてみれば、アルシオンは影族メインの国で例の事件でプレイヤーの数が少ない。エルフの人も殆どラゴという街スタートらしくてアルシオンスタートの人は少ない。ドワーフの人もほとんどがスラハタンデンという髭族が主体の街スタートなので(以下略。
つまり、現状アルシオンには殆どプレイヤーがいないのである。
というわけで沈思黙考した結果、冒険者ギルドで調べればいいやって結論に達した。ログアウトしてまでリアルで調べにきたのに、結局ファルディアに戻ってきてギルドに向かう。
上層ギルドの受付のお姉さんにもご相談したところ、うちのメンツだとペイラー岩砂漠で少し慣らし、いけそうなら西のプーロの森の方に行けばいいのではないか、という事だった。岩砂漠だとアルマジロが比較的お高めだし、蟻は不味いけれど経験値にはなる。西のプーロの森は要求レベルがフルパーティーLV30と急に跳ね上がっていくが、浅い所ならいけるだろうとの事。浅い所にいるツチノコ・・・?みたいな蛇の毒腺?・・・これが凄く高くはないのだが、薬士ギルドからの常設依頼となっていて、とにかく数があった方がいいとの事。一体何に使われるのか。ティラ君も喜びそうな話題だし、あの二人薬の話が好きみたいだし、行けたら蛇まで行って乱獲でいいや。明日の獲物が決まる。
ティラ君からはアポリアで代行して買ってきてあげた買い物金額分より少し多めにポーションいただいちゃったから回復薬は大丈夫。解毒薬はティラ君に毒について熱く語られて以来、何となく敬遠がちだが、一応二つは持っている。
おそらく、ティラ君が毒消しを現地で調達してくれるだろう・・・。多分。
などと頭で算段をつけていると、
「無理は禁物ですからね。」
と受付のお姉さんに笑顔で念には念を押される。
この分だと無理して死ぬ人が結構いるんだろうなと思ったり。
「まだ死にたくないので、肝に銘じます。どうやって毒消しを手配するか考えてました。」
と言っておくとニッコリとイイ笑顔で笑ってくださった。どうやら受付のお姉さん的に及第点をいただけたみたい・・・。
「ギルドで売ってますので念のためにもっていってください。」
と、売り込みもかけられる。さすがである。
お姉さんの言う通り毒消し(プーロの森、ロドン)を6本ほど購入。これでも一人二本で足りないと思うけど、ティラくんが作ってくれる事を期待しつつも、ツチノコに噛まれたらスリップする前に死ぬのか?と思ったり思わなかったり。なお、金額は単価1200F程だった。本当に薬関係はお高い。
被るといけないので、ティラくんとレティナさんにメールで報告。明日のルートと毒消し薬を一人二本ずつ用意しておきますとのお伝え。明日二人に2400Fを貰うのを忘れない様にしないと。ちなみに、レティナさんからの返信は『ありがとう、楽しみ!』って感じで、ティラくんは『新しい毒!ぐへへ』って感じだった。ティラくんは、また捕まらないか心配である。
これで事前準備は終わってるが、まだログイン時間に余力がある。ファルディア時間にして2時間ほどになる。どうしようかな。念の為に冒険者ギルド併設の宿をとって、本を読もうか?それとも内田たちみたいにたまにはステータス伸ばす訓練する?街でできるスキル上げ?
でも明日はレティナさんに経験値がいく様に狩りをするし、ずっと走り回りそうだし、仕留める際は一撃必殺。AGIもSTRも上がりやすそうだし訓練はしなくていい様な気がする。一番懸案事項のPNTの回復を図って、宿で本を読んで大陸公用語を18まで伸ばしてログアウトした。
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翌日。
待ち合わせはリアルで一時。
少し前にログインして、最終チェックをする。
そういえば自分が食べないから忘れていたけれど、世間では食料が必要だったと思い出す。前のが残っているけれど、こちらも少しだけ購入。ていうか、シュンさんと別れた辺りのごちゃごちゃのままのインベントリだったので、待ち合わせの場所でテントを出し、片付けて整理していく。テントセットという1枠で済むものが15枠くらい使ってたからね•••元々すごくインベントリ関係がシビアなゲームなので、移動系と荷物関係はみんな血眼になって拡張方法を探っている。
ギルド併設の井戸で焦げた飯盒も洗いました。
などとやってると、あっという間に時間が迫り、二人ともやってくる。
「おはようございます。」
「よろ。」
「おはようございます。今日はよろしくおねがいします!」
早速PTを投げていくが、おかしい。このメンツだとレティナさんが最もまともに見える。おかしい。とりあえず、様々なチェックと薬のお渡しとか。
そういえば、緑髪幼女のレティナさんは、園児を彷彿とさせるローブっぽい服に、いつの間にか肩掛けバッグを持っている。手には若芽の様な短い杖?。以前会った時とは異なり、順調に装備を揃えているんだな、といった雰囲気。
ティラ君もいつの間にか装備が変わっている。真っ黒から茶色のレザー系ジャケットだ。アンダーはモスグリーンのゆったりとしたパンツ。いっぱい隠し武器や弾がありそう。そしてショートボウも装備している。幅が広い。
対して何も装備を変更していない自分。
・・・・・。いや、ほらね。自分当たったら死にますし?
・・・
ちょっと装備更新も考えますかね・・・。
い、一応次のイベントに向けて武器強化のための資金集めなんだからね!
などと一人懊悩しながらも、北門を出て岩砂漠を目指す。
話ながら、絡んできた敵だけ全てレティナさん一人に任せ、どういう戦法で行こうかとティラ君と話している。MPが足りなそうになったら声をかけてとレティナさんには言ってある。いつも一人で狩ってると言うから大丈夫だろう。
「範囲で焼く?」
「効率的ではありますが、フレンドリーファイアーが怖いのと、レティナさんの範囲で焼ききれるかが問題ですね。」
フレンドリーファイアがあるので、そのうち盾のスキルは魔法耐性系が好まれるんじゃないかって気もするけどどうなんだろうね。
「ん。やってみないとわからない。」
「なんですよね。」
ぶおん、と音がして何か小動物っぽいものが焼かれる気配がする。
レティナさん、うまくなったなあ。
「なかなかやる。」
「初めは自分も抹殺されそうになりましたが。」
「ありがち。」
「そもそもレティナさん範囲魔法あるんですかね。」
優秀な範囲魔法があればそれを積極的に使うのもアリだが、結局自分たちが避けるのが難解っていうかね。そして、範囲狩りは範囲攻撃を持ってる人たちが何人かいてやるイメージだからなぁ。
「言語魔法、覚えてない。」
「そこも聞かなきゃだめですね。」
「サクと、私。交代で釣って、ワンキルできるまで削ってあげる?」
「それが一番安全ですかね?」
フレンドリファイアが怖いですが。
「もしくは逆?レティナが全力で釣ったものを漏れたのを殺す?」
「敵がウジャウジャいれば別ですが、その前にMOBを探す段階でレティナさんは力尽きそうですね。」
妖精にVITやAGIがあるとはとても思えない。釣り要員とは通常最も足が速い&回避能力が高いものが選ばれるのだ。
「範囲もできない。PLもできない。運営は本気。」
「ゲームの延命に全力ですよね。」
飽きられても終わりなので匙加減も難しいだろうが、簡単すぎてもつまらない。オンラインゲームは面白いものを提供するだけでは完結しない。プレイヤーが継続的に面白く遊び続ける様なものを開発するのが難しいのだ。これを引き延ばす様な手法を『延命』と言われる。通常延命は最終装備などの要求アイテムを増やす等がイメージしやすい。楽して経験値を大量ゲットする様な方法を潰しているのも一つの延命じゃないだろうか。
「地味に一匹ずつ釣るが正解?」
「NPCと狩りに行った時もそんな感じでしたし、まずは一回それでやってみますか。」
「何処までHP削るか分からない。経験値を考えたらなるべく削らない方がいい。」
「ですよね。はじめこちらで釣って、レティナさんに攻撃魔法投げてもらって、こちらで削る量をおいおい見定めていきますか。」
「ん。」
などと話している間に岩砂漠の入り口につく。早速、蟻が5体もお出迎えしてくれる。
「とりあえず4」
と言ってティラ君が4体の敵視をとって走り出す。相変わらず仕事が早い。
もう一体は自分が軽く刃をあてて敵視をとり、
「さぁ、とりあえずレティナさん。こいつをやってみましょうか。」
と言う。
「えっ!?えっと!はい!」
と答えるレティナさん。
「火玉」
と、火魔法を投げてくる。削れる蟻のHP。だが、残り2割ほど残ってしまう。
当然怒ってレティナさんにツッコむ蟻。
「ギャー――――――――!!!!!」
涙目で叫んで逃げ出す幼女。
ああ、これがレティナさんの、きっと死にパターンなんだろうな。
正直逃げるよりも、魔法使いは次の魔法を叩き込んだ方が効率的だが、なかなか恐怖心があってうまく行かないよね。回避的なバフを覚えるか、防護的なバフを覚えていた方が確実と後で進言するか。
と、思いながらレティナさんに蟻がたどり着く前に蟻を真っ二つにする。
蟻といい、蜂といい、胴が薄くていいですよね。
自分が倒したことに気づかず、大分遠くに逃げている幼女。
「レーティーナさーーーん馬鹿やってないで次行きますよー。」
自分はすでに、ティラ君から一匹蟻をはがしている。
ティラ君は暇なのか、敵視が上がりづらい毒を蟻に撒いてスリップさせてHPを減らしていた。
「は~や~くぅ~。」
巨大軍隊蟻だと、まず自分の今のレベルでは事故死はないと思うんですが、自分とのレベル差もあまりないので(この辺の蟻だとまだレベル20台後半から30台前半だ)事故死っていうのもありうるし、一応レベルの割には弱い生き物だとしても格上だし、早く倒すべきなのだ。自分もティラ君も紙装甲だし。
「ふえぇえ・・・おにぃい・・・」
大分幼女が涙目だが、こればっかりは慣れてもらうしかない。
そこまでゲロ鬼畜な事は要求していないしねぇ。ティラ君みたいにサソリ毒を刺すとか蟻塚に叩き落すとかしてないし。
でも、レティナさんの偉い所は泣きながらも急いで戻ってきて次の魔法の集中をしているところ。
やればできる子なのだ!慣れてないだけで!
「まだまだ初級です。慣れるためにも数をこなしましょうね~。」
「うーーー怪火」
ボゥ!っとさっきより火勢が強く蟻の体が燃え出す。普通の赤い火というより、すこし化学反応の気があるというか、炎の色が炎色反応の様にケミカルだ。
そして、没する蟻。
「素晴らしいですが、その魔法はMP的にどうですか?」
連発したらMP枯渇しません?
「えっと、火玉の2.5倍くらいのMPを使います?24MPですね。」
「ちょっと勿体ないですね。ヤバい時だけ使ってください。とりあえず火魔法なら火玉だけで。」
「ええぇえ・・・・」
「さっきも殺させなかったでしょう?ちょっとは仲間を信じなさい。敵によっては効きがいい魔法が異なるそうですよ。・・・そういえば火魔法は蟻には駄目なんでした。」
あれから調べたけど、多分蟻酸の関係なのかな・・・?もしかしたら加熱すると毒とかが出るのかもしれない。最も体を真っ二つにした時点で、蟻は消えて行ってるから霧向こうの民は例外かもしれないが。
「火魔法以外の、消費MPが少ない奴で、次お願いします。」
「ううう。はい、・・・土塊!」
ああ、土魔法取ったんですね。
そして、威力が弱いのか、あらかじめHPを7割ほどに減らしておいたにもかかわらず、1割HPが残る。
それを間髪入れず切断。
幼女は涙目だが、今度はしっかりと見ていた。成長がすぐ見れるのがレティナさんの本当に偉い所。
「大丈夫でしょ?さあ次行きましょう。」
「おにぃ・・・。」
土魔法に関しては特に自分からは何も言わない。明らかに威力が低いのは蟻に土魔法耐性があるか、レティナさんの土魔法のレベルが低いかだろうが。そういう試行錯誤を自分でするのも力になると思うからだ。もちろん意見を求められればある程度は言うけどね。
他人の指示にだけ従うようだと後できっと困ると思うし。何より自分がレティナさんにそんな人間になってほしくないだけなんですけどね。
結局自分の好みではあるんだけど、うん、きっと自立大事。
「ほら、ティラ君だって飽きてきてますよ。もういっちょ。」
蟻のHPが7割くらいになってる。一体ティラ君はどんだけDoTを撒いたのか。
蟻から敵視をもぎ取る為にHP2割くらい削ってやっとはがれた。マラソンとは何だったのか・・・
「う~~~!!風刃!」
これは蟻のHPが5割ほどしかない事もあってあっさりと沈む。
ぱぁあああと分かりやすく喜ぶ幼女。
「最後ー。」
ティラ君が飽きたのだろう。直接持ってくる。
「ええーとぉえええーっと、水玉!」
大分混乱気味の幼女が水魔法をぶつける。ほぼ削り切ったが、1ミリほどHPがわずかに残ったのですかさず蟻の首を落とす。
これにて終了。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・きつい。」
「まぁ慣れですからねぇ。」
なれると作業になって、もっともっとってなってきますしね。初めなら頑張ったほうだと思います。
多分、レティナさんが使ってたアレのほとんどが初期魔法?だと消費MPが10程度なんでしょう。となると今ので消費MPは65程使ったでしょうか?わお、自分だと気絶してますね。
流石魔法職。
きっとMP自然回復もあるだろうし、自分よりもずっと回復も早いだろう。
「レティナさんはとりあえず、休んでMP回復ですが・・・どうでしたか?初めてのPLは?」
まぁ、PLって程でもないんですけどね。持ってきた程度で。どちらかというと接待レベリング?
それでも、事故死の可能性が減るので一人よりは安心安全ではある。
「どうって・・・キツイです。」
大分疲れたようだ。だが、地面に座り込んで休んでたせいか、先ほどより息は整っている。
「まぁ、初めてですからねぇ。この回転速度をいかに早くするかで経験値の量が変わるっていうか。」
「えっ!?何が早く回転するんです?」
「魔物?」
「要は早く魔物をさばくって事ですね。」
なれると単調ですよね。ハムスタ―になった気持ちに皆なります。はむはむ。
そういった意味合いでは、不慣れなレティナさんを見てるのは新鮮だ。
「この調子でとりあえず、5セットくらい?」
と、ティラ君に意見を求めます。
「それくらい?経験値はいった?」
「多少は。誤差程度ですが。」
「ティラも。この方式で問題ないみたい。非効率ではあるけど。」
「ですね。」
「?????」
PL慣れしていないレティナさんには意味が分からない模様。
ティラ君と自分にあまり経験値が行かない様にしたけど、まぁあまりこなかったので良いんじゃないかって話ですね。
「レティナさんには経験値きました?」
一応本人にも確認する。
「あ、はい!いつもソロで倒すくらいは入りました!格上なのに少ないかな?って気はしますけど。」
まぁそうですよね。
「それは自分たちが二人いるから諦めてください。今の所、他に効率的な手段が思い浮かばないんで、おそらくレティナさんのMPが続く限りこの手法を取るのが安全で最速かなって思います。だから、あと5セット、計25匹程度はやってみましょうか、って話でした。」
「鬼ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!」
レティナさんの叫び声が岩砂漠にこだまする。
美味しくするには回転を速くするしかないんですがね。
やれやれ。
DoT=Damage over Timeの略。毒などで時間ごとに継続スリップダメージを与えること。
マラソン=外国ではカイティング、というらしい。敵を引きずり回すこと。もしくは同じ作業を繰り返すこと。




